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審決分類 |
審判 査定不服 意9条先願 取り消して登録 L6 |
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管理番号 | 1367013 |
審判番号 | 不服2017-7787 |
総通号数 | 251 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-30 |
確定日 | 2017-10-04 |
意匠に係る物品 | 建築用パネル |
事件の表示 | 意願2016-9720「建築用パネル」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,意匠法第14条第1項の規定により本願に係る意匠を秘密にすることを請求して,平成28年(2016年)5月9日に出願されたものであって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「建築用パネル」とし,形態を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「この意匠は正面図において左右にのみ連続するものである。」というものである。 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,意匠登録第1501104号の意匠(出願番号 意願2013-15789,出願日 平成25年7月10日)(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)に類似するものであり,最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないため,意匠法第9条第1項の規定により意匠登録を受けることができないというものであって,その概要は,両意匠は,正面視において,縦方向等間隔に配された直線状横溝と,横溝間に略等間隔に配された縦溝を,各横溝間で左右方向にずらしながら敷設する態様が共通している一方,本願意匠は横溝間を3段にしているのに対して,引用意匠は5段である点に差異があるが,同様の構成をもって単に構成数(段数)が異なるだけであって,バリエーションの範囲と認められるから,意匠を全体として観察した場合には,両意匠は類似するものと言わざるを得ない,というものである。 そして,引用意匠は,その出願の願書及び願書に添付された図面の記載によれば,意匠に係る物品が「建築用パネル」であり,形態が,その出願の願書の記載及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである。 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)両意匠の意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「建築用パネル」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「建築用パネル」であるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。 (2)両意匠の形態 両意匠の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。 <共通点> (A)全体は,板状のパネルの正面に,横に延びる複数の横溝と横溝をつなぐ複数の縦溝が設けられることで,略同形同大の複数の縦長長方形部が略千鳥状に表されている点。 (B)パネルの上面略中央に,横に延びる突条が設けられ,下面略中央に,突条と嵌合するように横に延びる凹部が設けられている点。 (C)パネルの内部に,側面視略縦長矩形状で横に延びる,略同形同大の複数の空洞が,上下に等間隔に設けられている点。 (D)パネルの背面は平坦である点。 (E)横溝が,側面視で等脚台形状である点。 <相違点> (ア)本願意匠は,横溝が2本設けられることで,長方形部が3段表れているのに対して,引用意匠は,横溝が4本設けられることで,長方形部が5段表れている点。 (イ)各段の長方形部の大きさと配置が,本願意匠は以下の(イ-01)及び(イ-02)であるのに対して,引用意匠は以下の(イ-11)及び(イ-12)である点。 (本願意匠の長方形部の大きさと配置) (イ-01)最上段(上から1段目)は,縦横比が略40:9及び40:11の2種類の長方形部で構成され,40:9の長方形部を「A」,40:11の長方形部を「B」とすると,-A-A-B-B-A-B-というパターンが繰り返されるように配置されている。 (イ-02)上から2段目と最下段(3段目)は,最上段と同様の2種類の長方形部で構成され,-A-B-が繰り返されるように配置されている。 (引用意匠の長方形部の大きさと配置) (イ-11)最上段及び最下段(上から5段目)は,縦横比が略39:14,39:15,39:16,39:17及び39:18の5種類の長方形部で構成され,幅の小さいものから順に「J」,「K」,「L」,「M」及び「N」とすると,-J-K-M-N-L-K-というパターンが繰り返されるように配置されている。 (イ-12)上から2段目ないし4段目は,縦横比が略40:14,40:15,40:16,40:17及び40:18の5種類の内の4種類の長方形部で構成され,幅の小さいものから順に「V」,「W」,「X」,「Y」及び「Z」とすると, 2段目については,-V-Z-W-W-Y-Y-というパターンが, 3段目については,-Y-X-W-X-W-V-というパターンが, 4段目については,-W-W-Z-V-Y-Y-というパターンが, それぞれ繰り返されるように配置されている。 (ウ)縦溝が,本願意匠は幅が同じで,平面視で等脚台形状であるのに対して,引用意匠は細幅,中幅及び太幅の3種類で,平面視で細幅のものは略半円形状,中幅及び太幅のものは略等脚台形状である点。 (エ)空洞が,本願意匠は10本設けられているのに対して,引用意匠は9本設けられている点。 2.両意匠の類否判断 以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,形態については,以下のとおりである。 (1)両意匠の形態についての共通点の評価 共通点(A)は,板状のパネルの正面に,横に延びる複数の横溝と横溝をつなぐ複数の縦溝が設けられることで,略同形同大の複数の縦長長方形部が略千鳥状に表されている,というものであるが,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるし,以下に示す参考意匠に見られるように,両意匠のみに見られる形態とまではいえないことから,共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。 また,共通点(B)ないし共通点(D)は,建築用パネルの物品分野において,ありふれた形態であるし,共通点(E)は側面視でようやく気付く程度のものであるから,共通点(B)ないし共通点(E)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。 そして,共通点全体としても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものといわざるを得ない。 (参考意匠) 日本国特許庁発行の公開特許公報 特開2015-101923の【図1】ないし【図3】に記載された「デザインパネル11」の意匠 (2)両意匠の形態についての相違点の評価 相違点(イ)は,パネル表面の各段の長方形部の大きさと配置に関する相違であるところ,引用意匠においては,最上段及び最下段について5種類の長方形部が同じパターンで表れ,残りの3段について別の5種類の長方形部の内の4種類が3種類のパターンで表れていることから,非常に複雑な視覚的印象を与えるといえる。これに対して,本願意匠は,長方形部の種類については,全ての段がA,Bの2種類のみで構成され,配列については,上から2段目及び3段目は単に-A-B-を繰り返すに過ぎないが,最上段は-A-A-B-B-A-B-という,やや複雑なパターンであることから,単純に見せながらも単調とはいい難い視覚的印象を与えるといえ,両意匠の視覚的印象は異なるといわざるを得ない。また,相違点(イ)は,非常に目に付きやすい部位に係るものであり,建築用パネルの物品分野の先行意匠に照らして,本願意匠のみの特徴といえるから,相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は非常に大きいというべきである。 また,相違点(ウ)は,縦溝が,本願意匠は幅が同じで,平面視で等脚台形状であるのに対して,引用意匠は細幅,中幅及び太幅の3種類で,平面視で細幅のものは略半円形状,中幅及び太幅のものは略等脚台形状であるというものであり,引用意匠は,溝の幅が3種類存在することから,非常に複雑な視覚的印象を与えるのに対して,本願意匠は溝の幅が同じであることから,シンプルな印象を与え,相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も非常に大きいといわざるを得ない。 他方,相違点(ア)は,本願意匠は,長方形部が3段表れているのに対して,引用意匠は,長方形部が5段表れているというものであるが,建築用パネルの物品分野において,長方形部を種々の段数とすることは,ありふれた手法であるから,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。 また,相違点(エ)は,空洞が,本願意匠は10本設けられているのに対して,引用意匠は9本設けられているというものであるが,空洞は,建築用パネルの施工後には見にくいものであるし,本数の相違も1本に過ぎないから,相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。 そうすると,相違点(ア)及び(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響が,小さいものか微弱なものであるとしても,相違点(イ)及び(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響が非常に大きいから,相違点を総合すると,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。 (3)小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,一致するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであって,本願意匠と原査定の引用意匠は,意匠法第9条第1項で規定する同一又は類似の意匠ということができないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-09-13 |
出願番号 | 意願2016-9720(D2016-9720) |
審決分類 |
D
1
8・
4-
WY
(L6)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 富永 亘 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 渡邉 久美 |
登録日 | 2017-10-20 |
登録番号 | 意匠登録第1590475号(D1590475) |
代理人 | 飯島 紳行 |