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審決分類 |
審判 査定不服 意10条1号類似意匠 取り消して登録 K1 |
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管理番号 | 1353230 |
審判番号 | 不服2019-1561 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-02-04 |
確定日 | 2019-07-05 |
意匠に係る物品 | 研磨パッド |
事件の表示 | 意願2017- 24169「研磨パッド」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年(2017年)10月30日の意匠登録出願であって、平成30年7月18日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年8月29日に意見書が提出されたが、平成30年10月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成31年2月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願は、本意匠の出願番号を意願2017-24155(意匠登録第1613788号)とする関連意匠の意匠登録出願であって、その意匠は、意匠に係る物品を「研磨パッド」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められないので、意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものであり、拒絶理由通知書には、以下の理由が記載されている。 「この意匠登録出願の意匠(以下、「本願意匠」と記載)と願書に記載の本意匠(以下、「本意匠」と記載)を比較すると、物品は両意匠共に研磨パッドであります。両意匠の形態を比較すると、本願意匠は薄い円盤状本体に、6個の円形孔が設けられ、それらの円形孔は円盤状本体中心の正方形孔を基点として群を形成し、その群の輪郭は六角形を想起させる態様となっております。一方、本意匠は薄い円盤状本体に、6個の円形孔が設けられ、それらの円形孔は円盤状本体中心の正方形孔を基点として群を形成し、その群の輪郭は三角形を想起させる態様となっております。これらの円形孔の配置態様の差異は、両意匠の形態の基調を決定付ける特徴をよく表すところであり、看者に両意匠が異なるという印象を強く与えており、両意匠は類似していないと認められます。」 第4 本意匠 本意匠に係る出願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする、本願の出願日と同日の平成29年10月30日の意匠登録出願(意願2017-24155)であって、平成30年8月24日に意匠登録の設定(意匠登録第1613788号)がなされ、平成30年9月18日に意匠公報が発行されたものであり、その意匠は、意匠に係る物品を「研磨パッド」とし、その形態を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。 第5 当審の判断 本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)の認定をした上で、両意匠について類否判断を行い、原査定の適否についての判断を行う。 1 意匠の認定 (1)本願意匠 ア 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は、「研磨パッド」である。 イ 形態 (ア)全体を薄い略円板状の本体(以下「本体部」という。)とし、本体部の正面側表面部分に、細幅の略凹状溝(以下「凹溝部」という。)を格子状に形成し、本体部の中心部分に略小正方形状の貫通孔(以下「中央孔部」という。)を設け、その周囲に6個の略円形貫通孔(以下「円孔部」という。)を、等間隔になるように形成したものであって、 (イ)凹溝部の配置態様は、縦横22条ずつの凹溝部を等間隔になるように形成し、 (ウ)中央孔部は、凹溝部によって構成される一つの格子部分とほぼ同じ大きさとし、 (エ)円孔部は、その直径を本体部の直径の約1/11の長さとし、 (オ)円孔部の具体的な配置態様は、中心部からの距離が本体部の直径の約1/6.5の長さとなる位置に、6つの円孔を等間隔になるように形成したものであって、正面視において略正六角形の頂点の位置に、6つの円孔が配置されたような態様が表れているものである。 (2)本意匠 ア 意匠に係る物品 本意匠の意匠に係る物品は、「研磨パッド」である。 イ 形態 (ア)全体を薄い略円板状の本体部とし、本体部の正面側表面部分に、細幅の凹溝部を格子状に形成し、本体部の中心部分に中央孔部を設け、その周囲に6個の円孔部を、等間隔になるように形成したものであって、 (イ)凹溝部の配置態様は、縦横22条ずつの凹溝部を等間隔になるように形成し、 (ウ)中央孔部は、凹溝部によって構成される一つの格子部分とほぼ同じ大きさとし、 (エ)円孔部は、その直径を本体部の直径の約1/11の長さとし、 (オ)円孔部の具体的な配置態様は、中心部からの距離が本体部の直径の約1/4.1の長さとなる位置に、3つの円孔を等間隔になるように形成し、中心部からの距離が本体部の直径の約1/6.5の長さとなる位置に、3つの円孔を等間隔になるように形成したものであって、正面視において略正三角形の頂点の位置に3つの円孔を配置し、その各辺の中間部やや外寄りの位置に3つの円孔を配置したような態様が表れているものである。 2 両意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 両意匠の意匠に係る物品は、いずれも「研磨パッド」であるから、用途及び機能が一致するものである。 (2)形態の対比 ア 形態の共通点 (共通点1)両意匠は、全体を薄い略円板状の本体部とし、本体部の正面側表面部分に、細幅の凹溝部を格子状に形成し、本体部の中心部分に中央孔部を設け、その周囲に6個の円孔部を等間隔になるように形成した点で共通する。 (共通点2)両意匠は、凹溝部の配置態様が、縦横22条ずつの凹溝部を等間隔になるように格子状に形成した点で共通する。 (共通点3)両意匠は、中央孔部の形態が、凹溝部によって構成される一つの格子部分とほぼ同じ大きさの略小正方形状の貫通孔である点で共通する。 (共通点4)両意匠は、円孔部の形態が、その直径を本体部の直径の約1/11の長さの小円孔である点で共通する。 イ 形態の相違点 (相違点1)本願意匠の各円孔部の中心部からの距離が、本体部の直径の約1/6.5の長さとなる位置(以下「内側同心円部分」という。)