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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 J7
管理番号 1359616 
審判番号 不服2016-15002
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-05 
確定日 2017-02-07 
意匠に係る物品 医療用コネクタ 
事件の表示 意願2015- 17135「医療用コネクタ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,本意匠を意願2015-2897号(意匠登録第1532908号)とする関連意匠の意匠登録出願であって,意匠法第14条第1項の規定により本願に係る意匠を秘密にすることを請求して,平成27年(2015年)7月31日に出願された意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「医療用コネクタ」とし,その形態を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものであって,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照)


第2 原査定における拒絶の理由及び本意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠は願書に記載した本意匠に類似する意匠とは認められず,意匠法第10条第1項の規定に該当しない,としたものであって,本意匠は,平成27年(2015年)2月13日に出願され,平成27年(2015年)8月7日に意匠権の設定の登録がなされ,平成27年9月7日に意匠公報が発行された意願2015-2897号(意匠登録第1532908号)の意匠であり,意匠に係る物品を「医療用コネクタ」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(別紙第2参照),具体的には,「本願の意匠と本意匠とは,コネクタ表面にみられる凹凸模様の有無等の相違が顕著ですから,両意匠は,類似しないものと認められます。」としたものである。


第3 請求人の主な主張

これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。

1.本願意匠が登録されるべき理由
(1)本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は上記のとおり「医療用コネクタ」であって,とりわけ,輸液チューブに用いられるオス型の医療用コネクタに係る意匠である。
そして,本願意匠は,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって,当該オス型の医療用コネクタの可動ロックリング部に係る形態である(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)。

1)基本的構成態様
(a)本願意匠は,オス型の医療用コネクタにおける,全体が円筒状の可動ロックリング部に係る形態である。
(b)当該可動ロックリング部の側面には,横長長方形の窓部が設けられている。
2)具体的構成態様
(c)当該可動ロックリング部の外周面は,全周が平坦状である。
(d)当該可動ロックリング部の内面には,メス型のコネクタを接続するためのねじ溝が設けられている。

ここで,本願意匠の物品である「医療用コネクタ」は,誤接続による薬剤等の不適切な投与による患者の死亡や障害を防止すべく,可動ロックリング部に「ねじ溝」を設けることが国際規格により定められる見込みである(ISO80369-3)。
可動ロックリング部に,規格に対応した「ねじ溝」を設けることは薬剤等の誤接続防止の観点からは利点を有するものであるが,一方で,「ねじ溝」を設けることによる弊害,すなわち,可動ロックリング部内側の螺旋形状を有する「ねじ溝」やノズル部分に汚れや塵埃等が付着した場合に,これをロックリング部の上部から清掃(洗浄又は拭き取り)することは,可動ロックリングの有する形状に伴う制約により非常に困難である。
本願意匠に係る医療用コネクタは,可動ロックリング内部に汚れや塵埃等が付着した場合に,これらの清掃を容易にすべく,可動リング部の側面に窓部を設けたものである。
このような可動ロックリング部側面に窓部を設けることは,従来にない構成であり,当該構成は,医療用コネクタの「ねじ溝」に付着した汚れ等を綿棒等で清掃することができるという当該物品についての新たな機能を提供するものである。そのため,本願意匠の窓部(b)は,物品の有する機能面から,取引過程及び使用状態において需要者等の注意を最も引く部分である。

(2)本意匠
本意匠の意匠に係る物品は「医療用コネクタ」であって,とりわけ,輸液チューブに用いられるオス型の医療用コネクタに係る意匠である。
そして,本意匠は,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって,当該オス型の医療用コネクタの可動ロックリング部に係る形態である(以下,本意匠において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本意匠実線部分」という。)。

1)基本的構成態様
(a’)本願意匠は,オス型の医療用コネクタにおける,全体が円筒状の可動ロックリング部に係る形態である。
(b’)当該可動ロックリング部の側面には,横長長方形の窓部が設けられている。

2)具体的構成態様
(c’)当該可動ロックリング部の外周面には,全周にわたって,滑り止めのためのローレット加工(凹凸加工)が設けられている。
(d’)当該可動ロックリング部の内面には,メス型のコネクタを接続するためのねじ溝が設けられている。

ここで,(1)で述べたとおり,本意匠の窓部(b’)は,取引過程及び使用状態において需要者等の注意を最も引く部分である。

(3)本願意匠と本意匠(以下,「両意匠」という。)の対比
1)意匠に係る物品
両意匠は,いずれも「医療用コネクタ」に係るものであって,とりわけ,輸液チューブに用いられるオス型の医療用コネクタに係る意匠である。
そのため,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

