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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B2
管理番号 1372777 
審判番号 不服2019-15481
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-19 
確定日 2021-03-25 
意匠に係る物品 帽子 
事件の表示 意願2018-349「帽子」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,2017年7月12日の中華人民共和国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成30年(2018年)1月12日の意匠登録出願であって,その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

平成30年 1月25日付け :手続補正指令
平成30年 2月28日 :手続補正書の提出
平成30年 3月20日 :優先権証明書の提出
平成30年 8月29日付け :拒絶理由の通知
平成31年 1月 4日 :手続補正書の提出
平成31年 1月17日 :手続補正書の提出
平成31年 2月15日付け :拒絶理由の通知
令和 1年(2019年)6月18日 :意見書の提出
令和 1年 6月18日 :手続補正書の提出
令和 1年 8月 6日付け :拒絶査定
令和 1年11月19日 :審判請求書の提出
令和 1年11月28日付け :手続補正指令
令和 1年12月26日 :手続補正書の提出
令和 2年 4月23日付け :補正の却下の決定
令和 2年12月22日 :手続補正書の提出

第2 本願意匠
本願意匠は,令和2年12月22日に手続補正された願書及び図面によれば,意匠に係る物品を「帽子」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由(平成31年2月15日付け)は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

米国特許商標公報 2015年11月17日
防水ポケット付き帽子(登録番号US D743149S)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH27324919号)

第4 当審の判断
1 本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「帽子」である。

(2)本願意匠の形状
ア.本願意匠は,クラウンとバイザーから成るものである。
イ.クラウンは,継ぎ目のない半球状である。
ウ.クラウンの頂部に,天ボタン(ぼん天ともいう。)を設けている。
エ.バイザーは,クラウンの底辺に対して斜め下に傾けるように設けている。
オ.バイザーは,左右方向中央が上になるように湾曲している。
カ.バイザーの幅は,クラウンの左右方向の幅より細くなっている。
キ.底面図において,バイザーの左右の縁は,バイザーの長さの約2分の1までが,平行である。
ク.底面図において,バイザーの先端ヘリは,緩い曲線状で,左右の縁とは,バイザーの長さの2分の1弱の半径となる大きな略4分の1円弧でつながっている。
ケ.上記キ.及び同ク.の結果,バイザーの底面視形状は,2分の1の俵形である。
コ.クラウンの後部には,横長の半長円形の開口部を設けてあり,その開口部の縁には,細幅のストリップを設けている。
サ.開口部の下側には,長さ調整ベルトを設けている。
シ.クラウンの内側において,前方(おでこ側)から頂部まで延びる3本のストリップを配置している。
ス.クラウンの底辺の縁には,縁に沿ったバンドを設けている。

2 引用意匠
(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「防水ポケット付き帽子」である。

(2)引用意匠の形状
ア.引用意匠は,クラウンとバイザーから成るものである。
イ.クラウンは,継ぎ目のない半球状である。
ウ.クラウンの頂部に,天ボタンを設けている。
エ.バイザーは,クラウンの底辺に対して直線状に設けている。
オ.バイザーは,左右方向中央が上になるように湾曲している。
カ.バイザーの幅は,クラウンの左右方向の幅より細くなっている。
キ.底面図において,バイザーの左右の縁は,バイザーの長さの約2分の1までが,平行である。
ク.底面図において,バイザーの先端ヘリは,曲線状で,左右の縁とは,バイザーの長さの約3分の1の半径となる円弧でつながっている。
ケ.上記キ.及び同ク.の結果,バイザーの底面視形状は,扁平なU字形状である。
コ.クラウンの後部には,半円形の開口部を設けている。
サ.開口部の下側には,長さ調整ベルトを設けている。
シ.クラウンの内側において,右側頭部に当たる箇所に,ポケットを設けている。
ス.クラウンの底辺の縁には,縁に沿ったバンドを設けている。

3 両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は「帽子」であり,引用意匠に係る物品は「防水ポケット付き帽子」である。

