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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 E4
管理番号 1358680 
審判番号 不服2016-12516
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-19 
確定日 2017-01-06 
意匠に係る物品 ドラム 
事件の表示 意願2014- 24735「ドラム」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成26年(2014年)11月6日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品は,「ドラム」であり,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」ともいう。)は,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものであって,「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で,それ以外の部分を破線で表した。各図において表れる一点鎖線は,部分意匠として登録を受けようとする部分とそれ以外の部分の境界のみを表している。登録を受けようとする部分を示す各参考図において,薄赤色を施した部分以外の部分が意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分の意匠を「本願意匠部分」という。)。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。また,引用意匠のうち本願意匠部分と対比の対象とする部分の意匠を「引用意匠部分」という。)は,下記のとおりのものである。
「(引用意匠)
著者 amazon.com
表題 Gretsch Drums Catalina Ash CA1-E825-BNB 5-Piece Drum Shell Pack, Black/Nat/Black Burst
媒体のタイプ [online]
掲載年月日(公知日) 2014年 1月23日
検索日 2016年 1月12日
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス http://www.amazon.com/Gretsch-Drums-Catalina-CA1-E825-BNB-5-Piece/dp/B00G5KSL8M
に掲載された「ドラム」の意匠のうち,本願の意匠登録を受けようとする部分に相当する,スパーが設けられた側のシェルの胴部半分,フープの部分,及び,ヘッドの周縁部分の意匠」である。(別紙第2参照)

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1.意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は,共に「ドラム」であるから,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。
2.用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
本願意匠部分は,ドラム(床に設置して用いられるいわゆるバスドラムもしくはベースドラム)のシェル部(胴部)外周面の略中央を一周する一点鎖線によって,使用時の聴衆側を前として,そのドラム前半部を意匠登録を受けようとする部分として区画し,その内,留め具部(ラグ及びボルト留め具),脚部(スパー部),タムドラム設置金具部及びフロントヘッド部を除いたドラム部分であり,引用意匠部分(本願意匠部分と相当する部分)もドラム前半部の内,留め具部(ラグ及びボルト留め具),脚部(スパー部),タムドラム設置金具部及びフロントヘッド部を除いたドラム部分として対比できる部分であるから,本願意匠部分と引用意匠部分(以下,「両意匠部分」という。)は,形態全体の中での用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。
3.形態
両意匠部分の形態を対比すると,主として,以下の共通点と相違点が認められる。なお,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。
(ア)共通点
基本的構成態様
(A)全体形状は,フープ部(縁状部)とフロントヘッド用縁リング部(以下,縁リング部という。)及びシェル部(胴部)からなり,略円筒形状である点。
具体的構成態様
(B)フープ部の端からシェル部にかけて,縁リング部を除く外周面の縁寄りに内方にむけて次第に淡くなっていくグラデーション模様の暗濃色(黒色)を施している点。
(イ)相違点
(a)本願意匠部分は,フープ部内周面と,縁部分を除くシェル部の外周面ほぼ全体に青色を施しているのに対し,引用意匠部分は,フープ部内周面と,縁部分を除くシェル部の外周面ほぼ全体に木生地色(ベージュ色)を施している点。
(b)本願意匠部分は,フープ部の前端面に暗濃色(黒色)を施しているのに対し,引用意匠部分はフープ部の前端面に木生地色(ベージュ色)を施している点。
(c)外周面において,グラデーション模様の暗濃色(黒色)の施された範囲が,本願意匠部分では端部から一点鎖線部まで(すなわちフープ部外周面及びシェル部外周面奥手方向略中央まで)の奥行き幅の約3分の1に亘るものであるのに対して,引用意匠部分では奥行き幅の約2分の1に亘るものであって,それにともない,グラデーション模様の濃淡変化の顕著な際部分の位置が,本願意匠部分ではシェル部外周面の縁リング部寄りの際部分であるのに対して,引用意匠部分では奥行き幅の約半ばである点。

第4 本願意匠と引用意匠の類否
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
1.共通点の評価
共通点(A)は,全体形状は,フープ部と縁リング部及びシェル部からなり,略円筒形状であるというものであるが,概括的に捉えた場合,ドラムの物品分野において,必然ともいえる形状であるから,この共通点が類否判断に与える影響は微弱である。共通点(B)については,フープ部からシェル部にかけての周面縁寄りに,内方にむけて次第に淡くなっていくグラデーション模様の暗濃色(黒色)を施すことは,本願の属するドラムの物品分野において,よく見受けられるものであるから,この共通点が類否判断に与える影響は大きいとはいえない。
よって,共通点(A)及び共通点(B)の両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は,共通点(A)が微弱であって,共通点(B)も大きいとはいえないものであるから,共に小さいものであり,共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
2.相違点の評価
これに対して,相違点(a)はすなわち,シェル部外周面とフープ部内周面に施した色彩が青色か木生地色(ベージュ色)であるか,であるが,この種ドラムの物品分野において,全体または,各部に様々な色彩を施すことは,ごく普通に行われており,多種多樣な色彩を施したものが見受けられることから,施された色彩が青色か木生地色(ベージュ色)であるかが,特段,類否判断に影響を与えるものとはいえず,この相違点が類否判断に与える影響は小さい。
相違点(b)は,フープ部の前端面について,暗濃色(黒色)を施したものか木生地色(ベージュ色)を施したものかの相違であって,それにより,本願意匠部分は,フープ部からシェル部にかけての外周面と,引用意匠部分においてはフープ部内周面と同様の色彩としたものになるが,前端面は,注意して看取できる程度のごく限られた部分であって,色彩についても,シェル部と同様な色彩を施したものもそれ以外の色彩を施したものもごく普通に見受けられるものであるから,外周面もしくは内周面と一つながりに同色彩を施した視覚的効果を加味したとしても,この種ドラムの分野において双方ともに見受けられない態様でもないから,類否判断に与える影響は大きいものとはいえない。
相違点(c)については,グラデーション模様の暗濃色(黒色)の施された部分は,両意匠部分のドラムの色彩におけるアクセントとなる部分についての相違点であって,看者の注目するところでもあり,グラデーション模様の暗濃色(黒色)の施された範囲が外周面部の約3分の1を占めるものか約2分の1を占めるものかは一見して明らかな相違であり,グラデーション模様の濃淡変化の顕著な際部分が縁リング部近縁に施されたものかより奥手方向の約半ばに施されたものとでは,その視覚的印象は異なり,この相違点は類否判断に極めて大きな影響を与えるものである。
そうすると,相違点(a)については類否判断に与える影響は小さく,相違点(b)についても類否判断に与える影響が大きくないとしても,相違点(c)が類否判断に与える影響は極めて大きく,それら相違点(a)ないし(c)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると,相違点は,共通点を凌駕して,両意匠部分を別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠部分が引用意匠部分に類似するということはできない。
3.小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通するが,形態においては,共通点が未だ両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,両意匠部分を,全体として別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-12-09 
出願番号 意願2014-24735(D2014-24735) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (E4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 越河 香苗伊藤 翔子竹下 寛 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
刈間 宏信
登録日 2017-01-27 
登録番号 意匠登録第1570276号(D1570276) 
代理人 恩田 博宣 
代理人 恩田 誠 

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