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審決分類 |
審判 査定不服 意10条1号類似意匠 取り消して登録 H1 |
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管理番号 | 1348767 |
審判番号 | 不服2015-5815 |
総通号数 | 231 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-03-30 |
確定日 | 2016-01-22 |
意匠に係る物品 | 電気コネクタ |
事件の表示 | 意願2014- 6028「電気コネクタ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成26年(2014年)3月20日に出願された,本意匠を意願2014-6026号(意匠登録第1512716号(秘密意匠登録))とする関連意匠の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「電気コネクタ」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするものであり,「実線で表した部分(参考部分拡大斜視図において薄墨で着色した部分)が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである。(以下,本願の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠部分」という。)(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び本意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められないから,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものであって,本願の願書に記載した本意匠の意願2014-6026号(意匠登録第1512716号)は,物品の部分について意匠登録を受けようとして平成26年(2014年)3月20日に意匠登録出願され,その後,平成26年(2014年)10月31日に意匠権の設定登録がされ,同年12月1日に意匠公報が発行されたものであって,その意匠(以下,「本意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「電気コネクタ」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線で表した部分(参考部分拡大斜視図において薄墨で着色した部分)が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである。(以下,本意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本意匠部分」という。)(別紙第2参照) 第3 当審の判断 そこで当審において本願意匠の意匠法第10条第1項適用の可否,とりわけ,本願意匠が本意匠と類似するか否かについて検討する。 1.意匠に係る物品について 両意匠に係る物品は,共に「電気コネクタ」であり,一致する。 2.両意匠の意匠登録を受けようとする部分(以下,「両意匠部分」という。)の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲について (1)用途及び機能 両意匠部分は,共に,電気コネクタ(プラグコネクタ)における信号伝送用のピン(以下,「信号ピン」という。)及び電源供給用のピン(以下,「電源ピン」という。)であって,両意匠部分の用途及び機能は共通する。 (2)位置,大きさ及び範囲 本願意匠部分は, 本願意匠部分を含む電気コネクタ全体が,略直方体の本体の長手方向前端に略横長長方形板状のプラグコネクタ部を突設したもので, 本願意匠部分は,そのうちのプラグコネクタ部正面に形成された,相手側のレセプタクルコネクタの凸部と嵌合する凹部(以下,この部分の凹部を「嵌合凹部」という。)の,正面視横長長方形の内壁面の下面に並列配設された信号ピン及び内壁面左右両端に付設された一対の電源ピンに位置し, その範囲は,嵌合凹部内壁に基底部を埋設した信号ピンの露出している冠部のうち左右側の木口面を除く面及び電源ピンの露出している部分の上下の木口面を除いた内側を向いた面であって, その大きさは,本願意匠部分が位置するプラグコネクタ部の全体の横幅が10ミリ程度で,本願意匠部分はこれよりもやや小さいものである。 (なお,位置,大きさ及び範囲については,本願意匠のプラグコネクタが,High-Definition Multimedia Interface(高精細度マルチメディアインターフェース)規格(以下,「HDMI規格」という。)のタイプCと互換性を有するプラグコネクタの形態であると認められることから,その規格の仕様を参考に認定した。) 本意匠部分は, 本意匠部分を含む電気コネクタ全体が,略直方体の一端を窄めた本体の長手方向両端に略横長長方形板状のレセプタクルコネクタ部とプラグコネクタ部を突設したもので, 本意匠部分は,そのうちのプラグコネクタ部正面に形成された嵌合凹部の,正面視下方隅切横長長方形の内壁面の上下面に並列配設された信号ピン及び内壁面左右両端に付設された電源ピンに位置し, その範囲は,嵌合凹部内壁に基底部を埋設した信号ピンの露出している冠部のうち左右両側の木口面を除く面及び電源ピンの露出している部分の上下の木口面を除いた内側を向いた面であって, その大きさは,本願意匠部分が位置するプラグコネクタ部の全体の横幅が6ミリ程度で,本意匠部分はこれよりもやや小さいものである。 (なお,位置,大きさ及び範囲については,本願意匠のプラグコネクタが,HDMI規格のタイプDと互換性を有するプラグコネクタの形態であると認められることから,その規格の仕様を参考に認定した。) したがって,両意匠部分は,共にプラグコネクタ部の正面に形成された嵌合凹部の内壁面に付設された信号ピン及び電源ピンに位置し,その範囲は,どちらも嵌合凹部内壁から露出している部分の木口面を除いた面であって,その大きさは,どちらもごく小さなものであるから,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲は,共通している。 3.両意匠部分の形態について 主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。 