(2)両意匠の形状の対比
両意匠の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
(ア)両意匠共に,クラウンとバイザーから成るものである。
(イ)クラウンは,継ぎ目のない半球状である。
(ウ)クラウンの頂部に,天ボタンを設けている。
(エ)バイザーは,左右方向中央が上になるように湾曲している。
(オ)バイザーの幅は,クラウンの左右方向の幅より細くなっている。
(カ)底面図において,バイザーの左右の縁は,バイザーの長さの約2分の1までが,平行である。
(キ)底面図において,バイザーの先端ヘリは,曲線状で,左右の縁とは,円弧でつながっている。
(ク)クラウンの後部には,開口部を設けている。
(ケ)開口部の下側には,長さ調整ベルトを設けている。
(コ)クラウンの底辺の縁には,縁に沿ったバンドを設けている。

イ.相違点について
(ア)バイザーにつき,本願意匠は,クラウンの底辺に対して斜め下に傾けるように設けているのに対して,引用意匠は,クラウンの底辺に対して直線状に設けている。
(イ)底面図におけるバイザーの形状につき,本願意匠は,先端のヘリが,緩い曲線状で,左右の縁とは,バイザーの長さの2分の1弱の半径となる大きな略4分の1円弧でつながっており,その結果,バイザーの底面視形状は,2分の1の俵形であるのに対して,引用意匠は,先端のヘリが,曲線状で,左右の縁とは,バイザーの長さの約3分の1の半径となる円弧でつながっており,その結果,バイザーの底面視形状は,扁平なU字形状である。
(ウ)クラウンの後部に設けた開口部につき,本願意匠は,横長の半長円形であって,その縁には,細幅のストリップを設けているのに対して,引用意匠は,半円形であって,ストリップを設けていない。
(エ)クラウンの内側の態様につき,本願意匠は,前方から頂部まで延びる3本のストリップを配置しているのに対して,引用意匠は,そのようなストリップを設けておらず,右側頭部に当たる箇所に,ポケットを設けている。

4 判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
本願意匠に係る物品は「帽子」であり,引用意匠に係る物品は「防水ポケット付き帽子」であるが,いずれも帽子であるから,共通している。

(2)両意匠における形状の評価
ア.共通点について
共通点(ア)は,この種物品分野においては,一般的な形状であり,両意匠のみの共通点とはいえないため,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
共通点(イ)は,クラウンとバイザーから成る帽子では,クラウンは,大半が6枚ほどの複数枚の切れから構成されていて,クラウンには,複数本の継ぎ目があるのが一般的であるから,この共通点は,両意匠の類否判断に与える影響は一定程度認められる。
共通点(ウ)ないし(コ)については,この種物品分野においては,一般的な形状であり,両意匠のみの共通点とはいえないため,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

イ.相違点について
相違点(ア)ないし(ウ)は,本願意匠の形状も,引用意匠の形状も,共にこの種物品分野においては,一般的な形状であるから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
相違点(エ)については,この種物品は,手にとって色々な方向から観察することが容易なものであり,需要者は,外観はもちろんのこと,かぶり心地を確認するため,クラウンの内側にも注意を払うものと認められる。
そして,この種物品分野においては,クラウンの継ぎ目の内側にストリップを設けることが一般的に行われると認められるところ,本願意匠は,クラウンに継ぎ目を設けていないのに内側に3本のストリップを設けているという特徴ある形態としており,この点は,本願出願前に公然知られた形状として存在せず,本願意匠のみの特徴と認められることより,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。

(3)両意匠における形状の類否判断
以上のとおり,共通点(イ)において,両意匠の類否判断に与える影響が一定程度認められるが,全ての共通点を総合しても,両意匠の類否判断を決するまでには至らないものであるのに対して,相違点(エ)によって,需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,相違点は,両意匠の類否判断を決するものといえる。
そうすると,本願意匠の形状と引用意匠の形状は,類似するとは認められない。

(4)両意匠における類否判断
よって,両意匠は,意匠に係る物品が共通しているが,上記のとおり本願意匠と引用意匠の形状は類似するものではないから,本願意匠と引用意匠は類似するとはいえない。

5 結び
したがって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-03-11 
出願番号 意願2018-349(D2018-349) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 重坂 舞 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2021-04-14 
登録番号 意匠登録第1684738号(D1684738) 
代理人 松下 満 
代理人 ▲吉▼田 和彦 
代理人 渡邊 徹 
代理人 須田 洋之 
代理人 倉澤 伊知郎 
代理人 田中 伸一郎 
代理人 山本 泰史 

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