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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 D4
管理番号 1365003 
審判番号 不服2020-2362
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-21 
確定日 2020-08-11 
意匠に係る物品 換気扇用フィルター 
事件の表示 意願2019- 2610「換気扇用フィルター」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
平成31年 2月 8日 意匠登録出願
令和 1年 7月25日付け 拒絶理由通知書
令和 1年 9月10日 意見書提出
令和 1年11月13日付け 拒絶査定
令和 2年 2月21日 審判請求書提出

第2 本願の意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする、2019年(平成31年)2月8日の意匠登録出願(意願2019-2610)であって、その意匠は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「換気扇用フィルター」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものであって、「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。1点鎖線は、部分意匠として登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである。(以下「本願意匠」という(別紙第1参照)。また本願の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を以下「本願部分」という。)

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって、具体的には、以下のとおりである。
「本願意匠に係る「レンジフード用フィルター」の分野において、全体が不織布からなり、それに粘着剤を部分的に塗布して種々の模様を形成することは、例えば下記の意匠1において見られるとおり、本願出願前よりごく一般的に行われています。
そうすると、本願出願前より公然知られた下記の模様1を用いて、本願出願前よりごく一般的に行われている手法によりレンジフード用フィルターの模様を形成したにすぎない本願の意匠は、当業者であれば容易に創作をすることができたものです。
なお、本願意匠の当該模様の配置態様、すなわち大きさ及び模様の反転等は、模様の施された平面的な物品においてごく一般的に見受けられるものであるため、これらについては特段の創作とすることができません。・・・

【模様1】
表題 東洋アルミ(おうちのキレイフィルター)ウィルス対策フィルター エアコン・空気清浄機用
掲載箇所 下記URL内
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 2016年9月29日
検索日 2019年6月14日
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス
https://www.amazon.co.jp/%E6%9D%B1%E6%B4%8B%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%9F-TOYO-ALUMINIUM-%E3%81%8A%E3%81%86%E3%81%A1%E3%81%AE%E3%82%AD%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BC-%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%82%B9%E5%AF%BE%E7%AD%96%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BC/dp/B01LZC4GQT?pf_rd_p=87bc1fbb-21fa-4094-b50d-82b1f502a06c&pd_rd_wg=x86br&pf_rd_r=HHHFDNFC1JE02CK15CRP&ref_=pd_gw_cr_simh&pd_rd_w=M8tO8&pd_rd_r=c78df412-806d-4eaa-80ae-a6ebe02cec32
上記ページに掲載された商品画像内右下のキャラクター
【意匠1】
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1574192号の意匠
の実線及び破線で表されたレンジフード用フィルターの意匠」

第4 当審の判断
請求人の主張を踏まえ、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が容易に創作することができたか否かについて、検討し、判断する。
1 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は「換気扇用フィルター」であって、全体形状は正方形板状で、不織布表面上に透明の粘着剤を部分的に塗布して形成し、正面視、全体の対角線の長さを1として、右上から左下に向かう対角線上の約3分の2から左下隅に亘る、(右上から左下に向かう対角線方向を縦として)縦横長さ比率が約4分の1の長さ幅:約4分の1の長さ幅の範囲に粘着材で形成された左下隅の模様部に沿って任意に区画した部分が本願部分であり、本願部分は、(ア)左腕(正面視向かって右側)を挙げた、頭部が略台形状であって、丸い耳部を設けた熊様のキャラクターの模様部を、(イ)正面視、左下隅部から対角線方向に約45度方向に傾けて配し、左下隅側を対角線右上方向に角部を向けた直角状角形に切り欠き、その角部はキャラクターの模様部の顔手前で、連なる右肩下にあたる箇所は鉛直線状に、左脇は水平線状に断ち切った形態の、(ウ)粘着材を塗布した部分を太線状に形成しているものである。

2 引用意匠
(1)意匠1(別紙第2参照)
意匠に係る物品は「レンジフード用フィルター」であり、不織布に粘着剤が塗布されてなる例示としてあげられたものであって、正面視において、実線及び破線で表された形態は、全体形状は横長長方形板状で、不織布の表面上に透明の粘着剤を部分的に塗布して形成し、その塗布部分は、全体を水平方向に大きく4つに区分する大きな縦長長方形状枠部と小さな横長長方形状枠部を上下に配してそれらの枠内全体に配した斜め格子と全体の左上と右下に配した横向きの文字列部である。
(2)模様1(別紙第3参照)
「レンジフード用フィルター」の「包装用袋」に表された模様であり、模様1は、インターネット上で掲載された“東洋アルミ(おうちのキレイフィルター)ウィルス対策フィルター エアコン・空気清浄機用”の「包装用袋」の正面の右下に配置されたキャラクター模様である。具体的には、模様1において、キャラクターは右腕を挙げ、左腕を下ろして直立した全身像で、丸い耳部を設けた頭部が略台形状の、丸みのある腹部と略半球状の短い脚部から形成された熊様のキャラクターで、黄色い星状の飾りのついた黒色のベルトを腰部に巻き、輪郭を黒色の太線で表し、体色は白色に表されている。

