ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J1 |
---|---|
管理番号 | 1370076 |
審判番号 | 不服2020-5899 |
総通号数 | 254 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-04-30 |
確定日 | 2021-01-25 |
意匠に係る物品 | ヘルメット用生体情報測定機 |
事件の表示 | 意願2019- 13051「ヘルメット用生体情報測定機」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続の経緯 本願は,令和1年(2019年)6月13日の意匠登録出願であって,同年10月25日付けの拒絶理由の通知に対し,同年12月9日に意見書が提出されたが,令和2年(2020年)1月29日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年4月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2 本願意匠の願書及び添付図面の記載 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり,その意匠は,意匠に係る物品を「ヘルメット用生体情報測定機」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。),部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を,「写真において赤色で塗りつぶした部分以外の部分が『部分意匠として意匠登録を受けようとする部分』である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。 3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する,というものである。 拒絶理由通知において引用された意匠は,特許庁発行の公開特許公報(公開日:平成31年(2019年)3月7日)に記載された,特開2019-035161の【図4】及び【図5】における「41(4)」に表された「生体情報センサ」の意匠であって,その形態を,同公報に記載されたとおりとしたものである(以下「引用意匠」という。)(別紙第2参照)。 以下,本審決では,引用意匠において本願部分と対比,判断する部分,すなわち,本願部分に相当する部分を,「引用部分」という。 第2 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は,「ヘルメット用生体情報測定機」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「生体情報センサ」であって,その記載は一致しないものの,いずれもヘルメットのヘッドバンドに取り付けられ,ヘルメット装着者の生体情報を測定する用途及び機能を有するものであるから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,その用途及び機能が共通するものである。 (2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は,いずれもヘルメット用生体情報測定機若しくは生体情報センサ(以下「生体情報測定機」という。)の本体における,生体情報を測定するセンサから生体情報測定機に向かって延びるコードをカバーする部分及び生体情報測定機から飛び出たコードの一部分であって,センサから延びるコードを覆い,コードを生体情報測定機の本体から外に導くための部分であり,コードを保護する機能を有する部分であるから,両部分の用途及び機能は一致する。 (3)両部分の位置,大きさ及び範囲の対比 両部分の位置,大きさ及び範囲については,本願部分は,生体情報測定機の略中央部右側部分に位置し,正面視において生体情報測定機本体の横幅の約半分の長さをなす略細長長方形に表れる範囲を占めるものである。一方,引用部分は,ヘッドバンド表側に表れる生体情報測定機の下端部付近に位置するものであって,本願部分とは異なり,また,引用意匠にはセンサの位置が明示されておらず,引用部分の大きさ及び範囲は不明なものである。 よって,両部分の物品全体の形態の中における位置,大きさ及び範囲は一致するとはいえないものである。 (4)両部分の形態の対比 両部分の形態を対比する(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)と,その形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。 ア 形態の共通点 (共通点)両部分は,部分全体の形態が,生体測定機の本体におけるセンサから延びるコードをカバーする正面視略細長長方形状の部分(以下「コード取付部」という。)と,生体情報測定機の本体から外に延びる細線状のコードの部分(以下「コード部」という。)からなる点が共通する。 イ 形態の相違点 (相違点1)本願部分のコード取付部の具体的な形態が,2枚の網目状のメッシュ生地を重ねて,その上下辺部分を固着し筒状に形成したものであるのに対し,引用部分のコード取付部の具体的な形態は,引用部分にはコード部をどのようにカバーしているのか不明である上に,その形態も網目状のものではないから,両部分は相違する。 (相違点2)本願部分のコード取付部から飛び出すコード部の形態が,筒状のコード取付部の開口した内部より外に延びるようにして配設しているのに対し,引用部分のコード取付部から飛び出すコード部の形態は,測定機本体部の端部から単に外に延びるようにして配設していると認められるから,両部分は相違する。 2 両意匠の類否判断 (1)意匠に係る物品についての判断 両意匠の意匠に係る物品は,その用途及び機能が共通するものであるから,類似する。 (2)両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は,同一である。 (3)両部分の位置,大きさ及び範囲の評価 両部分の物品全体の形態の中における位置,大きさ及び範囲は,同一ではない。 (4)両部分の形態の類否判断 ア 共通点の評価 (共通点)は部分全体の形態に係るものであるが,両部分の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであり,かつ,測定機本体部の一方の端部からコードが延びる形態は,コートの取付方法に係る形態としてごく普通に見られるものであって,両部分のみに認められる格別の特徴であるとはいえないから,この(共通点)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 イ 相違点の評価 (相違点1)のコード取付部の具体的な形態,及び(相違点2)のコード取付部から飛び出すコード部の形態は,需要者の目につく部分であるところ,本願部分が,コード取付部の筒状部分の内部から飛び出すコード部がコード取付部内部を自在に動くように余裕を設けて配設したものであって,コード部への衝撃等に配慮した形態であるとの印象を与えるのに対し,引用部分は,コード取付部の具体的な形態は不明であるが,引用意匠の図面からみて生体情報測定機の端部にコード部を単に取り付けたものと認められるものであって,固定されて取り付けられたコード部の部分にダメージを受けやすい形態であるとの印象を与えるから,両部分はコード取付部から飛び出すコード部を含むコード取付部の美感に大きな相違がある。 ウ 形態の類否判断 両部分の形態における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき,部分意匠全体として全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合,両部分は,需要者の目につく部分であるコード取付部から飛び出すコード部を含むコード取付部の形態が大きく異なるものであるから,両部分全体の形態が共通することを考慮しても,部分意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえるから,両部分の形態は類似しないものである。 3 小括 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品は類似し,両部分の用途及び機能は同一であるが,両部分の位置,大きさ及び範囲は同一ではなく,両部分の形態においても類似しないものであるから,本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。 第3 むすび 上記のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2021-01-05 |
出願番号 | 意願2019-13051(D2019-13051) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(J1)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 藤澤 崇彦 |
特許庁審判長 |
木村 恭子 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 渡邉 久美 |
登録日 | 2021-02-05 |
登録番号 | 意匠登録第1679941号(D1679941) |
代理人 | 柳野 嘉秀 |
代理人 | 森岡 則夫 |
代理人 | 柳野 隆生 |
代理人 | 関口 久由 |