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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M1 |
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管理番号 | 1368193 |
審判番号 | 不服2020-8526 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-06-19 |
確定日 | 2020-12-01 |
意匠に係る物品 | 化粧シート |
事件の表示 | 意願2019-1551「化粧シート」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成31年(2019年)1月29日の意匠登録出願であって,令和1年(2019年)10月16日付けの拒絶理由の通知に対し,同年11月28日に意見書が提出されたが,令和2年3月27日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年6月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面(図面代用写真)によれば,意匠に係る物品を「化粧シート」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様又は色彩の結合」を「形態」ともいう。)を願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものであり,「本願意匠は表面図において上下左右に連続する。裏面は白色かつ無模様であるので裏面図を省略する。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。 引用意匠 大韓民国意匠商標公報 2016年10月28日 タイル(登録番号30-0878802)の表面模様の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH28445361号) 第4 当審の判断 1 本願意匠 本願意匠は,上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面代用写真の内容によると,以下のとおりである。 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「化粧シート」である。 (2)本願意匠の形態 ア.本願意匠は,表面図及び裏面図をもって一組として出願されているものであるから(ただし,願書の【意匠の説明】の欄において,「裏面は白色かつ無模様である」と記載して裏面図は省略している。),平面的なものである。 イ.全体は,表面図に現れている形態が,上下左右に連続するものである。 ウ.表面は,最大で深さ0.1ミリメートルの凹部がまだらに形成してある。 エ.表面の模様と色彩は,全体が薄い茶系の灰色(あるいは,やや明るいウォーム・グレイ)とし,所々に茶系の灰色の濃淡や薄い青緑色が配色してあってまだら模様としている。 オ.表面は,エ.によって,光沢の無い(マットな)大理石や粘土のような形態である。 カ.裏面は,白色かつ無模様である。 2 引用意匠 引用意匠は,上記「第3」の特許庁意匠課公知資料の内容によると,以下のとおりである。 (1)意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は「タイル」である。 (2)引用意匠の形態 ア.全体は,正方形の板状である。 イ.詳細には,厚さの約5分の4を表面材が占め,裏側の約5分の1を裏面材が占める,二重構造としている。 ウ.表面の模様と色彩は,おおむね焦げ茶色で,所々に色によるむら(斑)があって,それは,さびた鉄(錆びた鉄)のような形態である。 エ.裏面材は,明るい茶色で,4つの角を小さく欠いた正方形であって,その裏面には正方形の網目模様を施している。 3 両意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠に係る物品は「化粧シート」であり,引用意匠に係る物品は「タイル」である。 (2)両意匠の形態の対比 両意匠の形態を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。 ア.共通点について 表面の模様と色彩につき,全体が茶色で,色による不規則な模様としている。 イ.相違点について (ア)全体形状につき,本願意匠は,平面的なものであって,上下左右に連続するものであるのに対して,引用意匠は,正方形の板状である。 (イ)表面の凹部につき,本願意匠は,最大で深さ0.1ミリメートルの凹部がまだらに形成してあるのに対して,引用意匠は,不明である。 (ウ)表面全体の色彩につき,本願意匠は,薄い茶系の灰色(やや明るいウォーム・グレイ)であるのに対して,引用意匠は,焦げ茶色である。 (エ)表面の模様につき,本願意匠は,まだらであり,光沢の無い大理石や粘土のような模様であるのに対して,引用意匠は,色むらによって,さびた鉄のような模様である。 (オ)裏面の形態につき,本願意匠は,白色かつ無模様であるのに対して,引用意匠は,裏側の約5分の1を占める裏面材は,明るい茶色で,4つの角を小さく欠いた正方形であって,その裏面には正方形の網目模様を施したものである。 4 判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 本願意匠の意匠に係る物品は「化粧シート」であり,建物の床や壁を化粧するためのシートである。 引用意匠の意匠に係る物品は「タイル」であり,壁又は床などに張るものである。 本願意匠も引用意匠も,共に建築物の床又は壁を美しく見えるように装い飾るためのものであるが,本願意匠は,化粧シートであるから,織物地や合成樹脂地などから成る上下左右に連続するものであるから,大きな面積を一度に張ることができるものであるのに対して,引用意匠は,タイルであるから,漆喰(しっくい)や接着剤によって1枚1枚張っていかなければならないものである。 そうすると,本願意匠と引用意匠は,用途は同一だとしても,機能及び使用状態が異なるから,意匠に係る物品は共通しているとはいえない。 (2)両意匠における形態の評価 ア.共通点について 共通点は,大ざっぱな認定による共通点又は概念的な共通点と認められ,両意匠のみの特徴とは認められないから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 イ.相違点について 相違点(ア)は,全体形状に係る点であり,使い勝手が異なることから,両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。 相違点(イ)は,ごく僅かな0.1ミリメートル以下の凹部であるから,正面視においては,視覚を通じて異なった美感が生じるとはいえないから,両意匠の類否判断に与える影響はとても小さい。 相違点(ウ)は,相違点(エ)と相まって,表面の形態に異なる印象を生じさせているものであるから,両意匠の類否判断に与える影響は,極めて大きいというべきである。 相違点(オ)は,本願意匠が,化粧シートとして良くある白色無模様であるのに対して,引用意匠は,漆喰との接着状態が良くなるように網目模様を施したものであるから,その印象は全く異なるものであり,両意匠の類否判断に与える影響は,極めて大きいというべきである。 (3)両意匠における形態の類否判断 以上のとおり,共通点は,両意匠の類否判断に与える影響が,小さいものであり,この共通点によっては,両意匠の類否判断を決するものといえないのに対して,相違点によって,需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,両意匠の類否判断を決するものといえる。 そうすると,本願意匠の形態と引用意匠の形態は,類似するとは認められない。 (4)両意匠における類否判断 よって,両意匠は,意匠に係る物品が共通せず,なおかつ,上記のとおり本願意匠と引用意匠の形態は類似するものではないから,本願意匠と引用意匠は類似するとはいえない。 5 結び したがって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2020-11-04 |
出願番号 | 意願2019-1551(D2019-1551) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(M1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 綿貫 浩一 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 正田 毅 |
登録日 | 2020-12-07 |
登録番号 | 意匠登録第1675508号(D1675508) |
代理人 | 宗助 智左子 |
代理人 | 松井 宏記 |