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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1380989 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-17 
確定日 2021-12-08 
意匠に係る物品 オートバイ 
事件の表示 意願2020− 11131「オートバイ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年6月5日に出願された意匠登録出願であって、同年11月17日付の拒絶理由の通知に対し、令和3年1月18日に意見書が提出されたが、同年3月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年6月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願の意匠
本願の意匠は、意匠に係る物品を「オートバイ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(以下「本願意匠」という。別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
そして、その引用意匠は、特許庁発行の意匠公報記載、意匠登録第1558312号(意匠に係る物品、オートバイ)の意匠としたものである(別紙第2参照)。

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第1項第3号の該当性、すなわち、本願意匠が引用意匠に類似する意匠であるか否かについて検討し、判断する。

1 対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「オートバイ」であり、共通する。

(2)両意匠の形状等の対比
両意匠の形状等を対比すると、以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。
ア 共通点
(ア)主な外装の構成
(a)主な外装の構成を、フロントカバー部、リアカバー部、及び両者の間のサイドカバー部とし、これらに加え、下方のフロアステップ部、及びフロアステップ部から斜め後方に向かって、リアフェンダーとの間に明調子のカバー部(以下「中間カバー部」という。)を有する点。
(b)フロントカバー部の構成
フロントカバー部は、ウィンドスクリーン、2灯のヘッドライト、さらに2灯のヘッドライトの間の先端部にノーズカバーを備えている点。
(c)サイドカバー部及びリアカバー部の構成
正面図の方向から見て(正面視)、サイドカバー略中央からリアカバー後端にかけての上面にシートを配した態様とするもので、リアカバー後端部上面に荷台等の設置にも使用するグラブレール部、一段下にテールランプ、その下に後輪用の泥よけ(リアフェンダー)が取り付けられた態様とする点。
(d)フロアステップ部
フロアステップ部は、運転者の足を載せる面となるステップパネルと、ステップパネルを覆い、正面視側に面して表れるフロアステップサイドカバーによる構成とする点。

(イ)各部の形状等
(a)フロントカバー部
(a−1)フロントカバーは、正面視、右側(前方側)先端をフロントタイヤの中心軸よりやや後ろの位置から、開放部を後方にした略倒V字状に形成し、内側(シート側)も同様に略倒V字状とし、ハンドル下には略倒V字状に沿った略同幅の斜めの面を形成している点。さらに、その斜めの面の下側を、フロントタイヤに向けて斜め下方向に細く突出させることで、フロントカバーの正面視を、フロントカバー上面から、ヘッドライト部を挟み、略倒V字状部、そして斜め下方向の細い突出部を合わせることによって、全体が略倒M字状に表れている点。
(a−2)ウィンドスクリーンは、右側面図の方向から見て(右側面視)、下部が最も広く、左右に略台形状の切り込みを対称状に設けた形状とする点、及び取り付けパーツを介し、フロントカバーとの間に空間を設けて配されている点。
(a−3)ヘッドライトは、右側面視、先端部のノーズカバー部を挟み、左右に吊り上がった態様とする点。
(a−4)ノーズカバーは、暗調子のバンパー状とする点。
(b)サイドカバー部及びリアカバー部
(b−1)サイドカバーは、正面視、扁平V字状とし、フロントカバー側を太く、リアカバー側を細くした態様とする点。
(b−2)リアカバーは、正面視、サイドカバーとの接続部から後方へ向けて斜め上方に伸び、下方のタンデムステップ近辺からシート側にかけて斜めの面を構成している点。
(b−3)シートは、正面視、フロントカバー部からリアカバー部までの長さ(以下、「全長」という。)に対して約3/5の長さとするもので、後ろから全長の約1/4の長さまでを略水平とし、そこから凹曲線状の下降斜面を経て、再度略水平とし、前方側先端部を下降斜面とする構成とする点。
(b−4)リアフェンダーは、正面視、リアカバーの後端やや内側から、水平に対して約10度の角度の突出部と、その先端寄りから同約60度の角度で後輪の高さ近くまで伸びている点。また、左側面視、先端に向かって先細りとなっている点。
(b−5)テールランプは、左側面視、扁平略六角形状のランプ部を中央に有している点。
(c)フロアステップ部
(c−1)足を載せるステップパネルは、大きな面として、前輪側の正面視斜めの面と、そこから後方へ向かって斜め上に伸びる面を有している点。
(c−2)フロアステップサイドカバーは、ステップパネルの側面を覆うもので、前輪側の正面視斜めの面に沿って、フロントカバーと接合する細い面と、そこから後方へ向かって斜め上に伸びる面に沿った、扁平四角形状の面によるものとする点。

