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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1367019 |
審判番号 | 不服2020-5892 |
総通号数 | 251 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-04-30 |
確定日 | 2020-09-25 |
意匠に係る物品 | 包装用袋 |
事件の表示 | 意願2019-6475「包装用袋」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成31年(2019年)3月27日の意匠登録出願であって,令和1年(2019年)10月11日付けの拒絶理由の通知に対し,同年11月13日に意見書が提出されたが,令和2年2月21日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年4月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,物品の部分について意匠登録を受けようとするものであって,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「包装用袋」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線であらわした部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。 引用意匠 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1568441号 (意匠に係る物品,包装用袋)の意匠の実線で表された部分の未シール部及びその周囲のシール部 第4 当審の判断 以下では,シール部が包装用袋の内側に突出した部分を「突出部」と,包装用袋の,突出部以外のシール部を「袋シール部」という。 また,包装用袋のことを単に「袋」ということもある。 そして,一方の底角が直角の台形のことを「直角台形」という。 1 本願意匠 本願意匠は,上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると,以下のとおりである。 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「包装用袋」である。 (2)本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能 本願意匠に係る物品のうち,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,正面視において,略正方形の包装用袋における,左辺の上から約3分の1に位置する,突出部の上端及び下端が内接する横長長方形の部分であって,その大きさは,面積比で全体の約30分の1である。 本願部分の用途と機能は,電子レンジによる加熱に伴って包装用袋内の圧力が高まった際に,包装用袋内の蒸気を未シール部から逃がすものである。 (3)本願部分の形状 ア.本願部分におけるシール部の右側の辺は,直角台形状に突出しており,袋シール部から本の僅か水平に突出(台形の上底に当たる)し,そこから放物線状に下に曲がって,斜辺(台形の脚。以下「右側斜辺」という。)となり,台形の底角部分(以下「右側底角」という。)が円弧状となっており,台形の下底に当たる部分(以下「右側底辺」という。)が水平となっている。 イ.シール部の左側の辺は,袋の左辺において,シール部の上端からやや下がった所までを鉛直線とし,その下端から直ちに下方に向かってなだらかに広がる湾曲線の斜辺(以下「左側斜辺」という。)としたものであって,斜辺と底辺とで成る角部(以下「左側底角」という。)は大きな円弧状となっており,底辺(以下「左側底辺」という。)が水平となっており,袋の左辺上にある左側底辺の左端から本の少しを鉛直線とし,シール部の下端に達する。 ウ.上側の鉛直線の長さと下側の鉛直線の長さは同じである。 エ.シール部の幅は,底辺部(右側底辺と左側底辺に挟まれている部分。以下同じ。)においては一定で,斜辺部(右側斜辺と左側斜辺に挟まれている部分。以下同じ。)においてはシール部上側に向けて漸次幅が広くなっている。 2 引用意匠 引用意匠は,上記「第3」の意匠公報の記載の内容によると,以下のとおりである。 なお,引用意匠の認定に際しては,本願意匠と同じ向きとして認定する。 (1)意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は「包装用袋」である。 (2)引用部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能 引用意匠中,本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」ともいう。)は,正面視において,略正方形の包装用袋における,左辺の上から約3分の1に位置する,突出部の上端及び下端が内接する横長長方形の部分であって,その大きさは,面積比で全体の約26分の1である。 引用部分の用途と機能は,本物品に封入したレトルト食品等を電子レンジ等で加熱調理をした際に,蒸気や膨張した空気を外部に逃がすものである。 (3)引用部分の形状 ア.引用部分におけるシール部の右側の辺は,直角台形状に突出しており,袋シール部からごく僅かに下る直線(台形の上底に当たる)があり,そこから折れ曲がって斜辺(台形の脚。以下「右側斜辺」という。)となり,台形の底角部分(以下「右側底角」という。)が小さな円弧状となっており,台形の下底に当たる部分(以下「右側底辺」という。)が水平となっている。 イ.シール部の左側の辺は,袋の左辺において,シール部の上端からやや下がった所までを鉛直線とし,その下端から水平な上底があり,そこから折れ曲がって斜辺(以下「左側斜辺」という。)となり,斜辺と底辺とで成る角部(以下「左側底角」という。)がごく小さな円弧状となっており,台形の下底に当たる部分(以下「左側底辺」という。)が水平となっており,袋の左辺上にある左側底辺の左端から本の少しを鉛直線とし,シール部の下端に達する。 ウ.上側の鉛直線の長さよりも,下側の鉛直線の長さの方がやや短い。 エ.シール部の幅は,底辺部(右側底辺と左側底辺に挟まれている部分。以下同じ。)においては一定で,斜辺部(右側斜辺と左側斜辺に挟まれている部分。以下同じ。)においてはシール部上側に向けて漸次幅が広くなっている。 3 両意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠に係る物品も,引用意匠に係る物品も,共に「包装用袋」である。 (2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の対比 本願部分及び引用部分は,正面視において,略正方形の包装用袋における,左辺の上から約3分の1に位置する,突出部の上端及び下端が内接する横長長方形の部分である。 そして,本願部分の大きさは,面積比で全体の約30分の1であるのに対して,引用部分の大きさは,面積比で全体の約26分の1である。 本願部分の用途と機能は,電子レンジによる加熱に伴って包装用袋内の圧力が高まった際に,包装用袋内の蒸気を未シール部から逃がすものであるのに対して,引用部分の用途と機能は,本物品に封入したレトルト食品等を電子レンジ等で加熱調理をした際に,蒸気や膨張した空気を外部に逃がすものである。 (3)両部分の形状の対比 両部分の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。 ア.共通点について (ア)シール部の右側の辺は,直角台形状に突出しており,台形の上底に当たる部分が袋シール部から突出し,そこから右側斜辺となって,右側底角が円弧状となっており,右側底辺が水平となっている。 (イ)シール部の左側の辺は,袋の左辺において,シール部の上端からやや下がった所までを鉛直線とし,左側底角が円弧状となっていて,左側底辺が水平となっており,袋の左辺上にある左側底辺の左端から本の少しを鉛直線とし,シール部の下端に達する。 (ウ)シール部の幅は,底辺部においては一定で,斜辺部においてはシール部上側に向けて漸次幅が広くなっている。 イ.相違点について (ア)右側の辺のうち,台形の上底に当たる部分から右側斜辺の形状につき,本願部分は,袋シール部から本の僅か水平に突出し,そこから放物線状に下に曲がって,右側斜辺となるのに対して,引用部分は,ごく僅かに下る直線で,そこから折れ曲がって,右側斜辺となっている点。 (イ)右側底角の形状につき,本願部分は,円弧状となっているのに対して,引用部分は,小さな円弧状となっている点。 (ウ)シール部の左側の辺の形状につき,本願部分は,上側と下側の鉛直線以外を,丸みのある略直角三角形としたものであるのに対して,引用部分は,上側と下側の鉛直線以外を,略直角台形としたものである点。 (エ)左側底角の形状につき,本願部分は,大きな円弧状となっているのに対して,引用部分は,ごく小さな円弧状となっている点。 (オ)上側の鉛直線の長さと下側の鉛直線の長さにつき,本願部分は,同じであるのに対して,引用部分は,上側の鉛直線の長さよりも,下側の鉛直線の長さの方がやや短い点。 4 判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 両意匠の,意匠に係る物品は,いずれも「包装用袋」であるから,一致している。 (2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の評価 本願部分も,引用部分も,正面視において,略正方形の包装用袋における,左辺の上から約3分の1に位置する,突出部であるから,一致している。 本願部分の大きさは,面積比で全体の約30分の1であるのに対して,引用部分の大きさは,面積比で全体の約26分の1であるから,その差は僅かと認められる。 よって,両部分の位置,大きさ及び範囲は,共通しているといえる。 本願部分の用途及び機能と引用部分の用途及び機能は,共に加熱した際に袋内部の蒸気等を外部に逃がすものであるから,両部分の用途及び機能は一致しているといえる。 (3)両部分における形状の評価 ア.共通点について 共通点(ア)については,大まかに捉えた形状であり,具体的には,相違点(ア)及び同(イ)の相違があり,両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。 共通点(イ)については,そもそもシール部の左側の辺の基本的な形状について,相違点(ウ)の相違が認められるのであるから,個々の共通点である共通点(イ)が両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。 共通点(ウ)については,シール部の幅という概括的な共通性であり,当該幅を形成するシール部の具体的な形状については,相違点(ア)ないし(オ)が認められるから,共通点(ウ)が両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。 イ.相違点について 相違点(ア)は,相違点(イ)ないし(エ)と合わさって,本願部分は丸みのある印象を与えるのに対して,引用部分は角張った印象を与えることから,両部分について別異の印象を与える上に,これらの相違点に係る斜辺や底角は,シール部の多くの部分を囲む重要な構成要素といえるから,相違点(ア)ないし(エ)が,両部分の形状の類否判断に与える影響は,極めて大きいというべきである。 これに対して,相違点(オ)は,注視して初めて分かる程度の微差であるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。 (4)両意匠における類否判断 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両部分の位置,大きさ及び範囲が共通し,用途及び機能が一致している。 しかし,両部分の形状については,その共通点及び相違点の評価に基づくと,上記のとおり,共通点は,類否判断に及ぼす影響は小さいものであるのに対して,相違点は,相違点(ア)ないし(エ)によって類否判断に与える影響が大きいものである。 よって,両部分の形状は,類似するとは認められないものであるから,本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえない。 5 結び 以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似するとはいえず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2020-09-07 |
出願番号 | 意願2019-6475(D2019-6475) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 重坂 舞 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
正田 毅 橘 崇生 |
登録日 | 2020-10-23 |
登録番号 | 意匠登録第1672361号(D1672361) |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 矢崎 和彦 |