ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7 |
---|---|
管理番号 | 1377861 |
審判番号 | 不服2021-3560 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-03-18 |
確定日 | 2021-09-21 |
意匠に係る物品 | マッサージチェア |
事件の表示 | 意願2020- 952「マッサージチェア」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和2年1月21日(パリ条約による優先権主張 令和元年(2019年12月31日、中華人民共和国)の意匠登録出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和2年 6月24日付け:拒絶理由の通知 令和2年 9月29日 :意見書の提出 令和2年11月30日付け:拒絶査定 令和3年 3月18日 :審判請求書の提出 第2 本願意匠 本願意匠は、意匠に係る物品を「マッサージチェア」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、物品の部分として意匠登録を受けようとする部分を、「薄い破線で表わした部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は、下記のとおりである(別紙第2参照)。 引用意匠 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2019年 2月 8日に受け入れた LOW STYLE MASSAGE CHAIR H ロースタイルマッサージチェアH AS-LS1 第6頁所載 マッサージチェアの当該意匠に該当する部分の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HC31003995号) 以下、本審決では、引用意匠において本願部分と対比、判断する部分、すなわち、本願部分に該当する部分を、「引用部分」という。 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は、「マッサージチェア」であり、引用意匠の意匠に係る物品も、「マッサージチェア」であって、いずれも座位の状態の人体に対し、内部機構によってマッサージを行うものであるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、共通する。 2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、台座部、スピーカー部、ポケット部、背面上方から底面にかけて設けられた細帯状部等、及びクッション表面の斜め格子状ステッチ部を除く、座いす部に係るものであって、いずれも座位の状態の人体を支え、内部機構によってマッサージを行う部分であるから、用途及び機能が共通する。 3 両部分の位置、大きさ及び範囲の対比 両部分は、いずれも台座部、スピーカー部、ポケット部、背面上方から底面にかけて設けられた細帯状部等、及びクッション表面の斜め格子状ステッチ部を除く座いす部であるから、位置、大きさ及び範囲が共通する。 4 両部分の形態の対比 以下、対比のため、引用意匠の向きを本願意匠の図の向きに合わせて認定する。 (1)両部分の形態の共通点 (共通点1)全体の形状について 正面視及び平面視において一周に表れるステッチのわずかに外側の稜線の外側となる外殻部を外側部とし、その内側を内側部とすると、両部分は、外側部、内側部、及び内側部の中央上下方向に配されたクッション部からなり、外側部は、側面視において曲がったへちま状とし、背面から底面にかけての下面側は略円弧状で、上面側は略中央に大きなくぼみを有する凸曲面による構成としたもので、内側部は、平面視において外側部の略相似形状である点で共通する。 (共通点2)内側部の左右の肘掛け部に貼付されたクッションについて 両部分は、内側部の左右の肘掛け部に、左右対称の略太L字状のクッションを有する点で共通する。 (2)両部分の形態の相違点 (相違点1)内側部の中央上下方向に配されたクッションについて (相違点1-a)クッション部のパーツ分けの有無 本願部分が、上端部から下端部まで一体となったクッションを配するのに対し、引用部分は、上から、頭部、背部、座部及びふくらはぎ部からなる4つのパーツに分かれている点。 (相違点1-b)クッションの具体的態様 本願部分のクッション部は、内側部の頭部、背部、座部及びふくらはぎ部の上端程度まで連続して覆って配される、背部と座部相当部分がつながるところが細く絞り込まれた略隅丸長方形状のシート体であって、外周全周に、わずかな段差を設けた細幅帯状の縁取りを形成し、座部とふくらはぎ部相当部分との境界に平面視水平方向の直線状部材切替線を形成し、当該直線状部材切替線の中央部から頭部まで伸長する頭部相当部分がやや幅広となった略縦長隅丸長方形状の部材切替線を形成するのに対し、引用部分のクッションは、正面視において、頭部は上辺の角部がアール状のやや下すぼまりとし、背部は左右辺がやや凹曲状で、正面視頭部と略同幅とする座部へと続き、ふくらはぎ部は頭部のクッションと略同幅の幅広舌状とする点。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が共通するから、同一である。 2 両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は、用途及び機能が共通するから、同一である。 3 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価 両部分の位置、大きさ及び範囲は、共通するから、同一である。 4 両部分の形態の共通点及び相違点の評価 両意匠の意匠に係る物品は、マッサージチェアであるから、需要者は、マッサージの効果及びインテリアとして調和という観点から、両意匠に係る物品を観察するということができる。 したがって、マッサージの効果という観点からは、内側部及びクッション部が需要者の注意を強く惹く部分であるとともに、インテリアとしての調和という観点からは、内側部及びクッション部を含む全体形状が需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。 (1)両部分の形態の共通点 共通点1は、全体形状に係るものではあるが、この物品分野においては、既に本願意匠の出願前より多数の製品がみられることから(下記、参考意匠1及び参考意匠2参照)、両意匠の特徴を表出するものとはいえず、類否判断に与える影響は小さい。 共通点2は、内部にエアクッション等が埋め込まれる機能的な箇所であって、需要者の注意をひきやすいものの、部分全体の大きさに照らすと、限られた箇所におけるものであり、また、略太L字状のクッション部とする形状は、この種物品分野における形状として一般的なものであるから(下記、参考意匠1及び参考意匠2参照)、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず、類否判断に与える影響は小さい。 参考意匠1(別紙第3) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1552720号 (意匠に係る物品、マッサージチェア)の意匠 参考意匠2(別紙第4) 大韓民国意匠商標公報 2017年 2月 7日発行17-03号 (登録番号30-0892868)に表されている「マッサージチェア」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH29402480号) (2)両部分の形態の相違点 相違点1-aについては、需要者の注意を惹くクッション部に係るものであり、また部分全体の中で占める割合も大きいものであるところ、本願部分が一体となったクッションであるのに対して、引用部分は4つのパーツに分かれるものであるから、内側部の中央上下方向に配されたクッション全体の構成が大きく異なり、その美感の相違が類否判断に与える影響は大きい。 相違点1-bについては、具体的な態様が大きく異なることから、需要者へ異なる印象を与えるといえ、類否判断に与える影響は大きい。 なお、本願意匠のように、ふくらはぎ部にクッションがないものは、この物品分野において一般的なものであって(上記、参考意匠1及び参考意匠2参照)、特徴あるものとはいえないが、比較的目に付きやすい箇所における相違であることを考慮すると、需要者の注意を一定程度ひくから、ふくらはぎ部におけるクッションの有無のみに注目しても、類否判断に一定の影響を与える。 5 両意匠の類否判断 両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、上記第4の4(2)のとおり、内側部の中央上下方向に配されたクッション部のパーツ分けの有無の相違及びクッション部の具体的態様の相違が類否判断に与える影響は大きい。 一方、共通点1は、出願前より多数の製品が公然知られており、共通点2も、この種物品分野において一般的なものにすぎないから、いずれも類否判断に与える影響は小さい。 これら共通点及び相違点の評価を総合すると、両部分の形態は、共通点よりも相違点の方が類否判断に与える影響は大きいものであって、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が同一で、両部分の用途及び機能が同一で、両部分の位置、大きさ及び範囲が同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。 第6 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2021-08-31 |
出願番号 | 意願2020-952(D2020-952) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(J7)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 石坂 陽子 |
特許庁審判長 |
北代 真一 |
特許庁審判官 |
加藤 真珠 渡邉 久美 |
登録日 | 2021-09-28 |
登録番号 | 意匠登録第1697320号(D1697320) |
代理人 | 有馬 百子 |