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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 H6 |
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管理番号 | 1357726 |
審判番号 | 不服2019-8809 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-07-01 |
確定日 | 2019-11-12 |
意匠に係る物品 | 無線タグ用アンテナ |
事件の表示 | 意願2018-4786「無線タグ用アンテナ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,意願2018-4782号(不服2019-8807号)の意匠を本意匠とする関連意匠に係る,平成30年(2018年)3月7日の意匠登録出願であって,平成30年11月20日付けの拒絶理由の通知に対し,同年12月25日に意見書が提出されたが,平成31年3月28日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,令和元年(2019年)7月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「無線タグ用アンテナ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原審の拒絶の理由 原審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には,以下のとおりである。 「本願意匠は,当該物品の図面上実線で表された部分の形状に関する創作物であり,その構成態様は,中央にループ状導体を配置すると共に,その左右にそれぞれ全長の異なる内向きの渦巻き状導体を配置し,さらに前記ループ状導体の一方の長辺上に前記左右の渦巻き状導体の屈曲する端部が間隙を挟んでそれぞれT字形に接続する連結部を配置して成るものと認められます。 しかしながら,前記の構成態様は,中央のループ状導体の左右に配置された導体が渦巻き状である点及びループ状導体とその左右に配置された導体の寸法比率が相違する点を除き,下記文献(1)に,中央のループ状導体の左右に配置された導体を内向きの渦巻き状とした態様については,下記文献(2)にそれぞれ記載されており,本願意匠におけるループ状導体と渦巻き状導体の寸法比率及び渦巻き状導体の巻き数については,技術的要求仕様に基づく一般的な改変の域を出ないものであって,技術的効果についてはともかく,本物品がRFIDタグのインレイ等に使用される点を考慮すれば,意匠の構成要素として特筆すべき視覚効果を見いだすことはできません。 よって,本願意匠の構成態様は,当業者であれば容易に想到し得るものと言わざるを得ません。 記 (1) ・著者の氏名:Zebra Technologies ・表題 :RFID Inlay Placement/Power Guidelines (Zebra R110xi/R170xi UHF-R0) ・掲載箇所 :8頁,SML GB2U ・媒体のタイプ:[online] ・掲載年月日:04/22/14(2014年4月22日) ・検索日:[2018年11月13日] ・情報の情報源:インターネット ・情報源のアドレス:https://www.zebra.com/content/dam/zebra/product-information/en-us/brochures-datasheets/rfid/transponder-guidelines/r110xi-r170xi-uhf-ro-en.pdf (2) 特許庁発行の公表特許公報(A)に記載された 特表2011-505616(P2011-505616A)号【図9】」 第4 当審の判断 以下において,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,つまり,本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。 1.本願意匠の認定 (1)本願意匠の意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,無線タグ用アンテナである。 (2)本願部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,無線タグに用いられるアンテナという用途及び機能を有する。 本願部分の位置,大きさ及び範囲は,約1:3の横長長方形のベース基材の中央に位置する,縦がベース基材の約2分の1,横がベース基材の約7分の6とした大きさ及び範囲である。 (3)本願部分の形状 本願部分の形状は, (a)略中央に位置するループ状導体,その左右に位置する渦巻状導体及びそれらを連結する連結部から成るものである。 (b)ループ状導体は,ベース基材の中央やや右に位置し,その形状は横長長方形状であって,その下辺においては,チップが接続されるためのわずかな隙間を,中央からやや右にずらした位置に形成している。 (c)連結部は,ループ状導体の下辺左右から鉛直方向に下に向かい,直角に折れ曲がったL字状であり,左右に向かって延伸し,左右の渦巻状導体と連結している。 (d)左右の渦巻状導体は,複数回渦を巻いているものであって,右側渦巻状導体よりも左側渦巻状導体の方が横の長さが長い。 (e)渦巻状導体の渦は,1周と4分の3で中心まで巻いており,導体の幅よりも間隙の方を広くした渦としたものである。 