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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 J7
管理番号 1350695 
審判番号 不服2015-18437
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-09 
確定日 2016-03-22 
意匠に係る物品 細胞用保存容器 
事件の表示 意願2014- 14741「細胞用保存容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,本意匠を意願2013-017219とする関連意匠の意匠登録出願として,平成26年(2014年)7月4日にされた意匠登録出願であり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「細胞用保存容器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はそれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書に添付した図面の記載のとおりとしたものである(別紙第1参照)。


第2 原査定の拒絶の理由

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載した本意匠(意願2013-017219の意匠(別紙第2参照)。以下,「本意匠」という。)に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものであって,具体的には以下のとおりである。

本願の意匠と本意匠とは,正面視左側の容器部分の形状の相違が顕著である。当該部分は最も大きな範囲を占め看者の注意を引くことから,両意匠は類似しないものと認められる。


第3 当審の判断

以下,本願意匠が本意匠とは類似せず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないものであるか否かについて検討する。

1 本願意匠と本意匠の対比,及び類否判断
(1)本願意匠と本意匠の対比
ア 意匠に係る物品
本願意匠と本意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,ともに臍帯血や幹細胞等の生体試料から採取された細胞を保存するために使用される「細胞用保存容器」であり,一致する。

イ 形態
(ア)共通点
両意匠は,
(A)全体として,下方に細胞回収ポートを設けた細胞収容部,品質試験サンプル収容部,及び再試験用サンプル収容部の3つの収容部を,それぞれ正面視左から順に連結したものとし,連結部分を各収容部に収容された細胞が往来可能な管体(以下,「連通路」という。)とした基本的構成態様,
(B)正面視左側の細胞収容部(以下,「左側収容部」という。)は,正面視縦横比を約1:1とする略扁平袋状として,底面に垂下する略円筒状の細胞回収ポートを設けたものとした点,
(C)正面視中央の品質試験サンプル収容部(以下,「中央収容部」という。)は,正面視縦の長さを,左側収容部の縦の長さの約1/2,正面視横の長さを左側収容部の横の長さの約1/3とする大きさとした,正面視略U字型の略扁平袋状とし,底面の左右中央に垂下する略円筒状のサンプル回収ポートを設けたものとした点,
(D)正面視右側の再試験用サンプル収容部(以下,「右側収容部」という。)は,正面視縦の長さを,中央収容部と同じ長さ,正面視横の長さを中央収容部の横の長さの約5/12とする大きさとした,正面視略縦長長方形の略扁平直方体状とし,底面に垂下する略円筒状のサンプル回収ポートを設けたものとした点,
(E)上記3つの収容部の上辺を水平方向に揃え,中央収容部及び右側収容部の下辺が水平方向に揃っている点,
(F)連通路を,各収容部の上寄りの箇所に,上下に並行して2本配したものとした点,
(G)左側収容部の上面側には,細胞注入部,薬剤等注入ポート及び吊下孔を形成している点,
(H)左側収容部の上面左寄りに形成された細胞注入部を除く外周を,垂直面を成す鍔状に形成した点
が共通する。

(イ) 相違点
一方,両意匠は,
(a)左側収容部の形態について,本願意匠は,右下方を凸円弧状とした正面視略1/4円弧状とし,細胞回収ポートを底面左端に設けているのに対して,本意匠は,正面視略U字状とし,細胞回収ポートを底面中央に設けている点,
(b)薬剤等注入ポート,細胞回収ポート及びサンプル回収ポートの形状について,本願意匠は,各収容部との接続部分を僅かに縮径し,先端を略半球状としているのに対し,本意匠は,各収容部との接続部分から先端まで同径の略円柱状としている点,
(c)薬剤等注入ポート及び吊下孔の位置について,本願意匠は薬剤等注入ポートを左側収容部の上側の左右中央の位置に設け,吊下孔をその右方に設けているのに対し,本意匠は,吊下孔を左側収容部の上側の左右略中央の位置に設け,薬剤等注入ポートをその右方に設けている点
が相違する。

(2)両意匠の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は一致するから,以下,両意匠の形態の共通点及び形態の相違点について評価し,両意匠の類否を総合的に判断する。

ア 形態の共通点の評価
まず,共通点(A)の,基本的構成態様の共通性については,両意匠のように,複数の収容部を連通路によって左右方向に連結した細胞用保存容器の態様は,両意匠の出願前からすでに存在しているものの,左右方向に連結された各収容部の下方に細胞回収ポートを設けている構成態様は,両意匠の出願前には見られない独自のものであり,基本的構成態様は両意匠の骨格を成す態様であるから,この共通点(A)は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。
そして,共通点(B)の,左側収容部を正面視縦横比を約1:1とする略扁平袋状として,底面に垂下する略円筒状の細胞回収ポートを設けたものとした点, 及び共通点(C)の,中央収容部を正面視縦の長さを左側収容部の縦の長さの約1/2,正面視横の長さを左側収容部の横の長さの約1/3とする大きさとした,正面視略U字型の略扁平袋状とし,底面の左右中央に垂下する略円筒状のサンプル回収ポートを設けたものとした点については,複数の収容部が連結された細胞用保存容器又はそれに類する容器の各収容部の態様としては,正面視略縦長長方形状の略直方体状のものが一般的であり,両意匠のように,略扁平袋状とした収容部の態様は,両意匠の出願前には見られない特徴的な態様であるから,この共通点(B)及び共通点(C)が両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。
また,共通点(D)の,右側収容部の態様については,略縦長直方体状とした態様は,従来から見受けられる態様ではあるが,形状及び大きさがそれぞれ異なる3つの収容部が連結されて構成される態様は,両意匠の出願前には見られない極めて特徴的な態様であり,また,上記3つの収容部の上辺を水平方向に揃え,中央収容部及び右側収容部の下辺が揃っている共通点(E)により,形状及び大きさが異なる3つの収容部が整然と並べられている共通の印象を看者に与えており,より一層両意匠の共通性を強調していることから,この共通点(D)及び共通点(E)は,上記共通点(B)及び共通点(C)が両意匠の類否判断に与える影響をさらに強めているものであるといえる。

