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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 B2
管理番号 1367035 
審判番号 不服2020-2157
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-18 
確定日 2020-10-13 
意匠に係る物品 手袋 
事件の表示 意願2019- 7559「手袋」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
平成31年 4月 8日 意匠登録出願
令和 1年 8月30日付け 拒絶理由通知書
令和 1年10月23日 意見書提出
令和 1年11月 6日付け 拒絶査定
令和 2年 2月18日 審判請求書提出

第2 本願の意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする、2019年(平成31年)4月8日の意匠登録出願(意願2019-7559)であって、その意匠は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「手袋」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものであって、「意匠の説明」を「実線で表された部分が部分意匠として登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである。(以下「本願意匠」という(別紙第1参照)。また本願の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を、以下「本願部分」という。)

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって、具体的には、以下のとおりである。
「本願の意匠は、願書及び添付図面の記載によれば、中指から小指までの指袋はマチ付きとし、人差し指の指袋のみマチを付けない構成とした手袋ですが、このような構成の手袋は、例えば下記公知意匠に見られるように、本願出願前、既に公然知られています。
本願の意匠は、この公然知られた構成の指袋を模様等を設けずに表した程度に過ぎませんので、この種の物品分野において通常の知識を有する者であれば、容易に創作出来たものと認められます。
・・・

公知意匠
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1342601号の意匠
(意匠に係る物品:ゴルフ用手袋)」

第4 当審の判断
請求人の主張を踏まえ、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が容易に創作することができたか否かについて、検討し、判断する。
なお、対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。(引用意匠の正面図は右に90度回転して平面図とし、背面図は左に90度回転して底面図とし、右側面図は右に90度回転して正面図とし、左側面図は左に90度回転して背面図とし、平面図は180度回転して左側面図とし、底面図は右側面図とする。)

1 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は「手袋」であって、右手側の5本指の短手袋のうち、意匠登録を受けようとする部分を、親指を除く4本の指の指先から指の股の手前までの指袋部を区画した部分としたものであって、本願は、物理的に離れた複数の部分から成るが、手袋の指袋部という機能的一体性をもって形成されたものであるから、1意匠として認められる。
形態については、
(ア)人差し指袋部を正面視、上側の甲側材と下側の掌側材の2枚はぎに、中指袋部及び薬指袋部をさらに両側マチ材を含む4枚はぎに、小指袋部を片側マチ材を含む3枚はぎのものとし、手袋の指袋部として、一体のものとして形成したものであって、
(イ)人差し指の指袋部(以下人差し指袋部という。)は、平面視、略縦長U字状の甲側材と側面及び掌側を連なって被覆する略ドーム状の掌側材の2枚から成る略縦長キャップ状に形成し、
(ウ)中指及び薬指の指袋部は正面視(指先側)を甲側と掌側が広い略扁平X字状に分割する略尖塔状の甲側材及び掌側材と左右の略槍の穂先状の細長いマチ材から成る4枚はぎのマチ付きの略縦長キャップ状に形成し、
(エ)小指の指袋部は、正面視(指先側)倒Yの字状に分割する略尖塔状の甲側材及び掌側材と薬指袋側の略槍の穂先状の細長いマチ材から成る3枚はぎのマチ付きの略縦長キャップ状に形成しているものである。

2 引用意匠
(1)公知意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照)
意匠に係る物品は「ゴルフ用手袋」であり、原審拒絶理由において、人差し指の指袋のみマチを付けない構成とした例示としてあげられたものであって、左手側の5本指の短手袋状とし、甲部手首寄りに略半円状の片部を配し、片部を除く手首周方向にギャザー部を設け、甲部の小指袋部と薬指袋部の間の縦方向の曲線状分割線から掌部全面にかけて細かな亀甲模様を配し、その他の甲部は無模様として、各指袋部の甲側に中央2列の縦方向に密な小孔部を等間隔に設け、掌側には親指袋部を除く指袋部の中央1列の縦方向に粗な小孔部を等間隔に設けて成るものである。
また、(各指袋部について、)親指の指袋部は甲側に無模様の甲側材を、掌側に模様を配した掌側材から成る2枚はぎの略縦長キャップ状で、人差し指袋部は、指先側(指先側は上記あてはめのとおり、本願部分の正面視にあたるから以下「正面視」という。)は、蛇行する傾斜線によって2分されているので2枚はぎであるように見えるものの、甲側では、親指袋側に模様材と無模様材の縦方向に指先寄りまで境目が、中指袋側に指先寄りまで縦方向の縫い線が表され、掌側でも中指側に模様材と無模様材の縦方向の指先寄りまで境目線が表れているため、正面視で観察可能と推認できる縦方向接合部が3カ所となり、正面視の形態と矛盾するから2枚はぎであるかは不明であって、略縦長キャップ状に形成したものである。
そして、中指袋部及び薬指袋部は正面視で、略扁平X字状に4分割され、模様を配した略U字状の掌側材と無模様の略U字状の甲側材及び無模様の左右の略槍の穂先状の細長いマチ材から成る4枚はぎのマチ付きの略縦長キャップ状に形成したものである。
さらに、小指の指袋部は、正面視で、略倒r字状に3分割され、模様を配した略U字状の甲側材及び掌側材と薬指寄り無模様の略槍の穂先状の細長いマチ材から成る3枚はぎのマチ付きの略縦長キャップ状に形成している。

