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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B1 |
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管理番号 | 1357735 |
審判番号 | 不服2019-3459 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-13 |
確定日 | 2019-12-03 |
意匠に係る物品 | 使い捨ておむつ |
事件の表示 | 意願2018- 11869「使い捨ておむつ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年5月30日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年10月16日付け 拒絶理由通知書 平成30年12月 3日 意見書の提出 平成31年 1月 4日付け 拒絶査定 平成31年 3月13日 審判請求書の提出 令和 1年 9月12日 面接の実施 令和 1年10月18日 上申書の提出 第2 本願意匠 本願の意匠は、意匠に係る物品を「使い捨ておむつ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(以下「本願意匠」という。別紙第1参照。)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 拒絶理由通知において引用された意匠は、大韓民国意匠公報2017年8月28日17-25号に掲載された、登録番号30-0920624号「使い捨ておむつ」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH29429155号)である(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)。 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「使い捨ておむつ」であり、一致する。 2 形態の対比 (1)形態の共通点 (共通点1)全体構成 ウエスト開口部を水平状とし、前身頃(正面図側)と後身頃(背面図側)とが全高の略半分までの左右の正面視垂直状サイドシール部で接合され、サイドシール部下端からレッグ開口部を囲むように波状の襞を形成し、下方の股下部へ向かって略扁平砲弾状に窄まった態様としている点。 (共通点2)前身頃及び後身頃の伸縮部の態様 (共通点2-1)ウエスト開口部の上端から、前身頃側はサイドシール下端部よりわずかに下方まで、後身頃側はさらに下方まで垂直方向に伸縮用の折り襞(以下「伸縮折り襞」という。)を設けている点。 (共通点2-2)一方で、ウエスト開口部やや下方の位置から、全幅に対して約5分の2の長さを横幅とする長方形状の伸縮折り襞を構成しないエリアを前身頃、後身頃それぞれの中央に設けている点。 (共通点3)固定用テープ及び表示部の態様 後身頃中央上部に縦長帯状の固定用テープを有し、股下部中央には、排泄物表示部として2本の平行細線が前身頃側は全高の半分近くまで、後身頃側は全高の約4分の1の高さまで垂直に表れている点。 (共通点4)レッグ開口部内側の態様 レッグ開口部の内側には伸縮部を設け、斜め平行線状の滑り止め部が正面視において伸縮部の内側上方に見られる点。 (2)形態の相違点 (相違点1)全体構成 正面視における全高対全幅について、本願意匠は約1.1:1であるのに対し、引用意匠は約1:1である点。 (相違点2)前身頃及び後身頃の伸縮部の態様 伸縮折り襞を構成しない長方形状のエリアについて、本願意匠は、ウエスト開口部から全高に対して約100分の11の位置より下としているのに対し、引用意匠は、約100分の7の位置より下としており、引用意匠の方が、ウエスト開口部に近い位置となっている点。 (相違点3)固定用テープ及び表示部の態様 (相違点3-1)固定用テープについて、本願意匠は引用意匠より一回り大きく、位置も中央寄りである点。 (相違点3-2)股下部中央の排泄物表示部について、本願意匠は引用意匠より線が太く、2本の間隔も広い点。 (相違点4)外装体表面の態様 本願意匠には、小円形穴が水平状に並んだ列が、レッグ開口部の内側を除く外表面全体に表れているが、引用意匠にはそのような小円形穴水平列の態様は表れていない点。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。 2 形態の共通点及び相違点の評価 両意匠は、共に使い捨ておむつに係り、その使用目的から、需要者は、着けやすさや漏れにくさといった観点で観察するのみならず、肌に直接触れるものであり、排泄物による水分等を含んだままの状態で使用されることもあるため、通気性・透湿性といった観点についても注視するものということができる。 (1)形態の共通点 (共通点1)は、使い捨ておむつの分野において、いわゆるパンツ型の態様としては一般的なものにすぎない。 (共通点2-1)及び(共通点2-2)は、共に従来から見られる態様で(参考意匠参照)、両意匠のみの特徴ということはできない。 (共通点3)は、機能的要素でもあり、これら要素を持ち合わせる点については一定程度の共通感を生み出しているが、既に公然知られた態様(参考意匠参照)であり、両意匠のみの特徴とはいえないから,両意匠の類否判断に与える影響は限定的なものにとどまる。 (共通点4)も、既に公然知られた態様(参考意匠参照)であり、また、滑り止めとして、機能的に着目する部分の1つであっても、全体の中では小さな部分にすぎないため、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 参考意匠(別紙第3参照) 大韓民国意匠商標公報(発行日:2016年(平成28年)年8月30日)に掲載された、「使い捨ておむつ」(登録番号30-0870374)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH28436642号) (2)形態の相違点 (相違点1)は、本願意匠がやや縦長ではあるが、この種物品分野において特徴的な比率ということはできず、また、引用意匠との差も僅かであり、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 (相違点2)は、意匠全体としてみれば僅かな差異にすぎず、この差異が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 (相違点3-1)及び(相違点3-2)は、いずれも意匠全体の中では僅かな差異にすぎず、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 (相違点4)は、レッグ開口部周辺を除く外装対全域に小円形穴を設けることで需要者に通気性・透湿性が高い印象を与えつつ、従来からあるような、小円形穴を千鳥状に配するものとは異なり、水平略等間隔状に設けることで、伸縮方向(水平方向)への強度の確保や、垂直方向の伸縮折り襞の中でも小円形穴が水平状に見えやすいといった視覚的効果も併せ持ち、両意匠の印象を大きく異ならせており、類否判断に与える影響は大きい。 3 両意匠の類否判断 両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、上記2(2)のとおり、(相違点1)から(相違点3)については、両意匠の類否判断への影響は小さいものの、(相違点4)については、本願意匠独自の態様であり、穴部自体は小さくとも、レッグ開口部周辺を除く外装体全域にわたるもので、しかも水平略等間隔状に配されることによって、独自の美感を有していることから、両意匠は美感に大きな差異があるといえる。 それに対し、上記2(1)で示したとおり、共通点はいずれも使い捨ておむつの分野においては公然知られた態様であり、両意匠独自のものではないから、類否判断に与える影響は小さい、又は限定的であり、相違点の方が共通点を上回っており、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。 したがって、両意匠の意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。 第6 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-11-19 |
出願番号 | 意願2018-11869(D2018-11869) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(B1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 富永 亘 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
北代 真一 正田 毅 |
登録日 | 2019-12-27 |
登録番号 | 意匠登録第1650671号(D1650671) |
代理人 | 荒船 博司 |