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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H1
管理番号 1368163 
審判番号 不服2019-15564
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-20 
確定日 2020-09-01 
意匠に係る物品 コンデンサ 
事件の表示 意願2018- 15241「コンデンサ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年(2018年)7月10日に出願された、部分意匠の意匠登録出願であって、その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年(2019年)3月29日付け:拒絶理由の通知
令和1年(2019年)5月13日:意見書の提出
令和1年8月2日付け:拒絶査定
令和1年11月20日:審判請求書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「コンデンサ」とし、意匠の説明の欄で「実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である(当審注:以下「本願部分」という。)。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分と、その他の部分との境界のみを示す線である。」として、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)を、願書及び願書添付図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、この意匠登録出願の意匠は、下記に示すように、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当する、というものであって、具体的には以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は、意匠に係る物品を「コンデンサ」とするものですが、電子部品の物品分野においては、本願出願前より、電子部品に二次元コードをマーキングすることは(例えば下記の参考文献においてみられるように)ごく一般的に行われています。
また、本願意匠に記載された二次元コードは、本願出願前に規格化されありふれているDataMatrixコードの正方形タイプの二次元コードと酷似しています。
また、製造情報等を示すマーキングやシンボルの位置・大きさ・向きを種々調整して物品に付すことは、本願出願前より、ごく一般的に見受けられます。加えて、本願意匠の二次元コードの概略位置は物品の側面というありふれた位置です。
そうすると、本願意匠(部分)は、本願出願前より公然知られた、下記の引用意匠に、本願出願前よりごく一般的に行われている手法を採用して、本願出願前よりありふれているDataMatrixコードの正方形タイプの二次元コードに、適宜製造情報等を反映し、位置・大きさ・向きを種々調整して付した程度であって、当業者であれば容易に創作をすることができたものです。」
「参考文献(当審注:別紙第2)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2004-78896
段落0007、0008を参照

引用意匠(当審注:別紙第3)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2017-147466
図1に記載されたコンデンサの意匠の、本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分」

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作をすることができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「コンデンサ」である。

(2)本願部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能
本願部分は、コンデンサ本体(以下「本体」という。)の底面から下方に二本のリード線が突き出ているコンデンサのうち、本体の正面の位置にあって、側面外周面の約4分の1の幅を有する大きさ及び範囲の部分である。
願書の意匠に係る物品の説明によれば、コンデンサの詳細な製造管理を目的とし、製造情報等を持たせた二次元コードとしての機能を有する。

(3)形態
本願部分は、以下に示す形状と模様の結合である。
ア 形状
略円柱側面の約4分の1区画である正面視略長方形状の表面部とその下方に位置する溝部から成る。表面部はその上端及び下端を隅丸として平面及び底面の縁まで及ぶ。溝部は正面視本願部分の下から約8分の2の位置にあり、同部分の縦約8分の1弱を占める。側面視、溝部は略倒平皿状であって、その上部と下部の隅は凹弧状に形成され、表面部と溝部は約90度で角を丸めず接続している。

イ 模様
本願部分の正面には、データマトリクス方式の2次元コードの一つのパターンの模様が付されている。当該コードの大きさは、正面視の本願部分に表れる面積の3分の1程度である。そして、そのパターンは、表面部のほぼ中央で溝部寄りに位置する。

2 引用意匠
(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「コンデンサ」である。

(2)形態
引用意匠のうち、原審拒絶理由における本願部分の創作非容易性の判断の根拠となる形状は、絞り加工部(13A)を含むケース(1)における、本願部に相当する断面の輪郭形状(内部機構は外観でないから除かれる。)の部分である。【図1】によれば、溝状に表されている「絞り加工部13A」は、金属ケース(1)の下から約6分の1の位置にあり、同部分の縦約10分の1を占める。そして、絞り加工部(13A)の側面視形状は、略半円弧状であり、その上部と下部の隅はやや小さな弧状で丸みを持たせて形成されている。

3 本願意匠の創作容易性の判断
絞り加工の溝を備えた円柱形状の電解コンデンサの物品の分野においては、静電容量の大小に応じ、かなり大きな容量であれば鉄道車両に用いるコンデンサ、小さな容量であれば回路基板に取り付けるコンデンサ、といった多種多様なコンデンサが存在する。当業者は、それぞれの使用目的に応じ、コンデンサの円柱の径と丈の比率、円柱に対する溝の大きさと溝の具体的な形状を考慮し、さらに加熱変形性フィルムをコンデンサにかぶせるか否かの選択を行い、コンデンサの創作を行うこととなる。

ア 本願部分の横方向に湾曲した正面視略正方形状の表面部とその下に続く溝部から成る全体の構成は、例を示すまでもなく、この種物品の分野において、ごく普通に見られる構成であって、格別の創作を要するとは認められない。

イ しかし、本願部分の溝部の形状は、側面視、溝部は略倒平皿状で、その上部と下部の隅は弧状に形成され、表面部と溝部は約90度で角を丸めず接続するものであって独特の形状であり、さらに2(2)で認定したように引用意匠の絞り加工部(13A)の側面視形状とは溝や隅の形状が異なるものであるから、独特の溝部を備える本願部分は、創作性を有するものと認められる。

ウ なお、2次元コードのパターンはランダムに決定され、様々なパターンがあり得るので、パターンの模様自体に創作性はないものの、本願部分の正面、すなわち、本体の側面に2次元コードの模様を付している電解コンデンサは確かに見受けられないから、本体の側面に2次元コードの模様を付した本願部分は、創作性を有すると認められる。

そうすると、コンデンサの分野において、上記イに述べたような形状の溝部を備え、かつ、本体の側面に2次元コードの模様を付した本願部分の形態は、この種物品分野において独自の着想によって創出したといえるものであり、引用意匠の形態に基づいて、本願意匠の形態を容易に創作することができたことを示す証拠は見られないから、本願意匠の形態は、この種物品分野において独自の着想によって創出したといわざるを得ず、当業者が公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。


第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2020-08-17 
出願番号 意願2018-15241(D2018-15241) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 杉田 翠 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 小柳 崇
宮田 莊平
登録日 2020-12-01 
登録番号 意匠登録第1675072号(D1675072) 
代理人 鎌田 健司 
代理人 野村 幸一 

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