3 本願部分の創作非容易性について
物品の部分に係る創作非容易性の判断については、当該部分の形態が、当該意匠登録出願前に公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものであるか否かを判断すると共に、当該部分の用途及び機能を考慮し、「意匠登録を受けようとする部分」を当該物品全体の形態の中において、その位置、大きさ及び範囲とすることが、当業者にとってありふれた手法であるか否かを判断することにより行うべきところ、
本願部分の用途及び機能は、「手袋」として、主に指部の防寒、防汚、保護などのために、指部を被覆する機能に係るものと認められ、手袋の物品分野において、ごく普通の用途及び機能であるから、格別の機能及び用途に係るものであるということはできない。
次に、位置、大きさ及び範囲について検討すると、本願部分は、サイズによる大小はあれ、人の手の指程度の大きさであると認められ、手袋の物品分野において、よく見受けられる程度の大きさであり、その全体の中の位置についても親指を除く4本の指の指袋部分であるからごく普通に見受けられる程度のものであって、範囲については、各指袋部の指先から指の股手前までの範囲であって、略各指の指袋部といえ、範囲として格別のものとまではいうことはできない。
そして、「手袋」の物品分野のうち、特に各種材料を裁断し縫合によって形成する「縫い手袋」について、指袋部の形成にあたっては、その裁断方法は、大別して、主に掌側材にマチ部分を一体に裁断し、掌側に縫い目が来ないように縫製する、パーツの裁断効率がよく、縫製箇所が少ない、指の可動性に利のある「ガンカット型」と、マチ材を別材で裁断し、縫製するため、縫製箇所が多いものの、立体的な指の被覆に適し、フィット性の高い「手型」の2種があり、それぞれの作業用、スポーツ用、ファッション用など手袋の主たる目的と使用素材に応じた裁断方法をとって形成している。
本願部分の形態については、(イ)の形態については、引例意匠では(不明であるから)表されているといえないが、指袋部が本願部分と同様に甲側材と側面及び掌側を連なって被覆する掌側材から成るような形態は、手袋の物品分野においてはよく見受けられるもの(例:参考意匠1:大韓民国意匠商標公報掲載、登録番号30-0697723「手袋」の意匠 (公知資料番号HH25426080)(別紙第3参照)(上記でいうガンカット型に類する。))であって、(ウ)及び(エ)の形態については、マチ材を別材で設けた形態も、手袋の物品分野においてはよく見受けられるものである(例:参考意匠2:大韓民国意匠商標公報掲載、登録番号30-0692688「手袋」の意匠 (公知資料番号HH25419759)(別紙第4参照)(上記でいう手型に類する。)、引例意匠にも模様部、小孔部の有無など表面態様は異なるものの、3枚はぎ、4枚はぎの略縦長キャップ状の指袋部については、おおむね表されている。)から、上記1の(イ)ないし(エ)のこれらの指袋部の個々の形態については、格別の創意を施したということはできない。
しかしながら、各部分の形態のみならず、どのような形態を組み合わせ、どのような配置で表すかという点にも創作の余地が存在するというべきところ、上記1の(ア)については、本願出願前に公然知られた形態である引例意匠、参考意匠1及び2のいずれにも表されておらず、人差し指袋部を甲側材と掌側材の2枚はぎに、中指袋部及び薬指袋部を両側マチ材を含む4枚はぎに、小指袋部を片側マチ材を含む3枚はぎのものとし、いわば、異なる裁断手法から成る指袋部を、1つの手袋の指袋部として一体のものとして形成することが「手袋」の物品分野において本願意匠出願前にありふれた手法であったとする証拠もないから、周知の創作手法であったとすることはできず、本願部分の独自の特徴を形成しているといえる。

4 小括
よって、本願部分の用途、機能とすること、また、「意匠登録を受けようとする部分」を当該物品全体の形態の中において、その位置,大きさとすることが、ごく普通に見受けられる程度のものであり、範囲についても格別の創作ということはできないものであり、いずれも当業者が公然知られた意匠に基づいて容易に想到することができたものであったとしても、形態について、上記1の(ア)の形態とすることが、「手袋」の物品分野において本願意匠出願前にありふれた手法であったとする証拠はなく、「当該物品分野において周知の創作手法」によって創作することができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2020-09-23 
出願番号 意願2019-7559(D2019-7559) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (B2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 富永 亘 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
濱本 文子
登録日 2020-11-10 
登録番号 意匠登録第1673588号(D1673588) 
代理人 是枝 洋介 
代理人 楠屋 宏行 
代理人 羽柴 拓司 

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