に、円孔部を6つ形成しているのに対し、本意匠の各円孔部の中心部からの距離が、本体部の内側同心円部分に、円孔部を3個形成し、本体部の直径の約1/4.1の長さとなる位置(以下「外側同心円部分」という。)に、円孔部を3個形成している点で、両意匠は相違する。 (相違点2)本願意匠の具体的な円孔部の配置態様が、略正六角形の頂点の位置にあたる内側同心円部分に6つの円孔を配置しているのに対し、本意匠の具体的な円孔部の配置態様が、略正三角形の頂点の位置にあたる外側同心円部分に3つの円孔を配置し、その略正三角形の各辺の中間部やや外寄りの位置にあたる内側同心円部分に3つの円孔を配置しており、全体として見た場合、3辺が膨出した構成からなる略三角形の頂点及び各辺の中間部分の位置に、6つの円孔を配置している点で、両意匠は相違する。 3 判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が一致するから、同一である。 (2)形態の共通点及び相違点の評価 両意匠に係る物品の需要者は、研磨パッドを製造するメーカーや、研磨パッドを用いてシリコンウェーハ等の研磨を行う研磨加工業者や、加工されたシリコンウェーハ等を用いて精密部品を製造するメーカー等、使用する研磨パッドの加工効率や、得られる被研磨物の精度について高い知見をもつ極めて専門的な知識を有する者であるから、意匠を観察する際には、通常の観察方法である静止状態のみならず、加工効率や加工精度に直結する回転状態についても念頭に置いて観察し、その形態の共通点及び相違点を評価するといえる。 また、両意匠に係る物品は、回転しながら被研磨物に接触することで研磨する研磨パッドであって、研磨を行わない部分である円孔部の数や配置について決定する際には、その美感を重視するのではなく、研磨が均一に行われるように被研磨物と研磨パッドとの接触の頻度を計算した上で決定するものであると認められる。 そうすると、本願意匠と引用意匠の類否判断に際しては、需要者は、技術的な要因によって決定される円孔部の数やその配置態様よりも、加工効率や加工精度に直結する凹溝部の形態や配置態様に対して関心を持って観察するとの前提に基づいて、両意匠の共通点及び相違点における類否判断に及ぼす影響を評価することとする。 ア 形態の共通点の評価 (共通点1)の全体の態様、及び(共通点2)ないし(共通点4)の各部位の形態の共通性は、両意匠の基調を形成するものであり、とりわけ、(共通点2)の凹溝部の配置態様といった需要者が強い関心を持って観察する部分が共通している両意匠は、共通した印象を強く与えるものである。 そして、上記の各共通点に係る態様が相乗して生じる視覚的な効果によって、需要者に共通の印象を更に強く与えるものであるから、これらの(共通点1)ないし(共通点4)の共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。 イ 形態の相違点の評価 (相違点1)の各円孔部の中心部からの距離、及び(相違点2)の本願意匠の具体的な円孔部の配置態様については、本願意匠は内側同心円部分に略正六角形の頂点が表れ、本意匠は外側同心円部分に3辺がやや湾曲したような構成からなる略三角形の頂点が表れ、内側同心円部分にこの略三角形の各辺の中点が表れるものであって、いずれの意匠も、需要者が強い関心を持って観察する凹溝部が施された本体部に、大きさの共通する円孔部を略多角形が表れるような配置態様で形成したものであるとの印象を与えるものであるから、技術的な要因によって決定される円孔部の中心部からの距離に相違が認められるとしても、この意匠に係る需要者にとってみれば両意匠の美感を大きく異ならせるとまではいえず、これら(相違点1)及び(相違点2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は軽微であるといえる。 したがって、上記(相違点1)及び(相違点2)は、相違点全体として見た場合であっても、需要者に別異の印象を与えるほどのものではなく、これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は軽微なものである。 (3)両意匠の類否判断 両意匠の形態における共通点及び相違点についての評価に基づき、意匠全体として両意匠を総合的に観察した場合、両意匠は、全体の態様及び各部の形態に関して、共通する美感を有するものであり、相違点に示した円孔部の中心部からの距離及び具体的な配置態様における相違点を考慮したとしても、意匠全体として共通する美感を起こさせるものといえる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が同一であり、その形態においても共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいのに対し、相違点が相まって生じる視覚的効果を考慮しても、これら相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点が与える共通の印象を覆すには至らないものであるから、本願意匠は引用意匠に類似するものと認められる。 4 小括 上記のとおり、本願意匠は本意匠に類似するものであり、本意匠の意匠権について専用実施権が設定されておらず、意匠法第10条第1項の条件規定である同法同条第2項の要件を充足し、かつ、本意匠の意匠権者と本願意匠の出願人とは同一の者であるから、本意匠については出願人の自己の登録意匠であると認められ、なおかつ、本願意匠の意匠登録出願の日がその本意匠の意匠登録出願の日以後であって、その本意匠の意匠公報の発行の日前であるので、意匠法第10条第1項の要件を充足しているものである。 よって、本願意匠は、意願2017-24155(意匠登録第1613788号)の意匠を本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることができるものである。 第6 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、本意匠に類似し、意匠法第10条第1項の規定に該当するものであるから、原査定の拒絶理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審が更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-06-19 |
出願番号 | 意願2017-24169(D2017-24169) |
審決分類 |
D
1
8・
3-
WY
(K1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小柳 崇 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 渡邉 久美 |
登録日 | 2019-07-26 |
登録番号 | 意匠登録第1639615号(D1639615) |
代理人 | 特許業務法人藤本パートナーズ |