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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1 |
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管理番号 | 1356881 |
審判番号 | 不服2019-4609 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-04-08 |
確定日 | 2019-11-08 |
意匠に係る物品 | コネクタ |
事件の表示 | 意願2018- 12932「コネクタ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年(2018年)6月13日の意匠登録出願であって、同年11月30日付けの拒絶理由の通知に対し、同年12月20日に意見書が提出されたが、平成31年(2019年)3月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願の意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「コネクタ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1570792号 (意匠に係る物品、コネクタ)の意匠(別紙第2参照) 第4 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、ともに雌雄組み合わせ型の電気コネクタのうち、雌型の「コネクタ」であって、ロック機構により相手方の雄型コネクタを着脱することができるものであるから、両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が一致するものである。 (2)両意匠の形態 両意匠の形態については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。 ア 共通点 (ア)全体 前後に長くやや上下に扁平な略隅丸直方体形状で、周側面の真ん中やや前方寄りから後方を縮径し、境界を段差状に形成している。 正面側から当該段差の手前までを略角筒状に開口して雄型コネクタとの嵌合部とし、段差より後方を背面側から差し込まれる電線の保持部としている(以下、雄型コネクタとの嵌合部を「嵌合部」といい、電線の保持部を「電線保持部」という。)。 (イ)嵌合部 正面部において、開口部の内側周縁をテーパー状に切り欠き、内部突き当たりの奥壁に小矩形状の凹陥と貫通孔をそれぞれ上下に複数個ずつ形成し、内壁の上端中央及び下端両隅に略細長角柱状の突条を筒方向終端まで設けている。 底面部の下端部中央を略逆U字状に切り欠いている。 (ウ)電線保持部 背面部に略細長角筒状の端子挿入孔を複数個近接して設けている。 平面部の上端左隅寄りに三角形の浅い凹陥を形成している。 底面部の真ん中に略縦長長方形板状の雄型コネクタ抜け止め用ロックアーム(以下「ロックアーム部」という。)を設け、その両脇にやや隙間を空けて略細長角柱状のリブを1つずつ縦いっぱいに形成している。また、ロックアーム部は、上端が嵌合部の切り欠き内まで延出し、側面視において下端が嵌合部の下端と面一致状とし、その背面寄りを略横長直角三角形状に薄く切り欠いて端部を鈎状に形成している。 イ 相違点 (ア)全体 縦、横、奥行きの長さの比率は、本願意匠は、約1:1.2:1.6であるのに対し、引用意匠は、約1:1.3:2.8で、本願意匠より引用意匠の方が、縦、横の長さの比率に比べて奥行きの比率が大きい。 (イ)嵌合部 正面部において、本願意匠は、真ん中に内部の空間を上下に分割する略矩形板状の仕切壁を水平に設けているのに対し、引用意匠は、仕切壁は設けていない。また、本願意匠は、凹陥及び貫通孔を仕切壁を挟んで上下に4個ずつ合計16個形成しているのに対し、引用意匠は、左右に2個ずつ合計4個形成している。さらに、内壁の突条について、本願意匠は、上下端のやや両端寄りにも突条を設け、共通点(イ)で示した3本の他に4本の突条を設けている(このうち、下端の両端寄りの突条のみ長さは半分程度。)のに対し、引用意匠は、前記の3本のみである。 (ウ)電線保持部 背面部において、本願意匠は、上下中央に略隅丸横長長方形の深溝を左右に1つずつ形成し、その上下に端子挿入孔を横に4個ずつ合計8個設けているのに対し、引用意匠は、深溝は形成しておらず、端子挿入孔を横に2個設けている。 底面部において、本願意匠は、両端よりやや内側にリブを形成し、かつロックアーム部との隙間に浅い細溝を形成しているのに対し、引用意匠は、両端にリブを形成し、ロックアーム部との隙間には細溝は形成していない。 2 類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。 (2)両意匠の形態の共通点及び相違点の評価 両意匠の意匠に係る物品は、「コネクタ」であり、電子機器等の配線に用いられる電気接続具であるから、需要者は、自動車関連や通信機器をはじめとする製造業者や取扱業者である。 したがって、製品組立の過程において、通電の確実性、電線の取り付け、他のコネクタとの着脱のしやすさ等の観点から、需要者が最も注意を払う部位である接続端部やロックアーム部周辺の形態について評価し、かつそれ以外の形態も併せて、各部を総合して意匠全体として形態を評価することとする。 