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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属さない(申立成立) C4 |
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管理番号 | 1366128 |
判定請求番号 | 判定2019-600022 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2019-09-02 |
確定日 | 2020-08-31 |
意匠に係る物品 | 美容器 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1617444号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | 「イ号意匠を及びその説明書に示す意匠」は、登録第1617444号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 平成29年12月19日 意匠登録出願(意願2017-29680号) 平成30年10月19日 意匠権の設定の登録(登録第1617444号) 令和 元年 9月 3日受付 本件判定請求(本件判定請求人) 令和 2年 3月 5日付け 審尋(1回目) 令和 2年 3月16日受付 回答書提出(本件判定請求人) 令和 2年 6月24日付け 審尋(2回目) 令和 2年 7月 8日受付 回答書提出(本件判定請求人) 第2 請求の趣旨及び理由の要点 1 請求の趣旨 本件判定請求人(以下「請求人」という。)は、 「イ号意匠及びその説明書に示す意匠は、登録第1617444号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求める。」 と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張をした(「審尋回答書」の内容を含む。)。 2 判定請求の必要性 本件判定被請求人(株式会社ビューティフルエンジェル)は、本件判定請求に係る登録意匠「美容器」(甲第1号証、以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。 本件判定被請求人は、本件判定請求人(アーリーバード株式会社)がAmazon.co.jpにおいて販売しているイ号意匠(甲第2号証)の美容器(イ号物件)は、本件登録意匠の意匠権を侵害するものであるとして、Amazon.co.jpにおける出品停止の申し立てを行った。 これに対して、本件判定請求人は、「イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない」旨主張するので、特許庁による判定を求める。 3 本件登録意匠の説明 本件登録意匠は、意匠に係る物品を「美容器」とし、その形態の要旨を、次のとおりとする(甲第1号証参照)。 すなわち、 (1)基本的な構成態様は、使用者が把持する持ち手部と、使用者の肌面に接触させるヘラと、により構成されている。 (2)具体的な構成態様は、 ア 持ち手部が、全体として縦長かつ丸みを帯びた形状であり、その略中央部にくびれが形成されており、 イ ヘラが、正面視で略台形状の薄板状体として構成されており、 ウ 持ち手部が、その内部に水を蓄えておく給水タンクを収容していることから、上半分が、後方に向かって膨出している(特に左側面図において顕著)。 4 イ号意匠の説明 本件イ号意匠は、意匠に係る物品を「美容器」とし、その形態の要旨を、次のとおりとする(イ号意匠及びその説明書参照)。 すなわち、 (1)基本的な構成態様は、使用者が把持する持ち手部と、使用者の肌面に接触させるヘラと、により構成されている。 (2)具体的な構成態様は、 ア 持ち手部が、全体として縦長かつ丸みを帯びた形状であり、その略中央部にくびれが形成されており、 イ ヘラが、正面視で略台形状の薄板状体として構成されており、 ウ 持ち手部の厚みが、略一定に構成されている。 5 本件登録意匠とイ号意匠との比較説明 (1)両意匠の共通点 ア 両意匠は、意匠に係る物品が「美容器」で一致している。 イ 基本的な構成態様において、使用者が把持する持ち手部と、使用者の肌面に接触させるヘラと、により構成されている。 ウ 具体的な構成態様において、持ち手部が、全体として縦長かつ丸みを帯びた形状であり、その略中央部にくびれが形成されており、ヘラが、正面視で略台形状の薄板状体として構成されている。 (2)両意匠の差異点 ア 本件登録意匠は、持ち手部が、その内部に水を蓄えておく給水タンクを収容していることから、上半分が、後方に向かって膨出しているのに対し、イ号意匠は、その内部に水を蓄えておく給水タンクを収容しておらず、その厚みが、略一定に構成されている。 