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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 H1
管理番号 1379917 
審判番号 不服2021-11003
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-18 
確定日 2021-11-29 
意匠に係る物品 バリスタ 
事件の表示 意願2020- 16526「バリスタ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、意願2020-16525(意匠登録第1684660号)を本意匠とする令和2年(2020年)8月6日に出願された関連意匠の意匠登録出願であって、令和3年(2021年)2月15日付けの拒絶理由の通知に対し、同年4月6日に意見書が提出されたが、同年6月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「バリスタ」とし、その形状等(形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合)は、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定における拒絶の理由

原査定における拒絶の理由は、本願意匠は願書に記載した本意匠に類似する意匠とは認められず、意匠法10条1項の規定に該当しないとの理由であって、具体的には以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠(以下、本願意匠)は、願書記載の本意匠(意願2020-16525)に類似する意匠とは認められないので、意匠法第10条第1項の規定に該当せず、意匠登録を受けることができません。
本願意匠は、端子電極の形状及び配置態様が上記の本意匠と相違します。
ただし、願書記載の本意匠の表示を削除する補正を行った場合はこの限りではありません。」

第4 本意匠

本意匠は、令和2年8月6日に出願され、令和3年4月14日に意匠権の設定の登録がなされ、同年5月10日に意匠公報が発行された意願2020-16525(意匠登録第1684660号)の意匠であり、意匠に係る物品を「バリスタ」とし、その形状等は、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第2参照)

第5 本意匠の表示を削除する手続補正

審判請求人は、原審の拒絶の理由に対して意見書を提出し、本願意匠は、本意匠の関連意匠として登録されるべき旨主張したが、拒絶の査定がなされたため、同査定を不服として審判を請求し、「原査定を取り消す、本願の意匠は登録すべきものとする、との審決を求める。」との審決を求めた。そして、この審判請求と同日の令和3年8月18日に手続補正書を提出し、本願の本意匠の表示を削除した。

第6 当審の判断

以下、本願意匠及び本意匠(以下「両意匠」という。)が類似し、意匠法10条1項の規定に該当するものか否かについて検討する。

1 両意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
意匠に係る物品は、両意匠ともに「バリスタ」であり、一致する。

(2)両意匠の形状等
両意匠の形状等については、主として、以下の通りの共通点及び相違点がある。

ア 共通点
(ア)全体
全体は、略横長隅丸直方体の稜辺を弧状に面取りした本体の両端に、やや厚みのある電極を3個(上面視において、左端両隅を覆うように2個と右端全体を覆うように1個)、端部を被覆するように段差状に設け、上面視における縦横の長さ及び高さの比率を、約1:2:0.7としている点、
(イ)電極
上面視において、左側の電極は、横長の略隅丸四分円形状で、中心の角を本体部の角に合わせて上下対称に設け、右側の電極は、縦長の略隅丸長方形状としている点において共通する。

イ 相違点
電極において、本願意匠は、いずれも本体の上面及び上面から連続する周側面の上半分を被覆しているのに対し、本意匠は、左側は、左端の両隅全体を被覆し、右側は、右端全体を被覆している点において相違する。

2 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、ともに、電子機器に用いられる電子部品のうち、抵抗器の一種である「バリスタ」であるから、意匠に係る物品は同一である。

(2)両意匠の形状等
ア 共通点の評価
この種物品の分野において、全体を、略横長隅丸直方体形状の本体の両端に、やや厚みのある電極を複数個段差状に設けたものは、両意匠の他にもごく普通に見られる態様であり、また、縦横及び高さの比率においても、一般に見られる態様であることから、これらの点は、需要者が特段注目するものではなく、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
一方、左側の電極の上面視形状を、横長の略隅丸四分円形状とし、本体の左端両隅を覆うように設けたものは、両意匠のみに見られる態様といえるから、両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。

イ 相違点の評価
本願意匠のように、電極を、本体の上面及び上面から連続する周側面の上半分を被覆し、周側面の下半分と底面には電極を被覆せず本体がむき出しのものは、本願意匠の他にはみられず、本願意匠独自の態様といえるから、端部全体を被覆している本意匠の態様との比較において、この相違は、需要者に別異の美感を起こさせるものといえ、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。

ウ 形状等の類否判断
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、両意匠を全体として総合的に観察し、判断した場合、両意匠は、共通点のうち、左側の電極の上面視形状においては、両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えているものの、その他の共通点は、いずれも両意匠の類否判断に与える影響は小さいのに対して、相違点が、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。
したがって、両意匠の形状等を総合的に観察した場合、両意匠の形状等は、共通点に比べて、相違点が与える影響の方が大きいものであるから、両意匠の形状等は類似しない。

(3)小括
そうすると、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形状等において類似しないから、本願意匠は本意匠に類似しない。

3 本願意匠が意匠法10条1項の規定に該当するか否かについて
本意匠は、本願の意匠登録出願人の意匠登録出願に係る意匠であるから、意匠法10条1項に規定する本意匠の要件を満たしている。
また、本願意匠の意匠登録出願の日は、本意匠の意匠登録出願の日と同日であるから、意匠法10条1項に規定する関連意匠の意匠登録出願の日の要件を満たしている。
一方、前記2(3)のとおり、本願意匠は、本意匠に類似しないから、意匠法10条1項の規定に該当しない。

しかしながら、本願は、前記第5のとおり、令和3年8月18日に、願書の本意匠の表示を削除する手続補正がなされているから、原審の拒絶の理由によっては拒絶することはできない。

第7 むすび

以上のとおり、本願意匠は、意匠法10条1項の規定に該当しないから、本意匠の関連意匠としては意匠登録を受けることができないものであるが、願書の本意匠の表示を削除する手続補正がなされているから、原審の拒絶の理由によっては拒絶することはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-11-08 
出願番号 意願2020-16526(D2020-16526) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 富永 亘 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 加藤 真珠
内藤 弘樹
登録日 2021-12-03 
登録番号 意匠登録第1702860号(D1702860) 
代理人 野間 悠 
代理人 布施 哲也 
代理人 長谷川 芳樹 

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