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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L1
管理番号 1367030 
審判番号 不服2020-3928
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-24 
確定日 2020-10-13 
意匠に係る物品 シートパイル用連結具 
事件の表示 意願2019-5718「シートパイル用連結具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,2018年9月18日の欧州連合知的財産庁への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成31年(2019年)3月18日の意匠登録出願であって,その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

平成31年 3月26日 :優先権証明書提出書の提出
令和 1年 6月24日付け:拒絶理由の通知
令和 1年10月25日 :手続補正書の提出
令和 1年10月25日 :意見書の提出
令和 1年12月11日付け:拒絶査定
令和 2年 3月24日 :審判請求書の提出
令和 2年 4月 2日付け:手続補正指令
令和 2年 5月 7日 :手続補正書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「シートパイル用連結具」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2015-014186
図2に表された連結用プロファイルの意匠

第4 当審の判断
1 本願意匠
本願意匠は,上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると,以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「シートパイル用連結具」である。

(2)本願意匠の形状
ア.全体は,正面図に表れている形状が,正面図に対して垂直方向に連続する細長棒状のものである。
よって,本願意匠の形状の認定においては,正面図に表れている端面形状について,以下述べる。
イ.おおむねどの箇所であっても,同じ厚さ(幅)で構成している。
ウ.中央にある縦方向の直線部(以下「中央直線部」という。)に対して,左上にフック形状の継手部(以下「第1継手部」という。),右上にフック形状の継手部(以下「第2継手部」という。),そして,中央直線部の下端にフック形状の継手部(以下「第3継手部」という。)を設けて,全体で略T字状を成している。
エ.第1継手部と第2継手部は下側に開口部があり,第3継手部は右側に開口部がある。
オ.中央直線部の下端の右側に第3継手部から延びた突出部を形成している。
カ.第1継手部は,中央直線部の上端の上から反時計方向に延びて,中央直線部の約半分の長さの半径による四半円弧状曲線部,中央直線部の約3分の2の長さの直線部,及び中央直線部の約半分の長さの半径による半円弧状曲線部から成り,全体で,一部が開口したトラック形(長方形の短辺を半円弧状曲線とした形状。陸上競技場におけるトラックの形状。以下同じ。)と成っており,その先端は,水平で中央に向いている。
キ.第2継手部は,中央直線部を対称軸として,第1継手部と左右対称形である。
ク.第3継手部は,第1継手部と同様の形状で,中央直線部の下端の左から反時計方向に延びて,中央直線部の約半分の長さの半径による四半円弧状曲線部,中央直線部の約3分の2の長さの直線部,及び中央直線部の約半分の長さの半径による半円弧状曲線部から成り,全体で,一部が開口したトラック形と成っており,その先端は,垂直上向きである。
ケ.突出部は,右側に向けて突出し,やや下向きに曲がっている。

2 引用意匠
引用意匠は,上記「第3」の公開特許公報の記載の内容によると,以下のとおりである。
なお,引用意匠の認定に際しては,本願意匠と同じ向きとして認定する。

(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「連結用プロファイル」である。

(2)引用意匠の形状
ア.全体は,正面図に表れている形状が,正面図に対して垂直方向に連続する細長棒状のものである。
よって,引用意匠の形状の認定においては,正面図に表れている端面形状について,以下述べる。
イ.おおむねどの箇所であっても,同じ厚さ(幅)で構成している。
ウ.中央にある縦方向の直線部(以下「中央直線部」という。)に対して,左上にフック形状の継手部(以下「第1継手部」という。),右上にフック形状の継手部(以下「第2継手部」という。),そして,中央直線部の下端にフック形状の継手部(以下「第3継手部」という。)を設けて,全体で略T字状を成している。
エ.第1継手部と第2継手部は下側に開口部があり,第3継手部は右側に開口部がある。
オ.第1継手部は,中央直線部の上端の上から反時計方向に延びて,中央直線部の約2分の1の長さの半径による中心角度が約160度の円弧状曲線部,中央直線部の約6分の1の半径による四半円弧状曲線部,及び中央直線部の約2分の1の長さの直線部から成り,全体で,一部が欠けた半円形状と成っており,その先端は,中央直線部と約70度の角度をもって中央に向いている。
カ.第2継手部は,中央直線部を対称軸として,第1継手部と左右対称形である。
キ.第3継手部は,第1継手部と同様の形状で,中央直線部の下端の左から反時計方向に延びて,中央直線部の約2分の1の長さの半径による中心角度が約150度の円弧状曲線部,中央直線部の約6分の1の半径による四半円弧状曲線部,及び中央直線部の約2分の1の長さの直線部から成り,全体で,一部が欠けた半円形状と成っており,その先端は,中央直線部と約150度の角度をもって中央に向いている。
ク.第3継手部の,中央直線部との接続部分において,外辺部分に僅かな山型(シェブロン)の突起がある。

3 両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は「シートパイル用連結具」であり,引用意匠に係る物品は「連結用プロファイル」である。

