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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H6 |
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管理番号 | 1357730 |
審判番号 | 不服2019-8810 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-07-01 |
確定日 | 2019-11-12 |
意匠に係る物品 | 無線タグ用アンテナ |
事件の表示 | 意願2018-4787「無線タグ用アンテナ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成30年(2018年)3月7日の意匠登録出願であって,同年11月20日付けの拒絶理由の通知に対し,同年12月25日に意見書が提出されたが,平成31年3月28日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,令和1年(2019年)7月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。 引用意匠 ・著者の氏名:Zebra Technologies ・表題 :RFID Inlay Placement/Power Guidelines (Zebra R110xi/R170xi UHF-R0) ・掲載箇所 :8頁,SML GB2U ・媒体のタイプ:[online] ・掲載年月日:04/22/14(2014年4月22日) ・検索日:[2018年11月13日] ・情報の情報源:インターネット ・情報源のアドレス:https://www.zebra.com/content/dam/zebra/product-information/en-us/brochures-datasheets/rfid/transponder-guidelines/r110xi-r170xi-uhf-ro-en.pdf に記載された本願意匠に相当する部分の意匠。 第4 当審の判断 1 本願意匠 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「無線タグ用アンテナ」であり,非接触状態で情報の書き込み及び読み出しが可能なRFIDタグ等の無線タグに用いられるアンテナである。 (2)本願部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,フィルム状のベース基材の一方の面上に形成された導電性材料の薄膜からなるアンテナパターンのうち,ループ状導体部分と連結部分であり,約1:3の横長長方形のベース基材の中央やや右に位置する,縦が全体の約5分の2,横が全体の約5分の2とした大きさ及び範囲であって,無線タグ用アンテナにおけるアンテナのうちの,ループ状導体と連結部の用途及び機能を有している。 (3)本願部分の形状 本願部分の形状は, ア.ループ状導体の部分は,横長長方形状であって,その下辺においては,チップが接続されるためのわずかな隙間を,中央からやや右にずらした位置に形成している。 イ.連結部分は,ループ状導体の下辺左右から鉛直方向に下に向かい,直角に折れ曲がった倒L字状である。 2 引用意匠 引用意匠の位置,大きさ及び範囲,並びに形状認定においては,本願意匠と同じ向きにして認定する。 (1)意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は「RFIDタグ用アンテナ」である。 (2)引用部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 引用意匠中,本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」ともいう。)は,RFIDタグにおけるアンテナのうちのループ状導体部分と連結部分であり,RFIDタグに用いるアンテナのうちの,ループ状導体と連結部の用途及び機能を有している。 また,引用意匠の全体の形状が不明であるため,引用部分の位置,大きさ及び範囲は不明である。 (3)引用部分の形状 引用部分の形状は, ア.ループ状導体の部分は,横長長方形状であって,その下辺においては,チップが接続されるためのわずかな隙間を,中央に位置に形成している。 イ.連結部分は,ループ状導体の下辺から末広がり状に下に向かい,鈍角に水平方向に折れ曲がった倒「へ」字状である。 3 両意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は「無線タグ用アンテナ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「RFIDタグ用アンテナ」である。 (2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の対比 本願部分は,無線タグ用アンテナにおけるアンテナのうちの,ループ状導体と連結部という用途及び機能を有しており,引用意匠は,RFIDタグに用いるアンテナのうちの,ループ状導体と連結部という用途及び機能を有している。 そして,その位置,大きさ及び範囲は,本願部分は,約1:3の横長長方形のベース基材の中央やや右に位置する,縦が全体の約5分の2,横が全体の約5分の2とした大きさ及び範囲であるのに対して,引用部分の,引用意匠に係る物品に対する位置,大きさ及び範囲は不明である。 (3)両部分の形状の対比 両部分の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。 