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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H7
管理番号 1360540 
審判番号 不服2019-6118
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-10 
確定日 2020-03-03 
意匠に係る物品 検索機能付き電子計算機 
事件の表示 意願2017- 10569「検索機能付き電子計算機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成29年(2017年)5月18日の意匠登録出願であって、平成30年(2018年)4月27日付けの拒絶理由の通知(3条2項)に対し、同年6月14日に意見書が提出されたが、平成31年(2019年)2月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和元年(2019年)5月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠

本願は、物品に表される画像部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって、本願の願書及び添付図面の記載によれば、本願の意匠の意匠に係る物品を、「正面図及び変化した状態を示す正面図に表された画像は、検索機能を発揮できる状態にするための操作に用いられる一連の画像である。具体的には正面図に示すように、1以上の表示部が表示されており、1以上の任意の表示部を選択すると、変化した状態を示す正面図に示すように、選択した表示部の表示枠が強調表示されると共に、チェックボタンが表示される。チェックボタンを指等で触れる(タップする)と選択した表示部に対応するデータを基にデータベースを検索し、検索結果情報を表示する。」とした「検索機能付き電子計算機」としたものである。そして、本願の意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(以下「本願意匠」という)。
また、願書の記載によれば、表示画面に表れる画像(以下「表示画像」という。)のうち、意匠登録を受けようとする部分を「実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである。(以下、画面に表示された画像の中央やや下寄りに一点鎖線で形成された横長長方形の区画の部分を「本願部分」といい、実線で形成された部分を「本願画像部分」という。)(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由と引用意匠

1 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、下記に示すように、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって、具体的には、以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は、出願前から引用画像1のように広く知られた正方形状の表示領域を、広く知られた変化態様である「図形選択時に枠を太く変化させる態様」で変化させ、また、引用画像2のように広く知られた「円形の中にチェックマークを表した図形」を、引用画像3のように知られた変化態様である「図形選択時にその近傍や特定位置に操作ボタンが現れる態様」で、選択した表示領域の近傍で表示部の右端に現れるように変化させた画像を、単に表示部の中央から下方にかけての位置に表し、これを検索機能付き電子計算機に係る画像として使用した程度に過ぎませんから、当業者が容易に創作することができたものと認められます。

・引用画像1(当審注:別紙第2参照)

特許庁発行の公開特許公報記載
特開2013-015902
図2に表された画像における、下方の正方形の表示領域の画像

・引用画像2 (当審注:別紙第3参照)

大韓民国意匠商標公報 2016年 7月15日
携帯用情報端末機(登録番号30-0863659)の意匠に表示された画像における、「円形の中にチェックマークを表した図形」(添付されるイメージにおける、各図の右端下方の図形(右側の図においては、水色地の円形に表されている図形)の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HH28430452号)

・引用画像3 (当審注:別紙第4参照)

特許庁発行の公開特許公報記載
特開2016-062134
図13及び図14における「編集モードボタン」及び「移動モードボタン」の画像
(関連する記載:【発明の詳細な説明】欄の【0042】の記載) 」

第4 当審の判断

以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作をすることができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定

(1)本願意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「検索機能付き電子計算機」ある。

(2)本願部分の用途及び機能
本願部分の用途及び機能は、検索機能を発揮できる状態にするための操作に用いられる一連の画像であり、表示部による表示、選択した表示部の強調表示とチェックボタンの表示、チェックボタンを指等で触れる(タップする)と選択した表示部に対応するデータを基にデータベースを検索し、検索結果情報を表示することができるものである。

(3)本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分の物品全体の形態の中における位置、大きさ及び範囲については、検索機能付き電子計算機における正面側全面に設けられた画面に表示された画像の中央からやや下寄りの位置に設けられ、画面に表示された画像の約1/3の面積を占める範囲のものである。

(4)本願部分の形態
ア 本願部分の外形状
本願部分全体の外形状の縦横比を約1:3とする横長長方形としたものである。
イ 「正面図」における本願部分の形態
(ア)本願部分の下寄り約4分の3を占める範囲には、複数の略隅丸正方形状の表示部(以下「正方形状表示部」という。)を並列配置したものであって、
(イ)具体的には、2つ半の正方形表示部からなるものであり、左端から2つめの正方形状表示部を本願画像部分としたものである。
ウ 「変化した状態を示す正面図」における本願部分の形態
(ア)本願部分の下寄り約4分の3を占める範囲には、複数の正方形状表示部を並列配置したものであって、
(イ)具体的には、2つ半の正方形表示部からなるものであり、左端から2つめの正方形状表示部を本願画像部分としたものであり、
(ウ)本願部分の右上寄りには、チェックボタンを設け、このチェックボタンは外形を小円形とし、その中に略倒「「」記号状のチェックマーク(以下「チェックマーク」という。)を表したものである。

2 引用意匠の認定

原査定における拒絶の理由で引用された、引用画像1ないし引用画像3に表れた画像を含む意匠の意匠に係る物品及び形態は、概要以下のとおりである。

(1)引用画像1
引用画像1は、画像検索装置に表示された画像における表示領域の画像であり、この表示領域には略正方形状の表示部が4個横に隣接して配列しており、それらの4個の略正方形状の表示部の上には高さが表示部の約3分の1程度の余白がある。また、当該余白部と表示部を合わせた領域と表示部領域の比率を約7:5としたものである。そして、当該余白部と表示部を合わせた領域の縦横比を約1:3としたものである。