ア 共通点の評価 共通点(ア)の全体について、前後に長くやや上下に扁平な略隅丸直方体形状で、周側面の真ん中やや前方寄りから後方を縮径し、境界を段差状に形成して、その前後を嵌合部と電線保持部としたものは本願出願前から一般に広く見られるものであって、両意匠のみに共通する態様とはいえず、共通点(ア)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 共通点(イ)の嵌合部について、開口部の内側周縁をテーパー状に切り欠いた態様は、端部のごく小さな箇所であり、ほとんど目立たないものであること、また、この種雌型のコネクタにおいては、開口部内の奥壁に凹陥や貫通孔を設けたものや筒方向に突条を設けたものは本願出願前からごく普通に見られるものであることに加え、開口部内の態様で外観上さほど目立たないことから、共通点(イ)の態様が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 共通点(ウ)の電線保持部について、背面部に略細長角筒状の端子挿入孔を複数個設け、底面部にロックアーム部とその両脇にリブを形成し、ロックアーム部の先端を嵌合部まで延出したものは、本願出願前からごく普通に見られるものであること(例えば、意匠公報に掲載された意匠登録第1138214号の意匠(意匠に係る物品:コネクタハウジング)。別紙第3参照)、及び、平面部の三角形の凹陥については、それ自体がごく小さいものであって意匠全体としてみた場合にはほとんど目立たないことに加え、平面部に小さな三角形の凹陥を設けたものが、両意匠以外にも普通に見受けられること(例えば、意匠公報に掲載された意匠登録第1402194号の意匠(意匠に係る物品:電気コネクタ)。)から、いずれも、格別、需要者の注意を惹くものとはいえず、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 一方、ロックアーム部は、それ自体は、略縦長長方形板状の端部を鈎状に形成しただけのものであるから、格別、需要者の注意をひくものとはいえないが、嵌合部と高さを揃え、上端を嵌合部の切り欠き内に合わせて延出した態様においては、引用意匠以前にはみられないものであるから、両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。 イ 相違点の評価 相違点(ア)の全体について、縦、横、奥行きの長さの比率が相違しても、それが単なる極数(端子挿入孔の数)の増減によるものである場合には、それのみによって対比する意匠の美感に大きな影響を与えるものではないことは、端子挿入孔を横に2つ増やした意匠(意匠登録第1570792号)が、引用意匠の関連意匠として意匠登録されていることからも明らかであるところ、両意匠の全体の長さの比率においては、後述のとおり、単なる極数の増減のみではなく嵌合部の仕切壁の有無や電線保持部の深溝の有無が全体の長さの比率の相違に影響を与えているものであるから、相違点(ア)が、両意匠の類否判断に与える影響は一定程度認められるものである。 相違点(イ)の嵌合部について、内部の凹陥及び貫通孔や突条の主に数において相違するが、開口部内の態様で外観上さほど目立たないから、格別、需要者の注意をひかないものであるが、真ん中に水平に取り付けた仕切壁は、厚みがあり、非常に目立つものであるから、需要者の注意をひくものといえ、相違点(イ)全体としてみると、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 相違点(ウ)の電線保持部について、前述のとおり、端子挿入孔の数の相違は、それのみをもって需要者の注意をひくものとはいえず、また、リブの位置の相違についても、どちらも普通にみられる態様のものであるから、部分的な相違に過ぎないものであるが、上下中央に左右に並べて配置した2つの略隅丸横長長方形の深溝は、背面部の真ん中で、大きく、大変目立つものであるから、需要者の注意をひくものといえ、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。また、底面部において、ロックアーム部とリブの間の細溝についても、本願意匠のみにみられる特徴であって、底面部全体のアクセントとなっており、細溝のない引用意匠とは視覚的印象が大きく異なるものといえるから、相違点(ウ)全体として、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 以上のとおり、相違点(イ)及び相違点(ウ)が両意匠の類否判断に与える影響はいずれも大きく、相違点(ア)が両意匠の類否判断に与える影響も一定程度認められるから、相違点全体が相まって両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。 3 小括 したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、形態においては、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体としてみた場合、両意匠は、視覚的印象を異にするというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-10-29 |
出願番号 | 意願2018-12932(D2018-12932) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 清水 玲香 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 内藤 弘樹 |
登録日 | 2019-11-22 |
登録番号 | 意匠登録第1648027号(D1648027) |
代理人 | 海田 浩明 |