ア.共通点について (ア)ループ状導体の部分は,横長長方形状であって,その下辺においては,チップが接続されるためのわずかな隙間を形成している。 (イ)連結部分は,ループ状導体の下辺から下に向かい,水平方向に折れ曲がっている。 イ.相違点について (ア)チップが接続されるためのわずかな隙間の位置につき,本願部分は,中央からやや右にずらしているのに対して,引用部分は,中央に位置している点。 (イ)連結部分の形状につき,本願部分は,ループ状導体の下辺左右から鉛直方向に下に向かい,倒L字状に直角に折れ曲がって水平方向に延びているのに対して,引用意匠は,ループ状導体の下辺から末広がり状に下に向かい,倒「へ」字状に鈍角に折れ曲がって水平方向に延びている点。 4 判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 本願意匠の意匠に係る物品は「無線タグ用アンテナ」であって,非接触状態で情報の書き込み及び読み出しが可能なRFIDタグ等の無線タグに用いられるアンテナである。 一方,引用意匠の意匠に係る物品は「RFIDタグ用アンテナ」であるから,電波の送受信により,非接触でICチップの中のデータを読み書きすることができるものに用いるアンテナである。 そうすると,両意匠共に,非接触状態でデータを読み書きすることが可能なものに用いるアンテナと認められるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 (2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価 両部分は,無線タグ用アンテナと,RFIDタグ用アンテナという共通する物品における,アンテナ部分であるから,両部分の用途及び機能は共通している。 そして,本願部分は,約1:3の横長長方形のベース基材の中央やや右に位置する,縦が全体の約5分の2,横が全体の約5分の2とした大きさ及び範囲であり,大きさ及び範囲については,この種物品分野においてありふれた大きさ及び範囲を逸脱するものではなく,ベース基材の中央やや右という位置についても,この種物品分野においては,ベース基材に対して各部導体を左右非対称に配したものが存在するため,特徴的な位置とは認められない。 これに対して,引用部分の,引用意匠に係る物品に対する位置,大きさ及び範囲は不明であるから,両部分の位置,大きさ及び範囲が類似するとはいえない。 (3)両部分における形状の評価 ア.共通点について 共通点(ア)及び(イ)については,この種物品分野においては,過去よりよく見られるありふれた形状であるから,両意匠のみの特徴ある共通点とはいえず,両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。 イ.相違点について 相違点(ア)については,ループ状導体のICチップを搭載する位置である隙間の配置については,中央に配置するのが一般的であり,本願部分のように中央からずらして配置することは,本願の出願前には見られない形状であって,本願部分の形状の特徴と認められる。そして,ICチップは無線タグを構成する重要な部品であり,この種物品の需要者は,無線タグ用アンテナにおけるICチップの搭載位置について,強い関心を示すといえるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。 相違点(イ)ついては,本願部分の形状も,引用部分の形状も,共にこの種物品分野において,よく見られる形状であって特徴的なものではないが,直角に折れ曲がった倒L字状と,鈍角に折れ曲がった倒「へ」字状という具体的な形状の違いにより,両部分の類否判断に与える影響は一定程度認められる。 ウ.両部分における形状の類否判断 以上のとおり,共通点(ア)及び(イ)は,両部分の形状の類否判断に与える影響は小さいものであり,これらの共通点によっては,両部分の形状の類否判断を決するものといえないのに対して,相違点(ア)に加えて相違点(イ)によって,需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,両部分の形状の類否判断を決するものといえる。 よって,本願部分の形状と引用部分の形状は,部分における全体観察においては類似するとは認められない。 (4)両意匠における類否判断 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の用途及び機能が共通しているが,両部分の位置,大きさ及び範囲が類似するとはいえず,加えて,本願部分と引用部分の形状は類似するとは認められないものであるから,本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえない。 5 結び 以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似するとはいえず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-10-30 |
出願番号 | 意願2018-4787(D2018-4787) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H6)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 前畑 さおり |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
正田 毅 橘 崇生 |
登録日 | 2019-12-06 |
登録番号 | 意匠登録第1648971号(D1648971) |
代理人 | 松井 宏記 |
代理人 | 鈴木 行大 |
代理人 | 宗助 智左子 |