6 イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない理由の説明 本件登録意匠に関する先行周辺意匠 甲第3号証 Amazon.co.jpのWebページ (URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B074V2WCZ3) 取り扱い開始日:平成29年8月15日(甲第3号証第3頁参照) 甲第4号証 Amazon.co.jpのWebページ (URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B074H4H7HH) 取り扱い開始日:平成29年8月1日(甲第4号証第4頁参照) 甲第5号証 Amazon.co.jpのWebページ (URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B077G7HLT7) 取り扱い開始日: 平成29年11月13日(甲第5号証第3頁参照) (2)本件登録意匠の要部 上記先行周辺意匠をもとに、本件登録意匠の創作の要点について述べれば、まず、本件登録意匠の、使用者が把持する持ち手部と、使用者の肌面に接触させるヘラと、により構成されている点、持ち手部が全体として縦長かつ丸みを帯びた形状であり、その略中央部にくびれが形成されている点、及びヘラが正面視で略台形状の薄板状体として構成されている点、については、この種の物品が通常備えているものであり、この種の物品の分野において、ありふれた形態である。 そうすると、本件登録意匠は、持ち手部が、その内部に水を蓄えておく給水タンクを収容していることから、上半分が後方に向かって膨出している、という形態に、格別の特異性、創作性が認められ、権利化されたものと考えられる。 (3)本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察 そこで、本件登録意匠とイ号意匠の共通点及び差異点を比較検討するに、 ア 両意匠の共通点は、この種の物品の分野において、ありふれた形態に係るものであり、特に、本件登録意匠の要部ではないことから、この点において両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。 イ 両意匠の差異点(5)イ(ア)について、イ号意匠は、本登録意匠の要部である持ち手部上部の膨出形状を、明らかに備えておらず、この点において両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 ウ 以上の認定、判断を前提として両意匠を全体的に考察すると、両意匠の差異点は、類否の判断に大きな影響を与えるものであって、両意匠の共通点を凌駕しているものといえる。 7 証拠方法 甲第1号証 意匠登録第1617444号公報 甲第2号証 Amazon.co.jpのWebページ (URL:http://www.amazon.co.jp/dp/B01MCW48GZ) 甲第3号証 Amazon.co.jpのWebページ (URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B074V2WCZ3) 甲第4号証 Amazon.co.jpのWebページ (URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B074H4H7HH) 甲第5号証 Amazon.co.jpのWebページ (URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B077G7HLT7) 第3 被請求人の答弁の趣旨及び理由 特許庁より被請求人に対し、令和1年11月18日に判定請求書副本を発送し、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、被請求人からの応答はなかった。 第4 当審の判断 1 本件登録意匠 本件登録意匠(意匠登録第1617444号)(甲第1号証)は、平成29年(2017年)12月19日に意匠登録出願され、平成30年(2018年)10月19日に意匠権の設定の登録がなされ、平成30年(2018年)11月12日発行の意匠公報に掲載されたものであって、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「美容器」とし、形態を、願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 そして、願書の「意匠に係る物品の説明」及び「意匠の説明」の記載は次のとおりである。「本物品は、上部のヘラを超音波振動させることが可能であり、本体内部タンクに入れた水を人体の肌面に噴射させ、ヘラを当てることで肌面の汚れ(皮脂、角質等)を取り除くことができる美容器である。」「右側面図は左側面図と対称に表れるので省略する。参考斜視図1は、本物品の上部にフタを取り付けた状態を示すものである。