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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C4 |
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管理番号 | 1347723 |
審判番号 | 不服2018-7021 |
総通号数 | 230 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-05-23 |
確定日 | 2019-01-08 |
意匠に係る物品 | 衛生マスク |
事件の表示 | 意願2017- 14719「衛生マスク」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 平成29年 7月 7日 意匠登録出願 平成29年10月31日付け 拒絶理由通知書 平成29年11月27日 意見書 平成30年 3月 1日付け 拒絶査定 平成30年 5月23日 審判請求書 平成30年 9月12日付け 拒絶理由通知書 平成30年10月24日 意見書 第2 本願意匠 本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「衛生マスク」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。 第3 当審における拒絶の理由及び引用意匠 当審における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠は、下記の意匠である。 特許庁が平成23年2月10日に公開した公開特許公報に記載された特開2011-24942の図1ないし図5に表された「マスク(1)」の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。) 第4 本願意匠と引用意匠の対比 1 意匠に係る物品 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも本体部と耳掛け部から成り、耳掛け部を両耳に掛け、本体部で鼻と口を覆うマスクであるから、一致する。 2 両意匠の形態 両意匠の形態を対比すると、主として、以下の共通点と相違点が認められる。 (1)形態の共通点 (A)全体は、正面視略横長長方形状で薄いシート状の本体部と、その左右に取り付けられた紐状の耳掛け部から成り、耳掛け部は略倒U字状であって左右対称に表されている。本体部外周寄りには複数の角ドットから成る列が形成されている。 (B)襞の構成態様 本体部正面略中央部には、顔面部に沿うように、左右方向に延び、かつ上下方向に広げることが可能な襞が設けられている。襞は、正面中央から上下方向それぞれに2つずつ山折りされており、正面視4本の水平状形状線として表されている。その4本の線の間隔は、上から順に約1:2.6:1である。 (C)ノーズワイヤの態様 本体部上端寄り略中央には、細幅帯状のノーズワイヤが内包されている。このノーズワイヤは、本体部上端寄りに表された角ドットから成る2本の列の間隔が大きくなっているところ、その2本の列の間に配されている。 (D)耳掛け部の態様 耳掛け部は、本体部角部寄りに溶着されており、耳掛け溶着部の形状は、略小正方形状である。 (E)角ドットから成る列の構成態様 角ドットはごく小さい略矩形状であって、角ドットから成る列は、正面視本体部の縦方向及び横方向のほぼ全長に渡り端部又は端部付近まで伸びている。本体部上端寄りと下端寄りにはそれぞれ複数本ずつ列が平行して形成され、本体部左端寄りと右端寄りには、中央が外側に弧状に湾曲した2本の列が平行して形成されている。右側の2本の列と左側の1本の列(内側)が上端寄りの列と角部寄りで交差している。下端寄りの複数本の列同士の間隔はごく僅かである。 (2)形態の相違点 (a)本体部の縦横比 本体部の縦横比について、本願意匠は約2:3であるのに対し、引用意匠は約5:9である。 (b)折返し部の有無 本願意匠では本体部の上下辺が前方に向かって折り返されており、折返し部の下端又は上端が水平状の形状線として表れているが、引用意匠の本体部の上下辺は折り返されていない。 (c)ノーズワイヤが視認できるか否か 本願意匠のノーズワイヤは不織布である折返し部から透けて見えていると推認されるが、引用意匠のノーズワイヤが透けて見えているか否かは不明である。 (d)耳掛け部の溶着位置 本願意匠の耳掛け部が本体部背面側(顔面側)に溶着されているのに対し、引用意匠の耳掛け部は本体部正面側(外側)に溶着されている。 (e)角ドットから成る列の態様 本体部上端寄りと下端寄りに表された、角ドットから成る列について、本願意匠では3本ずつ形成されているのに対し、引用意匠では2本ずつ形成されている。また、本願意匠では、縦方向の列と横方向の列が全て交差しているが、引用意匠では、左右の2本の列が上端寄りの列と下端寄りの列の間に形成され、左右の列は上端寄りの2本目の列と交差しているのみである。そして、引用意匠では、上端寄りの上側の列の左端、下側の列の右端、及び下端寄りの2本の列の両端が耳掛け部溶着部の位置で途絶えているが、本願意匠では途絶えていない。なお、引用意匠の背面の形状は不明であるから、引用意匠において、耳掛け部溶着部の背後に角ドットが形成されているか否か、すなわち、角ドットは存在するが耳掛け部溶着部に覆われているか又は角ドットが存在しないかは、不明である。 第5 類否判断 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。 2 衛生マスクの物品分野の意匠の類否判断 衛生マスクの通常の使用において、需要者が衛生マスクを観察するに当たっては、その衛生マスクを全方向から眺めることとなり、また、衛生マスクは需要者の顔面の鼻や頬などに当たることから、衛生マスクの中央部における襞の構成態様についても注意を払い、顔面と衛生マスクとの間に隙間が空かないように溶着により形成される角ドットから成る列の構成態様にも注意を払うこととなる。したがって、衛生マスクの物品分野の意匠の類否判断においては、衛生マスクの中央部における襞の構成態様や角ドットから成る列の構成態様を特に評価しつつ、かつそれ以外の項目も併せて、各項目を総合して意匠全体として形態を評価する。 3 両意匠の形態の共通点の評価 全体が正面視横長長方形状で薄いシート状の本体部と、その左右に取り付けられた紐状の耳掛け部から成り、略倒U字状の耳掛け部が左右対称に表されて、本体部外周寄りに複数の角ドットから成る列が形成された共通点(A)は、「衛生マスク」の物品分野の意匠において本願の出願前に既に見受けられるから、共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 また、共通する襞の構成態様、すなわち、正面中央から上下方向それぞれに2つずつ山折りされて、4本の水平状形状線として表された態様であって、その4本の線の間隔が上から順に約1:2.6:1である構成比は、衛生マスクの中央部における襞の構成態様において共通の美感を醸し出しているものの、襞が山折りされて水平状形状線として表された4本の線の間隔が上から順に約1:2.6:1である態様が、「衛生マスク」の物品分野の意匠において本願の出願前に既に見受けられる(例えば、意匠登録第1538581号。