(ウ)明暗調子
主にフロントカバー、サイドカバー、リアカバー、フロアステップサイドカバー、及び中間カバー部等の明調子の部分と、ノーズカバー部、シートの一部等、暗調子の部分による構成とする点。

イ 相違点
(ア)フロントカバー部
(ア−1)フロントカバー
本願意匠のフロントカバーは、正面視、略倒M字状の左側の山に相当する部分のサイドカバーとの間に暗調子による斜めの面を構成するパーツが入り込んでいるのに対し、引用意匠は、サイドカバーとの間に暗調子のパーツは有さず、略倒M字状のM字の下面側(引用意匠の前方側)に、M字に沿った暗調子のパーツが配されている点。
(ア−2)ウィンドスクリーン
本願意匠のウィンドスクリーンの頂部は、右側面視においても平面視においても直線に近いゆるやかな湾曲状であるのに対し、引用意匠のウィンドスクリーンの頂部は、右側面視においても平面視においても大きく曲がった湾曲状である点。
(ア−3)ヘッドライト
本願意匠のヘッドライトは、扁平略逆五角形状とするもので、前方側はノーズカバーと接し、残りの辺は明調子のフロントカバーに囲まれたもので、ヘッドライトの後方約1/4を残し、ノーズカバー側から細い略L字状のラインライトを上下二分するように配しているのに対し、引用意匠は、大略扁平略逆五角形状といえなくもないが、前方側に三角形状が表れ、後方へ向けて幅広となる下側の頂点から後端の頂点に向かって狭まった後、刀の先状に細く伸びた突出部を有した形状とするもので、上辺は、明調子のフロントカバーと接しているが、下方の辺は、ノーズカバーから延伸した暗調子のパーツと接する態様とし、ラインライトは採用されていない点。
(ア−4)ノーズカバー
本願意匠のノーズカバーは、右側面視、扁平略六角形状とするもので、中央に同形の凹部を有し、凹部の上辺に空気取り込み用のスリットを設けている。また、下辺の左右頂部からフロントカバーの左右下端部、さらにはフロアステップサイドカバーの下面に延伸する暗調子部を構成しているのに対し、引用意匠のノーズカバーは、右側面視、水平状とするもので、その左右からヘッドライトの下辺に接するように右側面視略U字状とする暗調子部を有し、上部にはヘッドライトの間に一部をメッシュ状とするスリットを備えたフロントグリルを有している点。

(イ)サイドカバー部及びリアカバー部
(イ−1)サイドカバー及びリアカバーの正面視の態様
(a)本願意匠は、正面視、扁平V字状とする上辺の谷部の左側に僅かに上方へ上る段差を有しているのに対し、引用意匠は、上辺の谷部に略逆台形状の窪みを設け、そこにシートをはめ込む態様としている点。
(b)本願意匠は、下辺に中間カバー部に応じた扁平略台形状の切り欠き部を有しているのに対し、引用意匠は、下辺をおおむね直線状としている点。
(イ−2)シート
本願意匠のシートは、前方側の先端部よりやや内側に、先端部の下降斜面に沿ったライン状の明調子のパーツがサードカバーからシートを囲むように突出し、その余は、すべて暗調子とするのに対し、引用意匠は、正面視、リアカバーの上面略中央から後ろ、グラブレール部にかかる部分、及びグラブレール上面の後端部に明調子部を有し、それらが平面視においては、飛行機の主翼、尾翼状に表れることで暗調子のシート上に飛行機様の模様を構成している点。
(イ−3)テールランプ
本願意匠のテールランプは、中央の扁平略六角形状の左右の下辺に略L字状の短辺を接し、斜め下に延伸する反射板様のパネル部を組み合わせているのに対し、引用意匠のテールランプは、中央の扁平略六角形上の下半分に沿った細い反射板様のラインパネルと、その左右の辺に略L字状の短辺を接し、斜め下に延伸した後、斜め上に延伸し、正面視では扁平略V字状に表れるやや太い反射板様のラインパネル部を組み合わせている点。

(ウ)中間カバー部
本願意匠は、サイドカバーとリアカバーの接合部下方に、後方に傾いた略A字状の明調子のカバーパーツ(A)と、そのカバーパーツとフロアステップサイドカバーとの間に、正面視では略円形状の、背面視では円形でない明調子のカバーパーツ(B)の2つのカバーパーツによる構成としているのに対し、引用意匠は、サイドカバーの直線状とした下辺に沿った略カッターナイフの刃状とする明調子のカバーパーツを1つ配した構成としている点。

(エ)タンデムステップ周辺部
本願意匠の略三角形状のタンデムステップは、暗調子とするもので、周囲の暗調子パーツの中に折りたたまれて格納されることにより、目立たない態様とするものであるのに対し、引用意匠の略三角形状のタンデムステップは、明調子とするもので、下方に同じ明調子の幾何学的なパーツを配することで略三角形のタンデムステップと幾何学的なパーツが一体となった機械的な印象を有するパーツの一部を構成する態様としている点。

類否判断
(1)両意匠の意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)両意匠の形状等の類否判断
ア 共通点及び相違点の評価
両意匠は、モーターバイクに係るものであり、需要者は、購入者であり、斜め前方、斜め後方から見た各外装の態様等について注視するものということができる。
A 共通点の評価
(A)主な外装の構成における共通点(ア)(a)ないし(d)は、当該物品分野において、通常見られる構成であり、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(B)各部の形状におけるフロントカバー部の共通点(a)のうち、(a−1)は、斜め前方からよく見える部分であり、類否判断に一定の影響を及ぼす。ウィンドスクリーンにかかる共通点(a−2)は、左右を絞り込む態様は、従来より普通に見られ、また、フロントカバーとの間に空間を設けて配されている点も、例えば、下記参考意匠1及び参考意匠2に見られるように、公然知られた態様にすぎず、この点が類否判断に及ぼす影響は小さい。また、共通点(a−3)は、上記参考意匠1に、(a―4)は上記参考意匠2に表れているように、従来から見られる態様にすぎず、類否判断に及ぼす影響は小さい。
(C)サイドカバー部及びリアカバー部における共通点(b)のうち、リアカバーの態様における共通点(b−2)は、両意匠独自の特徴として認められるものの、全体の中ではごく一部の態様にすぎず、両意匠の類否判断に及ぼす影響は、限定的なものといわざるを得ない。一方、共通点(b−1)、(b−3)ないし(b−5)は、いずれも、従来から見られる態様にすぎず、類否判断に及ぼす影響は小さい。
(D)フロアステップ部における共通点(c)のうち、足を載せる面における共通点(c−1)は、従来から見られる態様であるが、フロアステップサイドカバーにおける共通点(c−2)は、この点だけを見れば、両意匠独自の態様として、類否判断に一定の影響を及ぼすものと認められる。
(E)明暗調子における共通点(ウ)は、当該物品分野においてよく見られる態様にすぎず、類否判断に及ぼす影響は小さい。

参考意匠1(別紙第3参照)
特許庁意匠課公知資料番号HA22008601号の「オートバイ」の意匠
(ウィンドスクリーンがフロントカバーとの間に空間を設けて配されている点は、第2頁の全体が黒色のオートバイの写真にあらわれている。)