しかし,共通点(F)の,連通路を各収容部の上寄りの箇所に上下に並行して2本配したものとした点,については,細胞用保存容器の態様としては,連通路を各収容部の上寄りに配することは両意匠の出願前から見受けられるものであり,また連通路を2本とした態様は,とりたてて特徴的な態様ではなく,看者の注意を惹くものとはいえないことから,この共通点(F)は,両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。
また,共通点(G)の,左側収容部の上面側に細胞注入部,薬剤等注入ポート及び吊下孔を形成している点については,薬剤注入ポートを収容部の上面側に設けた態様は,両意匠の出願前には見受けられないものの,3つの収容部のうちの上面側の一部分という限られた部分の形態の共通性であって,両意匠を全体として観察したときには,看者の注意を惹くほどのものとはいえず,また,収容部の上面側に細胞注入部を設けることは,両意匠の出願前から普通に見受けられるものであり,さらに,吊下孔については,本物品を吊り下げるために付加的に加えられたごくありふれた形態のものであり,いずれも看者の注意を惹きつけるものということはできないから,この共通点(G)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。
そして,共通点(H)の,左側収容部の上面左寄りに形成された細胞注入部を除く外周を,垂直面を成す鍔状に形成することは,細胞用保存容器が属する物品分野においては,常套的に行われる手法であり,両意匠にのみ共通する固有の特徴ということはできないから,この共通点(H)も,両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。

イ 形態の相違点の評価
そして,相違点(a)の,左側収容部の下寄り部分の形態の相違については,本願意匠の,右下方を凸円弧状とした正面視略1/4円弧状とし,細胞回収ポートを底面左端に設けている形態も,正面視略U字状とし,細胞回収ポートを底面中央に設けている本意匠の形態も,両意匠の出願前には見受けられない新規な形態ではあるが,両意匠を全体観察したときには,3つの収容部のうちの1つの収容部の下寄り部分という限られた部分の形態の相違であり,共通点(B)ないし共通点(E)があいまって看者に与える両意匠の全体的な視覚的効果の共通性を凌駕するほどのものとはいえないから,この相違点(a)は,両意匠の類否判断に与える影響は一定程度にとどまるものである。
また,相違点(b)の薬剤等注入ポート,細胞回収ポート及びサンプル回収ポートの形状の相違についても,両意匠を全体として観察したときには,各ポートの接続部分及び先端部分という限られた部分の形態の相違であり,各ポートを略円筒状としている共通性や,共通点(B)ないし共通点(E)があいまって看者に与える両意匠の全体的な視覚的効果の共通性に埋没する程度の相違であるといえることから,この相違点(b)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。
さらに,相違点(c)の,薬剤等注入ポート及び吊下孔の位置の相違については,両意匠のいずれの態様も,両意匠の出願前には見受けられないものの,3つの収容部のうちの1つの収容部の上面側の一部分という限られた部位における位置の相違であって,両意匠を全体として観察したときには,看者の注意を惹くほどのものとはいえず,特に,吊下孔については,本物品を吊り下げるために付加的に加えられたごくありふれた形態のものであり,形成された位置が異なるとしても看者の注意を惹きつけるものということはできないから,この相違点(c)も,両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。

ウ 総合評価
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,また,形態の具体的態様にいくつかの相違点が認められるものの,いずれの相違点も類否判断に与える影響は小さく,それらの相違点を総合的に評価してもなお,形態の共通点,とりわけ共通点(A)及び共通点(B)ないし共通点(E)があいまって看者に与える視覚的印象を凌駕していないため,意匠全体として需要者に共通の美感を起こさせるものであるから,本願意匠は本意匠と類似するものである。

2 本願意匠が第10条第1項の規定に該当しないものであるか否かについて

上記のとおり,本願意匠は本意匠に類似するものと認められる。
また,本意匠は,平成25年(2013年)7月29日に意匠出願され,平成26年(2014年)7月18日に意匠登録の設定がなされ,同年8月18日に意匠公報が発行されたものであるから,平成26年(2014年)7月4日に意匠出願された本願は,意匠法第10条第1項が規定する,「本願意匠の意匠登録出願の日がその本意匠の意匠登録出願の日以後であって,本意匠の意匠登録出願が掲載された意匠公報の発行の日前である場合」に該当する。
よって,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定されている,意匠(関連意匠)に該当する。


第4 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当するから,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができるものであり,原査定の拒絶の理由によっては拒絶することができない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-03-04 
出願番号 意願2014-14741(D2014-14741) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 久保田 大輔
渡邉 久美
登録日 2016-05-13 
登録番号 意匠登録第1552022号(D1552022) 
代理人 小谷 昌崇 
代理人 川瀬 幹夫 
代理人 上田 知恵 
代理人 並川 鉄也 
代理人 小谷 昌崇 
代理人 並川 鉄也 
代理人 小谷 悦司 
代理人 川瀬 幹夫 
代理人 上田 知恵 
代理人 小谷 悦司 

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