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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1348775 |
審判番号 | 不服2018-12557 |
総通号数 | 231 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-09-20 |
確定日 | 2019-01-22 |
意匠に係る物品 | 包装用容器用板紙 |
事件の表示 | 意願2017-11970「包装用容器用板紙」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2016年12月2日の欧州連合知的財産庁への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成29年(2017年)6月2日の意匠登録出願であって,その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。 平成29年 6月 2日 :上申書の提出 平成29年 6月 6日 :優先権証明書提出書の提出 平成29年11月28日付け:拒絶理由の通知 平成29年12月18日 :手続補正書の提出 平成30年 1月 5日付け:拒絶理由の通知 平成30年 4月17日 :意見書の提出 平成30年 6月19日付け:拒絶査定 平成30年 9月20日 :手続補正書の提出 同日 :審判請求書の提出 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「包装用容器用板紙」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「正面図,背面図,左側面図,右側面図,平面図,底面図において,紫色で着色した部分以外の部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。また,紫色で着色した部分及び破線で表した部分は,意匠登録を受けようとする部分以外の部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 1 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「包装用容器用板紙」(以下,単に「板紙」ということもある。)であって,それは,願書の記載内容及び願書添付の図面から上部を屋根型とした略四角柱状の包装用容器(ゲーブルトップ型紙容器。いわゆる牛乳パック状のもの。)に組み立てるものであり,(屋根部分における正円形開口部が有る側を正面とすると,)包装容器としての正面部及び背面部から屋根に成る面,左右両側面に成る面,及び底面に成る面,並びにのり代部分を構成する板紙と認められる。 2 本願部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 本願意匠は,包装用容器用板紙の部分についての意匠であり,当該部分(以下,本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」ということもある。)は,略正方形の板紙の略中央に位置する,組み立てたときに包装用容器の周面の角部(正面と左側面の角部)になる箇所における面取り部分であって,周面の上端及び下端には達することのない位置,大きさ及び範囲であって,包装用容器用板紙の略中央部分としての用途及び機能を有している。 3 本願部分の形状 本願部分の形状は,縦長の笹の葉形状で,右辺と左辺は,上端から下端まで凸曲線で構成し,上端から約3分の1下がった所が最大幅となるものである。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における平成30年1月5日付けの拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」という。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。 引用意匠 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1367978号 (意匠に係る物品,包装用容器)の意匠(周面角部の笹の葉形部分) なお,審査官が引用した意匠登録第1367978号の意匠には,正面左側の角と,正面右側の角に笹の葉形の部分が認められるところ,審査官は,本願意匠に対して,左側角部分と右側角部分のどちらを引用したのか明らかにはしていない。 しかし,本願部分の形状からして,右側角部分の方を引用したものとして,以下検討をする。 1 意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は「包装用容器」である。 2 引用部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 引用意匠中,本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」という。)は,縦長の略直方体の包装用容器における,正面右側の角部の面取り部分であって,周面の上端から下端までの位置,大きさ及び範囲であって,包装用容器の周面の角部における面取り部分としての用途及び機能を有している。 なお,本願意匠のように,容器として組み立てる前の展開した板紙状のときの,引用部分の位置は,不明である。 3 引用部分の形状 引用部分の形状は,縦長の笹の葉形状で,右辺と左辺は,上端から約5分の3下がった所までを凸曲線で構成し,その約5分の3下がった所から下端までを僅かな凹曲線で構成したものであって,上端から約3分の1下がった所が最大幅となる,略倒「へ」の字状のものである。 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は「包装用容器用板紙」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「包装用容器」である。 2 両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の対比 本願部分は,略正方形の板紙の略中央に位置する,組み立てたときに包装用容器の周面の角部になる箇所における面取り部分で,周面の上端及び下端に達していない位置,大きさ及び範囲であって,板紙の略中央部分としての用途及び機能を有しているのに対して,引用部分は,縦長の略直方体の包装用容器における,正面右側の角部の面取り部分で,周面の上端から下端までの位置,大きさ及び範囲であって,包装用容器の周面の角部における面取り部分としての用途及び機能を有している。 3 両部分の形状の対比 両部分の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。 (1)共通点について ア 縦長の笹の葉形状である点 イ 上端から約5分の3下がった所までを凸曲線で構成している点 ウ 上端から約3分の1下がった所が最大幅となる点 (2)相違点について 左右辺の曲線につき,本願部分は,上端から下端まで凸曲線で構成しているのに対して,引用部分は,上端から約5分の3下がった所までを凸曲線で構成し,その約5分の3下がった所から下端までを僅かな凹曲線で構成している点 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 意匠に係る物品について両意匠を対比すると,本願意匠は「包装用容器用板紙」であって,引用意匠は「包装用容器」であるから,意匠に係る物品は異なる。 2 両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価 本願部分は,略正方形の板紙の略中央で,折り曲げて包装用容器とした際の容器の周面の上端及び下端には達することのない位置,大きさ及び範囲であるのに対して,引用部分は,縦長の略直方体の包装用容器における,正面右側の角部の面取り部分であって,周面の上端から下端までの位置,大きさ及び範囲であるが,本願意匠のように展開した板紙状のときの位置は,不明であるから,両部分の位置,大きさ及び範囲が共通するとはいえない。 本願部分は,板紙の略中央部分としての用途及び機能を有しているのに対して,引用部分は,包装用容器の周面の角部における面取り部分としての用途及び機能を有しているから,両部分の用途及び機能は一致しない。 3 両部分における形状の評価 (1)共通点について 共通点アについては,僅かに共通感が生じているが,この種物品分野においては,本願出願前からいくつか見られる点であるから,両意匠の類否判断に与える影響は小さいといえる。 共通点イについては,この種物品分野においては,数多く見られる点であるから,両部分の類否判断に与える影響は小さいといえる。 共通点ウについては,面取り部分の中央ではなく,上又は下にずらした箇所を最大幅とした形状は,この種物品分野においては,本願出願前からいくつか見られる点であるから,この共通点をもって両意匠の類否判断に与える影響は小さいといえる。 (2)相違点について 両部分は,共に縦長の笹の葉形状であるが,両部分のみを比較検討すると,相違点によって,笹の葉形状に別異の印象を生じさせているものと認められるから,相違点が両部分の類否判断に与える影響は大きいといえる。 (3)両部分における形状の類否判断 共通点は,両部分の類否判断に与える影響は小さく,両部分の類否判断を決するものといえないのに対して,相違点は,両部分について需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,両部分の類否判断を決するものといえる。 よって,本願部分の形状と引用部分の形状は,部分における全体観察においては類似しないと認められる。 4 両意匠における類否判断 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が異なり,両部分の用途及び機能が一致せず,位置,大きさ及び範囲は共通しているとはいえず,かつ,両部分の形状において,上記のとおり本願部分と引用部分の形状は類似しないものであるから,本願意匠と引用意匠とは類似しない。 第6 結び 以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-01-07 |
出願番号 | 意願2017-11970(D2017-11970) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 八重田 季江 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 正田 毅 |
登録日 | 2019-02-08 |
登録番号 | 意匠登録第1625907号(D1625907) |
代理人 | 井戸川 義信 |