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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1357719 
審判番号 不服2016-12937
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-29 
確定日 2016-11-18 
意匠に係る物品 鉄道車両用ブレーキライニング 
事件の表示 意願2015- 20353「鉄道車両用ブレーキライニング」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,意匠法第14条第1項の規定により3年間秘密にすることを請求し,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)9月14日の本意匠を意願2015-20352号とする関連意匠の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「鉄道車両用ブレーキライニング」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の公開特許公報に記載された,公開日が平成24年12月20日の特開2012-251597号(発明の名称,鉄道車両用ブレーキライニングおよびそれを備えたディスクブレーキ)【図2】(a)?(c)に表された「ブレーキライニング」の意匠であり,主な類否判断の対象となるのは,引用意匠の本願実線部分に該当する部分(以下,本願実線部分に相当する引用意匠の部分を「引用相当部分」という。)としたものであって,引用意匠及び引用相当部分の形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「鉄道車両用ブレーキライニング」であり,引用意匠の意匠に係る物品も,発明の名称(「鉄道車両用ブレーキライニングおよびそれを備えたディスクブレーキ」)の記載中の「ブレーキライニング」であるから,本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は一致する。

2.本願実線部分と引用相当部分の対比
(1)部分意匠としての用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願実線部分と引用相当部分(以下「両意匠部分」という。)は,いずれも鉄道車両用ディスクブレーキにおけるブレーキライニングの基板一面に設置された,ブレーキディスク摺動面に押しつけられる7つの摩擦材(以下「ブレーキパッド」という。)の部分であるから,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は,共通する。

(2)両意匠部分の具体的形態
両意匠部分の形態を対比すると,その形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。
なお,引用意匠の図面について,図の表示と図中の向きを本願意匠の図面に合わせることとし,引用意匠の【図2】を右に180°回転させた状態を「正面図」として以下対比する。

まず,共通点として,
(A)両意匠部分全体は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分ではない取付板(本願意匠においては破線による略隅丸長方形板体として,引用意匠においては略横D字状の板体として表されている)に,7つのブレーキパッドを左右対称の配置態様で取り付けた構成としたものであって,
(B)ブレーキパッドは,薄い板体(以下「裏金」という。)の正面側表面部の長手方向の両端部分に,略扁平円筒状の摩擦部材(以下「円筒部材」という。)を,僅かに間を空けて2つ突設している点,
(C)ブレーキパッドの円筒部材の配置態様は,取付板中央部分に垂直に配設したブレーキパッドの上側の円筒部材と,その円筒部材の左右に位置する外側に向かって上向きに傾斜して配設したブレーキパッドの内側の円筒部材を,同じ高さになるように配設し,取付板中央部分に垂直に配設したブレーキパッドの下側の円筒部材と,その円筒部材の左右に位置する外側に向かって上向きに傾斜して配設したブレーキパッドの外側の円筒部材を,同じ高さになるように配設している点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)裏金の態様について,本願実線部分は,正面視略楕円形状に形成しているのに対して,引用相当部分は,両端部にある円筒部材の間の部分が略くの字状にくびれた正面視略8の字状に形成している点,
(イ)取付板中央のブレーキパッドの左右に位置する外側に向かって上向きに傾斜した上下のブレーキパッドの配置態様について,本願実線部分は,上側のものが水平から30°弱の傾斜で配設し,下側のものが水平から約5°の傾斜で配設しているのに対して,引用相当部分は,上側のものが水平から約20°の傾斜で配設し,下側のものが水平から約15°の傾斜で配設している点,
(ウ)取付板両端部の左右のブレーキパッドの配置態様について,本願実線部分は,垂直から約20°内側に傾斜して配設しているのに対して,引用相当部分は,ほぼ垂直に配設している点,
が認められる。

3.両意匠部分の形態の評価
まず,共通点(A)の両意匠部分全体における共通点は,鉄道車両用ブレーキライニングに配設したブレーキパッドの配置態様を概略的に捉えたに過ぎないものであるから,この共通点(A)の共通性のみをもって両意匠部分の類否判断を決定することはできない。
次に,共通点(B)の裏金に円筒部材を突設したブレーキパッドの形態は,本願意匠の出願前に既に見られるもの(参考意匠:日本国特許庁発行の特許公開公報(公開日:平成18年7月27日)に掲載された,特開2006-194429号の【図1】及び【図2】における3の摩擦要素及び4の金属の薄層の意匠,別紙第3参照)であるので,固定する部分の部位についての相違はあるものの,この共通点(B)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。
また,共通点(C)のブレーキパッドの円筒部材の配置態様も,いわれて気付く程度のものにすぎないので,この共通点(C)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も小さい。
そして,これらの共通点(A)ないし(C)は,全体としてみても,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対し,相違点(ア)裏金の態様については,2つの円筒部材間の連結部を外に膨らんだ円弧状とし,全体が略楕円形状に形成された本願実線部分の態様と,連結部にくびれ部をもち,全体が略8の字状に形成された引用相当部分のものとは,看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,相違点(イ)取付板中央のブレーキパッドの左右に位置する外側に向かって上向きに傾斜した上下のブレーキパッドの配置態様については,上下のブレーキパッドが外側に向かって拡がるように略横ハの字状に配設された本願実線部分の態様と,上下のブレーキパッドがほぼ平行な略ニの字状に配設された引用相当部分のものとは,看者に全く別のものであるとの印象を与えるものであるから,この相違点(イ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も大きい。
また,相違点(ウ)取付板両端部の左右のブレーキパッドの配置態様について,取付板中央部分にある垂直なブレーキパッド及び左右端部の約20°内側に傾斜したブレーキパッドのそれぞれが,同一の点から放射状に拡がる3本のそれぞれの直線上に配設してなる本願実線部分の態様と,取付板中央部及び左右端部のブレーキパッドが,単に垂直に3列配設してなる引用相当部分のものとは,看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ウ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も大きい。
そして,これらの相違点(ア)ないし相違点(ウ)によって生じる視覚的効果はいずれも大きく,それらが相まって生じる視覚的効果は,両意匠部分の類否判断を決定付けるほど大きいものである。

4.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠の意匠に係る物品については一致し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲についても共通しているが,両意匠部分の形態については,共通点が類否判断に及ぼす影響は両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響は大きく,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから,両意匠部分は類似しないものである。
したがって,本願意匠と引用意匠とは類似しないものと認められる。

第4 結び
以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから,本願については,原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。


別掲
審決日 2016-11-08 
出願番号 意願2015-20353(D2015-20353) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 真珠小松 芳実 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 橘 崇生
江塚 尚弘
登録日 2017-01-06 
登録番号 意匠登録第1568882号(D1568882) 
代理人 溝上 哲也 

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