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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J0
管理番号 1380982 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-29 
確定日 2021-10-22 
意匠に係る物品 ロボット 
事件の表示 意願2020− 9858「ロボット」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 事案の概要

1 手続の経緯
本願は,意匠法第14条第1項の規定により秘密意匠請求期間を3年とし,本意匠の出願番号を意願2020−009857とする,令和2年(2020年)5月19日の関連意匠の意匠登録出願であって,同年10月21日付けの拒絶理由の通知に対し,同年12月2日に意見書が提出されたが,令和3年(2021年)1月5日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年3月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同年5月10日に手続補正書(補正対象書類:審判請求書)が提出され,同年8月30日にオンラインによる面接がなされたものである。

2 本願意匠の願書及び添付図面の記載
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり,その意匠は,意匠に係る物品を「ロボット」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。),部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を,「赤色で着色した部分以外の部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する,というものである。
拒絶理由通知において引用された意匠は,日本国特許庁発行の意匠公報(秘密解除の公報発行日:平成26年(2014年)9月16日)に記載された,意匠登録第1498059号(意匠に係る物品,ロボット)の意匠(以下「引用意匠」という。)である(別紙第2参照)。
以下,本審決では,引用意匠において本願部分と対比,判断する部分,すなわち,本願部分に相当する部分を,「引用部分」という。

第2 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「ロボット」であって一致する。

(2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)の用途は,ロボットの使用者に好意的な感情を得てもらう等の目的で,ロボットにおける人の顔に該当する部分(以下「顔部」という。)に形成した,人の鼻を模したような隆起部分(以下「鼻部」という。)であるから一致するものである。
一方,両部分の機能については,両部分は,人の鼻の形態を模したものにすぎず,匂いを識別する等の機能がない点は共通するが,本願部分の鼻部には,光が当たったときにその左右のコントラストに差が生じるような形態とすることにより,ロボットの顔部がどの方向を向いているのかを看者に認識させる機能を有している点でその機能を持たない引用部分とは異なるものである。

(3)両部分の位置,大きさ及び範囲の対比
両部分は,いずれもロボットの顔部中央部分に位置し,顔部表面部分から隆起した凸状の部分であるから,両部分の位置,大きさ及び範囲は一致する。

(4)両部分の形状等の対比
両部分の形状等を対比する(以下,対比のため,引用意匠も本願意匠の図面の向きに合わせることとする。)と,その形状等には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。

ア 形状等の共通点
(共通点1)両部分は,顔部正面部分をその周辺部分から隆起して略凸状に形成したものであって,最も突出した部分からなだらかに傾斜し,顔部前面部分に円滑につながる形状等としている点が共通する。
(共通点2)両部分は,右側面視における鼻部凸状部分の形状等が,略「く」の字状としている点が共通する。

イ 形状等の相違点
(相違点1)本願部分の鼻部の具体的な形状等は,その中央部分が最も突出した左右対称な顔部の中心線と,鼻部の稜線が一致するようにして突出して形成したものであり,顔部前面部分と鼻部裾部分の接する部分が縦長の略隅丸二等辺三角形状に表れ,鼻部の左右傾斜面の境界部分が表れた左右対称な略凸状の形状等であるに対し,引用部分の鼻部の具体的な形状等は,略曲面形状の顔部前面部分の中心部分を突出して形成したものであり,顔部前面部分と鼻部裾部分が境界なくなだらかにつながり,突出部の先端部分が平坦状に形成された略変形円錐形状の形状等である点で,両部分は相違する。
(相違点2)本願部分の鼻部の中央部分には,引用部分のような直線部分がないのに対し,引用部分の鼻部の中央部分には,分割線と思われる直線部分が明確に表れている点で,両部分は相違する。

2 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は,同一である。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途は,同一であるが,両部分の機能は,本願部分にのみロボットの顔部がどの方向を向いているのかを看者に認識させる機能を有しているから相違するものである。

(3)両部分の位置,大きさ及び範囲の評価
両部分の位置,大きさ及び範囲は,物品全体の形態の中における位置,大きさ及び範囲が一致するから,同一である。

(4)両部分の形状等の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は,「ロボット」であって,この物品における主な需要者は,個人での購入者よりも,ロボットに例えば受付業務といった作業を行わせるために購入する事業者であるといえる。そして,これら需要者は,ロボットに負わせる業務に適しているか否かといった観点で両意匠に係る物品を観察するといえる。
そうすると,業務への適否を重視する需要者であれば,人に対して強い印象を与える部分である顔部の形態について重視するものであるから,顔部の具体的な形態は,需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。
したがって,両部分の類否判断にあたっては,顔部の具体的な形態が,需要者の注意を強く惹く部分であるとの前提に基づいて,両部分の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について評価することとする。

ア 共通点の評価
(共通点1)は部分全体の基本的な構成態様に係るものであるが,両部分の形状等を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから,この(共通点1)が部分意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2)の右側面視における鼻部凸状部分の形状等は,この種物品において本願意匠出願前から既に見られるもの(例えば,意匠登録第1155340号参照)であって,両部分のみに認められる格別の特徴であるとはいえないから,この(共通点2)が部分意匠全体の美感に与える影響も小さい。

イ 相違点の評価
(相違点1)の鼻部の具体的な形状等の相違については,その中央部分が最も突出した左右対称な顔部の中心部分から,略隅丸縦長二等辺三角形状の範囲を更に突出させて,鼻部の左右傾斜面の境界部分が分かるように形成した本願部分と,略曲面形状の顔部前面部分から略円錐形状に円滑に盛り上がった,左右の傾斜面の境界部分が不明確な引用部分の相違は,ロボットの顔部がどの方向を向いているのかを示す機能の有無にも影響するものであり,顔部の具体的な形態を注視する需要者にとって別異の印象を与えるものであるから,この(相違点1)が部分全体の美感に与える影響は大きい。
(相違点2)の鼻部中央部分の直線部分の有無については,この種物品分野において顔部中央部分に分割線のような直線部分を施したものは見当たらず,この直線部分も目に付く部分に施されたものであることから,この有無の相違は需要者に別異の印象を強く与えるものであって,この(相違点2)が部分全体の美感に与える影響も大きい。

ウ 両部分の形状等の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点についての個別評価に基づき,両部分全体として総合的に観察した場合,両部分は,需要者が強い関心を持って観察する鼻部の具体的な形状等及び鼻部中央部分の直線部分の有無の相違点が,部分全体の美感に与える影響は大きいものであるのに対し,部分全体の基本的な構成態様や右側面視における鼻部凸状部分の形状等の共通点が部分全体の美感に与える影響は小さく,これらの共通点に係る形状が相まって生じる視覚的効果を考慮しても,これら共通点が部分全体の美感に与える影響は,上記相違点が与える影響を覆すには至らないものであるから,本願部分の形状等と引用部分の形状等とは類似しないものである。

(5)小括
以上のとおり,両意匠は意匠に係る物品が同一であり,両部分の用途,並びに位置,大きさ及び範囲についても同一であるが,両部分の機能については相違し,両部分の形状等についても類似しないから,本願意匠と引用意匠は,類似するということはできない。

第3 むすび

上記のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

別掲



審決日 2021-10-06 
出願番号 2020009858 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J0)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
渡邉 久美
登録日 2021-11-12 
登録番号 1701211 
代理人 五味 飛鳥 

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