参考意匠2(別紙第4参照)
特許庁意匠課公知資料番号HA23007929号の「オートバイ」の意匠

B 相違点の評価
(A)フロントカバー部
(A−1)フロントカバーにおける相違点(ア−1)は、本願意匠のヘッドライトを暗調子部とみれば、全体が略倒M字状に表れる共通点(a−1)に埋没する程度のもので、類否判断に及ぼす影響は小さい。また、ウィンドスクリーンにおける相違点(ア−2)も、湾曲率の程度の相違による部分的なもので、類否判断に及ぼす影響は小さい。一方、ヘッドライトにおける相違点(ア−3)は、需要者が注視する部分における相違点であり、類否判断に及ぼす影響は大きい。さらに、ノーズカバーの態様における相違点(ア−4)と併せ、需要者が注視するフロント周りの印象に異なった印象を与えるもので、相違点(ア−3)及び(アー4)が相まって与える類否判断の影響は、非常に大きいものと認められる。

(B)サイドカバー部及びリアカバー部、中間カバー部、並びにタンデムステップ周辺部
(B−1)サイドカバー及びリアカバーの正面視における相違点(イ−1)のうち、上辺の態様における相違点(a)は、シートにおける相違点(イ−2)と併せ、使用者が搭乗する部分であることを考慮すると、この相違点が類否判断に及ぼす影響は大きい。
(B−2)また、サイドカバー及びリアカバーの正面視における下辺の態様における相違点(イ−1)の(b)は、中間カバー部における相違点(ウ)及びタンデムステップ周辺部における相違点(エ)、さらには、単独でみれば類否判断に一定の影響を及ぼすと評価できる共通点(c−2)のフロアステップサイドカバーの態様は、それぞれが一体となってかたまりとして構成された印象を有し、本願意匠は、カバーパーツ(A)がカバーパーツ(B)を包み込むように表れるのに対し、引用意匠は、直線的に斜め後方へ向けて一方向の流れを伴った印象を与えるもので、この相違点が類否判断に及ぼす影響は大きい。
(B−3)テールランプにおける相違点(イ−3)は、扁平六角形の下方から斜め下に延伸するラインパネルを有する点においては共通しているともとらえることができ、類否判断に及ぼす影響は限定的である。

イ 総合評価に基づく両意匠の形状等の類否判断
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、両意匠全体を総合的に観察し、判断する。

前記ア「A」に説示したとおり、フロントカバー部における共通点(a−1)及びフロアステップサイドカバーにおける共通点(c−2)は、類否判断に一定の影響を及ぼすものではあるが、その余の共通点は、いずれも類否判断に及ぼす影響は小さい。
一方、相違点についてみると、前記ア「B」に説示したとおり、相違点(ア−1)、(ア−2)及び相違点(イ−3)は、類否判断に及ぼす影響が小さい、あるいは限定的であるに対し、相違点(ア−3)及び(アー4)が相まって与える類否判断の影響は、非常に大きいものであり、サイドカバー及びリアカバーの上辺の態様にのける相違点(イ−1)(a)と併せたシートの態様における相違点(イ−2)も、類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして、上記共通点(c−2)は、単独では類否判断に一定の影響を及ぼすものではあるが、上記相違点の評価(B−2)に説示したように、相違点(イ−1)(b)、相違点(ウ)及び相違点(エ)と相まって、かたまりとして構成された印象を与えており、この共通点(c−2)は、その中に埋没するものといわざるを得ず、そして、これらが一体となった態様が類否判断に及ぼす影響は大きい。

これらの評価を総合すると、両意匠の形状等は、相違点が共通点を凌駕するものであり、類似しない。

ウ 小括
両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、両意匠の形状等は類似しない。
よって、両意匠は類似しない。

第5 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲









審決日 2021-11-22 
出願番号 2020011131 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 北代 真一
正田 毅
登録日 2022-01-06 
登録番号 1705176 
代理人 眞島 竜一郎 
代理人 田▲崎▼ 聡 
代理人 安部 聡 

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