(2)引用画像2
引用画像2は、携帯用情報端末機に表示された画像における、「円形の中にチェックマークを表した図形」である。このチェックマークは、略倒「「」記号状としたものである。また、円形は水色、チェックマークは白色に着色したものである。

(3)引用画像3
引用画像3は、特許庁発行の公開特許公報に記載された【発明の名称】によると「オブジェクト操作システム及びオブジェクト操作制御プログラム並びにオブジェクト操作制御方法」に関する画像である。また、【発明の詳細な説明】の【0042】の記載によると、「本実施例では、オブジェクトに対して実行可能な操作を明確にするために、図13に示すように、各々のオブジェクトにタッチすると、編集に関わる操作が実行可能であることを示す操作モードボタン(ここでは、ペンの図形で示す編集モードボタン)と、配置に関わる操作が実行可能であることを示す操作モードボタン(ここでは、十字の矢印で示す移動モードボタン)とが表示されるようになっている。なお、操作モードボタンの表示方法は上記に限定されず、例えば、図14に示すように、表示画面の所定位置に移動モードボタンや編集モードボタンを表示してもよい。そして、図6のS105の判定結果及びユーザによって行われた操作に応じて、操作モードボタンの表示を変更する。」とするものです。また、図13によれば、オブジェクトは隅丸横長長方形であり、1つのオブジェクの右上部のオブジェクトの外側に近接して「ペンの図形で示す編集モードボタン」と「十字の矢印で示す移動モードボタン」が縦に配置されている。また、図14においては、1つの表示画面内の右上隅に「ペンの図形で示す編集モードボタン」と「十字の矢印で示す移動モードボタンが縦に配置されている。」としたものである。「ペンの図形で示す編集モードボタン」は45度傾斜した細長矩形状の左下部を面取りして尖らせて表したものであり、「十字の矢印で示す移動モードボタン」は十字状の上下左右のそれぞれの先端部を矢印状に表したものである。

3 本願意匠の創作非容易性の判断

意匠法第3条第2項の規定の適用についての判断は、画像を含む意匠の構成態様において、それらの基礎となる構成要素や具体的態様が本願出願前に公然知られ、又は広く知られており、それらの構成要素を、ほとんどそのまま、又は当該分野においてよく見られる改変を加えた程度で、当該分野においてありふれた手法である単なる組合せ、若しくは、構成要素の全部又は一部の単なる置換えなどがされたにすぎないものであるか否かを判断することにより行うものであるところ、本願部分の形態は、上記第4 1(4)アないしウに示すとおりである。
そして、本物品分野である「検索機能付き電子計算機」と関連する情報機器分野である、引用画像1ないし3において、上記第4 1(4)ア「本願部分全体の外形状の縦横比を約1:3とする横長長方形としたものである。」、イ(ア)「本願部分の下寄り約4分の3を占める範囲には、複数の略隅丸正方形状の表示部(以下「正方形状表示部」という。)を並列配置したものであって、」、イ(イ)「具体的には、2つ半の正方形表示部からなるものであり、左端から2つめの正方形状表示部を本願画像部分としたものである。」、ウ(ア)「本願部分の下寄り約4分の3を占める範囲には、複数の正方形状表示部を並列配置したものであって、」及びウ(イ)「具体的には、2つ半の正方形表示部からなるものであり、左端から2つめの正方形状表示部を本願画像部分としたものであり、」については、本願出願前より公然知られた引用画像1の表示領域と余白領域の比率を若干改変し、表示部を隅丸にしたに過ぎない程度であり、ほとんどそのまま、転用した範囲といえるものである。
また、ウ(ウ)「・・・このチェックボタンは外形を小円形とし、その中に略倒「「」記号状のチェックマーク(以下「チェックマーク」という。)を表したものである。」については、引用画像2のチェックマークの右下方向直線部と右上方向直線部の長さの比率を若干改変し、彩色を施さず線図で構成したに過ぎない程度であり、ほとんどそのまま、転用した範囲といえるものである。
しかしながら、ウ(ウ)「本願部分の右上寄りには、チェックボタンを設け、・・・」については、表示群とチェックボタンの位置関係が、本願出願前に公然知られた態様とはいえず、公然知られた態様によく見られる改変を加えた程度のものとはいうことができない。
そして、引用画像3に表されている2つのボタンの機能は、「編集に関わる操作が実行可能であることを示す操作モードボタン」及び「配置に関わる操作が実行可能であることを示す操作モードボタン」であり、つまり、オブジェクトが現在どのような操作が可能な状態かを示す「操作モード表示機能」である。一方、本願のチェックボタンの機能は、「チェックボタンを指等で触れる(タップする)と選択した表示部に対応するデータを基にデータベースを検索する」もの、つまり、検索を開始するための「検索開始機能」であって、本願と引用画像3のボタンは機能が相違するものである。
そうすると、画像を含む意匠の構成態様において、それらの基礎となる構成要素や具体的態様が本願出願前に公然知られ、又は広く知られており、それらの構成要素を、ほとんどそのまま、又は当該分野においてよく見られる改変を加えた程度にすぎないものであるということはできず、本願意匠は、当業者が公然知られた形状に基づいて容易に創作することができたものではない。

第5 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって拒絶することはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。


よって、結論のとおり審決する。




審決日 2020-02-19 
出願番号 意願2017-10569(D2017-10569) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中田 博康 
特許庁審判長 木村 恭子
特許庁審判官 江塚 尚弘
小柳 崇
登録日 2020-03-12 
登録番号 意匠登録第1656307号(D1656307) 

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