別紙第3参照。)ことを踏まえると、需要者の注意をそれ程惹くとはいい難いので、共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいとはいえない。 そして、共通点(E)で指摘した、共通する角ドットから成る列の構成態様、すなわち、ごく小さい略矩形状の角ドットから成る列が本体部縦方向及び横方向のほぼ全長に渡り端部又は端部付近まで伸びて、本体部上端寄りと下端寄りに複数本ずつ列が平行して形成され、本体部左端寄りと右端寄りに中央が外側に弧状に湾曲した2本の列が平行して形成されている構成態様、及び共通点(C)で指摘した、本体部上端寄りに表された角ドットから成る2本の列の間にノーズワイヤが配されている態様も、「衛生マスク」の物品分野の意匠において本願の出願前に既に見受けられる(例えば、意匠登録第1377308号。別紙第4参照。)から、需要者の注意をそれ程惹くとはいい難いので、共通点(E)及び共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいとはいえない。 さらに、本体部角部寄りに溶着された耳掛け溶着部の形状が略小正方形状である共通点(D)については、耳掛け溶着部の意匠全体に占める面積が小さく、需要者が耳掛け溶着部の形状を特に注視することはないから、共通点(D)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 そうすると、共通点(A)ないし共通点(E)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて小さいということができる。 4 両意匠の形態の相違点の評価 これに対して、前記認定した相違点(a)ないし相違点(e)が両部分の類否判断に及ぼす影響は、以下のとおり評価され、相違点を総合すると、両意匠は需要者の視覚を通じて異なる美感を起こさせるということができる。 まず、角ドットから成る列の態様の相違点(e)について、縦方向の列と横方向の列が全て交差しているか(本願意匠)、左右の列が上端寄りの2本目の列と交差しているのみであるか(引用意匠)の相違は、需要者に異なる視覚的印象を与えているというべきであって、上端寄りの2本の列の左端又は右端及び下端寄りの2本の列の両端が耳掛け部溶着部の位置で途絶えているか(引用意匠)、途絶えていないか(本願意匠)の相違についても、そもそも引用意匠においては耳掛け部溶着部の背後に角ドットが形成されているか否かは不明であるから、その相違は角部寄りに角ドットが形成されているか否かの相違であるともいうべきであり、角部寄りの角ドットの有無の相違は需要者の注意を惹くといえる。したがって、相違点(e)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといわざるを得ない。 次に、折返し部の有無の相違点(b)については、本願意匠のように前方に向かって折返し部が設けられ、折返し部の下端又は上端が水平状の形状線として表れた形態が、「衛生マスク」の物品分野の意匠において本願の出願前にありふれているとしても、本願意匠では、本体部上端寄りと下端寄りに角ドットから成る列が3本ずつ形成されているから、その列が2本ずつ形成されて折返しによる水平状形状線が無い引用意匠に比べて、需要者に対して水平状の構成要素が密な印象を与えているというべきであるから、相違点(b)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 そして、ノーズワイヤが透けて見えているか否かの相違点(c)については、本願意匠のように表面の不織布から透けて見えているノーズワイヤを有する形態が、「衛生マスク」の物品分野の意匠において本願の出願前にありふれているとしても、本願意匠において透けて見えている細幅帯状のノーズワイヤの形状は、3本ずつ形成された本体部上端寄りと下端寄りに角ドットの構成態様とあいまって、引用意匠とは異なる視覚的印象を需要者に与えているといえるから、相違点(c)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きい。 他方、本体部の縦横比の相違点(a)については、「衛生マスク」の物品分野の意匠において、略横長長方形状の本体部には様々な構成比率のものが見受けられるから、本体部の縦横比の相違に対して需要者が注目するとはいい難いので、相違点(a)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 また、耳掛け部の溶着位置の相違点(d)についても、耳掛け部が本体部背面側(顔面側)に溶着されたものと本体部正面側(外側)に溶着されたものの両方が本願の出願前からありふれていることから、そのどちらかに溶着されているかについて需要者は特に注視するということはできず、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 5 両意匠の類否判断 両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、両意匠を総合的に観察した場合、両意匠の形態の共通点は総じて両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいのに対して、相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響については、相違点(b)、相違点(c)及び相違点(e)の影響が大きいといわざるを得ない。これらの相違点は、両意匠の形態の共通点を圧して、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。 したがって、両意匠の意匠に係る物品は同一であるが、両意匠の形態の相違点は両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼしているから、本願意匠は引用意匠に類似しない。 第6 むすび 以上のとおり、本願意匠は、当審における拒絶の理由に引用した意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-12-19 |
出願番号 | 意願2017-14719(D2017-14719) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(C4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 桐野 あい |
特許庁審判長 |
木本 直美 |
特許庁審判官 |
小林 裕和 宮田 莊平 |
登録日 | 2019-01-18 |
登録番号 | 意匠登録第1624195号(D1624195) |
代理人 | 中西 得二 |