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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2 |
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管理番号 | 1353225 |
審判番号 | 不服2019-2640 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-02-27 |
確定日 | 2019-06-25 |
意匠に係る物品 | 灯具用光軸調整ネジ |
事件の表示 | 意願2018- 5302「灯具用光軸調整ネジ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年(2018年)3月14日の意匠登録出願であって、平成30年9月27日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年11月6日に意見書が提出されたが、平成30年12月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成31年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願意匠は、意匠に係る物品を「灯具用光軸調整ネジ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠は、特許庁発行の公開特許公報 特開2013-082430の図1及び2に「エイミングスクリュ」と記載された「灯具用光軸調整ネジ」の意匠であり、その形態は、同公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は、「灯具用光軸調整ネジ」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、特開2013-082430には「エイミングスクリュ」と記載されているが、いずれも灯具ユニットの配光の光軸を調整するために用いられる調節ネジであるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、用途及び機能が一致する。 2 形態の対比 両意匠の形態を対比すると、以下のとおり、主な共通点及び相違点がある。 以下、対比のため、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、引用意匠にもあてはめることとする。 (1)形態の共通点 (共通点1)両意匠は、全体の形態が、平面側端部から底面側端部にかけて、平面側端部から冠歯車下方の段差までの部分(以下「ギア部」という。)、外径が最も小さい括れた部分(以下「括れ部」という。)、底面側の左右側面部分を斜めに切り欠き、外周面に略四角形状の凹陥部(以下「凹部」という。)を等間隔に4つ形成した略円柱形状の部分(以下「支持部」という。)、平面側端部に向かって広がる羽根状係止片の部分(以下「係止片部」という。)、係止片部根元からネジまでの略円柱形状の部分(以下「略円柱部」という。)、ネジが切られた略円柱形状の部分(以下「ネジ部」という。)及びネジ部の先端部分(以下「ネジ先端部」という。)を、この順番になるように中心軸を合わせて一体的に形成した構成である点で共通する。 (共通点2)両意匠は、ギア部下方部分の形態が、下方側を僅かに縮径した段差部を1段有する略円柱形状に形成している点で共通する。 (共通点3)両意匠は、係止片部の左右に形成された係止片の形態が、側面視略逆等脚台形状である点で共通する。 (共通点4)両意匠は、ネジ先端部の形態が、略ドーム状である点で共通する。 (共通点5)両意匠は、ネジ先端部の底面側中央部分に、円孔を形成している点で共通する。 (2)形態の相違点 (相違点1)本願意匠の主な構成部位であるギア部:支持部:係止片部:略円柱部:ネジ部の比率が、約1:1.9:1:1.7:5.5であるのに対し、引用意匠のギア部:支持部:係止片部:略円柱部:ネジ部の比率が、約1:0.8:1:0.3:2.5である点で、両意匠は相違する。 (相違点2)本願意匠の冠歯車の形態が、歯車を構成する略円板の外周部分に沿って、略逆二等辺三角形状で薄い板状の歯を、下向きに24個連続して形成しているのに対し、引用意匠の冠歯車の形態が、歯車を構成する略円板の底面側外周寄りの部分に、金属歯板が被膜された略波線状に連なる肉厚な歯を、連続して形成している点で、両意匠は相違する。 (相違点3)本願意匠の支持部の形態が、その外周部に略四角形状に表れる凹部を縦長の向きに配設しているのに対し、引用意匠の支持部の形態が、その外周部に略四角形状に表れる凹部を横長の向きに配設している点で、両意匠は相違する。 (相違点4)本願意匠のネジ部の形態が、ネジ山を略円柱部より小径とし、そのネジ先端側付近の部分を先端に向かって漸次小径となるように形成したものであるのに対し、引用意匠のネジ部の形態が、ネジ山を略円柱部より大径とする略円柱形状となるように形成したものである点で、両意匠は相違する。 (相違点5)本願意匠のネジ先端部の左右側面部分に、側面視略半円状の切り込み部分を1つずつ形成しているのに対し、引用意匠にはそのような切り込み部分を形成していない点で、両意匠は相違する。 (相違点6)本願意匠のギア部の平面側中央部分に、六角穴を1つ形成しているのに対し、引用意匠のギア部の平面側中央部分に、その形状は不明であるが穴を1つ形成している点で、両意匠は相違する。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が一致するから、同一である。 2 形態の共通点及び相違点の評価 (1)形態の共通点 (共通点1)の全体の構成、(共通点2)のギア部下方部分の形態、(共通点3)の係止片部の形態、及び(共通点4)のネジ先端部の形態については、この灯具用光軸調整ネジの分野において本願意匠出願前に既に見られるもの(例えば、国際公開日:平成27年(2015年)5月21日の国際公開公報WO2015/072490の「エイミングスクリュー」の意匠、別紙第3の参考意匠参照)であるから、これら(共通点1)ないし(共通点4)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点5)のギア部の平面側中央部分及びネジ先端部の底面側中央部分に形成された円孔の形態については、底面側中央部分の円孔は特に目立つものではなく、特段特徴のない態様にすぎないから、この(共通点5)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (2)形態の相違点 (相違点1)の主な構成部位の比率の相違による全体の構成態様の相違については、本願意匠が各部の縦方向の長さが大きく、全体として細長いものであるとの印象を与えるのに対して、引用意匠は各部の縦方向の長さが短く、全体として短小のものであるとの印象を与えるから、需要者の注目するところの全体の構成態様の視覚的印象が明確に異なる両意匠は、この態様の美感に大きな相違がある。 (相違点2)の冠歯車の形態については、灯具ユニットに組み込まれて使用される灯具用光軸調整ネジにおいて、使用時において唯一目に見えるギア部の一部分であり、配光の光軸を調整するために調整治具をあてがう部分でもあるから、需要者が特に注視する部分の形態といえるところ、本願意匠がごく普通のギザ歯状の薄い歯を冠状に形成したものであるとの印象を与えるのに対して、引用意匠は金属歯板が被膜された略波線状に連なる肉厚な歯を冠状に形成したものであるとの印象を与えるから、需要者が注視するところの冠歯車の視覚的印象が明確に異なる両意匠は、該部位の形態の美感に大きな相違がある。 (相違点3)の支持部の形態については、本願意匠が縦長の支持部のほとんどを占めるように縦長の凹部を形成したとの印象を与えるのに対して、引用意匠は短円柱形状の支持部の中央部分に横長の凹部を形成したとの印象を与えるから、該部位の視覚的印象が異なる両意匠は、支持部の形態の美感に大きな相違がある。 (相違点4)のネジ部の形態については、本願意匠の形態は既に見られるものであり(別紙第3参照)、引用意匠のものもネジ部の形態としてはありふれたものであるから、この(共通点4)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (相違点5)のネジ先端部における切り込み部分の有無については、微小な部分の相違にすぎず、略ドーム状のネジ先端部の形態の共通性に埋没する程度のものであるから、この(相違点5)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (相違点6)のギア部の平面側中央部分の穴部の形態については、両意匠とも穴部を有するという共通性がある上に、該部位は需要者がさほど注目する部分でもないため、この(相違点6)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 3 両意匠の類否判断 両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、意匠の基調を形成する全体の構成態様、需要者が特に注視する冠歯車の形態、及び凹部の大きさ及びその配置態様が大きく相違する支持部の形態の美感に大きな相違があり、これらを総合すると、両意匠は全体として美感に大きな相違があるといえる。 そうすると、上記第4の2の(1)で述べた、全体の構成及び各部の形態が共通することを考慮しても、これらの共通点が意匠全体の美感に与える影響は小さく、両意匠は、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しないものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-06-11 |
出願番号 | 意願2018-5302(D2018-5302) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(G2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 石坂 陽子 |
特許庁審判長 |
温品 博康 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 渡邉 久美 |
登録日 | 2019-07-26 |
登録番号 | 意匠登録第1639450号(D1639450) |
代理人 | 森下 賢樹 |
代理人 | 三木 友由 |
代理人 | 村田 雄祐 |