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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2 |
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管理番号 | 1374994 |
審判番号 | 不服2020-14639 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-10-21 |
確定日 | 2021-06-10 |
意匠に係る物品 | 自動車用ヘッドライト |
事件の表示 | 意願2019- 29021「自動車用ヘッドライト」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続の経緯 本願は,令和1年(2019年)12月26日(パリ条約による優先権主張2019年7月19日,台湾)の意匠登録出願であって,令和2年(2020年)4月27日付けの拒絶理由の通知に対し,同年6月8日に意見書が提出されたが,同年7月29日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年10月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2 本願意匠の願書及び添付図面の記載 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり,その意匠は,意匠に係る物品を「自動車用ヘッドライト」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。),部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。 3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることができない意匠)に該当する,というものである。 拒絶理由通知において引用された意匠は,日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成21年(2009年)1月19日)に記載された,意匠登録第1348562号(意匠に係る物品,自動車用前照灯)の意匠であって,その形態を,同公報に記載されたとおりとしたものである(以下「引用意匠」という。)(別紙第2参照)。 以下,本審決では,引用意匠において本願部分と対比,判断する部分,すなわち,本願部分に相当する部分を,「引用部分」という。 第2 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は,「自動車用ヘッドライト」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「自動車用前照灯」であって,その記載は一致しないものであるが,車両前方の左右角部近傍に1対で配設される自動車用ヘッドライトであるから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,その用途及び機能が一致するものである。 (2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)の用途及び機能は,いずれも自動車のフロントコンビネーションランプとして用いられるものであり,前方を照らすためのヘッドランプや点滅表示して進行方向変更を知らせるためのターンシグナルランプ,車幅を示すためのポジションランプ等の機能を有するものであるから,両部分の用途及び機能は一致する。 (3)両部分の位置,大きさ及び範囲の対比 両部分は,いずれも車両取り付け後に車体表面に表出する自動車用ヘッドライトのカバーの部分及びそれに覆われた内部の部分であるから,両部分の位置,大きさ及び範囲は一致する。 (4)両部分の形態の対比 本願意匠の意匠に係る物品である「自動車用ヘッドライト」の分野では,車体前方の左角部近傍に取り付けられるヘッドライトと車体前方の右角部近傍に取り付けられるヘッドライトは,左右対称形のものであって,この意匠の実施にあたっては左側のヘッドライトと右側のものは実質同一のものであると認められるから,両部分の形態の対比にあたっては,その対比が容易となるように,本願意匠の図面に基づく本願部分の形態と,引用意匠のものと左右対称形のものの図面(別紙第3参照)に基づく本願部分に相当する部分(以下「【引用部分】」という。)の形態を対比することとする。 本願部分と【引用部分】(以下「【両部分】」という。)の形態を対比する(なお,対比のため,本願部分の図面における正面,平面等の向きを,【引用部分】にもあてはめることとする。)と,その形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。 ア 形態の共通点 (共通点1)【両部分】は,部分全体を,車両取り付け後に車体表面に表れる自動車用ヘッドライトの本体内部(以下「本体部」という。),それを覆う透明なカバー(以下「カバー部」という。),及び本体部の正面視左辺部分及び下辺部分に沿って設けられた正面視略逆レの字状の細幅縁部分からなる点で共通する。 (共通点2)【両部分】は,本体部の形態を,平面視において,左先端部にのみ返しを設けたような略矢尻状としたものであって,その中央部分に,複数の大型ランプからなるヘッドランプ部分(以下「ヘッドランプ部」という。)を配し,その右側縁部分に,縁部に沿って略細幅帯状に表れる部分を配し,その左端部分に,ターンシグナルランプとポジションランプを上下に配し,左側縁部分からターンシグナルランプとポジションランプの境目にかけて,正面視略逆しの字状に表れる薄い湾曲した板状体を配している点で共通する。 (共通点3)【両部分】は,カバー部の形態を,平面視を本体部と同じ左先端部にのみ返しを設けたような略矢尻状としたものであって,左側面視を正面側に向かって下方に傾斜する僅かに膨出した凸状湾曲面に形成し,左先端部の根元部分を凹状湾曲面に形成している点で共通する。 