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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K0
管理番号 1373831 
審判番号 不服2020-14481
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-15 
確定日 2021-05-12 
意匠に係る物品 静電塗装用スプレーガン 
事件の表示 意願2019- 26341「静電塗装用スプレーガン」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 事案の概要

1 手続の経緯
本願は,令和1年(2019年)11月28日(パリ条約による優先権主張:2019年5月31日,アメリカ合衆国)の意匠登録出願であって,令和2年(2020年)3月6日付けの拒絶理由の通知に対し,同年6月17日に意見書が提出されたが,同年7月14日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年10月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 本願意匠の願書及び添付図面の記載
本願意匠は,意匠に係る物品を「静電塗装用スプレーガン」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることができない意匠)に該当する,というものである。
拒絶理由通知において引用された意匠は,大韓民国意匠商標公報2016年2月16日に記載された,「スプレーガン(登録番号30-0839627)」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH28406752号)であり,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである(以下「引用意匠」という。)(別紙第2参照)。

第2 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は,「静電塗装用スプレーガン」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「スプレーガン」であって,その記載は一致しないものであるが,いずれも静電塗装に用いられるスプレーガンであるから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,その用途及び機能が一致する。

(2)形態の対比
本願意匠と引用意匠の形態を対比すると,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお,引用意匠の図面について図の表示と図中の向きを本願意匠の図面に合わせることとし,本願意匠の正面図の側をスプレーガンの前方側,本願意匠の背面図の側をスプレーガンの後方側,本願意匠の平面図の側をスプレーガンの上面側,本願意匠の底面図の側をスプレーガンの下面側として,以下記載する。
ア 形態の共通点
(共通点1)両意匠は,全体を,前方部分が窄まり,後方部分が一回り大きな略変形直方体形状のスプレーガンの本体部分(以下「ガン本体部」という。)の前方側先端部分に,塗料吐出部分(以下「エアキャップ」という。)を配設し,ガン本体部の後方側下面部角部分に,エアーホース等を接続する部分(以下「ホース接続部」という。)を配設した構成とした点で共通する。
(共通点2)両意匠は,ガン本体部の形態を,その下面部分のみを傾斜面とした角部分を面取りした略四角錐台形状の前方部分,角部分を面取りした略直方体形状の中間部分,及び背面視が略半長円形状の角部分を面取りした柱状体形状の後方部分を,前後に並べて一体的に形成した構成としたものであって,前方部分の先端部分を前方に向かって窄まる略四角錐台形状に形成し,後方部分の中間部分との接合部分を後方に向かって拡がる略長円錐台形状に形成し,後方部分の左右側面部に略隅丸長方形に表れる平坦部分を設け,後方部分の右側面部下方部分に略湾曲凸面状の膨出部分を形成し,後方部分の背面部に背面視が略ひょうたん形の板状体を設け,その板状体の下方部分に略扁平円錐台形状の突出部を1つ配設したものである点で共通する。
(共通点3)両意匠は,エアキャップの形態を,周側面に湾曲凹面状の筋模様を多数形成した略短円筒状のロックナットの前面部中央部分に,中心部分に針状の電極を1本配した塗料吐出口を配し,この塗料吐出口を挟んで略直方体形状の小突起部を一対配した構成の略角付き円板状のキャップを設けた点で共通する。
(共通点4)両意匠は,ホース接続部の形態を,左側面視略L字状の肉厚な板状体としたものであって,その前面上端部の左右中央部分に底面視略半長円形状の薄板部を形成し,その前面部の上下中央部分にねじ頭を正方形板状としたボルト2本を左右に並設し,その左右側面部の前方部分に大小の円形に表れる部分を上下に2つ,後方部分に小円形に表れる部分を1つ形成している点で共通する。

イ 形態の相違点
(相違点1)本願意匠は,ガン本体部の右側面部前方側端部に略短円筒状の基台部を突設し,この基台部先端側の外周面前方部分からエアキャップの後方端部まで延びる,先端に向かって漸次細くなる略短円柱状の短い電極支持部を配設し,この電極支持部の先端部に先端側外周面のガン本体部側に小突起状の電極を設けた,ガン本体部の先端部分より前方に延びる略棒状の長い電極部を設けた構成からなる外部電極を1つ配設しているのに対し,引用意匠には,外部電極を設けていない点で,両意匠は相違する。
(相違点2)本願意匠のホース接続部背面部分には,塗料用若しくは空気用のニップルを複数立設しているのに対し,引用意匠のホース接続部背面部分には,円形に表れる部分を複数形成している点で,両意匠は相違する。

2 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品についての判断
両意匠の意匠に係る物品は,その用途及び機能が一致するから同一である。

(2)形態の類否についての判断
両意匠の意匠に係る物品は,手にとって使用され,使用時に観察されるスプレーガンではなく,工場の塗装ブース内でロボットアーム等に取り付けられて使用され,使用時にその外観が観察されることがないスプレーガンであるから,この物品の需要者は,その外観の形態のみならず,塗装性能に係る部分である外部電極の形態についても強い関心を持って観察するものであるといえる。
したがって,塗料抵抗値の低い塗料であっても塗料の高い着き回り性能を実現するために設けられた外部電極の部分は,塗装性能の観点からこの物品の需要者が特に注視する部分であるということができる。

ア 共通点の評価
(共通点1)の全体の形態,及び(共通点2)ないし(共通点4)の各部の形態については,その形態がほぼ共通するものであるから,これらの(共通点1)ないし(共通点4)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。

イ 相違点の評価
(相違点1)の外部電極の有無の相違については,塗装性能の観点から需要者が注視する部分であって,本願意匠にのみ存在する,塗料抵抗値の低い塗料であっても塗料の高い着き回り性能を実現するために設けられた外部電極の部分は,この物品の需要者にとってみれば,使用時にその形態が観察されることがない外観の形態よりも強い関心を持って観察する部分であるから,この(相違点1)は外観の形態の共通性が与える影響より意匠全体の美感に与える影響は大きいといえる。
(相違点2)のホース接続部背面部分の相違については,両意匠の該部位の形態は異なるものの,その使用時には,引用意匠のホース接続部背面部分にも塗料用若しくは空気用のニップルを複数立設するものであるから,使用時での形態を考慮すれば,この相違点は想定できる範囲内のものであるといえるから,この(相違点2)が意匠全体の美感に与える影響は一定程度のものである。

ウ 形態の類否判断
両意匠の形態における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき,意匠全体として全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合,両意匠は,需要者が特に注視する部分である外部電極の有無に係る相違が意匠全体の美感に与える影響が大きく,ホース接続部背面部分の形態の相違が意匠全体の美感に与える影響も一定程度あることから,両意匠の全体や各部の形態が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいとしても,意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえるから,両意匠の形態は類似しないものである。

3 小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が同一であるが,その形態において類似しないから,本願意匠と引用意匠は類似するということはできない。

第3 むすび

上記のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-04-26 
出願番号 意願2019-26341(D2019-26341) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K0)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 智加 
特許庁審判長 木村 恭子
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2021-06-04 
登録番号 意匠登録第1688241号(D1688241) 
代理人 特許業務法人ナガトアンドパートナーズ 

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