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審決分類 |
審判 査定不服 意48条1項3号非創作者無承継登録意匠 取り消して登録 C1 |
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管理番号 | 1376810 |
審判番号 | 不服2021-5225 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-04-22 |
確定日 | 2021-08-03 |
意匠に係る物品 | 自動車用フロアマット |
事件の表示 | 意願2018-28887「自動車用フロアマット」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成30年(2018年)12月28日の意匠登録出願であって,令和1年(2019年)6月18日付けの通知の後の,令和2年10月19日付けの拒絶理由の通知に対し,同年11月4日に電話応対をし,同年12月4日に意見書が提出されたが,令和3年1月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年4月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「自動車用フロアマット」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,その出願の日前の他の意匠登録出願であって,その出願後に意匠法第20条第3項又は同法第66条第3項の規定により意匠公報に掲載された意匠登録第1580789号の意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」という。)の一部と同一又は類似するものと認められるので,意匠法第3条の2の規定に該当するというものである(別紙第2参照)。 なお,意匠法第20条第4項で規定する事項を掲載した公報は,本願の出願前の平成29年7月10日に発行された。 第4 当審の判断 両意匠は共に,自動車用フロアマットであり,全体に薄い物であって,自動車のフロアに敷設して使用するものであるから,需要者に最も視認され得る平面視において,形状を対比する。 1.本願意匠 本願意匠は,上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると,以下のとおりである。 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「自動車用フロアマット」である。 (2)本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能 本願意匠に係る物品は,運転席用フロアマットと助手席用フロアマットがつながったものであり,運転手と助手の足元のために上方に突出し,その間にはセンターコンソールを避けるための大きな凹部があり,全体で略凹字状となっているものである。 そして,本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,凹部の下辺中央から,大きなへこみ曲線を経て,運転席用左突出部の左辺(以下,単に「突出部左辺」という。)へとつながる,大きなへこみ曲線と突出部左辺の直線部の接する箇所の高さ位置を通るフロアマットの右端までの水平線(部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線による上側の線)と,本願意匠の全幅の約12分の1の長さで下に下がった高さ位置を通るフロアマットの右端までの水平線(部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線による下側の線)に挟まれた,左上を大きく欠いた略横長長方形部分であって,その位置,大きさ及び範囲であり,本願部分は,運転席用フロアマットの中央よりやや前側部分の用途と機能を備えている。 (3)本願部分の形状 本願部分は,上下の辺が,意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線(一点鎖線)で平行に表れている。 本願部分の右辺は,上側約3分の2が僅かに左に傾いた直線で,下側約3分の1が曲線で,垂直線へとつながっていく形状としたフロアマットの縁である。 本願部分の左側は,凹部の下辺中央からごく僅かに右下がりの直線から,大きなへこみ曲線で,その曲線は,垂直よりごく僅かに左に傾いている突出部左辺につながるところまで曲線が続いているフロアマットの縁である。 2.引用意匠 引用意匠は,上記「第3」の意匠公報の記載の内容によると,以下のとおりである。 (1)意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は「自動車用フロアマット」である。 (2)引用部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能 引用意匠に係る物品は,運転席用フロアマットと助手席用フロアマットがつながったものであり,運転手と助手の足元のために上方に突出し,その間にはセンターコンソールを避けるための大きな凹部があり,全体で略凹字状となっているものである。 そして,引用意匠中,本願部分に相当する部分(以下「引用部分」ということもあり,本願部分と併せて「両部分」ということもある。)は,凹部の下辺中央やや左から,大きなへこみ曲線を経て,運転席用左突出部の左辺(以下,単に「突出部左辺」という。)へとつながる,大きなへこみ曲線と突出部左辺の直線部の接する箇所の高さ位置を通るフロアマットの右端までの水平線と,引用意匠の全幅の約14分の1の長さで下に下がった高さ位置を通るフロアマットの右端までの水平線に挟まれた,左上を大きく欠いた略横長長方形部分であって,その位置,大きさ及び範囲であり,引用部分は,運転席用フロアマットの中央よりやや前側部分の用途と機能を備えている。 (3)引用部分の形状 引用部分は,本願部分に相当する部分であるから,上下の辺が平行になっている。 引用部分の右辺は,上側約4分の3が左へと曲がってゆく緩い曲線で,下側約4分の1が垂直線としたフロアマットの縁である。 引用部分の左側は,運転席用フロアマットと助手席用フロアマットの接合部における運転席用フロアマットの左上角部分の小さな半径の曲線から始まり,ごく僅かな水平線から大きなへこみ曲線となり,その曲線は,垂直より僅かに右に傾いている突出部左辺につながるところまで曲線が続いているフロアマットの縁である。 3.両意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠に係る物品も,引用意匠に係る物品も,共に「自動車用フロアマット」である。 (2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の対比 本願部分は,凹部の下辺中央から,大きなへこみ曲線を経て,突出部左辺へとつながる,大きなへこみ曲線と突出部左辺の直線部の接する箇所の高さ位置を通るフロアマットの右端までの水平線と,本願意匠に係る物品の全幅の約12分の1の長さで下に下がった高さ位置を通るフロアマットの右端までの水平線に挟まれた,左上を大きく欠いた略横長長方形部分であって,その位置,大きさ及び範囲であるのに対して,引用部分は,凹部の下辺中央やや左から,大きなへこみ曲線を経て,突出部左辺へとつながる,大きなへこみ曲線と突出部左辺の直線部の接する箇所の高さ位置を通るフロアマットの右端までの水平線と,引用意匠に係る物品の全幅の約14分の1の長さで下に下がった高さ位置を通るフロアマットの右端までの水平線に挟まれた,左上を大きく欠いた略横長長方形部分であって,その位置,大きさ及び範囲である。 両部分共に,運転席用フロアマットの中央よりやや前側部分の用途と機能を備えている。 (3)両部分の形状の対比 両部分の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。 ア.共通点について (ア)両部分共に,上下の辺が平行になっている。 (イ)両部分共に,右辺は,概略左上から右下に僅かに傾いたフロアマットの縁である。 (ウ)両部分共に,左側に直線から大きなへこみ曲線で突出部左辺につながっているフロアマットの縁である。 イ.相違点について (ア)両部分における右辺のフロアマットの縁の形状につき,本願部分は,上側約3分の2が僅かに左に傾いた直線で,下側約3分の1が曲線で,垂直線へとつながっていく形状となっているのに対して,引用部分は,上側約4分の3が左へと曲がってゆく緩い曲線で,下側約4分の1が垂直線となっている。 (イ)両部分における左側のフロアマットの縁の形状につき,本願部分は,凹部の下辺中央からごく僅かに右下がりの直線から,大きなへこみ曲線で,その曲線は,垂直よりごく僅かに左に傾いている突出部左辺につながるところまで曲線が続いているのに対して,引用部分は,運転席用フロアマットと助手席用フロアマットの接合部における運転席用フロアマットの左上角部分の小さな半径の曲線から始まり,ごく僅かな水平線から大きなへこみ曲線となり,その曲線は,垂直より僅かに右に傾いている突出部左辺につながるところまで曲線が続いている。 4.判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 両意匠の,意匠に係る物品は,いずれも「自動車用フロアマット」であるから,一致している。 (2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の評価 本願部分は,凹部の下辺中央から,大きなへこみ曲線を経て,突出部左辺へとつながる,大きなへこみ曲線と突出部左辺の直線部の接する箇所の高さ位置を通るフロアマットの右端までの水平線と,本願意匠に係る物品の全幅の約12分の1の長さで下に下がった高さ位置を通るフロアマットの右端までの水平線に挟まれた,左上を大きく欠いた略横長長方形部分であるのに対して,引用部分は,凹部の下辺中央やや左から,大きなへこみ曲線を経て,突出部左辺へとつながる,大きなへこみ曲線と突出部左辺の直線部の接する箇所の高さ位置を通るフロアマットの右端までの水平線と,引用意匠に係る物品の全幅の約14分の1の長さで下に下がった高さ位置を通るフロアマットの右端までの水平線に挟まれた,左上を大きく欠いた略横長長方形部分であることより,両部分の上下幅が僅かに異なるのみといえるから,位置,大きさ及び範囲は共通しているものと認められる。 両部分の用途及び機能は,共に,運転席用フロアマットの中央よりやや前側部分の用途と機能を備えているものであるから,一致している。 (3)両部分における形状の評価 ア.共通点について 共通点(ア)は,意匠登録を受けようとする部分を定めるものと,それに伴うものであって,意匠の創作内容ではないから,両部分の形状に関する類否判断に関する評価はできない。 共通点(イ)は,一定程度の共通感を生じさせているが,具体的には,相違点(ア)の相違が存在するものであるから,共通点(イ)の両部分の類否判断に与える影響は小さい。 共通点(ウ)は,相違点(イ)の相違を内包するものであるから,共通点(ウ)の両部分の類否判断に与える影響は小さい。 イ.相違点について 相違点(ア)によって,本願部分と引用部分の具体的な形状の相違が僅かながら表れており,両部分の形状の類否判断に与える影響は一定程度認められる。 相違点(イ)によって,本願部分と引用部分の具体的な形状の相違が表れており,別異の印象を与えるものといえるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。 (4)小括 そうすると,両部分の形状については,その共通点及び相違点の評価に基づくと,上記のとおり,共通点は,類否判断に及ぼす影響は小さいものであるのに対して,相違点によって類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるもの又は大きいものといえるものであり,両部分の形状は,類似するとは認められないものである。 (5)両意匠における類否判断 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両部分の位置,大きさ及び範囲が共通し,両部分の用途及び機能が一致している。 しかし,上記のとおり,両部分の形状は,類似するとは認められないものである。 5.結び 以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠の一部に類似するとは認められないため,意匠法第3条の2の規定に該当しないものであるから,原査定における拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2021-07-14 |
出願番号 | 意願2018-28887(D2018-28887) |
審決分類 |
D
1
8・
16-
WY
(C1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 日比野 杏香 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
正田 毅 橘 崇生 |
登録日 | 2021-08-24 |
登録番号 | 意匠登録第1694625号(D1694625) |
代理人 | 特許業務法人牛木国際特許事務所 |