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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7 |
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管理番号 | 1347719 |
審判番号 | 不服2017-11983 |
総通号数 | 230 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-09 |
確定日 | 2018-12-25 |
意匠に係る物品 | 医薬品用カプセル |
事件の表示 | 意願2015- 28390「医薬品用カプセル」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年(2015年)12月21日(パリ条約による優先権等主張2015年6月22日、アメリカ合衆国)の意匠登録出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年2月10日 :優先権証明書提出書の提出 平成28年8月16日付け:拒絶理由の通知 平成28年12月19日 :意見書の提出 平成28年12月19日 :手続補正書の提出 平成29年5月1日付け :拒絶査定 平成29年8月9日 :審判請求書の提出 平成29年9月19日 :手続補正書の提出 平成30年2月1日付け :審尋 平成30年2月21日 :回答書の提出 平成30年6月29日付け:審尋 平成30年7月11日 :回答書及び手続補正書の提出 第2 本願意匠 本願意匠は、意匠に係る物品を「医薬品用カプセル」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下、「引用意匠」といい、「本願意匠」とあわせて「両意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠は、 大韓民国意匠商標公報 2015年4月13日15-14号 錠剤(登録番号30-0791571)の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH27413560号) であり、その形態を、同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。 第4 対比 1 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「医薬品用カプセル」であり、願書及び添付図面に意匠に係る物品の説明又は参考図の記載はないものの、一定量の医薬品を一定形として保持するために成形された固形製剤の外皮であって、引用意匠の意匠に係る物品は「錠剤」であり、一定量の医薬品を一定形として保持するために成形された固形製剤であるから、両意匠の意匠に係る物品は、用途は異なり、機能は共通する。 2 形態 両意匠を対比すると、両意匠の形態については、以下のとおり、共通点及び相違点がある。 なお、本願意匠との対比のために、引用意匠の図の番号で、1.1図を斜視図、1.2図を右側面図、1.3図を左側面図、1.4図を正面図、1.5図を背面図、1.6図を左に90°回転させたものを平面図、1.7図を右に90°回転させたものを底面図、とする。 (1)形態の共通点 (共通点1)両意匠は、全体を、頭切円錐の両端を半球状とした、いわゆるナス型である点で共通する。 (2)形態の相違点 (相違点1)背面視及び正面視で、本願意匠が、縦横比を約1.1対1.0とする、縦長楕円形状であるのに対し、引用意匠は正円形状である。 (相違点2)側面視の縦横比に関し、本願意匠は横が縦の約1.6倍であるのに対し、引用意匠は約2倍である。 (相違点3)半球状部分の比率について、本願意匠は大径側が小径側の約1.3倍であるのに対し、引用意匠は約2倍である。 (相違点4)本願意匠の表面が凹凸のない曲面状であるのに対し、引用意匠は平面、正面、底面及び背面の中央に1条の浅い筋がある。 (相違点5)本願意匠が無彩色であるのに対し、引用意匠は濃い灰色の単色である。 第5 判断 1 意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は、機能は共通するが、用途が異なるから、類似しない。 2 形態の共通点及び相違点の評価 (1)形態の共通点 (共通点1)は、全体を、頭切円錐の両端を半球状とした、いわゆるナス型とする形態に係るものであるが、この種の物品の分野では、本願出願前に数多くみられる形態であって、両意匠の形態を概括的に捉えた共通点であり、意匠全体の類否判断に及ぼす影響は小さい。 (2)形態の相違点 (相違点1)の背面及び正面の形態の相違については、本願意匠は縦長楕円形状で半径が均一ではないのに対し、引用意匠は正円形状で半径が同一であって、本願意匠は両側面から軽く押しつぶした形態となっており、意匠全体の美感に影響を与えている。 (相違点2)の側面視の縦横比の相違と、(相違点3)の半球状部分の比率の相違については、本願意匠は横の長さが縦の約1.6倍で大径側が小径側の約1.3倍であるのに対し、引用意匠は横の長さが約2倍で大径側が約2倍であって、本願意匠は横に長く胴細であるのに対し、引用意匠は横に短く胴太であり、視覚的印象が異なっており、意匠全体の美感に影響を与えている。 (相違点4)については、本願意匠の表面は凹凸のない曲面状であるのに対し、引用意匠は平面、正面、底面及び背面の表面の中央に1条の浅い筋があり、それは形態全体を一周するもので形態全体を左右に分ける印象をもたらしており、視覚的印象が異なるといえ、意匠全体の美感に影響を与えている。 なお、(相違点5)の、色彩の有無の相違については、この種の物品の分野では、カプセルに単色の色彩を施すことは、例を示すまでもなく従来から行われていることであって、引用意匠の色彩もその濃さも新しくて目立つというものではなく、無彩色の本願意匠との比較においても、その色彩に特徴はみられず、(相違点5)が、意匠全体の美感に与える影響は小さい。 3 両意匠の類否判断 両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に判断した場合、両意匠は、全体をいわゆるナス型とする共通点がみられるが、その共通点における形態は数多くみられ、両意匠の形態を概括的に捉えているに過ぎず、この共通点だけで両意匠の意匠全体の類否を決することはできない。そして、個別の具体的な形態の相違は、各々、この種の物品が、需要者である医療従事者や患者が使用時において間違えずに選択しようとするものであることを考慮すれば、個別の具体的な形態、すなわち、背面及び正面の具体的な形態、側面の具体的な寸法比率、そして、表面の具体的な形態は、需要者が注目する形態であるから、これらが相俟って意匠全体の美感に影響を与えるものであるといえ、また、色彩においても美感に一定の相違があるから、共通点を考慮したとしても意匠全体として観察した場合、両意匠は異なる美感を起こさせるといえる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が類似せず、その形態においても、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。 第6 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、本願については、原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-12-12 |
出願番号 | 意願2015-28390(D2015-28390) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(J7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 久保田 大輔 |
特許庁審判長 |
温品 博康 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 宮田 莊平 |
登録日 | 2019-01-18 |
登録番号 | 意匠登録第1624393号(D1624393) |
代理人 | 春名 雅夫 |
代理人 | 小林 智彦 |
代理人 | 刑部 俊 |
代理人 | 大関 雅人 |
代理人 | 川本 和弥 |
代理人 | 五十嵐 義弘 |
代理人 | 井上 隆一 |
代理人 | 小寺 秀紀 |
代理人 | 新見 浩一 |
代理人 | 佐藤 利光 |
代理人 | 清水 初志 |
代理人 | 伊藤 圭 |
代理人 | 山口 裕孝 |