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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F2 |
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管理番号 | 1369051 |
審判番号 | 不服2020-7950 |
総通号数 | 253 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-06-09 |
確定日 | 2020-12-08 |
意匠に係る物品 | スタイラスペン |
事件の表示 | 意願2019- 6899「スタイラスペン」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 平成31年 3月29日 意匠登録出願 令和 1年 9月20日付け 拒絶理由通知書 令和 1年12月23日 意見書提出 令和 2年 2月28日付け 拒絶査定 令和 2年 6月 9日 審判請求書提出 第2 本願意匠 本願は、2018年9月30日の中華人民共和国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う、平成31年3月29日の意匠登録出願(意願2019-6899)であって、本願の意匠は、願書及び願書に添付した図面代用写真の記載によれば、意匠に係る物品を「スタイラスペン」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を願書に記載され、願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものである。(以下、「本願意匠」という。)(別紙第1参照) 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠(以下、「引用意匠」といい、本願意匠と合わせて「両意匠」という。)は、 「大韓民国意匠商標公報 2015年 8月 6日15-32号 スタイラスペン(登録番号30-0801822-0005)の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH27431189号)」(別紙第2参照)である。 第4 当審の判断 1 対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「スタイラスペン」であり、引用意匠の意匠に係る物品も「スタイラスペン」であり、共にスマートフォンやタブレット端末などの画面上にペン先を接触して画面を押下して入力を行うために用いるものであるから、本願意匠と引用意匠(以下、「両意匠」という。)の意匠に係る物品は一致する。 (2)形態 両意匠の形態を対比すると、主として、以下の共通点と相違点が認められる。 引用意匠の向きは本願意匠の向きに合わせて認定する(引用意匠の「図1-1」を斜視図に、「図1-2」を左に90度回転して「正面図」に、「図1-3」を左に90度回転して「背面図」とし、「図1-4」は左に90度回転して「右側面図」とし、「図1-5」は右に90度回転して「左側面図」とし、「図1-6」を「底面図」とし、「図1-7」を180度回転して「平面図」とする)。 ア 共通点 基本的構成態様として、 (A)全体は、ペン先部、クリップ部を備えた軸部、天冠部から成る略細長棒形状である点が共通し、 具体的構成態様として、 (B)ペン先部は、先端にチップ部を備えた略倒円錐状で、軸部は、正面視で上寄りにクリップ部を配した略円筒形状である点、 (C)クリップ部は、正面視で両端が奥手方向に鉤状に曲がった略細長U字状で、両端が直接軸部に接合し、軸部と平行に下に向けて延びている点、 (D)軸部の正面視横方向中央のペン先から全長の約3分の1に長円形状のボタン部を設けている点が共通する。 (3-2)相違点 具体的構成態様として、 (a)縦横の長さ比率において、本願意匠は、正面視約16.5:1であるのに対し、引用意匠は15:1である点、 (b)ペン先部を1として、各部の長手方向の長さ比率は本願意匠が、ペン先部:軸部:天冠部が、約1:5:0.2であるのに対し、引用意匠は、ペン先部天冠部が、約1:9:0.15である点 (c)ペン先部について、本願意匠のチップ部は略円錐形状で、チップ部から軸部にかけて、ほぼ面一状に略倒円錐台形状部を経て連なり、ペン先部と軸部には接合箇所が表れていないのに対し、引用意匠は、略砲弾形状のチップ部と略倒円錐台形状部の間に僅かに段部を形成し、軸部とペン先部の接合箇所で角部を形成したものである点、 (d)軸部のペン先寄りの長円形状のボタン部について、本願意匠は、正面視で軸部周面とほぼ面一に形成した、縦横の長さ比率が、約5:1のボタン部を1つ配したものであるに対して、引用意匠は、正面視で軸部周面より僅かに突出して形成した縦横の長さ比率が、約2:1のボタン部を2つ縦方向に連ねて配した点、 (e)軸部の天冠部寄りの背面視中央に、本願意匠は、縦横の長さ比率が約3:1の略長円形状の暗トーン部を1つ配したものであるに対して、引用意匠は、そのような暗トーン部は配していない点、 (f)天冠部について、本願意匠は、略隅丸キャップ状の天冠部が軸部と面一致状になるように接合しているのに対し、引用意匠は、軸部より一回り径の小さい扁平円柱形状の天冠部が軸部に対し段状に形成されている点が相違する。 2 類否判断 以上の一致点共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。 (1)意匠に係る物品の評価 前記、第4の1(1)のとおり、両意匠の意匠に係る物品は、一致するから同一である。 (2)形態の評価 「スタイラスペン」の物品分野においては、需要者は、スマートフォンやタブレット端末などの画面上にペン先を接触して画面を押下して入力を行うために用いるものであるから、接触箇所であるペン先部には注意を払い、また、手で把持される箇所の周辺である、軸部のペン先寄りに配されたボタン部にも、操作のしやすさなどの観点から、十分に注意を向けるところといえる。したがって、両意匠の類否判断においては、特に、上記の部分の形態を評価し、かつそれ以外の形態も併せて、各部を総合して意匠全体として形態を評価することとする。 (2-1)形態の共通点の評価 基本的構成態様としてあげた共通点(A)については、「スタイラスペン」の物品分野において,ごく普通に見受けられる基本的構成態様であるから,この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さく、共通点(B)及び(D)についても、「スタイラスペン」の物品分野において、各部の形態としてごく普通に見受けられるものであるから両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。また、共通点(C)は、「スタイラスペン」の物品分野において、カバーやケースなどにクリップで止めて携帯する使用態様もあるから、クリップ部も観察される箇所であるが、クリップ部について、両端が奥手方向に鉤状に曲がった正面視略細長U字状で、両端部が直接軸部に接合し、軸部と平行に左に向けて延びているものは、「スタイラスペン」の物品分野において普通に見受けられる態様であって、両意匠にのみ共通する形態とはいえず、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 したがって、共通点(A)ないし(D)の両意匠の類否判断に及ぼす影響は、いずれも小さく、共通点全体で総じても、両意匠の類否判断を決定付けるとはいえないものである。 (2-2)形態の相違点の評価 これに対して、相違点(a)及び相違点(b)は、両意匠の全体の縦横の長さ比率及び各部の長手方向の長さ比率についてであって、全体のプロポーションにも関わり、相違点(c)の相違点ともあいまって、本願意匠は、ペン先部の比率が軸部に対して大きく、ペン先からなめらかに軸部に連なる、ほっそりとした印象を与えるのに対し、引用意匠はペン先部の比率が軸部に対して小さく、ペン先と軸部が角部を形成して接合された、太めの角張った印象を与えることから、この点が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。次に、(d)は軸部のペン先寄りの長円形状のボタン部についてであるが、軸部のペン先寄りは、手で把持する部分でもあり、ボタン部は「スタイラスペン」の操作に関わる箇所であって、よく観察され、需要者が十分に注意を向けるところであって、本願意匠のように軸部周面とほぼ面一に形成した、縦横の長さ比率が、約5:1のものを1つ配したものと、引用意匠のように軸部周面より僅かに突出して形成した、縦横の長さ比率が約2:1のボタン部を2つ縦方向に連ねて配したものとでは、視覚的に大きく異なるものであって、この点が両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。また、相違点(e)は、軸部の天冠部寄り背面の略長円形状の暗トーン部有無についてであって、ボタン部の背面側であるから使用時に目立つ箇所ではないが、軸部上方にあって、手で持つ際に目に入りやすい箇所でもあるから、両意匠の類否判断に与える影響は一定程度あるものである。そして、相違点(f)については、天冠部の形態の相違であって、本願意匠は、略隅丸キャップ状の天冠部が軸部と面一致状になるように接合しているのに対し、引用意匠は、軸部より一回り径の小さい扁平円柱形状の天冠部が軸部に対し段状に形成されている点は、共に「スタイラスペン」の物品分野において、見受けられるものではあるが、上記、相違点(a)ないし相違点(c)の両意匠の別異の感を補強しており、この点が両意匠の類否判断に与える影響は一定程度あるものである。 (2-3)形態の総合評価 そうすると、形態における相違点(e)及び相違点(f)の両意匠の類否判断に及ぼす影響は、一定程度であるものであって、相違点(a)ないし相違点(c)の両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく、相違点(d)の両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて大きいものであるから、相違点(a)ないし(f)の両意匠の類否判断に及ぼす影響は、総じて大きいものであって、両意匠の類否判断を決定付けるものであるのに対して、形態の共通点(A)ないし(D)の両意匠の類否判断に及ぼす影響は、いずれも小さく、それら共通点(A)ないし共通点(D)が総じても、共通点の両意匠の類否判断に与える影響は小さく、相違点が共通点を凌駕し、両意匠の類否判断を決定付けるものであるから、両意匠は類似しない。 したがって、両意匠の意匠に係る物品は同一であるが、形態においては、両意匠は類似せず、それは、両意匠の類否判断を決定付けるものであるから、本願意匠は引用意匠に類似しない。 第5 むすび 以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2020-11-18 |
出願番号 | 意願2019-6899(D2019-6899) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(F2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 桐野 あい |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 濱本 文子 |
登録日 | 2021-01-04 |
登録番号 | 意匠登録第1677346号(D1677346) |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |