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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C4
管理番号 1356015 
審判番号 不服2019-3034
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-05 
確定日 2019-09-06 
意匠に係る物品 歯面クリーナー用シート 
事件の表示 意願2018- 4846「歯面クリーナー用シート」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成30年3月8日の意匠登録出願であって、同年9月19日付けの拒絶理由の通知に対し、同年10月26日に意見書が提出されたが、同年12月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成31年3月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠

本願意匠は、意匠に係る物品を「歯面クリーナー用シート」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。 (「別紙第1」参照。)

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

第4 引用意匠

引用意匠は、日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成24年6月11日)に記載された、意匠登録第1443038号(意匠に係る物品、歯面清掃具)の意匠であり、その形態を、同公報に記載されたとおりとしたものである。(「別紙第2」参照。)

第5 当審の判断

本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の認定をした上で、両意匠について類否判断を行い、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するか否かの判断を行う。

1 意匠の認定

(1)本願意匠

ア 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「歯面クリーナーシート」であり、歯面清掃時には、当該シート体に設けられたスリットに沿って、シート体の上下端部を順次切り離すことにより形成される縦長長方形状(短冊状)の小片を用いて、歯の表面に付着した着色汚れを擦り取って清掃し、残余のシート体を収納保管して用いるものである。

イ 形態
(ア)全体を、横長長方形板状のシート体とし、その正面視における縦横構成比率を約1:2.2とするものであって、

(イ)正面視、上下端部を除く残余の部分において、上下方向に伸びた10本のスリットを左端寄りから右端寄りにかけて等間隔に設け、

(ウ)その厚みを、正面視の縦方向の長さに比して約1/7とするものである。

(2)引用意匠

ア 意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は、「歯面清掃具」であり、歯面清掃時には、当該シート体に設けられたスリットに沿って、シート体の上端部を順次切り離すことによって形成される縦長長方形状(短冊状)の小片を用いて、歯の表面に付着した着色汚れを擦り取って清掃し、残余のシート体を収納保管して用いるものである。

イ 形態
(ア)全体を、横長長方形板状のシート体とし、その正面視における縦横構成比率を約1:2.2とするものであって、

(イ)正面視、上端部のみを除く残余の部分において、上下方向に伸びた10本のスリットを左端寄りから右端寄りにかけて等間隔に設けて構成し、

(ウ)その厚みを、正面視の縦方向の長さに比して約1/10とするものである。

2 両意匠の対比

(1)意匠に係る物品の対比

両意匠の意匠に係る物品は、本願意匠が「歯面クリーナーシート」であり、引用意匠が「歯面清掃具」であって、いずれも歯の表面に付着した着色汚れを擦り取って清掃するクリーナーであり、上下方向に伸びたスリットに沿って連結部を順次切り離して用いるものであるから、意匠に係る物品の用途及び機能が一致するため、物品は一致する。

(2)形態の対比
ア 形態の共通点
(共通点1)両意匠は、全体を、横長長方形状のシート体とし、その縦横構成比率を約1:2.2とするものである点が共通する。

(共通点2)両意匠は、横長長方形状シート体の正面視上下方向に伸びた10本のスリットを左端寄りから右端寄りにかけて等間隔に設けている点が共通する。

イ 形態の相違点
(相違点1)両意匠は、正面視において上下方向に設けられた各スリットの配設態様について、本願意匠は、上下端部に達することなく配設しているため、各短冊片は、上下端部が連接した一枚のシート体となっているのに対し、引用意匠は、短冊片の上端部のみが連接しているため、下端部が開放され、いわゆる「のれん状」体となっている点で相違する。

(相違点2)両意匠は、略横長長方形状シート体の厚みについて、正面視縦方向の長さに比して、本願意匠は、約1/10の厚みを有するのに対し、引用意匠は、約1/7の厚みを有する点で相違する。

3 判断

(1)意匠に係る物品の類否判断
本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は、一致する。

(2)形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、ともに歯面を清掃するために用いるものであり、口腔内での使用といった、この種物品分野の衛生上の特性から、不使用時には収納体に保管し、使用時に取り出して使用するものであるといえる。

そうすると、両意匠に係る物品の需要者は、歯面清掃時における、本体シート体から、スリットに沿って短冊状小片を1片ずつ分離した後、当該短冊状小片を用いて歯面に付着した着色汚れを擦り取って使用するだけでなく、分離後の残余のシート体を収納保管し、歯面清掃時には、また取り出して使用するといった、一連の使用の際の出し入れの使い勝手の観点からも、両意匠を観察し、その形態の共通点及び相違点を評価するといえる。

そうすると、両意匠の類否判断に際しては、需要者は、全体の構成比率や構成の態様と同様に、使用時におけるシート体連接態様にも強い関心を持って観察するとの前提に基づいて、両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価することとする。

ア 形態の共通点の評価
(共通点1)のシート体を横長長方形状とした縦横構成比率及び(共通点2)の正面視上下方向に伸びた10本のスリットを左端寄りから右端寄りにかけて等間隔に設けて構成した点からなる共通点は、ともに両意匠の基本的な構成態様に係る共通点であるものの、(共通点1)については、例えば、この出願前、実開平3-53216 第5図の口腔内清浄具(参考意匠1)に表れており、(共通点2)については、例えば、前記参考意匠1や、この出願前、意匠登録第1433237号に表れた歯面清掃具(参考意匠2)に表れる等、どちらも公然知られた態様であることから、これらの共通点が、両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に止まる。

イ 形態の相違点の評価
(相違点1)については、本願意匠は、シート体の上下端が連接しているため、シート体そのものにまとまりのある一体性を生じさせているだけでなく、この種物品分野における衛生上の特性から、一連の使用の際の収納体からの出し入れにおける使い勝手の観点からも、当該(相違点1)は、需要者が強い関心を持って観察する箇所であり、別異の美感を有するものというべきものであって、当該相違点が、両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。

(相違点2)における本体の厚みに関する相違点は、この種物品分野において、圧縮の程度による相違があることを勘案すれば、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

(3)両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、シート体としての一体性の観点において差異があるだけでなく、この種物品分野における衛生上の特性である、シート体を収納保管し、また取り出して使用するといった、一連の使用の際に、需要者が強い関心を持って観察する箇所である短冊片の連接態様に大きな差異があることから、これらを総合すると、両意匠は全体として美感に差異があるといえる。

そうすると、両意匠は、横長長方形板体状シート体とし、正面視上下方向に伸びた10本のスリットを左端寄りから右端寄りにかけて等間隔に設けるといった、基本的な構成の態様の共通性を考慮しても、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。

第6 結論
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2019-08-21 
出願番号 意願2018-4846(D2018-4846) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 並木 文子日比野 杏香桐野 あい 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 佐々木 朝康
木村 恭子
登録日 2019-10-04 
登録番号 意匠登録第1644471号(D1644471) 
代理人 福島 三雄 

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