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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B3 |
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管理番号 | 1364073 |
審判番号 | 不服2019-13873 |
総通号数 | 248 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-10-17 |
確定日 | 2020-07-20 |
意匠に係る物品 | 宝石 |
事件の表示 | 意願2018- 9779「宝石」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年(2018年)5月2日の意匠登録出願であって、平成31年2月14日付けの拒絶理由の通知に対し、同年4月10日に意見書が提出されたが、令和元年(2019年)7月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年10月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「宝石」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 拒絶理由通知において引用された意匠は、以下のとおりである(別紙第2参照)。 「特許庁普及支援課が2008年 5月 8日に受け入れた 米国特許商標公報 2008年 4月15日08W16号 宝石(登録番号US D566610S)の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH20311109号)」 第4 当審の判断 1 本願意匠及び引用意匠の認定 (1)本願意匠 ア 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は、「宝石」である。 イ 本願意匠の形態 (ア)全体形状は、その基本形状及び構成比率を、平面視略正円のいわゆる58面体ラウンドブリリアントカット状の形態であって、 (イ)側面視において、クラウンの角度を約35度、パビリオンの角度を約41度とし、クラウンとパビリオンの高さの比を、約1:3として、細幅のガードルを挟んで構成するものであり、 (ウ)平面視において、クラウンの中央部に略正八画形状のテーブルを、正面視において全体の幅の約6割の幅となるように形成し、当該正八角形のテーブルの各辺からガードルに向けて、それぞれ放射状に8つの同型同大の二等辺三角形状のスターファセットとその周縁に8つの凧型四角形状のベセルファセットを、スターファセットを挟み込むように設け、その周縁に8つの二等辺三角形を2分割したアッパーガードルファセットを設け、 (エ)底面視において、中心から放射状にロワーガードルファセットを16等分して設け、隣り合うロワーガードルファセットとの間には、12時の位置から時計回りに7番目及び15番目の位置に稜線を、キューレットを挟んで対称に表すほか、残余の14の位置には略同型同大のやや細幅のパビリオンファセットを設けてなる態様とするものである。 (2)引用意匠 ア 意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は、「宝石」である。 イ 引用意匠の形態 (ア)全体形状は、その基本形状及び構成比率を、平面視略正円のいわゆる58面体ラウンドブリリアントカット状の形状であって、 (イ)側面視において、クラウンの角度を約35度、パビリオンの角度を約41度とし、クラウンとパビリオンの高さの比を、約1:3として、細幅のガードルを挟んで構成するものであり、 (ウ)平面視において、クラウンの中央部に略正八画形状のテーブルを、正面視において全体の幅の約6割の幅となるように形成し、当該正八角形のテーブルの各辺から、ガードル部に向けて、それぞれ放射状に8つの同型同大の二等辺三角形状のスターファセットとその周縁に8つの凧型四角形状のベセルファセットを、スターファセットを挟み込むように設け、その周縁に8つの二等辺三角形を3分割したアッパーガードルファセットを設け、 (エ)底面視において、中心から放射状にロワーガードルファセットを16等分して設け、12時の位置から時計回りに稜線とパビリオンファセットとを交互に8つずつ設けてなる態様とする、いわゆるモダンタイプの58面体ラウンドブリリアントカットにおけるパビリオン形状とするものである。 2 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも、装身具に用いられる装身用玉として用いられる「宝石」であるから、一致する。 (2)形態の対比 ア 形態の共通点 (共通点1)両意匠は、全体の基本形状及び構成比率を、の基本形状及び構成比率を、いわゆるモダンタイプの58面体ラウンドブリリアントカット状の形状とする点で共通する。 (共通点2)両意匠は、側面視において、クラウンの角度を約35度、パビリオンの角度を約41度とし、クラウンとパビリオンの高さの比を、約1:3として、細幅のガードルを挟んで構成する点で共通する。 (共通点3)両意匠は、平面視において、略正円状とするクラウンの、中央部に直径をガードルの約53%の長さとする略正八画形状のテーブル部を設け、正八角形のテーブルの各辺から、ガードルに向けて、それぞれ放射状に8つの同型同大の略二等辺三角形状のスターファセットとその周縁に8つの略凧型四角形状のベセルファセットを設け、その周縁に8つのアッパーガードルファセットを設けている点で共通する。 (共通点4)底面視において、中心から放射状にロワーガードルファセットを16等分して設け、隣り合うロワーガードルファセット間に、パビリオンファセット及び稜線を設けている点で共通する。 イ 形態の相違点 (相違点1)両意匠は、平面視における8つのアッパーガードルにおける個々の分割態様について、本願意匠が2分割としているのに対し、引用意匠は3分割している点で相違する。 (相違点2)両意匠は、底面視において、16面の隣り合うロワーガードルファセット間におけるパビリオンファセットと稜線との配設態様について、本願意匠が、12時の位置から時計回りに7番目及び15番目の位置に稜線を、キューレットを挟んで対称に表すほか、残余の14の位置には略同型同大のやや細幅のパビリオンファセットを設けてなる態様とするものであるのに対し、引用意匠は、12時の位置から時計回りに稜線とパビリオンファセットとを交互に8つずつ設けてなる態様とするものである点で相違する。 3 判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。 (2)形態の共通点及び相違点の評価 両意匠の意匠に係る物品は、装身具に用いる宝石であって、全体の構成比率や、構成態様、面取りの大きさ、形状や角度、さらに研磨の具合等にも工夫を凝らした種々のものがあることから、この種物品分野における需要者は、物品の全体形状だけでなく、各部の具体的形状について、その効果とあわせて、子細に観察するものである。そして、この種物品分野における需要者は、最終製品である装身具の購入者に流通段階での取引者が含まれるということができる。 ア 形態の共通点 共通点1ないし共通点3については、いずれもいわゆる58面体ラウンドブリリアンカットを施してなる宝石の特徴となる広く知られた形態であって、両意匠のみの特徴とはいえないから、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 共通点4についても、隣あうロワーガードルファセット間にパビリオンファセットと稜線を設けることは、この種物品分野においては、例示を示すまでもなく広く知られた態様といえ、両意匠のみの特徴とはいえないから、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 イ 形態の相違点 相違点1については、この種物品分野においては、どちらも例示するまでもなくありふれて行われているところであるから、当該相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 相違点2については、引用意匠が、いわゆる58面体ラウンドブリリアントカットにおけるパビリオン形状を示すものであるのに対し、本願意匠は、引用意匠よりもやや細幅のパビリオンファセット7面ずつを、2本の対向する稜線を挟んで配設する態様であって、この種物品の先行意匠に照らして、本願意匠のみが有する特徴的な形態であることに加え、この種物品分野における需用者は、要すれば拡大鏡を用いて細部の創作やその効果を子細に観察するものであることや、本願意匠には、創作の結果として、流通段階での取引者が観察する際に注意を引く、先行意匠に見られない新規な像が出現することを勘案すれば、当該相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 (3)両意匠の類否判断 上記の観点を踏まえ、意匠の共通点及び相違点についての評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、本願意匠は、いわゆる58面体ラウンドブリリアントカット状の宝石の形状に基軸を置きつつも、パビリオンの態様において、上記、第4 2(2)イ(相違点2)のとおり、底面視において、キューレットを挟んで一対の稜線を対称に配設し、残余の位置に全てパビリオンファセットを配設する創作により、本願意匠と引用意匠とは、意匠全体として観察した場合に別異の美感を起こさせるものといわざるを得ないものである。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。 第5 むすび 以上のとおり、本願意匠は引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2020-07-01 |
出願番号 | 意願2018-9779(D2018-9779) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(B3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山永 滋 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
木村 恭子 江塚 尚弘 |
登録日 | 2020-07-22 |
登録番号 | 意匠登録第1665771号(D1665771) |
代理人 | 早崎 修 |