2)用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
両部分は,いずれもオス型の医療用コネクタの可動ロックリング部であって,部分意匠としての用途及び機能は一致する。
また,位置,大きさ及び範囲についても,両部分はいずれも医療用コネクタのキャップ部やチューブ接続部を除いた可動ロックリング部であるから,部分意匠としての位置,大きさ及び範囲は共通する。

3)形態
両部分の形態については,主として次の共通点及び相違点が認められる。
3-1)共通点
両部分の形態は以下の点において共通する。
(A)可動ロックリング部全体が円筒状の形態である点
(B)可動ロックリング部側面に横長長方形の窓部が設けられている点
(C)可動ロックリング部の内面に,メス型のコネクタを接続するためのねじ溝が設けられている点
3-2)相違点
両部分の形態は以下の点において相違する。
(ア)本願意匠は可動ロックリング部の全周が平坦である一方,本意匠は可動ロックリング部の全周にわたって,滑り止めのためのローレット加工(凹凸加工)が施されている点

(4)類否判断
1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は一致する。

2)両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。

3)形態
そこで,両部分の形態について検討する。
まず,前記共通点(A)乃至(C)は,部分全体の基本的構成に係るものである。
とりわけ,共通点(B),すなわち,ロックリング部側面の横長長方形の窓部は,上述したとおり,可動ロックリング部内側のねじ溝やノズル部分に付着する汚れの清掃(洗浄又は拭き取り)のために設けられたものであって,従来には見られなかった形態である。
そうすると,医療用コネクタにおいて,内面にねじ溝が設けられた円筒状の可動ロックリング部に内側の清掃用の窓部を設けることは,従来には見られない形態上の特徴であって,取引過程及び使用状態において,需要者等が特に注意を引く部分といえ,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
これに対し,相違点(ア),すなわち,可動ロックリング部の全周にわたるローレット加工の有無は,ローレット加工が,滑り止めのために,本物品分野やその他の分野において,手で回転して螺合するロックリング部に通常用いられる加工方法であることに鑑みると,需要者等が取引過程及び使用状態において,注意をひくとはいえず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。
そうすると,共通点は,両部分の意匠に独自で特徴的なものであり,取引過程及び使用状態において需要者等の注意を強く引き,共通の美観を起こさせるものであるのに対し,ローレット加工の有無についての相違点は,その視覚に訴える意匠的効果としては,格別の評価ができないものであるから,共通点が相違点を凌駕し,両部分の意匠は類似するものと認められる。

(5)まとめ
したがって,需要者等が両意匠部分を全体的に観察した場合であっても,ローレット加工の有無による相違点が,円筒状のロックリング部側面の横長長方形の窓部から生じる共通点が看者に与える美感を覆して,両意匠を別異のものと印象付けるものとは認められないから,両意匠は類似の意匠として認識される。

2.むすび
以上のとおり,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当する意匠であるから,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができるものであり,本願は,原査定の拒絶の理由により拒絶されるべきものではない。


第4 当審の判断

以下,本願意匠が意匠法第10条第1項の規定に該当するものであるか否かを,主に,本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)を対比し,両意匠の共通点及び相違点の認定,評価を行うことにより,本願意匠が本意匠に類似するか否かについて検討し,判断する。

1.本願意匠の認定
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,患者に栄養剤を投与する際にチューブをつなぐために用いられる「医療用コネクタ」である。

(2)本願部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分は,栄養剤を供給するチューブ側コネクタを接続するためのねじの部分であり,本願部分全体を略円筒形として,略円筒形状の周側面に略横長長方形の窓部を設けたものであって,患者側チューブをつなぐ縦長略円筒形のコネクタの上部に位置し,そのコネクタよりも径を大きくして,コネクタを取り付けた部分を覆うことができるようにしたものである。

(3)本願部分の形態
本願部分の形態は,全体を,やや扁平な略円筒形として,正面視で縦横中央に直径の約1/3の横幅,高さの約1/2を縦幅とする横長長方形の窓部を設けたものであり,略円筒形の内側を雌ねじとしたものである。

2.本意匠の認定
本意匠は,第2で記載したとおりの意匠登録出願であり,意匠権の設定登録がなされ,意匠公報が発行されているものである。

(1)意匠に係る物品
本意匠の意匠に係る物品は,患者に栄養剤を投与する際にチューブをつなぐために用いられる「医療用コネクタ」である。

(2)本意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本意匠部分は,栄養剤を供給するチューブ側コネクタを接続するためのねじの部分であり,本願部分全体を略円筒形として,略円筒形状の周側面に略横長長方形の窓部を設けたものであって,患者側チューブをつなぐ縦長略円筒形のコネクタの上部に位置し,そのコネクタよりも径を大きくして,コネクタを取り付けた部分を覆うことができるようにしたものである。

(3)本意匠部分の形態
本意匠部分の形態は,全体を,やや扁平な略円筒形として,その周側面全周に縦に凹凸をつけており,正面視縦横中央に直径の約1/3の横幅,高さの約1/2を縦幅とする横長長方形の窓部を設けたものであり,略円筒形の内側を雌ねじとしたものである。

3.本願意匠と本意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
意匠に係る物品は,本願意匠と本意匠ともに「医療用コネクタ」であるから一致する。

(2)両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は,患者側チューブをつなぐ縦長略円筒形のコネクタの上部に位置し,栄養剤を供給するチューブ側コネクタを接続するためのものであるから,共通する。

(3)両意匠部分の形態
両意匠部分の形態については,主として,以下の通りの共通点及び差異点がある。
(3-1)共通点
両意匠部分は,基本的構成態様として,全体を,やや扁平な略円筒形としている点において共通する。
また,具体的構成態様として,略円筒形の周側面に正面視で縦横中央に直径の約1/3の横幅,高さの約1/2を縦幅とする横長長方形の窓部を設けている点において共通する。

(3-2)相違点
両意匠部分は,具体的構成態様として,本願部分は,略円筒形の周側面全周に何ら凹凸がないのに対し,本意匠部分は,略円筒形として,その周側面全周に縦に凹凸をつけている点において相違する。

4.共通点及び差異点の評価
以下,共通点及び相違点の評価を行う。
(1)意匠に係る物品についての評価
両意匠は,意匠に係る物品が一致するものであるが,意匠に係る物品が共通する点だけでは,両意匠部分の類否判断を決定づけるとまではいえない。

(2)両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価
両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は,共通するものであるが,栄養剤を供給するチューブ側コネクタを接続するためのものとし,医療用コネクタが多々ある中で,患者側チューブをつなぐ縦長略円筒形のコネクタの上部に位置し,そのコネクタよりも径を大きくして,コネクタを取り付けた部分を覆うことができるようにして,略円筒形の周側面に略横長長方形の窓部によって,つないでいる部分を確認できるようにしていることは,両意匠の特徴を表すものであって,両意匠の類否判断に大きく影響を及ぼすものである。

(3)両意匠部分の形態の共通点の評価
両意匠部分は,基本的構成態様において,全体を,やや扁平な略円筒形としている点は,需要者が,医療用コネクタとチューブをつなぐ際に最も注目する部分であり,両意匠の類否に大きな影響を与えるものといえる。
また,具体的構成態様において,略円筒形の周側面に正面視で縦横中央に直径の約1/3の横幅,高さの約1/2を縦幅とする横長長方形の窓部を設けていることは,医療用コネクタとチューブがきちんと接続されているかを確認するにあたって,需要者が注目する部分であり,両意匠の類否判断に与える影響は大きく,見る者に共通の印象を与えるものといえる。

(4)両意匠部分の形態の差異点の評価
これに対して,両意匠部分のやや扁平な略円筒形の周側面全周に凹凸があるかないかの差異点は,医療用コネクタをチューブとつなぐ際に,凹凸があることで滑りにくくするための技術的な側面の違いであって,周側面全周にわたって縦に凹凸を施すことは,コネクタのねじとしてはありふれた態様のものといえ,需要者に異なった印象与えるものとはいえず,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

(5)小括
そうすると,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が共通するものであり,これら共通点は両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいというべきであるのに対して,差異点はいずれも微弱であって,差異点の印象は,共通点の印象を覆すには至らないものであるから,意匠全体として見た場合,両意匠は類似する。
したがって,本願意匠は,本意匠に類似するものと認められる。


第5.むすび

以上のとおり,本願意匠は,本意匠に類似するものと認められ,意匠法第10条第1項の規定に該当し,原査定の拒絶の理由によっては,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-01-24 
出願番号 意願2015-17135(D2015-17135) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 正田 毅
山田 繁和
登録日 2017-03-03 
登録番号 意匠登録第1573289号(D1573289) 
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所 
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