イ 形態の相違点 (相違点1)本願部分のヘッドランプ部の形態が,左右側面部を外側に膨出した凸状湾曲面状とした略直方体形状の同型のヘッドランプを,下方のものが正面側に突出するような配置で,略階段状に配設したものであるのに対し,【引用部分】のヘッドランプ部の形態は,正面視略円形状のランプの周囲に,リング状の発光部を設けた大型のヘッドランプと,先端部を丸い略円錐状に形成した略円筒状の小型のヘッドランプを,大型のヘッドランプ上面部の背面側部分に小型のヘッドランプが奥まって配設したものである点で,【両部分】は相違する。 (相違点2)本願部分の本体部の左側縁部分から下辺部分にかけて,正面視略L字状に表れる細幅帯状部分を3条形成しているのに対し,【引用部分】にはそのようなものは形成していない点で,【両部分】は相違する。 2 両意匠の類否判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は,その用途及び機能が一致するから同一である。 (2)両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は,同一である。 (3)両部分の位置,大きさ及び範囲の評価 両部分の位置,大きさ及び範囲は,物品全体の形態の中における位置,大きさ及び範囲が一致するから,同一である。 (4)両部分の形態の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は,夜間に車両の前方を照らすための「自動車用ヘッドライト」であり,両部分の意匠登録を受けようとする部分は,自動車用ヘッドライトの内部及びそれを覆うカバーの部分であることから,この物品の需要者が,両部分を観察する際には,主として前照灯としての性能の良し悪しという観点から観察するものである。 そうすると,【両部分】の類否判断に際しては,前照灯の役割を持つヘッドランプ部の具体的な形態が,需要者の注意を強く惹く部分であり,需要者は該部位を強い関心を持って観察するとの前提に基づいて,【両部分】の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について評価することとする。 ア 共通点の評価 (共通点1)は全体の形態に係るものであるが,【両部分】の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから,この(共通点1)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2)の本体部の形態は,車体の取付け部分の形状に合わせてその外形状が決定されるものであるから,これらの一致する形態が需要者の注意を強く惹くものとはいえないものの,右側縁部分の略細幅帯状に表れる部分や正面視略逆しの字状に表れる薄い湾曲した板状体の部分は目につく部分の共通点であるといえるから,この(共通点2)が部分全体の美感に与える影響は一定程度ある。 (共通点3)のカバー部の形態は,車体の取付け部分の形状に合わせてその外形状が決定されるものであるから,これらの一致する形態が需要者の注意を強く惹くものとはいえないものの,左先端部の根元部分を凹状湾曲面に形成している共通点は特徴のあるものといえるから,この(共通点3)が部分全体の美感に与える影響は一定程度ある。 イ 相違点の評価 (相違点1)のヘッドランプ部の形態,及び(相違点2)の正面視略L字状に表れる細幅帯状部分の有無については,当該ヘッドランプの部分が両部分全体に占める割合が大きい上に,本願部分ものは,より強い光を放出するために,大きさの決まっているヘッドライトの内部に,同型のヘッドランプを3つ,工夫を凝らして略階段状に詰め込んだものとの印象を与えるものであるのに対し,【引用部分】のものは,以来から普通にみられる一つ目の大型ヘッドライトの上面に小型のものを単に配したものとの印象を与えるものであるから,正面視略L字状に表れる3条の細幅帯状部分の有無も含め,これら(相違点1)及び(相違点2)が部分全体の美感に与える影響は大きいものである。 ウ 両部分の形態の類否判断 【両部分】の形態における共通点及び相違点についての個別評価に基づき,部分全体として総合的に観察した場合,【両部分】は,需要者が使用時に強い関心を持って観察する3条の細幅帯状部分の有無を含むヘッドランプ部の形態の相違点が,部分全体の美感に与える影響が大きいのに対し,全体の形態に係る相違点が部分全体の美感に与える影響は小さく,本体部及びカバー部の形態が部分全体の美感に与える影響も一定程度のものであるから,これらの共通点に係る形態が相まって生じる視覚的効果を考慮しても,共通点が部分全体の美感に与える影響は,相違点が与える別異の印象を覆すには至らないものであるから,本願部分の形態と,【引用部分】の形態とは類似しないものである。 そうすると,本願部分の形態と引用部分の形態についても類似しないものと認められる。 (5)小括 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が同一で,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲も同一であるが,その形態において類似しないから,本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。 第3 むすび 上記のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2021-05-26 |
出願番号 | 意願2019-29021(D2019-29021) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(G2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 竹下 寛 |
特許庁審判長 |
木村 恭子 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 渡邉 久美 |
登録日 | 2021-06-15 |
登録番号 | 意匠登録第1689075号(D1689075) |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |