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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L3
管理番号 1357753 
審判番号 不服2019-7514
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-05 
確定日 2019-12-23 
意匠に係る物品 組立家屋 
事件の表示 意願2018- 8574「組立家屋」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとし、物品の部分について意匠登録を受けようとする、平成30年(2018年)4月18日の意匠登録出願であって、同年5月17日付けで新規性の喪失の例外証明書提出書が提出され、同年10月31日付けの拒絶理由の通知に対し、同年12月14日に意見書が提出されたが、平成31年(2019年)3月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、令和1年(2019年)6月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願の意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「組立家屋」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって、「実線で表した部分が意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。重量物につき底面図は省略する。なお、『参考斜視図』において網掛けを付した部分は、意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1396279号
(意匠に係る物品、組立家屋)の意匠(本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分。)

第4 当審の判断
1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「組立家屋」であり、引用意匠の意匠に係る物品も「組立家屋」であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は一致する。

(2)本願部分と引用意匠において本願部分と対比する部分の用途及び機能
本願部分と引用意匠において本願部分と対比する部分、すなわち本願部分に相当する部分(以下、「引用部分」といい、本願部分と引用部分を合わせて「両部分」という。)の用途及び機能については、共に、複数階建ての組立家屋の2階ベランダとベランダ下の1階開口の一部及びこれらに連続する左側壁の一部であるから、両部分の用途及び機能は一致する。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲
両部分は、
ア 2階ベランダに接する周縁の外壁を略矩形帯状とする範囲
イ 2階ベランダ内側の左壁面、上面(天井)、下面(床面)及び手すりの笠木部分
ウ 1階開口(ベランダの直下)に接する左端及び上端の一部(左端からベランダの真ん中まで)を略逆L字状の帯とする範囲
エ 1階開口内側端部の左壁面のうち略縦長長方形の範囲と、これに連続する上面と下面の略横長長方形の範囲
オ 上記、ア及びウの左端と接する左側壁であって、家屋全体の約3分の2の高さ(縦)と全長の約3分の1弱の長さ(横)を略縦長矩形状に囲んだ略縦長長方形の範囲
であるから、両部分の位置、大きさ及び範囲は一致する。

(4)両部分の形態
両部分の形態については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお、本審決において、本願意匠の図面の向きを引用意匠の図面の向きに合わせるものとする。
ア 共通点
(ア)正面部
(ア-1)家屋2階(以下「2階部」という。)において、略横長矩形状に凹陥したベランダ部を設け、その内側の左壁面及び下面をそれぞれ平坦面とし、上下中央やや下寄りに略横長棒状の手すり用の笠木を1本取り付けている。
(ア-2)家屋1階(以下「1階部」という。)において、略矩形状の開口部(以下「正面開口部」という。)を設け、その内側の上面及び下面をそれぞれ平坦面としている。
(イ)左側面部
左側面部の右端は、正面部の左端と直角に接している。
イ 相違点
(ア)正面部
(ア-1)ベランダ部の縦横の長さの比率について、本願部分は、約1:1.4であるのに対し、引用部分は、約1:1.1で、本願部分の方が横長である。
(ア-2)ベランダ部の上面(天井面)について、本願部分は、下面(床面)と同形の横長長方形で平坦面であるのに対し、引用部分は、正面端部に横長帯状の面を形成し、その奥は上面がなく、吹き抜けとしている。
(ア-3)ベランダ部の手すり用の笠木の取付け位置について、本願部分は、正面側端部に取り付けているのに対し、引用部分は、正面側端部よりやや内側に取り付けている。
(ア-4)正面開口部の内側の左壁面について、本願部分は、真ん中に一回り小さい縦長長方形を形成し内側を破線で表したもの(後記イ(イ-3)の内側に相当)を形成しているのに対し、引用部分は、凹凸等のない平坦な面としている。
(イ)左側面部
(イ-1)開口部の有無について、引用部分は、1階部下端の真ん中やや左寄りにベランダ部の横幅より広く正面開口部の高さよりやや高い開口部(以下「側面開口部」という。)を設け、その左端部寄りに直方体状の柱を1本形成したものであって、正面開口部とあわせて1階部の内側にピロティ状の大きな空間を形成しているのに対し、本願部分は、このような開口部はない。
(イ-2)採光部の有無について、本願部分は、1階部と2階部の左寄りと中央やや右寄りにそれぞれ1箇所ずつ合計4箇所、縦長長方形で内側を破線で表した採光部を形成しているのに対し、引用部分は、採光部はない。
(イ-3)通用口部の有無について、本願部分は、下方右寄りに縦長長方形で内側を破線で表した通用口部(前記イ(ア-4)の外側に相当)を形成しているのに対し、引用部分は、通用口部はない。
(ウ)模様の有無
本願部分は、1階部と2階部の中間に、正面部から左側面部まで連続した横帯模様を1本形成しているのに対し、引用部分は、模様は形成していない。

2 類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は、一致している。

(3)両部分の形態の共通点及び相違点の評価
以下、両部分の形態について検討する。

ア 両部分の形態の共通点の評価
この種物品の分野において、組立家屋の正面部の2階部に略横長矩形状のベランダ部を設け、その内側に略横長棒状の手すり用の笠木を取り付け、1階部に略矩形状の正面開口部を形成し、左側面部が正面部と直角に接したものは、両部分の他にも見られる態様であって(例えば、意匠登録第1608570号の意匠。以下「参考意匠」という。別紙第3参照)、両部分のみに共通する態様とはいえないものであることから、両部分の形態を概括的に捉えた場合の共通する態様といわざるを得ず、これらの共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。

イ 両部分の形態の相違点の評価
まず、(ア)正面部について、(ア-2)ベランダ部の上面は、凹凸のない横長長方形の面である本願部分と、正面端部にのみ横長帯状の面を形成し、その奥は吹き抜けとしている引用部分とは、一見して異なる視覚的印象であり、特に建物外部から見上げた際、はっきりと視認でき、非常に目立つものであることから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。一方、(ア-1)ベランダ部の縦横の長さの比率は、本願部分の方が引用部分よりやや横長であるが、組立家屋の物品分野においては、比較的横幅の狭いものから家屋の横幅いっぱいの長さのもの(参考意匠)まで種々の長さのベランダがごく普通に見られるものであるところ、両部分の態様も常套的になされる改変の範囲内のものといえるから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。(ア-3)ベランダ部の手すり用の笠木の取付け位置についてであるが、その差は僅かなものであることと、本願部分のように、手すりを正面側端部に取り付けたものが本願出願前より公然知られているものであることから(参考意匠)、部分的な差異に止まるものであって、両部分の類否判断に与える影響は小さい。(ア-4)1階部の内側の左壁面の態様は、真ん中に一回り小さい縦長長方形を形成している本願部分と、何ら形成していない平坦な面の引用部分は、一見して異なる態様のものではあるが、内側の端部で外観上さほど目立たないことから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。
次に、(イ)左側面部について、この種物品分野の需要者は、主にその購入者であるから、玄関のある1階部は、需要者が日常的に接する箇所であって、高い関心をもって観察されるものといえるところ、(イ-1)開口部の有無は、一見して認識することができる特徴的な構成であって、全面を外壁で覆っている本願部分と、側面開口部を設けることにより1階部の内側にピロティ状の大きな空間を形成している引用部分とは、需要者に与える視覚的印象は全く異なるものといえるから、両部分の類否判断に与える影響は極めて大きい。一方、(イ-2)及び(イ-3)の採光部と通用口部の有無については、採光部や通用口がない引用部分との比較においては、相違点として明確に認識することができるものではあるが、家屋側面の任意の位置に採光部や通用口部を適宜設けることは、引用意匠や参考意匠に見られるとおり、ごく普通に行われているものであるから、両部分の類否判断に与える影響は一定程度に止まる。
また、(ウ)模様の有無について、本願部分の横帯模様はやや幅広で、1階部と2階部の中間に形成して目立つものではあるが、この種物品分野においては、横帯模様を形成したものも、横帯模様を形成していないものもごく普通に見られるものであるから、格別、需要者の注意を惹くものとはいえず、両部分の類否判断に与える影響は小さい。

以上のとおり、相違点のうち、相違点(ア)の(ア-1)、(ア-3)、(ア-4)、相違点(イ)の(イ-2)、(イ-3)及び相違点(ウ)が両部分の類否判断に与える影響は小さいか、一定程度に止まるものであるが、相違点(ア)の(ア-2)及び相違点(イ)の(イ-1)が、両部分の類否判断に与える影響は大きく、とりわけ(イ-1)が両部分の類否判断に与える影響は極めて大きいものであるから、相違点全体が相まって両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。

3 小括
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一で、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が一致するが、形態においては、共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、視覚的印象を異にするというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2019-12-09 
出願番号 意願2018-8574(D2018-8574) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 八重田 季江 
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 内藤 弘樹
宮田 莊平
登録日 2020-01-10 
登録番号 意匠登録第1651690号(D1651690) 
代理人 廣田 美穂 
代理人 山田 強 

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