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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2 |
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管理番号 | 1373827 |
審判番号 | 不服2020-14335 |
総通号数 | 258 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-10-13 |
確定日 | 2021-05-11 |
意匠に係る物品 | 競走用自動車 |
事件の表示 | 意願2019- 17755「競走用自動車」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2019年2月13日の欧州連合知的財産庁への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う、令和1年(2019年)8月8日の意匠登録出願であって、令和2年(2020年)1月8日付けの拒絶理由の通知に対し、同年4月21日に意見書が提出されたが、同年7月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願意匠は、意匠に係る物品を「競走用自動車」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当し、意匠登録を受けることができないとしたものであって、当該拒絶の理由に引用された意匠は、下記のとおりである(別紙第2参照)。 引用意匠 欧州連合意匠公報 2018年 7月27日 自動車(登録番号004709616-0002 Motor cars)の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH30204279号) 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は「競走用自動車」であり、引用意匠の意匠に係る物品は「自動車」であるが、いずれもフォーミュラカータイプの自動車であるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は同一である。 2 形態の対比 (1)両意匠の形態の対比にあたっては、車体前方から見た向きを「正面」(本願意匠の図面では、「左側面図」として表れる。)、車体右側から見た向きを「右側面」(本願意匠の図面では、「正面図」として表れる。)とし、その上で、正面視において左右両側にある部材の形態については、主に右側の部材について言及する。 (2)形態の共通点 両意匠は、(A)車体中央にあるコックピットから前方に延びる細長いノーズの先端寄りの部分に、左右に突出するフロントサスペンションを設けて前輪を配し、そのノーズの先端部分にフロントウイングをハンマーヘッド状に配し、コックピットの左右に張り出して後方に向かって絞り込んだ態様のサイドポッドを設け、コックピットの後方隆起部の前方にインダクションポッドを設け、当該隆起部を後方に向かって漸次低くして左右両方を傾斜面状に形成し、車体の後方寄りの左右にリアサスペンションを設けて後輪を配し、その斜め上方であって、左右の後輪の間略全幅に、略横長矩形板状プレート及び左右両端の垂直プレートからなるリアウイングを設け、車体下端部にサイドポッドから後輪前方にかけて車体の横幅最広部よりもやや幅広に張り出すアンダートレイを取り付けた基本的構成態様において共通する。 そして、具体的構成態様について、(B)フロントウイングは、左右に翼状に広がる複数枚のブレードを後方に向かってずらして積層し、その両端には垂直方向に側面視略長方形状のエンドプレートを設けた点、(C)コックピットの開口部は平面視略縦長台形状とし、その上部に配設されるハロは、平面視略鼻緒形に形成した点、(D)リアウイングは、幅狭の上方プレートと幅広の下方プレートの2枚のプレートを有し、垂直プレートは、後方上の角部を右側面視倒J字状に切り欠いた点が共通する。 (3)形態の相違点 (ア)フロントウイング 本願意匠のフロントウイングは前輪外側の幅とほぼ同幅であるのに対して、引用意匠のフロントウイングはやや幅狭である点、引用意匠のフロントウイングは前方左右両端近傍に略同心円状に湾曲する4枚の垂直フィンを設けているのに対して、本願意匠は設けていない点、本願意匠のエンドプレートは正面視大略L字状であるのに対して、引用意匠のエンドプレートは正面視大略逆コ字状であり、その中間部にも弧状のフィンを有し、後端部は外側に折れ曲がっている点が相違する。 (イ)前輪内側の吸気部材について、本願意匠はホイールの半径に収まる程度の大きさであるのに対して、引用意匠はタイヤの半径ほどの大きさである点が相違する。 (ウ)バージボード及びその周辺部 本願意匠のバージボードは、右側面視で、後方に向けて下り階段状に形成しているのに対して、引用意匠のバージボードは後端が弧状に傾斜して形成している点、引用意匠はバージボードの上方にサイドフィンを設けているのに対して、本願意匠は設けていない点が相違する。 (エ)サイドミラーの支持部について、本願意匠は左右に長く伸びているのに対して、引用意匠はそうではない点が相違する。 (オ)インダクションポッド及びエンジンカバー 本願意匠は、正面視において、インダクションポッドを略二等辺三角形状とし、後方のエンジンカバーは連続した山状に形成しているのに対して、引用意匠はインダクションポッドを横長略楕円形状とし、後方のエンジンカバーは略楕円形状から山状に変化している点、また、右側面視において、本願意匠のエンジンカバーはインダクションポッドからカバー後端にかけてなだらかに傾斜しているのに対して、引用意匠のエンジンカバーはインダクションポッドから一旦平坦部分が続いたのち、カバー後端に向かって大きく傾斜している点が相違する。 (カ)サイドポッドの右側面視稜線について、本願意匠は後方にいくにつれてごく緩やかな凸弧状としているのに対して、引用意匠は凸弧状から凹弧状に変化した後に直線状に傾斜している点が相違する。 (キ)リアウイング手前のTウイングについて、平面視で、本願意匠は等幅であるのに対して、引用意匠は両端にいくにつれて先細り状になっている点が相違する。 (ク)リアウイングの垂直プレートについて、引用意匠は湾曲した一枚のプレートで構成しているのに対して、本願意匠は後方側約2/3程度を上下に分割している点が相違する。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。 2 形態の共通点及び相違点の評価 (1)両意匠の類否判断手法について 本願意匠の意匠に係る物品は、競走用自動車であり、需要者は、自動車競技に関わる専門的な者であるから、機能的な特性や設計上の制約についても理解しつつ、その外観を細部にわたって注意深く観察することとなる。 したがって、本願意匠と引用意匠の類否判断においては、単に全体の形態を比較するだけではなく、技術的な要請によって決定される細部についても比重を置いて、両意匠の共通点が与える印象と、相違点が与える印象を対比し、それらが両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価、総合して、意匠全体として類似するか否かを判断することとする。 (2)共通点の評価 まず、共通点(A)の全体の態様、共通点(B)ないし(D)の各部の態様は、両意匠の基調を形成し、需要者に共通の印象を与えるものであるが、競走用自動車の需要者は、その外観を細部にわたって注意深く観察するものであるから、上記共通点(A)ないし(D)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものの、この共通点のみでは、両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないということができる。 (3)相違点の評価 これに対して、(ア)フロントウイング、(ウ)バージボード及びその周辺部、(ク)リアウイングについては、技術的な要請によって決定される部分ではあるが、自動車競技に関わる専門的な需要者が比重を置いて観察する部分であるから、これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響はそれぞれ大きいといえる。 次に、(オ)インダクションポッド及びエンジンカバー、(カ)サイドポッドの態様については、意匠全体の約半分を占め、視覚的印象を大いに異にし、需要者に別異の印象を起こさせるものであるから、この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいというべきである。 したがって、上記相違点は、意匠全体として見た場合、需要者に別異の印象を強く与えるものであって、両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。 他方、(イ)前輪内側の吸気部材、(エ)サイドミラーの支持部、(キ)リアウイング手前のTウイングについては、全体として見た場合、部分的な相違であるから、これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといえる。 3 両意匠の類否判断 上記のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一であり、両意匠の形態については、共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものの、共通点全体としては両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、上記(1)のとおり、競走用自動車の意匠の類否判断においては、細部の形態をより重視して対比するため、相違点があいまって生じる視覚的効果は両意匠の類否判断に大きく影響を与えるものであり、意匠全体として見た場合には、これらの相違点は需要者に別異の印象を与え、両意匠に異なる美感を惹起させるものであるから、本願意匠が、引用意匠に類似するということはできない。 第6 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2021-04-20 |
出願番号 | 意願2019-17755(D2019-17755) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(G2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 加藤 真珠、藤澤 崇彦、小曽根 智成 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 井上 和之 |
登録日 | 2021-05-17 |
登録番号 | 意匠登録第1686962号(D1686962) |
代理人 | 宮崎 修 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |