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審決分類 審判 査定不服  1項柱書物品 取り消して登録 H7
管理番号 1351478 
審判番号 不服2018-14357
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-30 
確定日 2019-04-09 
意匠に係る物品 情報端末 
事件の表示 意願2017- 19325「情報端末」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年3月8日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う、平成29年(2017年)9月6日の意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年12月26日付け 拒絶理由の通知
平成30年 4月13日 意見書の提出
平成30年 4月13日 手続補正書の提出
平成30年 7月26日付け 拒絶査定
平成30年10月30日 拒絶査定不服審判の請求
平成31年 3月 5日 手続補正書の提出

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとするものであり、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は本願の願書の記載によれば「情報端末」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、出願当初の願書の説明と、願書に添付した図面(別紙第2参照)に記載された本願意匠が、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しないとしたものであって、具体的には以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は、出願時の願書及び添付図面の記載を総合的に判断しても、当該意匠に係る物品の具体的な内容を直接的に導き出すことができず、未だ具体的な意匠を表したものと認めることができません。
その理由は以下の通りです。
【意匠に係る物品の説明】から、【正面図】【表示部が変化した状態を示す正面図1】【表示部が変化した状態を示す正面図2】に表れているのは、主に「表示部」に表されている画像と認められるところ、画像自体が当該意匠のどのような機能のために用いられるものであるのか、また、表示部中のそれぞれの区画は操作部であるのか、単なる表示部であるのか等不明です。
意匠に係る物品の欄によると「ディスプレイ」と記載されていますが、物品の表示部に表示される画像は、その物品に記録された画像、物品が有する操作の画像等である必要があるところ、この物品名は、本願意匠は、他の物品からの信号による画像を表示したものであるとの誤解を生じさせるため、適切ではありません。
一組の六面図のうち、【正面図】以外の図面が不足しており、全体の態様を把握することができません。
図面中、一番外側の線は一点鎖線で表されていますが、この一点鎖線についても何を示すものであるのか不明です。」

第4 出願人による手続補正
出願人は、平成30年4月13日の手続補正により、願書の「意匠に係る物品の説明」及び「意匠の説明」と願書添付図面(全図)を変更し、平成31年3月5日の手続補正により、願書の「意匠に係る物品の説明」と願書添付図面(全図)を変更した。なお、この2つの手続補正は、出願当初の願書の記載又は願書添付図面の要旨を変更するものではないと認められる。
(1)意匠に係る物品の説明
本物品は、表示部を備えた情報端末である。正面図において実線で囲まれた領域内の4つの矩形領域の最も上側に位置する矩形領域はインジケーター機能を有し、その下の3つの矩形領域はビデオフィード部である。表示部が変化した状態を示す正面図2に示される上記4つの矩形領域の下に位置する矩形領域もビデオフィード部である。ユーザが表示部の画面を操作することで、画面は変化する(表示部が変化した状態を示す正面図1、2)が、例えば、あるユーザが参考図に表される画面における左側大領域を操作すると、その左側大領域に1人のユーザの画像を表示することができる。静止画像でも動画でもいずれも表示可能である。そして、あるユーザが参考図における右側矩形領域を操作すると、この右側矩形領域内の各小領域に、他のユーザの画像をそれぞれ表示することができる。参考図では、複数の小領域が設けられており、各小領域内にそれぞれユーザの画像を同時に表示することができる。このとき、上側矩形領域には、他のユーザが表示された場合には、例えば“People”と表示され、右側矩形領域には、他のユーザに関する情報(例えばユーザネームなど)を表示することができる。
(2)意匠の説明
実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。底面図は平面図と同一に表れ、左側面図は右側面図と同一に表れるので省略する。

第5 当審の判断
以下、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当するか否かについて検討する。

1 本願意匠
当審では、本願意匠について、以下のとおり認定する(別紙第1参照)。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は「情報端末」である。
(2)本願物品の用途及び機能
前記第4の「意匠に係る物品の説明」、及び願書添付図面によれば、本願物品は、「正面図」に表示された画像を操作することによって、画像を変化させることが可能であり、「参考図」の左側大領域を操作して、その左側大領域に1人のユーザを静止画又は動画で表示させ、「参考図」の右側矩形領域を操作して、その右側矩形領域内の各小領域に他のユーザを表示させることが可能になっている。また、「参考図」の上側矩形領域には、例えば“People”と表示され、右側矩形領域には、他のユーザに関する情報(例えばユーザネームなど)が表示される。このように、本願物品は、複数のユーザを各領域に表示させ、他のユーザに関する情報を表示する用途及び機能を有している。
(3)表示部に表示された画像
本願物品の正面の表示部に表示された横長長方形状の画像(以下「本願画像」という。)は、本願物品の上記機能を発揮できる状態にするために行われる操作の用に供される画像であり、また、本願画像が、本願物品に表示される画像であること、本願物品に記録された画像であると推認できること、及び画像を含む本願物品が意匠法の対象とする物品と認められることから、本願画像は、意匠法第2条第2項に規定する画像(操作画像)を構成するものであると認められる。
本願について部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、本願画像であって、願書に添付した図面中の「正面図」「表示部が変化した状態を示す正面図1」及び「表示部が変化した状態を示す正面図2」において、破線で表された部分以外の部分である。
(4)本願画像の用途及び機能
本願画像の用途は、「参考図」の左側大領域を操作して、その左側大領域に1人のユーザを表示させること、及び「参考図」の右側矩形領域を操作して、その右側矩形領域内の各小領域に他のユーザを表示させることであり、また、本願画像の機能は、それらの矩形領域内にユーザを表示することと、上側矩形領域と右側矩形領域に文字情報を表示することである。
(5)本願画像の位置、大きさ及び範囲
本願画像は、全体が平板状である本願意匠において、正面のほぼ全域の位置、大きさ及び範囲を占めている。
(6)本願画像の形態
ア 本願画像の外形状
「正面図」「表示部が変化した状態を示す正面図1」及び「表示部が変化した状態を示す正面図2」における本願画像の外形状は、縦横比が約7:11である横長長方形状である。
イ 「正面図」における本願画像の形態
画像全体の右端に沿って、上部に若干の余地部を残して、4つの区画が形成されており、上から1番目の区画と2番目の区画は、共に横長長方形であって、後者の縦幅が前者に比べてやや長くなっており、3番目の区画と4番目の区画は正方形状である。上から1番目の区画は上側矩形領域であると推認され、その下の3つの区画は小領域であると推認される。
ウ 「表示部が変化した状態を示す正面図1」における本願画像の形態
画像全体の右端に接して、上部に若干の余地部を残して、上から1番目の区画が形成されており、その形状は横長長方形であって、その横幅は前記イの1番目の区画の横幅よりも長くなっている。2番目から4番目までの区画の形状は、前記イの2番目から4番目までの区画とほぼ同様の形状であるが、横幅が若干長くなっている。2番目から4番目までの区画の左端が1番目の左端と揃っているために、1番目から4番目までの区画が合わさって全体として略逆L字状に形成されている。上から1番目の区画は上側矩形領域であると推認され、その下の3つの区画は小領域であると推認される。
エ 「表示部が変化した状態を示す正面図2」における本願画像の形態
画像全体の右端寄りに、周囲に余地部を残して(下方の余地部が上方及び右方の余地部に比べて大きくなっている)、縦長長方形状の大きな区画(以下「大区画部」という。)が形成され、大区画部の内側の最上部に、大区画部の横幅一杯に上から1番目の区画が形成されており、その形状は横長長方形であって、その横幅は前記ウの1番目の区画の横幅よりも長くなり、縦幅もやや長くなっている。2番目から4番目までの区画の形状は、全て同形であって、前記イの2番目の区画と同じ横長長方形状であるが、横幅がそれよりもやや長くなっており、縦幅も若干長くなっている。上から1番目ないし4番目の区画を除く大区画部は右側矩形領域であり、上から1番目の区画は上側矩形領域、その下の3つの区画は小領域である。

2 工業上利用性の判断
画像を含む意匠として意匠登録出願されたものが、意匠法第3条第1項柱書に規定する意匠に該当するためには、それが意匠を構成するものであって、その意匠が具体的なものであり、工業上利用することができるものでなければならないと解せられる。
そこで、本願画像について検討すると、前記1(3)で認定したとおり、本願画像は意匠法第2条第2項に規定する画像(操作画像)を構成するものである。そして、前記1(4)及び(5)で認定したとおり、本願画像の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は具体的なものであり、形態についても、前記1(6)で認定したとおり具体的であると認められる。さらに、本願画像を含む本願意匠は「情報端末」であるから、本願意匠が工業上利用することができるものであることはいうまでもない。
そうすると、本願意匠は、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当するといわざるを得ない。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当するから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2019-03-25 
出願番号 意願2017-19325(D2017-19325) 
審決分類 D 1 8・ 13- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 清水 玲香 
特許庁審判長 木本 直美
特許庁審判官 宮田 莊平
小林 裕和
登録日 2019-05-17 
登録番号 意匠登録第1633580号(D1633580) 
代理人 特許業務法人深見特許事務所 

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