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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B6
管理番号 1371757 
審判番号 不服2020-13621
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-29 
確定日 2021-02-24 
意匠に係る物品 蒸発器本体 
事件の表示 意願2018-25835「蒸発器本体」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,2018年5月29日及び同年11月19日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成30年(2018年)11月28日の意匠登録出願であって,その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

平成31年 1月30日 :優先権証明書の提出
平成31年 1月30日 :優先権証明書の提出
平成31年 4月23日付け :拒絶理由の通知
令和 1年(2019年)8月13日 :手続補正書の提出
令和 1年11月 1日付け :拒絶理由の通知
令和 2年 2月 3日 :意見書の提出
令和 2年 6月23日付け :拒絶査定
令和 2年 9月29日 :審判請求書の提出
令和 2年10月 6日付け :手続補正指令
令和 2年10月23日 :手続補正書の提出
令和 2年10月23日 :手続補正書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,物品の部分について意匠登録を受けようとするものであって,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「蒸発器本体」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様又は色彩の結合」を「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「各図には,物品の表面形状を表す影線を併せて付している。実線で表された部分が,『部分意匠として登録を受けようとする部分』である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由(令和1年11月1日付け)は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
DM/099 741号 2018年 2月23日発行の国際事務局意匠公報
電子たばこ(登録番号DM/099 741 Electronic cigarettes)の5.1?5.8の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH30501513号)

第4 当審の判断
1.本願意匠
本願意匠は,上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると,以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「蒸発器本体」であり,願書の「意匠に係る物品の説明」欄の記載によると,カートリッジを取り付けて,吸引可能な蒸気を発生させるのに使用するという,用途及び機能を有するものである。

(2)本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,蒸発器本体の底面中央に設けてある充電用端子部分を除いた部分である。
本願部分の用途及び機能は,上記(1)の蒸発器本体の用途及び機能から充電用端子の用途及び機能を除いたものである。

(3)本願部分の形態
ア.本願部分は,無蓋有底の筒状のものである。
イ.本願部分は,長さ:横幅:厚さが,約8:2:1である。
ウ.本願部分の,底面の形状は,長辺及び短辺をほぼ直線状とし,角は大きな角丸とした略角丸長方形である。
エ.底面には,背面側に立ち上がった部分があるキャップをはめている。
オ.当該キャップは,底面側の角を面取りしており,下向きにすぼまっている。
カ.正面の上から約5分の2の位置に,4つの楕円を放射状に配した模様を付している。

2.引用意匠
引用意匠は,上記「第3」の特許庁意匠課公知資料の記載の内容によると,以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「電子たばこ」である。

(2)引用部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
引用意匠中,本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」ともいう。)は,電子たばこの底面中央に設けてある充電用端子部分を除いた部分である。
引用部分の用途及び機能は,電子たばこの用途及び機能から充電用端子の用途及び機能を除いたものである。

(3)引用部分の形態
ア.本願部分は,無蓋有底の筒状のものである。
イ.引用部分は,長さ:横幅:厚さが,約8:2:1である。
ウ.引用部分の,底面の形状は,略長方形であって,長辺が僅かに突出した曲線であって,短辺が突出した円弧状曲線であって,角は少し角張って長辺と短辺をつないでいる。
エ.底面は,電子たばこにおける筒状の周面の下端に,面一になるようにはめ込んだように表れている。
オ.正面の上から約5分の2の位置に,4つの楕円を放射状に配した模様を付している。

3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は「蒸発器本体」であり,引用意匠に係る物品は「電子たばこ」である。

(2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の対比
本願部分は,蒸発器本体の底面中央に設けてある充電用端子部分を除いた部分であるのに対して,引用部分は,電子たばこの底面中央に設けてある充電用端子部分を除いた部分である。
そして,本願部分の用途及び機能は,上記1.(1)の蒸発器本体の用途及び機能から充電用端子の用途及び機能を除いたものであるのに対して,引用部分の用途及び機能は,電子たばこの用途及び機能から充電用端子の用途及び機能を除いたものである。

