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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 F4
管理番号 1352349 
審判番号 不服2016-1058
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-25 
確定日 2016-05-13 
意匠に係る物品 包装用台紙 
事件の表示 意願2014- 14076「包装用台紙」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとし,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする,平成26年(2014年)6月27日に意匠登録出願されたものであり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「包装用台紙」とし,その形態を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線であらわした部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,当該部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び本意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠は願書に記載した本意匠に類似する意匠とは認められず,意匠法第10条第1項の規定に該当しない,としたものであって,本意匠は,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成26年6月27日に意匠登録出願され,平成27年7月3日に意匠権の設定の登録がなされ,平成27年8月3日に意匠公報が発行された意願2014-14055号(意匠登録第1530212号)の意匠であり,意匠に係る物品を「包装用台紙」とし,その形態は,願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものであり,「実線であらわした部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,当該部分を「本意匠部分」という。)としたものである。(別紙第2参照)

第3 手続の経緯
原査定の拒絶の理由に対して,請求人は意見書を提出し,本願意匠は本意匠に類似する意匠であって,意匠法第10条第1項の規定に該当する旨主張したが,平成27年12月28日付けの拒絶の査定がなされたため,同査定を不服として平成28年1月25日に審判を請求するとともに手続補正書を提出して,本願の願書に記載してあった「本意匠の表示」の欄を削除した。

第4 当審の判断
以下,本願意匠が意匠法第10条第1項の規定に該当するものであるか否かを,主に,本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)を対比し,両意匠の共通点及び相違点の認定,評価を行うことにより,本願意匠が本意匠に類似するか否かについて検討し,判断する。
なお,両意匠の対比にあたっては,意匠に係る物品はもとより,本願部分と本意匠部分(以下「両部分」という。)について,その用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲を対比し,それらを踏まえて,両部分の形態を対比する。

1.共通点及び相違点の認定
(1)共通点の認定
意匠に係る物品については,両意匠ともに「包装用台紙」であるから一致し,また,部分意匠としての用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲については,両部分ともに,店頭等で陳列販売する商品を収納するものであって,折り曲げた際に右側面が開放した箱状の台紙の正面側外表面の全面について意匠登録を受けようとするものであるから,一致する。
そして,両部分の形態については,主に,以下の(A)ないし(D)の点が共通する。
(A)全体の基本的な構成態様は,右側辺(開口縁部)の上方に横幅の約5分の1の幅で突き出した半円形部(以下,「半円状突出片」という。)を有する,縦横比を約3対2とした略縦長長方形とし,表面は異なる色彩により縦に3分割し,その分割比を上から約15対5対1とし,上方の中央に漢字,アルファベット文字,数字及び記号を組み合わせた1つのまとまりからなる部分(以下「枚数表示部」という。)を配し,その右方には半円状突出片の円弧と同心の,当該突出片よりも一回り小さい径の円形模様を配し,下方(中段から上段の領域にかけて)の中央に具象模様を配したものである。
(B)表面の3分割にした領域の色彩について,上段部分の色彩を黄土色としたものである。
(C)半円状突出片に配した円形模様について,上方へ行くにしたがって薄くなる緑色のグラデーションとし,周縁にハイライト及び陰を施すことにより立体感のある態様としたものである。
(D)枚数表示部の態様について,左側に数字を大きく配し,その右側下半部には上段に記号及び数字,中段にアルファベット文字,下段に漢字を配し,上段の文字は下段の漢字よりも大きく,中段のアルファベット文字は下段の漢字よりも小さく表し,それぞれを白色で縁取り,漢字を黒色,その他は赤色としたものである。
(2)相違点の認定
形態について,主に,以下の(イ)ないし(ハ)の点が相違する。
(イ)表面の3分割にした領域の中段部分及び下段部分の色彩について,本願部分は中段部分を上方へ行くにしたがって濃くなる青色のグラデーションとし,下段部分を濃い灰色としたものであるのに対して,本意匠部分は中段部分を黄色,下段部分を白色としたものである。
(ロ)具象模様について,本願部分は濃い灰色の板材を両手で持った人間の手(手首から先の部分)を表し,手首部分をぼかしたものであるのに対して,本意匠部分はディスクを収納したケースの開蓋状態を表し,ケース部は透明感を出した白色調,ディスク部は光沢感を出した黄色調としたものである。
(ハ)表面の3分割にした領域の上段部分と中段部分との境界線について,本願部分は具象模様によって分断されつつ,下に凸の略円弧状としたものであるのに対して,本意匠部分は中央部分が具象模様の上部輪郭を縁取るようにし,略横長M字形状としたものである。

2.共通点及び相違点の評価
以下,共通点及び相違点が存在する両部分の形態について,その共通点及び相違点の評価を行う。
(1)共通点についての評価
共通点(A)は,全体の基本的な構成態様に係るものであるが,箱状の台紙の正面形状を略長方形状とし,開口縁部に半円状突出片を形成したものや,表面を色彩により分割したものは,いずれも当該物品分野の意匠として目新しいものではなく,また,表面の上方に枚数表示部,下方に具象模様を施すことも本願出願前から既に見られる特段特徴のない態様であるから,共通点(A)が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度に止まる。
共通点(B)は,表面の3分割にした領域の上段の地の部分の色彩に係るものであるが,ごく普通に一色で均一に施されたものであるから,当該部分が広い面積を占めるものであるとしても,共通点(B)が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。
共通点(C)は,半円状突出片に施した円形模様に係るものであるが,その態様に特徴は認められるものの,部分的な相違にすぎないものであるから,共通点(C)が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度に止まる。
共通点(D)は,枚数表示部の態様に係るものであるが,文字や数字自体の形状は意匠の構成要素として評価できないものであり,当該部位を模様として見たとしても,その配色を含めた態様に格別の創作は認められず,共通点(D)が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。

そうすると,共通点(A)ないし(D)は,両部分の類否判断に与える影響が小さい,あるいは一定程度に止まるものであり,これらの共通点が相俟っても,両部分の類否判断を決するものであるとはいえない。

(2)相違点についての評価
相違点(イ)は,表面の3分割にした領域の中段部分及び下段部分の色彩の相違であるが,本願部分は中段部分をグラデーションにしたものであり,本意匠の一色のものとは大きく異なるため,単なる色彩の相違ということはできず,相違点(イ)が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
相違点(ロ)は,具象模様についての相違であるが,本願部分は板材を保持している手の手首部分をぼかし,中段領域部分に施されたグラデーション調の色彩の効果と相俟って,手が下方から浮き出たように表れているのであり,単に収納する商品の形態のみを表した本意匠部分のものとは大きく相違するとともに,当該部分は看者が注視する部分であるといえるから,相違点(ロ)が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
相違点(ハ)は,表面の3分割にした領域の上段部分と中段部分との境界線についての相違であるが,本願部分は下に凸の略円弧状としたものであり,丸味のある印象を与えるものであるのに対して,本意匠部分は中央部を略横長M字形状としたものであって,角張った印象を与えるものであるから,看者に別異の印象を与え,相違点(ハ)が両部分の類否判断に及ぼす影響を軽視することができない。

そうすると,相違点(イ)ないし(ハ)が相俟って,両部分は表面の下方の態様が大きく相違しており,これらの相違点は,両部分の形態に異なる視覚的印象を看者に与えるものであるから,両部分の類否判断を決するものであるといえる。

3.類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については一致し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲についても一致するものであるが,両部分の形態の相違点が相俟って生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕するものであって,看者に異なる美感を起こさせるものである。
したがって,本願意匠は,本意匠に類似しないものと認められる。

第5 むすび
以上のとおり,本願意匠は,本意匠に類似するものとは認められず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないものであるから,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができないものではあるが,前記第3に記載のとおり,平成28年1月25日に提出した手続補正書によって,本願の願書に記載した「本意匠の表示」の欄を削除する補正がなされているから,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-04-27 
出願番号 意願2014-14076(D2014-14076) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 重坂 舞 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
正田 毅
登録日 2016-06-24 
登録番号 意匠登録第1554551号(D1554551) 
代理人 野村 慎一 
代理人 藤本 昇 

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