(2)両意匠の形状の対比
両意匠の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
(ア)全体が,正面図に表れている形状で,正面図に対して垂直方向に連続する細長棒状のものである。
(イ)おおむねどの箇所であっても,同じ厚さ(幅)で構成している。
(ウ)中央直線部に対して,左上にフック形状の第1継手部,右上にフック形状の第2継手部,そして,中央直線部の下端にフック形状の第3継手部を設けて,全体で略T字状を成している。
(エ)第1継手部と第2継手部は下側に開口部があり,第3継手部は右側に開口部がある。
(オ)第2継手部は,中央直線部を対称軸として,第1継手部と左右対称形である。
(カ)第3継手部は,おおむね第1継手部と同様の形状で,中央直線部の下端の左から反時計方向に設けてある。
イ.相違点について
(ア)第1及び第2継手部の形状につき,本願意匠は,中央直線部の約半分の長さの半径による四半円弧状曲線部,中央直線部の約3分の2の長さの直線部,及び中央直線部の約半分の長さの半径による半円弧状曲線部から成り,全体で,一部が開口したトラック形と成っており,その先端は,水平で中央に向いているのに対して,引用意匠は,中央直線部の約2分の1の長さの半径による中心角度が約160度の円弧状曲線部,中央直線部の約6分の1の半径による四半円弧状曲線部,及び中央直線部の約2分の1の長さの直線部から成り,全体で,一部が欠けた半円形状と成っており,その先端は,中央直線部と約70度の角度をもって中央に向いている。
(イ)第3継手部の形状につき,本願意匠は,中央直線部の下端の左から反時計方向に,中央直線部の約半分の長さの半径による四半円弧状曲線部,中央直線部の約3分の2の長さの直線部,及び中央直線部の約半分の長さの半径による半円弧状曲線部から成り,全体で,一部が開口したトラック形と成っており,その先端は,垂直上向きであるのに対して,引用意匠は,中央直線部の下端の左から反時計方向に,中央直線部の約2分の1の長さの半径による中心角度が約150度の円弧状曲線部,中央直線部の約6分の1の半径による四半円弧状曲線部,及び中央直線部の約2分の1の長さの直線部から成り,全体で,一部が欠けた半円形状と成っており,その先端は,中央直線部と約150度の角度をもって中央に向いている。加えて,中央直線部との接続部分において,外辺部分に僅かな山型の突起がある。
(ウ)突出部につき,本願意匠は,中央直線部の下端の右側に第3継手部から延びた突出部を形成しており,その突出部は,右側に向けて突出し,やや下向きに曲がっているのに対して,引用意匠は,突出部が無い。

4 判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
本願意匠の意匠に係る物品は「シートパイル用連結具」であり,港湾・河川・土留(山留)工事等の締切り材として使用されるシートパイル(鉄鋼板)を連結するために使用されるものであって,安定したT字状の連結を保つことを可能にしている。
引用意匠の意匠に係る物品は「連結用プロファイル」であり,矢板壁の矢板を連結するための連結用プロファイルであって,鉄鋼板を3方向に連結する機能を有している。
そうすると,本願意匠も引用意匠も,共にシートパイル(鉄鋼板)を3方向に連結する機能を有しているものであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

(2)両意匠における形状の評価
ア.共通点について
共通点(ア)及び(イ)は,この種物品分野においては,ごくありふれた形状と認められ,両意匠のみの特徴とは認められないから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
共通点(ウ)ないし(カ)は,両意匠の全体形状に関わる根幹的な形状であって,一定の共通感を生じさせているが,シートパイルをT字状の3方向に連結させる連結具としての基本的形状としては,ごくありふれた形状と認められ,両意匠のみの特徴とは認められないから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
イ.相違点について
相違点(ア)ないし(ウ)による具体的な形状は,嵌合(かんごう)できるシートパイル側の継手の形状,また,打ち込み作業の効率化や,連結の離脱,ずれまたは変形に関わるものであって,この種物品の需要者の関心が高まる箇所の相違点といえ,両意匠の類否判断に与える影響は,極めて大きいというべきである。

(3)両意匠における形状の類否判断
以上のとおり,共通点は,両意匠の類否判断に与える影響は,小さいものであり,これらの共通点によっては,両意匠の類否判断を決するものといえないのに対して,相違点(ア)ないし(ウ)によっては,需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,両意匠の類否判断を決するものといえる。
そうすると,本願意匠の形状と引用意匠の形状は,類似するとは認められない。

(4)両意匠における類否判断
よって,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,上記のとおり本願意匠と引用意匠の形状は類似するものではないから,本願意匠と引用意匠は類似するとはいえない。

5 結び
したがって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2020-09-23 
出願番号 意願2019-5718(D2019-5718) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 住 康平 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2020-10-19 
登録番号 意匠登録第1671939号(D1671939) 
代理人 魯 佳瑛 
代理人 村井 康司 

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