(3)両部分の形態の対比
両部分の形態を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
(ア)両部分共に,無蓋有底の筒状のものである点。
(イ)両部分共に,長さ:横幅:厚さが,約8:2:1である点。
(ウ)両部分共に,底面の形状が,略長方形である点。
(エ)両部分共に,正面の上から約5分の2の位置に,4つの楕円を放射状に配した模様を付している点。

イ.相違点について
(ア)底面の形状につき,本願部分は,長辺及び短辺をほぼ直線状とし,角は大きな角丸とした略角丸長方形であるのに対して,引用部分は,長辺が僅かに突出した曲線であって,短辺が突出した円弧状曲線であって,角は少し角張って長辺と短辺をつないでいる点。
(イ)底面につき,本願部分は,背面側に立ち上がった部分があるキャップをはめており,そのキャップは,底面側の角を面取りしており,下向きにすぼまっているのに対して,引用部分は,電子たばこにおける筒状の周面の下端に,面一になるようにはめ込んだように表れている点。

4.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
本願意匠の意匠に係る物品は,「蒸発器本体」であるが,蒸発可能な材料を収容したカートリッジを取り付けて,吸引可能な蒸気を発生させる蒸発器となるものである。
引用意匠の意匠に係る物品は,「電子たばこ」である。電子たばことは,「たばこ葉を使用せず,装置内又は専用カートリッジ内の液体(リキッド)を電気加熱させ,発生する蒸気(ベイパー)を楽しむ製品」である。
そうすると,本願意匠と引用意匠に係る物品は,蒸発可能な材料を加熱して蒸気にするために使用するという用途及び機能が共通するから,両意匠の,意匠に係る物品は共通する。

(2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の評価
両部分の位置,大きさ及び範囲は,共通する物品の,底面中央に設けてある充電用端子部分を除いた部分であるから,共通している。
両部分の用途及び機能は,共通する物品の用途及び機能から充電用端子の用途及び機能を除いたものであるから,共通している。

(3)両部分における形態の評価
ア.共通点について
共通点(ア)については,カートリッジを取り付ける蒸発器本体としては,ごく普通の形状であるから,両部分の形態の類否判断に与える影響は小さい。
共通点(イ)については,共通点(ウ)と相まって,一定程度の共通感を生み出しているが,詳細には相違点(ア)の相違を内包しているものであり,両部分の形態の類否判断に与える影響は小さい。
共通点(エ)については,全体観察においてはごく小さい模様であることから,両部分の形態の類否判断に与える影響は小さい。

イ.相違点について
相違点(ア)によって,部分の大半を占める周面全体の具体的な形状を定めており,両部分に別異な印象を与えると認められ,両部分の形態の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(イ)は,形状変化のない筒状の端部形状であり,僅かながらも需要者の目にする部分の相違といえ,かつ,中央には充電用端子を設けてある底面の相違であるから,充電時には目に付きやすい部分の相違といえるから,両部分の形態の類否判断に与える影響は大きい。

(4)まとめ
そうすると,両部分の形態については,その共通点及び相違点の評価に基づくと,上記のとおり,共通点は,類否判断に及ぼす影響は小さいものであるのに対して,相違点によって類否判断に及ぼす影響は大きいものといえるものであり,両部分の形態は,類似するとは認められないものである。

(5)両意匠における類否判断
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能が共通している。
しかし,上記のとおり,両部分の形態は,類似するとは認められないものである。
よって,本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえない。

5.結び
以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似するとはいえず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-02-04 
出願番号 意願2018-25835(D2018-25835) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤原 宗久良桐野 あい 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2021-03-25 
登録番号 意匠登録第1683246号(D1683246) 
代理人 大塚 雅晴 
代理人 山尾 憲人 

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