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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L6 |
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管理番号 | 1354143 |
審判番号 | 不服2019-2150 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-02-15 |
確定日 | 2019-07-29 |
意匠に係る物品 | 屋根用水切り材 |
事件の表示 | 意願2017- 28169「屋根用水切り材」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年(2017年)12月18日の意匠登録出願であって、 平成30年5月29日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年7月25日に意見書が提出されたが、平成30年10月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成31年2月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願意匠は、意匠に係る物品を「屋根用水切り材」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠は、特許庁発行の公開実用新案公報 昭和52年実用新案出願公開第004217号に記載の、第5図に表された「ケラバ水切板」の意匠であり、その形態は、同公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は、既存の屋根材を覆って新しい屋根材を設置するときに、既存のケラバ水切り材に被せて設置する「屋根用水切り材」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、薄板によって形成された「ケラバ水切板」であるが、いずれも屋根のケラバ、または軒先に使用される水切り材であるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、主たる用途及び機能が共通する。 2 形態の対比 審判請求人は、引用意匠は、本願意匠に相当する部分の具体的な形状を特定することができず、本願意匠との対比が困難であり、類否判断の結論を得ることはできないから、引用意匠(昭和52年実用新案出願公開第004217号第5図の「ケラバ水切板」の意匠)をもって本願の登録を拒絶する原審拒絶査定は、根拠がなく不当である旨を主張されているが、引用意匠の第5図においては、明細書の記載から長尺材であると認められるケラバ水切板の側面視形状を確認することが可能であるから、両意匠の形態について対比を行うと、両意匠には、以下の主な共通点及び相違点が認められる。 なお、対比のため、両意匠に係る物品のケラバの先端側を前方側とし、屋根材の側を後方側とする。また、引用意匠の図面について、図の表示と図中の向きを本願意匠の図面に合わせることとし、引用意匠の第5図における符号eが付されたケラバ水切板の部分を表した図を「右側面図」とし、その他は、これに準じて表されているものとする。 (1)形態の共通点 (共通点1)両意匠は、全体の形態が、1枚の薄い板体を折曲加工して形成したものであって、登り木の上方及び前方側を覆う右側面視略横L字状の板体部分(以下「登り木覆い部」という。)、登り木覆い部の後方側端部の下方部分に屋根材端部を掛かり止めるために形成した、右側面視逆コの字状の板体部分(以下「屋根材止め部」という。)、及び屋根材止め部下辺の後方端部から連続して後方に延びる板体部分(以下「屋根材受け部」という。)からなる構成である点で共通する。 (2)形態の相違点 (相違点1)本願意匠の登り木覆い部の形態が、右側面視略横L字状の登り木覆い部の上面側水平面部分(以下「上面覆い部」という。)の略中央部分、及び前方側垂直面部分(以下「前面覆い部」という。)の中央部やや上方部分に、傾斜状の段差面を1段ずつ形成し、登り木覆い部の角部に正面視において左右に連続する右側面視略横L字状の凸条突出部分(以下「凸条突出部」という。)を1条形成した形態としているのに対し、引用意匠の登り木覆い部の形態は、登り木覆い部の上面覆い部及び前面覆い部が平坦な面からなる右側面視略横L字状の形態としている点で、両意匠は相違する。 (相違点2)本願意匠の登り木覆い部の前面覆い部の形態が、その下端部に右側面視横レの字状の水切り用の返し部を形成し、前面覆い部と屋根材止め部の高さ(縦幅)の比を約4.2:1としているのに対し、引用意匠の前面覆い部分の形態は、その下端部に隙間なく折り潰した右側面視略U字状の水切り用の返し部を形成し、前面覆い部と屋根材止め部の高さの比を約3.8:1としている点で、両意匠は相違する。 (相違点3)本願意匠の登り木覆い部の後方側端部と屋根材止め部の上辺部からなる折曲部分(以下「折曲部」という。)の形態が、扁平横長の略横U字状の形態であるのに対し、引用意匠の折曲部の形態は、略鋭角三角形状の形態である点で、両意匠は相違する。 (相違点4)本願意匠の屋根材受け部の形態が、板体端部に右側面視横レの字状の屋根材支持部を形成し、板体の略中央長手方向に右側面視略三角形状の凸条部を1条設け、登り木覆い部の上面覆い部と屋根材受け部の右側面から見た横幅の比が、約4:3であるのに対し、引用意匠の屋根材受け部の形態は、板体端部に隙間なく折り潰した右側面視略横U字状の屋根材支持部を形成し、凸条部のないフラットな板体とし、登り木覆い部の上面覆い部と屋根材受け部の右側面視の横幅の比が、約1:1である点で、両意匠は相違する。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、主たる用途及び機能が共通するから、類似するものである。 2 形態の共通点及び相違点の評価 (1)形態の共通点 (共通点1)の全体の形態については、この屋根用水切り材の物品分野における形態としてごく一般的なものに過ぎないから、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず、この(共通点1)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (2)形態の相違点 (相違点1)の登り木覆い部の形態については、この種物品分野の施工後も表面に表れ、専門的な施工業者のみならず住宅を購入する一般需要者も注目する部位であるといえるところ、本願意匠が、登り木覆い部の前面覆い部から上面覆い部にわたって、左右に連続する大きな凸条突出部を形成した特徴的な登り木覆い部をもつ屋根用水切り材であるとの印象を与えるのに対して、引用意匠は、従来からある平坦な面からなる登り木覆い部をもつ屋根用水切り材であるとの印象を与えるから、取引業者のみならず一般需要者が注視する登り木覆い部の視覚的印象が明確に異なる両意匠は、該部位の形態の美感に大きな相違がある。 (相違点2)における前面覆い部の形態については、右側面視横レの字状の水切り用の返し部の形態も隙間なく折り潰した右側面視略U字状の水切り用の返し部の形態も、この種物品分野において既に見られるものであって、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず、また、前面覆い部と屋根材止め部の高さの比率の相違も、この種物品においては施工場所に応じて適宜寸法が変更されるものであって、この程度の比率の相違は特段のものとはいえないから、この(相違点2)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (相違点3)における折曲部の形態については、両意匠における折曲部のいずれの形態も、この種物品分野において既に見られるものであって格別の特徴とはいえないから、この(相違点3)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (相違点4)における屋根材受け部の形態については、両意匠における屋根材支持部のいずれの形態も、この種物品分野において既に見られるものであり、また、本願意匠にのみ見られる右側面視略三角形状の凸条部の形態も、ごく普通に見られるものにすぎないから格別の特徴とはいえず、さらに、登り木覆い部の上面覆い部と屋根材受け部の右側面視の横幅の比率の相違も、この種物品においては施工場所に応じて適宜寸法が変更されるものであって、この程度の比率の相違は特段のものとはいえないから、この(相違点4)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 3 両意匠の類否判断 両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、需要者が注視する登り木覆い部の形態の美感に大きな相違があり、両意匠は全体として美感に大きな相違がある。 そうすると、上記第4の2(1)で述べた、全体の形態が共通することを考慮しても、これらの共通点が意匠全体の美感に与える影響は小さく、両意匠は、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が類似するものであるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しないものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-06-18 |
出願番号 | 意願2017-28169(D2017-28169) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L6)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 上島 靖範 |
特許庁審判長 |
温品 博康 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 渡邉 久美 |
登録日 | 2019-08-30 |
登録番号 | 意匠登録第1641924号(D1641924) |