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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 F3
管理番号 1361535 
審判番号 不服2019-16421
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-04 
確定日 2020-04-10 
意匠に係る物品 ファイル 
事件の表示 意願2018- 19490「ファイル」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年(2018年)9月6日の意匠法第4条第2項の適用を受けようとする意匠登録出願であり、平成31年4月23日付けの拒絶理由通知に対し、令和元年(2019年)6月19日に意見書が提出されたが、同年9月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年12月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「ファイル」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。別紙第1参照。)、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を、「赤色に着色された部分を除く部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。拡大図を含めて意匠登録を受けようとする部分を特定している。各図において表面部全面に表された濃淡は、いずれも立体表面の形状を特定するためのものである。」としたものである(以下「本願部分」という。)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、下記に示すように、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には以下のとおりである。

「この意匠登録出願の意匠は、ファイルに係るもので、正面視中央のリングとじ具部及び背面視中央下方の小円形部を除く部分について部分意匠として意匠登録を受けようとするものですが、この種物品分野においては、本願出願前より、ファイル背表紙の両側部と表表紙と裏表紙との間に、縦方向全体にわたり折り曲げ線を複数設けることは、例えば下記の意匠1乃至意匠3にみられるとおり、本願出願前から公然知られています。
そうすると、本願出願前より公然知られた下記の意匠4の背表紙の両側部と表表紙と裏表紙との間に、本願出願前より公然知られた手法によって縦方向全体にわたり複数の折り曲げ線を設けたに過ぎない本願意匠は、当業者であれば容易に創作することができたものです。

意匠1(当審注:別紙第2参照):
特許庁発行の公開実用新案公報記載
平成 2年実用新案出願公開第142079号
考案の名称『ルーズリーフ用ファイル』の各図に表されたファイルの意匠

意匠2(当審注:別紙第3参照):
特許庁意匠課が2006年 8月11日に受け入れた
Foaming BeautyPP 発泡美人 環境にやさしい新素材世界初!表紙が、画期的な3層発泡PP素材の発泡美人シリーズ リングファイル
第2頁所載
バインダーの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC18031573号)

意匠3(当審注:別紙第4参照):
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2016年 5月19日
受入日 特許庁意匠課受入2016年 6月17日
掲載者 コクヨ株式会社
表題 商品詳細 クリヤーブック(ノビータ)固定B5縦20枚透明青
掲載ページのアドレス
http://www.kokuyo-shop.jp/shop/ProductDetail.aspx?sku=4901480271682&CD=F1002106&WKCD=
に掲載された『ファイル』の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ28010696号)

意匠4(当審注:別紙第5参照):
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2016年 9月 3日
受入日 特許庁意匠課受入2016年10月21日
掲載者 株式会社カウネット
表題 キングジム レターファイルBF 法人向け|カウネット
掲載ページのアドレス
http://www.kaunet.com/rakuraku/variation/00001653/?LID=0&category=016_016006_0160060005
に掲載された『ファイル』の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ28037279号)」

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「ファイル」である。

(2)本願部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
本願部分は、ファイルの綴じ込み金具を除く部分であって、具体的には、表表紙部、背表紙部及び裏表紙部が連接してなる表紙部と、背表紙部に設けられた見出し紙挿入用ポケット部(以下「ポケット部」という。)であって、ポケット部内に配された見出し紙を含むものである。

(3)本願部分の形態
ア 本願部分の全体形状は、全体を略隅丸横長長方形の板状材を、背表紙を挟んで2つに折り曲げて形成してなるものであり、背表紙部と表表紙部及び裏表紙部との境界箇所には、それぞれ上下方向に折り曲げ線を形成する細溝(以下「折り曲げ線」という。)を細幅等間隔に3本設けているものであって、

イ 正面視は、本願意匠の内面側を表しているものであって、

ウ 背面視は、本願意匠の外面側を表しているものであって、(ア)背表紙部の上寄り約4/5を占める範囲に見出し紙を挿入したポケット部を、上端部を除く周縁を溶着して配しており、具体的には、(イ)ポケット部の左右両側の溶着部は、背表紙寄り左右両側の折り曲げ線の外側であって、背表紙側から2本目の折り曲げ線との間に配してなるものである。

2 引用意匠の認定
原査定における拒絶の理由で引用された、意匠1ないし意匠4の意匠に係る物品及び形態は、概要以下のとおりである。

(1)意匠1
引用意匠1の意匠に係る物品は「ルーズリーフ用ファイル」であり、引用意匠1のうち、原審拒絶理由における本願部分の創作非容易性の判断の根拠となる態様は、背表紙部と表表紙部及び裏表紙部との境界箇所には、それぞれ上下方向に4本の折り曲げ線を、表紙の外側と内側とに細幅等間隔に設けられている態様である。なお、ポケット部の左右両側の溶着部は、背表紙部から最外側の折り曲げ線の外側に配してなるものである。