参考平面図1は、水の噴射口である。参考背面図1は、背フタを取り外した状態を示し、水を溜めておくための給水タンクと水注入口である。」 本件登録意匠の形態には、基本的構成態様として、以下の点が認められる。 (1)基本的構成態様について ア 使用者が把持する本体部と、本体上部に設けられた使用者の肌面に接触させるヘラ部により構成されている。 イ 全体形状は、正面視において、全体の縦横比を約3:1とし、上側約1/4 部をへラ部、下側約3/4部を本体部としている。 (2)具体的態様について ア 本体部 (ア)正面視において、縦横比を約2.4:1とし、左右両側辺の略中央部に円弧状のくびれ部を設け、下端部を略半円弧状に形成し、 (イ)正面側は、全体を僅かに膨出してなるものであり、上寄り部には、約1/4を占める範囲に略逆三角形状の傾斜面を設けてなり、正面側下寄り部には、小円状の電源スイッチを設け、 (ウ)背面側上部寄り約2/3を占める範囲を、後方に平面視円弧状に膨出し、膨出部後端略中央には、下端を縮径した略長円状の区画を設け、当該区画の上下には、長さが上下方向に漸次長くなる横線を平行に3本設け、背面側下部より約1/3を占める範囲は、後方に向け高さの低いなだらかな山状に突出した態様とするものであり、 イ へラ部 (ア)正面視において、縦横比を約1.2:1とする略台形の板体であり、上辺中央部を略円弧状に切り欠いてなる形状であって、本体部から垂直に立ち上がり、側面視において、上端より約1/5の位置で後方に約20度屈曲した態様とするものであり、 (イ)ヘラ部の基部には、ヘラ部に外接した段差を設けてなるものである。 2 イ号意匠 請求人は、イ号意匠の形態を特定するにあたり、判定請求書に「イ号意匠及び説明書」を添付した。 なお、1回目の審尋(令和2年3月5日付け)に対する回答書及び図面(令和2年3月13日提出)、並びに、2回目の審尋(令和2年6月24日付け)に対する回答書(令和2年7月7日提出)により、イ号意匠は、判定請求書に添付した図面及び参考写真のとおりのものであり、判定請求書の6 請求の理由(4)イ号意匠の説明中のヘラの形状については、当初提出された図面中に表されていないが、回答書の図面で表されたごく普通にみられる形状であるため、判定請求書に添付した図面及び参考写真をヘラの部分にカバーを取り付けた態様のものとし、回答書(1回目)に添付されたカバーを取り外した状態の図面及び参考写真により、以下、イ号意匠を認定する。 イ号意匠の意匠に係る物品は「美容器」であり、イ号意匠は、基本的構成態様として、以下の点が認められる(別紙第2参照)。 (1)イ号意匠の基本的構成態様について ア 使用者が把持する本体部と、本体上部に設けられた使用者の肌面に接触させるヘラ部により構成されている。 イ 全体形状は、正面視において、全体の縦横比を約3:1とし、上側約1/4部をへラ部、下側約3/4部を本体部としている。 (2)イ号意匠の具体的態様について ア 本体部 (ア)正面視において、縦横比を約2.4:1とし、左右両側辺の略中央部に円弧状のくびれ部を設け、下端部を略半楕円弧状に形成し、 (イ)平底面視において、正面側及び背面側を上下略対称となるよう紡錘状に形成するものであって、 (ウ)正面側は、平面視において全体を僅かに円弧状に膨出してなるものであり、上寄り部には、約1/4を占める範囲に略逆三角形状の傾斜面を設けてなり、正面側下寄り部には、小円状の電源スイッチを設け、 (エ)背面側は、平面視において全体を僅かに円弧状に膨出してなるものであり、上寄り部には、約1/4を占める範囲に略逆三角形状の傾斜面を設けてなり、背面側下寄り部には、本体の横幅の約7割を占める円弧状の浅い凹み部を設けた態様とするものであり、 イ へラ部 (ア)正面視において、縦横比を約1.2:1とする略台形の板体であり、上辺中央部を略円弧状に切り欠いてなる形状であって、本体部から垂直に立ち上がり、側面視において上端より約1/5の位置で後方に約20度屈曲した態様とするものであり、 (イ)ヘラ部の基部には、ヘラ部に外接した段差を設けてなるものである。 3 本件登録意匠とイ号意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本件登録意匠は「美容器」であり、イ号意匠も「美容器」であるので、本件登録意匠とイ号意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は同一である。 (2)本件登録意匠とイ号意匠の形態の共通点 両意匠の形態には、以下の基本的構成態様の共通点が認められる。 (A)基本的構成態様の共通点 (A-1)使用者が把持する本体部と、本体上部に設けられた使用者の肌面に接触させるヘラ部により構成されている点。 (A-2)全体形状は、正面視において、全体の縦横比を約3:1とし、上側約1/4部をへラ部、下側約3/4部を本体部としている点。 (B)具体的構成態様の共通点 (B-1)本体部 (B-1-1)正面視において、縦横比を約2.4:1とし、左右両側辺の略中央部に円弧状のくびれ部を設けている点。 (B-1-2)正面側、上寄り部には、約1/4を占める範囲に略逆三角形状の傾斜面を設けてなり、正面側下寄り部には、小円状の電源スイッチを設けている点。 (B-2)へラ部 (B-2-1)正面視において、縦横比を約1.2:1とする略台形の板体であり、上辺中央部を略円弧状に切り欠いてなる形状であって、本体部から垂直に立ち上がり、側面視において、上端より約1/5の位置で後方に約20度屈曲した態様とする点 (B-2-2) ヘラ部の基部には、ヘラ部に外接した段差を設けてなるものである点。 (3)本件登録意匠とイ号意匠の形態の相違点 (a) 本体部 (a-1)正面視下端部の態様について、本件登録意匠は、略半円弧状に形成しているのに対して、イ号意匠は略半楕円弧状に形成している点、 (a-2)正面側の膨出態様について、本件登録意匠は、全体を僅かに膨出してなるものであるのに対して、イ号意匠は全体を僅かに円弧状に膨出してなるものである点。 (a-3)背面側の態様について、本件登録意匠は、上部寄り約2/3を占める範囲を、後方に平面視円弧状に膨出し、膨出部後端略中央には、下端を縮径した略長円状の区画を設け、当該区画の上下には、長さが上下方向に漸次長くなる横線を平行に3本設け、背面側下部より約1/3を占める範囲は、後方に向け高さの低いなだらかな山状に突出した態様とするものであるのに対して、イ号意匠は、正面側と同様に、全体を僅かに円弧状に膨出してなるものであり、上寄り部には、約1/4を占める範囲に略逆三角形状の傾斜面を設けてなり、背面側下寄り部には、本体の横幅の約7割を占める円弧状の浅い凹み部を設けた態様とするものである点。 4 本件登録意匠とイ号意匠の類否判断 (1)「美容器」の物品分野の意匠の類否判断 両意匠は、本体部を把持し、先端に取り付けられたヘラ部を濡れた肌面に当て、当該ヘラ部が微細振動することによって、肌面の角質や毛穴の汚れを浮かせて除去し、美容効果を得るものであるから、この種物品に係る需要者は、両意匠のヘラ部の形状だけでなく本体部形状にも注意を払って観察するものといえる。また、需要者は、具体的な使用方法についても考慮しながら両意匠を観察するものといえるから、当該物品分野の意匠の類否判断においては、使用方法を実現するための各部の形態についても評価し、かつ、それ以外の形態も併せて、各部を総合して意匠全体として形態を評価する。 (2)形態の共通点の評価 前記3(2)(A)の(A-1)及び(A-2)については、家庭用の手持ち美容器が一般的に備えている構成であり、全体の縦横比、へラ部及び本体部の比率についても、本物品分野である「美容器」の分野においては特段需要者の注意を惹くものとは言えず、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 前記3(2)(B)の(B-1-1)については家庭用の手持ち美容器の分野では特に需要者の注意を惹くような特徴的な比率とは言えず、左右両側辺の略中央部に円弧状のくびれ部を設けている点については、「美容器」の分野においては一般的な態様であり(参考意匠1及び参考意匠2参照)、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 同(B-1-2)については、略逆三角形状の傾斜面については、「美容器」の分野においては一般的な態様とまでは言えず、小円状の共通点とあいまって、両意匠の類否判断に一定程度影響を及ぼすと言える。 同(B-2-1)のうち、へラ部の縦横比の比率については、家庭用の手持ち美容器の分野では特に需要者の注意を惹くような特徴的な比率とは言えず、へラ部を略台形の板体とし、上辺中央部を略円弧状に切り欠き、上端より約1/5の位置で後方に約20度屈曲した態様とすることも、本物品分野である「美容器」の分野においては一般的な態様であり(参考意匠4参照)、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 同(B-2-2)についても、本物品分野である「美容器」の分野においては一般的な態様であり(参考意匠3参照)、加えて当該形態の物品に占める範囲が小さく、限られた領域における共通点であり、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 (3)形態の相違点の評価 これに対し、両意匠の相違点である、前記3(3)(a)の(a-1)については、本体下端部が略半円弧状のもの(参考意匠1参照)、略半楕円弧状(参考意匠4参照)のものは、本物品分野である「美容器」の分野においては一般的な態様であり、この相違が需要者の注意を惹くとは言えず、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 同(a-2)については、通常の使用状態では美容器を手に持ち使用することから、持ち手部分である本体部は注目される部分と解されるところ、当該相違点は、この注目される本体部に関する相違であり、両意匠の類否判断に一定程度影響を及ぼすと言える。 