ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H6 |
---|---|
管理番号 | 1356882 |
審判番号 | 不服2019-8161 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-06-19 |
確定日 | 2019-11-13 |
意匠に係る物品 | 非接触型アイシータグインレット |
事件の表示 | 意願2018-11945「非接触型アイシータグインレット」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成30年(2018年)5月31日の意匠登録出願であって,その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。 平成30年11月20日付け :拒絶理由の通知 平成30年12月26日 :意見書の提出 平成31年 3月28日付け :拒絶査定 令和 1年(2019年)6月19日 :審判請求書の提出 令和 1年10月 1日 :電話応対 令和 1年10月 2日 :補正書の提出 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。 引用意匠 世界知的所有権機関国際事務局発行の 国際公開公報に記載された WO 2017/065292 A1,図17(b)に記載された本願意匠に相当する部分の意匠 第4 当審の判断 1 本願意匠 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「非接触型アイシータグインレット」であり,シート上にプリントされたアンテナと,当該アンテナに電気的に接続されたICチップとを搭載しており,UHF帯の電波によって非接触で情報通信を行うことができるものである。 (2)本願部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,アンテナとICチップ部分であり,約1:3の横長長方形のシートの中央に位置する,縦が全体の約5分の3,横が全体の約6分の5とした大きさ及び範囲であって,非接触型アイシータグインレットにおけるアンテナとICチップの用途及び機能を有している。 (3)本願部分の形状 本願部分の形状は, ア.基本的構成態様として, (ア)中央にICチップを搭載したループ状導体を配置し, (イ)ループ状導体の左右に,ループ状部分の上辺部を共有して延伸する線状導体を左右対称的に配置し, (ウ)各線状導体の端部に幅広の端部長方形域を形成し, (エ)端部長方形域について,長方形域の内側に線状導体の下縁部に沿って陥入する凹部を設けている。 イ.具体的構成態様として, (オ)ループ状導体は,上辺の両側に一対の約45度の傾斜辺を有して全体を6角形状としており, (カ)線状導体は,中間の2か所で約90度に大きく屈曲してクランク状の屈曲部を形成して端部長方形域の内側中央部に接続し, (キ)端部長方形域は,下半分におおよそ2分の1に迫る横長長方形の凹部を設けて,その上方を幅広に形成している。 (ク)端部長方形域,線状導体及びループ状導体の横長さの比率を,約3:4:4としている。 (ケ)端部長方形域の高さに対する,ループ状導体の高さを,約2分の1にしている。 2 引用意匠 引用意匠の位置,大きさ及び範囲,並びに形状認定においては,本願意匠と同じ向きにして認定する。 (1)意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は「UHFICタグ」である。 (2)引用部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 引用意匠中,本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」ともいう。)は,UHFICタグにおけるアンテナとICチップ部分であり,約1:3の横長長方形のシートにおける中央やや下に位置する,縦が全体の約2分の1,横が全体の約10分の9とした大きさ及び範囲であって,UHFICタグにおけるアンテナとICチップの用途及び機能を有している。 (3)引用部分の形状 引用部分の形状は, ア.基本的構成態様として, (ア)中央にICチップを搭載したループ状導体を配置し, (イ)ループ状導体の左右に,ループ状部分の上辺部を共有して延伸する線状導体を左右対称的に配置し, (ウ)各線状導体の端部に幅広の端部長方形域を形成し, (エ)端部長方形域について,長方形域の内側に線状導体の下縁部に沿って陥入する凹部を設けている。 イ.具体的構成態様として, (オ)ループ状導体は,傾斜辺を有しておらず全体を長方形状としており, (カ)線状導体は,屈曲部を有しておらず直線状に端部長方形域の上縁部に接続し, (キ)端部長方形域は,上部に細い倒L字状の凹部を設けて,その下方を幅広に形成している。 (ク)端部長方形域,線状導体及びループ状導体の横長さの比率を,約4:7:6としている。 (ケ)端部長方形域の高さに対する,ループ状導体の高さを,約3分の2にしている。 3 両意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は「非接触型アイシータグインレット」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「UHFICタグ」である。 (2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の対比 本願部分は,非接触型アイシータグインレットのアンテナとICチップという用途及び機能を有しており,引用意匠は,UHFICタグのアンテナとICチップという用途及び機能を有している。 そして,その位置,大きさ及び範囲は,本願部分は,約1:3の横長長方形のシートにおける中央に位置する,縦が全体の約5分の3,横が全体の約6分の5とした大きさ及び範囲であるのに対して,引用意匠部分は,約1:3の横長長方形のシートにおける中央やや下に位置する,縦が全体の約2分の1,横が全体の約10分の9とした大きさ及び範囲である。 (3)両部分の形状の対比 両部分の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。 ア.共通点について 基本的構成態様として, (ア)中央にICチップを搭載したループ状導体を配置し, (イ)ループ状導体の左右に,ループ状部分の上辺部を共有して延伸する線状導体を左右対称的に配置し, (ウ)各線状導体の端部に幅広の端部長方形域を形成し, (エ)端部長方形域について,長方形域の内側に線状導体の下縁部に沿って陥入する凹部を設けている。 イ.相違点について 具体的構成態様として, (ア)ループ状導体の形状につき,本願部分は,上辺の両側に一対の約45度の傾斜辺を有して全体を6角形状としているのに対して,引用部分は,傾斜辺を有しておらず全体を長方形状としている点。 (イ)線状導体の形状につき,本願部分は,中間の2か所で約90度に大きく屈曲してクランク状の屈曲部を形成して端部長方形域の内側中央部に接続しているのに対して,引用意匠は,屈曲部を有しておらず直線状に端部長方形域の上縁部に接続している点。 (ウ)端部長方形域の形状につき,本願部分は,下半分におおよそ2分の1に迫る横長長方形の凹部を設けて,その上方を幅広に形成しているのに対して,引用部分は,上部に細い倒L字状の凹部を設けて,その下方を幅広に形成している点。 (エ)端部長方形域,線状導体及びループ状導体の横長さの比率につき,本願部分は,約3:4:4としているのに対して,引用部分は,約4:7:6としている点。 (オ)端部長方形域の高さに対する,ループ状導体の高さにつき,本願部分は,約2分の1にしているのに対して,引用部分は,約3分の2にしている点。 4 判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 本願意匠の意匠に係る物品は「非接触型アイシータグインレット」であって,UHF帯の電波によって情報通信を行うことができるものである。 一方,引用意匠の意匠に係る物品は「UHFICタグ」であるから,UHF帯の電波を用いるICタグである。 そうすると,両意匠共に,UHF帯の電波を用いるICタグと認められるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 (2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価 両部分は,非接触型アイシータグインレットまたはUHFICタグという共通する物品における,アンテナとICチップ部分であるから,両部分の用途及び機能は共通している。 そして,本願部分は,約1:3の横長長方形のシートにおける中央に位置するものであるのに対して,引用意匠部分は,約1:3の横長長方形のシートにおける中央やや下に位置するものであるから,両部分の位置の相違は僅かなものであり,かつ,両部分の位置は,共にこの種物品分野においてありふれた位置であるから,両部分の位置については,互いに別異な印象を与える程のものとは認められない。 次に,本願部分は,約1:3の横長長方形のシートに対して,縦が全体の約5分の3,横が全体の約6分の5とした大きさ及び範囲であり,引用意匠部分は,約1:3の横長長方形のシートに対して縦が全体の約2分の1,横が全体の約10分の9とした大きさ及び範囲であるから,両部分の大きさ及び範囲の相違は僅かなものであり,かつ,両部分の大きさ及び範囲は,共にこの種物品分野においてありふれた大きさ及び範囲を逸脱するものではないから,両部分の大きさ及び範囲については,互いに別異な印象を与える程のものとは認められない。 よって,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通していると認められる。 (3)両部分における形状の評価 ア.共通点について 共通点(ア)ないし(ウ)については,この種物品分野においては,過去よりよく見られるありふれた形状であるから,両意匠のみの特徴ある共通点とはいえず,両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。 共通点(エ)については,この種物品分野においては,単なる長方形としたものが大多数である中で,凹部を設けたものは,数少ないが,本願意匠の出願前には,若干数見受けられることから,両意匠のみの共通点とは認められず,なおかつ,凹部を設けたというのは概略的な共通点であり,具体的には相違点に挙げたとおり,その形状に相違が認められるから,共通点(エ)は,両部分の類否判断に与える影響は僅かである。 イ.相違点について 相違点(ア)については,相違点(エ)及び(オ)と相まって,本願部分は,端部長方形域の約2分の1の高さの,扁平(へんぺい)で幅広い6角形状であるとの印象を与えるのに対して,引用部分は,端部長方形域の約3分の2の高さの,相対的に幅の狭い横長長方形との印象を与えるものであるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は一定程度認められる。 相違点(イ)ついては,相違点(エ)と相まって,本願部分は,ループ状導体と端部長方形域の間の狭い区域に,複雑な形状が密に存在するような印象を与えるのに対して,引用部分は,ループ状導体と端部長方形域の間の区域が大きく開けているという印象を与えるものであるから,両部分の類否判断に与える影響は一定程度認められる。 相違点(ウ)については,本願部分は,凹部が大きく,おおよその外形が「e」または「9」のように見えるのに対して,引用部分は,凹部が小さく,ほぼ縦長長方形に見えるため,両部分の形状の類否判断に与える影響は一定程度認められる。 そして,相違点(ア)ないし(オ)は,それぞれ各箇所の相違であって,部分全体の観察における類否判断には,それぞれ一定程度の影響しか与えないが,各相違点が相まっては,部分全体において,両意匠に別異の印象を生じさせるものであるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。 ウ.両部分における形状の類否判断 以上のとおり,共通点(ア)ないし(エ)は,両部分の形状の類否判断に与える影響は,小さい,又は僅かなものであり,これらの共通点によっては,両部分の形状の類否判断を決するものといえないのに対して,相違点(ア)ないし(オ)は,総じて需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,両部分の形状の類否判断を決するものといえる。 よって,本願部分の形状と引用部分の形状は,部分における全体観察においては類似するとは認められない。 (4)両意匠における類否判断 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が共通しているが,上記のとおり本願部分と引用部分の形状は類似するとは認められないものであるから,本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえない。 5 結び 以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似するとはいえず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2019-10-29 |
出願番号 | 意願2018-11945(D2018-11945) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H6)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 前畑 さおり |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
正田 毅 橘 崇生 |
登録日 | 2019-11-29 |
登録番号 | 意匠登録第1648692号(D1648692) |
代理人 | 特許業務法人みのり特許事務所 |