ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 意48条1項3号非創作者無承継登録意匠 取り消して登録 K0 |
---|---|
管理番号 | 1372772 |
審判番号 | 不服2017-15971 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-10-27 |
確定日 | 2018-04-16 |
意匠に係る物品 | 建築用パネル製造用ローラー |
事件の表示 | 意願2016- 9718「建築用パネル製造用ローラー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成28年(2016年)5月9日の意匠登録出願であって,その手続の経緯は,以下のとおりである。 平成29年 5月11日付け:拒絶理由の通知 平成29年 6月21日 :意見書の提出 平成29年 8月21日付け:拒絶査定 平成29年10月27日 :審判請求書の提出 第2 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって,その意匠は,意匠に係る物品を「建築用パネル製造用ローラー」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,その出願の日前の他の意匠登録出願であってその出願後に意匠法第20条第3項又は同法第66条第3項の規定により意匠公報に掲載された意匠登録出願の願書の記載及び願書に添付した図面,写真,ひな形又は見本に現された意匠(以下「引用意匠」という。)の一部と同一又は類似するものと認められるので,意匠法第3条の2の規定に該当する,というものである。 引用意匠は,日本国特許庁発行の図面の内容が掲載された意匠公報(秘密解除公報発行日:平成29年4月10日)に記載された,意匠登録第1495663号の意匠(意匠に係る物品,建築用パネル製造用ローラー)であり,その形態は,同公報に記載されたとおりのものであって,引用意匠における本願部分と対比,判断する部分を,引用意匠の本願部分に相当する部分(以下「引用部分」という。)としたものである(別紙第2参照)。 なお,意匠登録第1495663号における,図面の内容について掲載のない最初の公報発行日は,平成26年4月21日である。 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも未硬化の建築用パネルの表面に押し当てられながら回転し,建築用パネルの表面に凹凸模様を付与する「建築用パネル製造用ローラー」であるから,両意匠の意匠に係る物品は,用途及び機能が一致する。 2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は,いずれも建築用パネル製造用ローラーにおいて,建築用パネル表面に凹凸模様を付与するためのローラー本体の部分であるから,両部分は,用途及び機能が一致する。 3 両部分の位置,大きさ及び範囲の対比 両部分は,いずれも建築用パネル製造用ローラーにおける回転軸部を除いたローラー本体の外周面の部分であるから,両部分は,位置,大きさ及び範囲が一致する。 4 両部分の形態の対比 (1)両部分の形態の共通点 (共通点1)両部分は,部分全体の形態が,外周面に凸条模様(以下「凸ライン」という。)が形成された略円筒形状である点で共通する。 (共通点2)両部分は,ローラーの長手方向に形成された凸ライン(以下「横凸ライン」という。)が,ほぼ等間隔に6条形成されている点で共通する。 (共通点3)両部分は,ローラーの周方向に形成された凸ライン(以下「縦凸ライン」という。)が,ローラー外周面両端部分以外の部分において,横凸ラインの両端部分に1条ずつ形成されている点で共通する。 (2)両部分の形態の相違点 (相違点1)本願部分の外周面の形態は,外周面を長手方向に約3等分する位置に縦凸ラインを2条形成し,3つの大区画を形成しているのに対し,引用部分の外周面の形態は,外周面を長手方向に約5等分する位置に縦凸ラインを4条形成し,5つの小区画を形成している点で,両部分は相違する。 (相違点2)本願部分の各区画に形成された横凸ラインの配置態様は,左大区画から右大区画にかけて横凸ラインが,約30°ずれながら配置されているのに対し,引用部分の各区画に形成された横凸ラインの配置態様は,左端部小区画と左内側小区画及び右内側小区画と右端部小区画の間では横凸ラインが僅かにずれて配置され,左内側小区画と中央小区画及び中央区画と右内側小区画の間では横凸ラインが約30°ずれて配置されている点で,両部分は相違する。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は,用途及び機能が一致するものであり,同一である。 2 両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は,用途及び機能が一致するものであり,同一である。 3 両部分の位置,大きさ及び範囲の評価 両部分の位置,大きさ及び範囲は,建築用パネル製造用ローラー全体の形態の中における位置,大きさ及び範囲が一致するものであり,同一である。 4 両部分の形態の共通点及び相違点の評価 (1)両部分の形態の共通点 (共通点1)は,部分全体の形態に係るものではあるが,両部分の機能からみて不可避な形態であるといえるから,部分全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2)及び(共通点3)における横凸ライン及び縦凸ラインの形態は,未硬化の建築用パネルの表面に目地部及び略横長長方形状のタイル状の突出部を形成するために設けられた凸ラインであって,この種物品分野においては特段特徴のない形態にすぎず,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないから,これら(共通点2)及び(共通点3)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (2)両部分の形態の相違点 (相違点1)の外周面の形態,及び(相違点2)の横凸ラインの配置態様については,該部位の形態によって建築用パネルの表面の態様が決定することから,この種物品の需要者が特に注視する部分であるといえるものであり,中央大区画と左右の大区画の間の横凸ラインが約30°ずれながら配置されている3つの大区画からなる本願部分の形態と,中央小区画の横凸ラインのみが約30°ずれて配置されている5つの小区画からなる引用部分の形態では,両意匠の基調をなす部分の視覚的印象が大きく異なるから,両部分は,需要者が特に注視する外周面の形態,及び横凸ラインの配置態様には大きな差異がある。 5 両意匠の類否判断 両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき,意匠全体として総合的に観察した場合,両部分は,需要者が特に注視する外周面の形態,及び横凸ラインの配置態様の美感にそれぞれ大きな差異があり,これらを総合すると,両部分は全体として美感に大きな差異があるといえる。そうすると,両部分は,部分全体の形状,横凸ライン及び縦凸ラインの構成の態様が共通することを考慮しても,意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。 したがって,両意匠は,意匠に係る物品が同一であり,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲も同一であるが,その形態において,需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものである。 第6 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,本願出願日前の他の意匠登録出願であって当該出願後に意匠法第20条第3項の規定により意匠公報に掲載された意匠の一部と類似せず,意匠法第3条の2の規定に該当しないものである。したがって,原査定の拒絶の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2018-03-27 |
出願番号 | 意願2016-9718(D2016-9718) |
審決分類 |
D
1
8・
16-
WY
(K0)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小柳 崇 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
宮田 莊平 江塚 尚弘 |
登録日 | 2018-05-11 |
登録番号 | 意匠登録第1605703号(D1605703) |
代理人 | 飯島 紳行 |