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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2 |
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管理番号 | 1375920 |
審判番号 | 不服2021-1186 |
総通号数 | 260 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-01-28 |
確定日 | 2021-06-21 |
意匠に係る物品 | 自動車用ハンドルカバー |
事件の表示 | 意願2020- 9328「自動車用ハンドルカバー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、国際出願日を令和1年(2019年)6月7日とする特願2020-519149を分割した令和2年(2020年)5月12日の特願2020-083608を、同年5月12日に意匠法第13条第1項の規定によって意匠登録出願に変更したものであって、その後の手続の経緯は以下のとおりである。 令和 2年 8月20日付け:拒絶理由の通知 令和 2年 9月29日 :意見書及び手続補足書の提出 令和 2年10月27日付け:拒絶査定 令和 3年 1月28日 :審判請求書の提出 第2 本願意匠 本願意匠は、意匠に係る物品を「自動車用ハンドルカバー」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることができない意匠)に該当する、というものである。 拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は、下記のとおりである(別紙第2参照)。 引用意匠 特許庁発行の登録実用新案公報記載 実用新案登録第3159746号 の【図1】に表された「自動車用ハンドルカバー」の意匠 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「自動車用ハンドルカバー」であって、自動車用ハンドルを覆うために用いるカバーであるから、共通する。 2 形態の対比 (1)形態の共通点 (共通点1)両意匠は、全体を、略円管状材から成る環状体とし、その内周に沿ったスリットを設ける点で共通する。 (共通点2)両意匠は、内周に沿ったスリットにおいて、対向するスリット縁部の一方に内周から外方に向かって張り出して略円弧状に形成する張り出し部を設ける点で共通する。 (2)形態の相違点 (相違点1)内周に沿ったスリットについて、本願意匠は、やや幅のあるスリットであるのに対し、引用意匠は、幅のない切り込み線状のスリットである点で相違する。 (相違点2)張り出し部における左右の傾斜辺(a部)及び左右の傾斜辺に挟まれた辺(b部)の態様について、本願意匠は、正面下方の位置に、(a部)について、緩やかな弧状とし、(b部)について、内周中心からハンドルカバーの幅正面視約3分の1の下方位置までハンドルカバーと同心円状に形成するのに対し、引用意匠は、背面上方の位置に、(a部)について、直線状とし、(b部)について、内周中心からハンドルカバーの幅背面視約3分の1の下方位置にハンドルカバーと同心円状に形成する点で相違する。 (相違点3)張り出し部に対向するスリット縁部の態様について、本願意匠は、直線状であるのに対し、引用意匠は、張り出し部の態様と平行して形成する点で相違する。 (相違点4)張り出し部について、本願意匠は大きく開口するのに対し、引用意匠は開口部を有さない点で相違する。 (相違点5)張り出し部の範囲について、本願意匠は、正面視において、時計の文字盤にあてはめれば、内周の約4時の位置から約8時の位置の範囲にわたるものであるのに対し、引用意匠は、背面視において、内周の約2時の位置から約10時の位置の範囲にわたるものである点で相違する。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は、同一である。 2 形態の共通点及び相違点の評価 両意匠の意匠に係る物品は、自動車用ハンドルカバーであり、自動車用ハンドルの使用感や装飾性の向上という機能を有し、その使用方法は、自動車用ハンドルに取り付けた状態で用いるものであるから、需要者は、装着する際の利便性並びに装着後の安全性及び装飾性等の観点から、両意匠に係る物品を観察するものということができる。 したがって、装着する際の利便性という観点からは、内周部が需要者の注意を強く惹く部分であるとともに、装着後の安全性及び装飾性等の観点からは、内周部及び使用時における運転者側の形状が需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。 (1)形態の共通点 共通点1は、全体の基本構成に係るものであるが、略円管状材から成る環状体であり、内周に沿ったスリットを設ける点については、断面形状が丸い円形のハンドルのリム部に装着する自動車用ハンドルカバーにおいては、必然的な形状であるから、形態の類否判断に与える影響は小さい。 共通点2は、本願出願前に他にも見られる態様である(参考意匠)から、共通点2が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 参考意匠(別紙第3参照) 本願出願前2010年5月30日に大韓民国特許庁が発行した特許公報に記載の韓国公開特許第10-2010-0086562(発明の名称、自動車のハンドルカバー)に表された自動車のハンドルカバーの意匠(図2ないし図6c) (2)形態の相違点 相違点1については、本願意匠のように、内周に沿ったスリットをやや幅のあるスリットとするものは、本願出願前より多数見られるところであって、本願意匠独自の態様とはいえず、格別に需要者の注意を惹くものとはいえないことから、両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。 相違点2については、張り出し部の左右の傾斜辺が、弧状であるか直線状であるかの相違は、意匠全体の中においては限られた箇所の改変ではあるものの、ハンドルに装着する際の利便性に関するところであるから、需要者に与える印象に一定の影響を与える。また、張り出し部の位置については、使用状態において、主として運転者側となる正面側と、ほとんど看取できない背面側との相違であって、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 相違点3については、需要者の注意を惹く内周部の相違であり、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 相違点4については、相違点2及び相違点3が相まって生じた開口部の有無であるが、全体の大きな範囲を占める開口部の有無の相違であって、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。 相違点5については、張り出し部の範囲は、この種物品分野においては本願出願前より種々の範囲が見られることから(前記、参考意匠)、この点のみをもって意匠全体の印象を左右するとはいえないものの、ハンドルに装着する際の利便性並びに装着後の安全性及び装飾性等に関するところであるから、需要者の注意を惹く部分といえ、両意匠の類否判断に一定の影響を与える。 3 両意匠の類否判断 両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、上記2の前文のとおり、内周部及び使用時における運転者側の形状が需要者の注意を強く惹く部分であり、上記2(2)のとおり、張り出し部の位置及び全体の大きな範囲を占める開口部の有無に相違があり、需要者に異なる美感を起こさせるものである。また、張り出し部の範囲についても、類否判断に一定の影響を与える差異がある。そうすると、全体の基本構成、及び張り出し部を有する点が共通するとしても、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。 第6 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2021-05-31 |
出願番号 | 意願2020-9328(D2020-9328) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(G2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 藤澤 崇彦 |
特許庁審判長 |
北代 真一 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 加藤 真珠 |
登録日 | 2021-07-20 |
登録番号 | 意匠登録第1692172号(D1692172) |
代理人 | 森 義明 |