同(a-3)については、本件登録意匠は上半部が背面側に肉厚に構成され、中央付近から緩やかに窄まり下端に至る態様であり、上半分が大きく背面側に膨出した印象を形成しているが、イ号意匠(カバーを外した状態)は、上部がやや窄まり、本体下方には円弧状の浅い凹み部が設けられているが、概ね板状の印象を形成していると言える。通常の使用状態では美容器を手に持ち使用することから、持ち手部分である本体部は注目される部分と解されるところ、当該相違点は、この注目される本体部の形態の骨格の印象を大きく異にする、看者の注意を強く惹く特徴的な態様に関する相違であり、また、当該相違点が給水タンクを本体部に内蔵するか否かによるものであることを考慮すれば、本件登録意匠が、本体部から噴出する水分で肌面を濡らしながら使用するのに対し、イ号意匠は、あらかじめ肌面を濡らせた上で使用するものであるから、本件登録意匠の形状は、引用意匠に比して使用の際の異なる使用方法を実現するためのものと認められるから、両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいと言わざるを得ない。 両意匠を意匠全体で比較した場合、前記3(2)の共通点(A-1)、(A-2)、(B-1-1)、(B-2-1)及び(B-2-2)はいずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さく、(B-1-2)は両意匠の類否判断に一定程度影響を及ぼすとしても、両意匠の類否判断を決定付けるものでないのに対し、前記3(3)の相違点(a-1)の両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいとしても、相違点(a-2)は両意匠の類否判断に一定程度影響を及ぼすと言え、相違点(a-3)は両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいものであるから、これらの相違点があいまって、上記共通点の影響を凌ぎ、需要者に別異の美感を起こさせるものである。 なお、両意匠とも、カバーを付けることができる美容器であることが認められるが、両意匠の「カバーを付けた状態の形態」を比較して、カバーの共通点を考慮したとしても、上記類否判断を覆す程とは認められない。 参考意匠1:別紙第3参照 独立行政法人工業所有権総合情報館が2016年5月20日に受け入れた Sharper Image Corpが発行した「Cordless Ultrasonic Face Cleanser@Sharper Image」洗顔器の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ28004551号) 参考意匠2:別紙第4参照 独立行政法人工業所有権総合情報館が2010年7月2日に受け入れた メビコ・ジャパン株式会社が発行した「家庭用超音波美顔器 Ultrasonic Cleanser ウルトラソニック クレンザー」美顔器の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HC22008546号) 参考意匠3:別紙第5参照 独立行政法人工業所有権総合情報館が2011年8月25日に受け入れた アメリカ合衆国特許庁が発行した「米国特許商標公報」毛穴洗浄器の意匠 (登録番号US D641875S) (特許庁意匠課公知資料番号第HH23312613号) 参考意匠4:別紙第6参照 特許庁発行の意匠公報記載 登録意匠1522208号 意匠に係る物品「美容器」の意匠 (4)小括 したがって、これらの共通点と差異点を総合して判断すれば、本件登録意匠とイ号意匠とは、意匠に係る物品は同一であるが、形態については、共通点が類否判断に及ぼす影響が小さく、両意匠の類否判断を決定付けるものでないのに対して、相違点があいまって生じる視覚的効果は、共通点のそれを凌駕して、類否判断に大きな影響を及ぼしており、意匠全体として需要者に与える美感が異なるものであって、本件登録意匠とイ号意匠とは類似しないものと認められる。 第5 むすび 以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
判定日 | 2020-08-21 |
出願番号 | 意願2017-29680(D2017-29680) |
審決分類 |
D
1
2・
1-
ZA
(C4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 並木 文子、日比野 杏香 |
特許庁審判長 |
木村 恭子 |
特許庁審判官 |
小柳 崇 江塚 尚弘 |
登録日 | 2018-10-19 |
登録番号 | 意匠登録第1617444号(D1617444) |
代理人 | 辻田 朋子 |