3 本願部分の創作非容易性について
物品の部分に係る創作非容易性の判断については、当該部分の形態が、当該意匠登録出願前に公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものであるか否かを判断すると共に、当該部分の用途及び機能を考慮し、「意匠登録を受けようとする部分」を当該物品全体の形態の中において、その位置、大きさ及び範囲とすることが、当業者にとってありふれた手法であるか否かを判断することにより行うべきところ、
本願部分の用途及び機能は、「換気扇用フィルター」として、主に換気扇室内側に取り付けて換気扇の汚れを防ぐ用途であって、換気扇を通る空気中のほこりや油煙などを濾し取る機能に係るものと認められ、換気扇用フィルターの物品分野において、ごく普通の用途及び機能であるから、格別の機能及び用途に係るものであるということはできない。
次に、位置、大きさ及び範囲について検討すると、その、位置及び大きさ及び範囲については、本願部分は室内側の換気扇口の隅部周縁程度の大きさであると推認され、換気扇用フィルターの物品分野において、よく見受けられる程度の大きさであり、その全体の中の位置についても正方形板状の正面左下隅部であるからごく普通に見受けられる程度のものであって、範囲については、対角線の長さを1として、右上から左下に向かう対角線上の約3分の2から左下隅に亘る、(右上から左下に向かう対角線方向を縦として)縦横長さ比率が4分の1の長さ幅:約4分の1の長さ幅の範囲であって、引用意匠(意匠1及び模様1)には見受けられないが、縦横略同尺程度の範囲であって、隅部に模様部を施す範囲として、格別のものとまではいうことはできない。
そして、本願部分の形態については、不織布上に模様部を、上記1の(ウ)の太線状に粘着材を塗布して形成しているものとすることは、「換気扇用フィルター」の物品分野でよく見受けられる手法(例えば、意匠1)であって、上記1の(ア)の形態についても、キャラクター模様は胸前までの上半身の形態については、既存の模様部として模様1におおむね表されており、挙げた腕部が右か左かという点について、模様部を左右反転させて表すことは、この種「換気扇用フィルター」の物品分野に限らず、例示するまでもなく、ごく普通に行われる手法に基づくものであるから、これらの点について格別の創意を施したということはできない。
しかしながら、上記1の(イ)の形態については、本願出願前に公然知られた形態である意匠1及び模様1のいずれにも表されておらず、キャラクター模様部をどのような向きで配置し、(全身の)どこまでの形態を表し、キャラクター模様部の端部をどのように処理するかという点も創作の余地が存在するというべきところ、たとえ、傾けて模様部を配する際に約45度の傾きを採用することが、「換気扇用フィルター」の物品分野に限らず、ごく普通に行われる模様配置の常套的手法であるとしても、正面視、左下隅側を対角線右上方向に角部を向けた直角状角形に切り欠き、その角部はキャラクターの模様部の顔手前で、連なる右肩下にあたる箇所は鉛直線状に、左脇は水平線状に断ち切った形態とすることが「換気扇用フィルター」の物品分野において本願意匠出願前にありふれた手法であったとする証拠もないから、周知の創作手法であったとすることはできず、本願部分の独自の特徴を形成しているといえる。

4 小括
よって、本願部分の用途、機能とすること、また、「意匠登録を受けようとする部分」を当該物品全体の形態の中において、その位置,大きさとすることが、ごく普通に見受けられる程度のものであり、範囲についても格別の創作ということはできないものであり、いずれも当業者が公然知られた意匠に基づいて容易に想到することができたものであったとしても、形態について、上記1の(イ)の形態とすることが、「換気扇用フィルター」の物品分野において本願意匠出願前にありふれた手法であったとする証拠はなく、「当該物品分野において周知の創作手法」によって創作することができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2020-07-15 
出願番号 意願2019-2610(D2019-2610) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (D4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 遥子一柳 萌 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 濱本 文子
渡邉 久美
登録日 2020-08-26 
登録番号 意匠登録第1668131号(D1668131) 
代理人 山本 英明 
代理人 葛西 さやか 
代理人 葛西 泰二 

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