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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 K1 |
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管理番号 | 1378811 |
審判番号 | 不服2021-7791 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-06-15 |
確定日 | 2021-10-26 |
意匠に係る物品 | ビットホルダー |
事件の表示 | 意願2020- 11846「ビットホルダー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続の経緯 本願は,令和2年(2020年)6月15日の意匠登録出願であって,同年10月30日付けの拒絶理由の通知に対し,同年12月11日に意見書が提出されたが,令和3年(2021年)3月19日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年6月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2 本願意匠の願書及び添付図面の記載 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって,その意匠は,意匠に係る物品を「ビットホルダー」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。),部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を,「図面代用写真において,赤色で塗りつぶされた部分以外の部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。 3 原査定の拒絶の理由及び引用した意匠 原審の拒絶の理由は,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ,頒布された刊行物に記載され,又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には,以下のとおりである。 「本願意匠の意匠に係る物品は,工具の着脱可能な先端部品(ドライバービットやソケット等)を吊下げる「ビットホルダー」であって,その形態は,略円筒形状の先端部周側面において,両端にテーパ面を設けた細帯状の溝を周回させ,ソケットと嵌合するものと推認される溝部を形成し,当該溝部のみを意匠登録を受けようとする部分としたものです。 本願意匠の属する,吊下げ型の工具先端部品用ホルダーの分野において,その先端部の形態を,嵌合する先端部品の形態に合わせて適宜変更することは,引用意匠1及び引用意匠2にみられるように本願出願前からすでに行われています。また,ソケットと嵌合するものと推認される形態として,両端にテーパ面を設けた細帯状の溝部が,引用意匠3にみられるように本願出願前から公然知られています。 そうすると本願意匠は,上記手法を用いて,引用意匠1及び引用意匠2のような工具先端部品用ホルダーの先端部として,引用意匠3にみられる溝部の態様を適用したにすぎず,当業者であれば容易に創作することができたものと認められます。 なお,本願意匠と引用意匠3では,正面視における溝部の縦横比が相違しますが,上記手法をふまえて,レンチの角ドライブとして種々の大きさのものが存在することを考慮すると,本願意匠の溝部の縦横比には格別の創作性を見出すことができず,この判断に影響を及ぼすほどのものとはいえません。 引用意匠1(当審注:別紙第2参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1568508号の意匠 引用意匠2(当審注:別紙第3参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1296756号の意匠 引用意匠3(当審注:別紙第4参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1644479号の意匠」 第2 当審の判断 本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性について,すなわち,本願意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて,以下検討し,判断する。 1 本願意匠の認定 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,ビットホルダーの添付図面における左側面部(以下「ビットホルダー底面部」という。)に形成された円孔部分に,ドライバービットやドリルビット等の棒状工具を挿入して固定し,携帯することができ,また,インパクトレンチ用ソケットの穴部に,ビットホルダーの添付図面における左側端部(以下「ビットホルダー下端部」という。)を挿入してインパクトレンチ用ソケットを固定し,携帯することができる,2つのホルダー部分を有する「ビットホルダー」である。 (2)本願部分の用途及び機能 本願部分の用途及び機能は,インパクトレンチ用ソケットの略矩形状穴部に,ビットホルダー下端部を挿入して固定する際に用いられる部分であり,インパクトレンチ用ソケットの穴部内周面部分に形成された球体やリングばね等を保持し,インパクトレンチ用ソケットが簡単に抜けないように固定するための機能を有する部分である。 (3)本願部分の位置,大きさ及び範囲 本願部分の位置,大きさ及び範囲は,ビットホルダー下端部の外周面部分に位置し,その溝幅をビットホルダー全長の約1/12の大きさとする凹溝部分全体をその範囲とするものである。 (4)本願部分の形状等 本願部分は,ビットホルダーの中央部分に拡径した略円柱形状の部分を設け,ビットホルダーの添付図面における右側端部(以下「ビットホルダー上端部」という。)に,中心部分に円孔を形成した略正方形板状体のホルダーリング取り付け部分(以下「リング取付部」という。)を設けた,全体を略円柱形状としたビットホルダーにおける,ビットホルダー下端部外周面部分に形成された凹溝部の部分の形状等であって,凹溝部の具体的な形状等は,その断面視を略逆等脚台形状に切り欠いた形状からなるものであって,その溝幅をビットホルダー全長の約1/12とするものである。 2 原査定の拒絶の理由における引用意匠の認定 原査定における拒絶の理由で引用された,引用意匠1ないし引用意匠3の意匠に係る物品及び形状等は,概要以下のとおりである。 以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,意匠1及び意匠2にもあてはめることとする。 (1)引用意匠1 引用意匠1は,特許庁が平成29年(2017年)2月6日に発行した意匠公報に記載された,意匠登録第1568508号(意匠に係る物品「ソケット携帯用ホルダー」)の意匠である。 また,引用意匠1の形状等は,ソケット携帯用ホルダーの中央部分に,下端部が略ラッパ状に拡張した略円柱形状の部分を設け,ソケット携帯用ホルダーの上端部に,円形リングを取り付けた略小円柱形状のリング取付部を設け,ソケット携帯用ホルダーの下端部に,インパクトレンチ用ソケットの略矩形状穴部に挿入してソケットを保持する,角部を面取りした略直方体形状の抜け防止機構付きの挿入部を設けた形状からなるものである。 (2)引用意匠2 引用意匠2は,特許庁が平成19年(2007年)3月26日に発行した意匠公報に記載された,意匠登録第1296756号(意匠に係る物品「六角シャンク付工具携帯用ホルダー」)の意匠である。 また,引用意匠2の形状等は,略円筒形状の六角シャンク付工具携帯用ホルダーの上端部に,円形リングを取り付けた略小円筒形状のリング取付部を設け,六角シャンク付工具携帯用ホルダーの下端部外周部分に,ローレット加工を施した形状からなるものであって,円形リングには,カラビナを回転可能に取り付けた正面視略D字状の部材が取り付けられているものである。 (3)引用意匠3 引用意匠3は,特許庁が令和1年(2019年)10月28日に発行した意匠公報に記載された,意匠登録第1644479号(意匠に係る物品「落下防止スリーブ」)の意匠である。 また,引用意匠3における本願部分に相当する部分(以下「引用部分」という。)の用途及び機能は,電動工具の先端に取り付けられるソケットに落下防止スリープを取り付ける際,落下防止スリーブを確実に保持できるように形成された周溝状の切り欠き部であると認められ,引用部分の位置,大きさ及び範囲は,落下防止スリープの下端部の外周面部分に位置し,その溝幅の大きさを落下防止スリープ全長の約1/2とする凹溝部分全体をその範囲とするものである。 そして,引用部分の凹溝部の具体的な形状等は,その断面視を略逆隅丸等脚台形状に切り欠いた形状からなるものである。 3 本願意匠の創作容易性の判断 まず,インパクトレンチ等に用いられるソケットを携帯するための「ビットホルダー」の物品分野において,ソケットの略矩形状穴部に,ビットホルダー下端部に形成された角部を面取りした略直方体形状の抜け防止機構付きの挿入部を挿入してソケットを固定し,携帯することができる形状からなるビットホルダーは,引用意匠1で示したように本願意匠の出願前に存在しているが,ソケットの略矩形状穴部に,ビットホルダーの下端部に設けられた凹溝部を挿入してソケットを固定し,携帯することができる形状からなるビットホルダーは,引用している引用意匠1ないし引用意匠3には見当たらず,このソケットを固定するための凹溝部の形状等については,本願意匠の出願前に公然知られたものであるとはいえないものである。 なお,原審では「ソケットと嵌合するものと推認される形態として,両端にテーパ面を設けた細帯状の溝部が,引用意匠3にみられるように本願出願前から公然知られています。」と認定しているが,引用意匠3の落下防止スリーブは,落下防止リング等が付いていないソケットに落下防止の機能を持たせるために用いられるものであり,ソケットの外周部分にこの落下防止スリーブを装着して使用されるものであるから,ソケットを固定するためにビットホルダーの外周部に設けられた凹溝部と同じ用途及び機能を持つものであると認定することはできず,引用意匠3を示したからといって本願部分のソケットを固定するための凹溝部の形状等が,本願意匠の出願前から公然知られていたとはいえないものである。 そうすると,本願部分におけるソケットを固定するためにビットホルダー下端部に形成された凹溝部の形状等は,当業者から見て着想の新しさないし独創性があるものであるから,本願意匠は,当業者が引用意匠1ないし引用意匠3の公然知られた形状等に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたものとはいえないものである。 第3 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2021-10-05 |
出願番号 | 意願2020-11846(D2020-11846) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(K1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 宏幸、奈良 日向子 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 渡邉 久美 |
登録日 | 2021-11-09 |
登録番号 | 意匠登録第1700786号(D1700786) |
代理人 | 特許業務法人ブライタス |