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審決分類 |
審判 査定不服 意9条先願 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1353227 |
審判番号 | 不服2019-1979 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-02-13 |
確定日 | 2019-07-01 |
意匠に係る物品 | 包装用容器のふた |
事件の表示 | 意願2018-9219「包装用容器のふた」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成30年(2018年)4月26日の意匠登録出願であって,その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。 平成30年 8月 8日付け:通知書 平成30年 9月12日付け:拒絶理由の通知 平成30年10月22日 :意見書の提出 平成30年12月 4日付け:拒絶査定 平成31年 2月13日 :審判請求書の提出 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「包装用容器のふた」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。断面図を含めて部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を特定している。」としたものである(別紙第1参照)。 1 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「包装用容器のふた」である。 2 本願部分の用途及び機能,位置,大きさ及び範囲,並びに形状 本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)の位置,大きさ及び範囲,並びに形状は,ふたの中央面の,中心から少しずれた位置に設けた,針の孔ほどの大きさの,平面視で正円形の孔1つにおける,上面側の盛り上がった縁(以下「山型縁」という。)の外側下端(上面と接する部分のこと。以下同様。)から孔の傾斜した周面を経て,下面側の山型縁の外側上端までの範囲のものである(別紙第1参照)。 そして,その部分の用途及び機能は,包装用容器のふたにおける孔であって,容器内の物を加熱した際に発生する容器内部の蒸気を容器の外へ逃がすためのものと考えられる。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠は意匠法第9条第1項に規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとしたもので,引用した意匠(以下「引用意匠」ともいう。)は,意匠登録第1614932号の意匠における孔部の形状である。 そして,拒絶理由通知書には,なお書きとして「引用の意匠を当該出願の意匠の本意匠とした場合には当該拒絶理由は解消します。」と,追記されている。 1 意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は「包装用容器のふた」である。 2 引用部分の用途及び機能,位置,大きさ及び範囲,並びに形状 引用意匠中,本願部分に対応する部分(以下「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」ともいう。)の位置,大きさ及び範囲,並びに形状は,ふたの中央面の,中心から少しずれた位置に設けた,針の孔ほどの大きさの,平面視で長円形の孔1つにおける,上面側の山型縁の外側下端から孔の傾斜した周面を経て,下面側の山型縁の外側上端までの範囲のものである(別紙第2参照)。 そして,その部分の用途及び機能は,包装用容器のふたにおける孔であって,容器内の物を加熱した際に発生する容器内部の蒸気を容器の外へ逃がすためのものと考えられる。 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 両意匠の意匠に係る物品は,いずれも「包装用容器のふた」である。 2 両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の対比 両部分は,いずれも包装用容器のふたの中央面の,中心から少しずれた位置に設けた,針の孔ほどの大きさの,平面視で略円形の孔1つにおける,上面側の山型縁の外側下端から孔の傾斜した周面を経て,下面側の山型縁の外側上端までの範囲のものである。 その部分の用途及び機能は,包装用容器のふたにおける孔であって,容器内の物を加熱した際に発生する容器内部の蒸気を容器の外へ逃がすものである。 3 両部分の形状の対比 両部分の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。 (1)共通点について ア 平面視で略円形の孔とした点。 イ 上面側の山型縁を比較的大きなものとした点。 ウ 孔の周面を傾斜面とした点。 エ 下面側の山型縁を比較的小さなものとした点。 (2)相違点について 平面視における形状につき,本願意匠は,正円形であるのに対して,引用意匠は,長円形である点。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の,意匠に係る物品は,いずれも「包装用容器のふた」であるから,一致している。 2 両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価 両部分は,いずれも包装用容器のふたの中央面の,中心から少しずれた位置に設けた,針の孔ほどの大きさの,平面視で略円形の孔1つにおける,上面側の山型縁の外側下端から孔の傾斜した周面を経て,下面側の山型縁の外側上端までのものであるから,その位置,大きさ及び範囲は一致している。 そして,その部分の用途及び機能は,包装用容器のふたにおける孔であって,容器内の物を加熱した際に発生する容器内部の蒸気を容器の外へ逃がすものであるから,一致している。 3 両部分における形状の評価 (1)共通点について 共通点アについては,略円形の孔は,この種物品分野においては,数多く存在し,両意匠のみの特徴とはいえないから,両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。 共通点イないしエについては,一般需要者が,この物品を普通に使用している状態においては,見えにくいごく小さい部分の共通点であるから,両意匠の類否判断に与える影響は一定程度にとどまる。 (2)相違点について 本願部分は,方向性を持たない正円形であるのに対して,引用部分は,方向性を持つ長円形であるから,その印象は異なり,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 (3)両部分における形状の類否判断 以上のとおり,共通点は,両意匠の類否判断に与える影響は,一定程度にとどまるか,または限定的であり,これらの共通点によっては,両意匠の類否判断を決するものといえないのに対して,相違点は,需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,両意匠の類否判断を決するものといえる。 よって,本願部分の形状と引用部分の形状は,部分における全体観察においては類似しないと認められる。 4 両意匠における類否判断 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が一致しているが,上記のとおり本願部分と引用部分の形状は類似しないものであるから,本願意匠と引用意匠とは類似しない。 第6 結び 以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第9条第1項に掲げる意匠に該当しないものであるから,原査定における拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-06-18 |
出願番号 | 意願2018-9219(D2018-9219) |
審決分類 |
D
1
8・
4-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 成田 陽一 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
正田 毅 橘 崇生 |
登録日 | 2019-07-12 |
登録番号 | 意匠登録第1638472号(D1638472) |
代理人 | 齋藤 孝惠 |