2.本願部分の創作の容易性について 出願前に公然知られた形状の認定については,下記のとおり,引用意匠を本願意匠と同じ向きにして認定する。 (1)出願前に公然知られた形状 引用意匠1(拒絶理由通知書において記された文献(1)に表れている意匠のこと。別紙第2参照)により,(a)ベース基材の中央に位置するループ状導体の形状を横長長方形にし,(b)その下辺中央にチップを配置し,(c)連結部を,ループ状導体の下辺から斜め下方向に向かい,折れ曲がって,左右に向かって延伸した形状は,本願意匠の出願前に公然知られたものと認められる。 また,引用意匠2(拒絶理由通知書において記された文献(2)に表れている意匠のこと。別紙第3参照)により,(d)ベース基材の中央に位置するループ状導体,その左右に位置する渦巻状導体及びそれらを連結する連結部から成るものであって,(e)ループ状導体の形状は,横長長方形状であって,その上辺の中央にチップを配置し,(f)連結部は,ループ状導体の下辺を左右に延伸したものであって,(g)左右の渦巻状導体は,複数回渦を巻いているものであって,(h)渦巻状導体の渦は,2周と4分の3巻いており,導体の先端は渦巻状の中心までは届かない形状で,細い導体に,導体の幅よりも広い間隙の渦としたものは,本願意匠の出願前に公然知られたものと認められる。 (2)本願部分の創作の容易性 ア.そうすると,本願部分の形状である, (ア)略中央に位置するループ状導体,その左右に位置する渦巻状導体及びそれらを連結する連結部から成るものであるという点(1(3)(a))は,上記(1)の(d)により, (イ)ループ状導体は,ベース基材の略中央に位置し,その形状は横長長方形状であって,その下辺においては,チップが接続されるためのわずかな隙間を形成しているという点(1(3)(b))は,上記(1)の(a)及び(b)により, (ウ)連結部は,ループ状導体の下辺から下に向かい,折れ曲がって,左右に向かって延伸した点(1(3)(c))は,上記(1)の(c)により, (エ)左右の渦巻状導体は,複数回渦を巻いているものであるという点(1(3)(d))は,上記(1)の(g)により, (4)渦巻状導体の,導体の幅よりも間隙の方を広くした渦としたものであるという点(1(3)(e))は,上記(1)の(h)により, 本願の出願前から公然知られた形状に基づいて容易に創作できた形状と認められる。 イ.しかし,本願部分の形状のうち, (ア)ループ状導体を,ベース基材の中央やや右に配置した点,及びチップを載置し接続する位置を,ループ状導体の下辺の中央からやや右にずらした位置とした点(1(3)(b)), (イ)連結部を,ループ状導体の下辺から鉛直方向に下に向かい,直角に折れ曲がったL字状とした点(1(3)(c)), (ウ)右側渦巻状導体よりも左側渦巻状導体の方が横の長さを長くした点(1(3)(d)), (エ)渦巻状導体の渦は,1周と4分の3で中心まで巻いた点(1(3)(e))は,本願の出願前に公然知られた形状とは認められない。 ウ.創作の容易性 (ア)上記イの(イ)の点については,この種物品分野においては,導体を水平方向または鉛直方向に配置することは,本願の出願前から公然知られた形状であり,また,導体を直角方向に分岐すること,及び導体を直角に折り曲げてL字状とすることは,本願の出願前から公然知られた形状であるから,本願の出願前から公然知られた形状に基づいて容易に創作できた形状と認められる。 (イ)上記イの(エ)の点のうち,渦巻状導体の渦を,1周と4分の3にしたことについては,この種物品分野においては,1周,2周半や3周のものが本願の出願前から存在していることからすると,機能的必要性から,巻数を増減することは,ありふれた手法と認められ,本願の出願前から公然知られた形状に基づいて容易に創作できた形状と認められる。 (ウ)その一方で,上記イの(ア)及び(ウ),並びに上記イの(エ)の点のうち,導体を中心まで巻いている点は,本願の出願前から公然知られた形状に基づいて容易に創作できた形状と認めることはできない。 (3)まとめ 以上のとおりであって,無線タグ用アンテナの分野において,上記(2)のウの(ウ)の点につき,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであると認めるに足る証拠はない。 3.本願意匠について 上記2の(3)により,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとは言えない。 4.結び したがって,本願意匠は,原審で示した各意匠を基にしては,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,原審の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-10-28 |
出願番号 | 意願2018-4786(D2018-4786) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(H6)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 前畑 さおり |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
正田 毅 橘 崇生 |
登録日 | 2019-12-06 |
登録番号 | 意匠登録第1649194号(D1649194) |
代理人 | 宗助 智左子 |
代理人 | 松井 宏記 |
代理人 | 鈴木 行大 |