共通点として, (A)嵌合凹部内壁の長い面に並列配設された19本の信号ピンと,嵌合凹部内壁の左右両側の短い面に対向して付設された,前記信号ピンより幅広な一対の電源ピンの,それぞれ露出した内側の面で構成されている点, (B)各ピンの上記露出面は,前後が等幅の帯状であり, (B-1)信号ピンは,帯状部を嵌合凹部中央内側に向けて側面視略凸「く」字状に屈曲突出させた形態であって,全て同形同大のものであり, (B-2)電源ピンは,帯状部の奥の部分を平坦に,開口縁に近い手前の部分を嵌合凹部中央内側に向けて略凸「V」字状に屈曲させて突部とした形態である点, がある。 相違点として, (ア)信号ピンの具体的態様について, 本願意匠部分は,19本の信号ピンが,嵌合凹部内壁の下面に,横一列に等間隔に並列配置されており,各ピンの幅が極細幅で,各ピンの前端部が嵌合凹部開口縁より僅かに下方の位置まで埋設されているのに対して, 本意匠部分は,19本の信号ピンが,嵌合凹部内壁の上下面にそれぞれ10本と9本,千鳥状に配置されており,各ピンの幅が細幅で,各ピンの前端の極細幅部を水平面とした形態である点, (イ)電源ピンの具体的態様について, 本願意匠部分は,手前の略凸「V」字状の前方傾斜面が,傾斜したまま嵌合凹部内壁面に至り,嵌合凹部内壁面に対し直角をなす面がないのに対して, 本意匠部分は,手前の略凸「V」字状の前方傾斜面の前端を屈曲させて,嵌合凹部の内壁面に対して直角をなす極細幅の縦長長方形面とした形態である点, がある。 4.両意匠の類否について 以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価,総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討する。 両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両意匠部分の用途及び機能が一致し,位置,大きさ及び範囲が共通している。 両意匠部分の形態については,共通点(A)及び同(B)は,いずれも全体の基本的構成態様に関するものであり,共通点(A)並びに同(B),同(B-1)及び同(B-2)からなる全体の形態,すなわち,嵌合凹部内壁の長い面に並列配設された19本の信号ピンと,嵌合凹部内壁の左右両側の短い面に対向して付設された,前記信号ピンよりかなり大きな一対の電源ピンの,それぞれ露出した内側を向いた面で構成されており,その各ピンの露出面は,前後が等幅の帯状の形態であって,信号ピンは,側面視略凸「V」字状に屈曲突出させたものであって,全て同形同大のものであり,電源ピンは,奥の部分を平坦に,開口縁に近い手前の部分を嵌合凹部中央内側に向けて略凸「V」字状に屈曲させて突部を形成したものであって,配置された各ピン前方の開口縁付近の形態が全て略凸「く」字状あるいは略凸「V」字状の形態であるという両意匠部分に共通の態様は,共通点全体として,動物の尖った歯列のような共通の強い視覚的効果を生み出して,看る者に強い共通の印象を与えるものであり,共通点(A)並びに同(B),同(B-1)及び同(B-2)が類否判断に及ぼす影響は非常に大きく,両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼしている。 これに対して,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は,軽微である。すなわち,信号ピンの具体的態様についての相違点(ア)については,19本の信号ピンの配置態様について,本願意匠部分の,嵌合凹部内壁の下面に横一列に等間隔に並列配置した態様は,HDMI規格のタイプ「C」のコネクタにおける標準規格の配置態様であり,本意匠部分の,嵌合凹部内壁の上下面に千鳥状に配置された態様も,同様にHDMI規格のタイプ「D」のコネクタにおける標準規格の配置態様であるから,この配置態様の相違が,意匠の類否判断に及ぼす影響を大きく評価すべきではない。また,各ピンの幅の相違は,もともと上記配置態様の相違に基づくものであり,前端部の形態の相違についても,開口縁付近で目に付きやすい部位であるとはいえ,極めて小さい部位における相違にすぎず,一方,信号ピンの幅は,電源ピンよりかなり細幅で,信号ピン全てが同幅のものであるという点で,両意匠部分は共通しているから,信号ピンの具体的形態についての細かな相違点は共通点に埋没してしまう程度の軽微なものにすぎない。 電源ピンの具体的態様についての相違点(イ)についても,同様に目に付きやすい部位であるとはいえ,極めて小さい部位であって,前方に略凸「V」字状部があって,その前方面が帯状傾斜面であるという共通点の中に埋没してしまう程度のものでしかないから,微弱な相違に止まるものである。そして,相違点(ア)及び同(イ)が相まった相違点全体としての効果を勘案しても,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は軽微である。 共通点は,類否判断に及ぼす影響が非常に大きく,両意匠部分の類否判断に支配的な影響を及ぼしているのに対し,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響はいずれも軽微なものであって,共通点が看者に与える強い共通の印象を覆すほどのものではない。 したがって,本願意匠と本意匠は,意匠に係る物品が一致し,両意匠部分の用途及び機能が一致し,位置,大きさ及び範囲が共通する。そして,形態においても,両意匠部分の共通点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きく,類否判断に支配的影響を及ぼしているのに対し,両意匠部分の相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は軽微であり,相違点の印象は,共通点の印象を覆すには至らないものであるから,本願意匠部分は本意匠部分と類似する。よって,本願意匠は,本意匠に類似する。 第4 むすび 以上のとおりであって,本願は,願書に記載した本意匠である意願2014-6026号(意匠登録第1512716号)の出願と,出願日に関して,意匠法第10条第1項の要件を充足するものであり,本願意匠はこの願書に記載した本意匠に類似するから,これを本意匠とする意匠法第10条第1項に規定する意匠に該当するから,原審の拒絶理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-01-06 |
出願番号 | 意願2014-6028(D2014-6028) |
審決分類 |
D
1
8・
3-
WY
(H1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 上島 靖範、清野 貴雄 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
本多 誠一 渡邉 久美 |
登録日 | 2016-02-19 |
登録番号 | 意匠登録第1546455号(D1546455) |
代理人 | 五味 飛鳥 |