(2)意匠2
引用意匠2の意匠に係る物品は「バインダー」であり、引用意匠2のうち、原審拒絶理由における本願部分の創作非容易性の判断の根拠となる態様は、複数の折り曲げ線からなり、上面視略半円状とする背表紙部のうち、上下方向に複数の折り曲げ線を設けてなる態様である。なお、引用意匠2にポケット部は表れない。

(3)意匠3
引用意匠3の意匠に係る物品は「ファイル」であり、引用意匠3のうち、原審拒絶理由における本願部分の創作非容易性の判断の根拠となる態様は、背表紙部と表表紙部及び裏表紙部との境界箇所には、それぞれ上下方向に3本の折り曲げ線が細幅等間隔に設けられている態様である。なお、ポケット部の左右両側の溶着部は、背表紙部から最外側の折り曲げ線の外側に配してなるものである。

(4)意匠4
引用意匠4の意匠に係る物品は「ファイル」である。また、引用意匠4うち、原審拒絶理由における本願部分の創作非容易性の判断の根拠となる態様は、背表紙部の上寄り約4/5を占める範囲に、ポケット部を、上端部を除く周縁を溶着して配しており、具体的には、ポケット部の左右両側の溶着部は、背表紙部左右両側の折り曲げ線の外側に配してなるものである。

3 本願意匠の創作非容易性について
意匠法第3条第2項の規定の適用についての判断は、「意匠登録を受けようとする部分」の全体の形態が、当該意匠登録出願前に公然知られた形態に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものであるか否かを判断すると共に、当該部分の用途及び機能を考慮し、「意匠登録を受けようとする部分」を当該物品全体の形態の中において、その位置、その大きさ、その範囲とすることが、当業者にとってありふれた手法であるか否かを判断することにより行うものである。

この種物品分野においては、一冊のファイルに収容する書類量の多寡に応じて各種の幅の背表紙を有するファイルが存在するものであり、当業者は、一冊のファイルに収容する書類量の増加に起因する表表紙及び裏表紙の変形や、書架における整理・保管の規律性に留意して意匠の創作を行うものであるといえるところ、
上記1(3)アの態様のうち、全体を略隅丸横長長方形の板状材を折り曲げて形成してなるものとすることについては、例示をあげるまでもなく、この種物品分野における通常の形態であり、また、背表紙部と表表紙部及び裏表紙部との境界箇所に、それぞれ上下方向に3本の折り曲げ線を細幅等間隔に設けることは、意匠3に表れており、折り曲げ線の本数及び間隔を各種の態様とすることについても、意匠1及び意匠3に表れるとおりであるから、上記1(3)アに係る態様は、いずれも本願意匠独自の創意工夫に基づく態様とはいえない。さらに、上記1(3)イの態様についても、例示をあげるまでもなく、この種物品分野における通常の態様といえることから、本願意匠独自の着想や独創性が表れているとはいえず、上記1(3)ウ(ア)に係る態様についても、意匠4に表れるとおり、この種物品分野においては一般的に表れる態様であるから、本願意匠独自の創意工夫に基づくものとはいえない。
しかしながら、上記1(3)ウ(イ)の具体的態様である、ポケット部の左右両側の溶着部を、背表紙寄り左右両側の折り曲げ線の外側に配することが、意匠4に表れるとしても、背表紙側から2本目の折り曲げ線との間に配することは、意匠1ないし意匠4からは導き出せず、この物品分野においてありふれた形状といえるものでもなければ、ありふれた手法を用いて僅かに改変した程度のものといえる証拠もないことから、当業者が容易に創作することができたものということはできない。

そうすると、本願意匠は、ファイルの分野において、上記1(3)アないしウ(ア)に係る部分に特段の創作性を認めることはできないものの、上記1(3)ウ(イ)の態様は、この種物品分野において独自の着想によって創出したといえるものであり、意匠1ないし意匠4の形態に基づいて、本願意匠の形態を容易に創作することができたことを示す証拠は見られないから、本願意匠の形態は、この種物品分野において独自の着想によって創出したといわざるを得ず、当業者が公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状の結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2020-03-31 
出願番号 意願2018-19490(D2018-19490) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (F3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 桐野 あい 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 江塚 尚弘
木村 恭子
登録日 2020-05-07 
登録番号 意匠登録第1660284号(D1660284) 
代理人 特許業務法人藤本パートナーズ 

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