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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L3
管理番号 1380997 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-02 
確定日 2021-12-06 
意匠に係る物品 組立家屋 
事件の表示 意願2020− 17885「組立家屋」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする、令和2年(2020年)8月26日の意匠登録出願であって、令和3年(2021年)1月25日付けの拒絶理由の通知に対し、同年2月22日に意見書が提出されたが、同年4月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「組立家屋」とし、その形状等(形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって、「実線で表した部分が意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。重量物につき底面図は省略する。」としたものである(以下、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
表題 土地をお探しの方へ 2020年分譲地来場予約フェア開催
掲載箇所 SBCハウジングパークホームページ
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 2016年1月26日
検索日 2021年1月7日
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス URL:http://www.sbchp.jp/saku/sekisui/blog.php
に掲載された組立家屋の意匠のうち本願出願部分に対応する部分

第4 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「組立家屋」であり、引用意匠の意匠に係る物品も「組立家屋」であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は一致する。

(2)本願部分と引用意匠において本願部分と対比する部分の用途及び機能
本願部分と引用意匠において本願部分と対比する部分、すなわち本願部分に相当する部分(以下、「引用部分」といい、本願部分と引用部分を合わせて「両部分」という。)の用途及び機能については、共に、2階建ての組立家屋の屋根、屋根直下の2階の壁面、2階バルコニー及び1階の壁面と2階バルコニーの腰壁を一体となす正面の外壁からなるものであるから、両部分の用途及び機能は一致する。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲
両部分は、
ア 片流れ屋根上面の先端(庇(ひさし))からやや後方までを水平に切り取った範囲と、これに連続する屋根の正面及び底面
イ 屋根直下の庇の奥に設けた2階屋正面の壁面(以下「2階壁面」という。)と、これと接する2階バルコニーの床面、腰壁の内側の面及び上面
ウ 1階の壁面と2階バルコニーの腰壁の外側の面を一体となす正面の外壁
であるから、両部分の位置、大きさ及び範囲は一致する。

(4)両部分の形状等
両部分の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお、本審決において、引用意匠の図面の向きを本願意匠の図面の向きに合わせるものとする。
ア 共通点
(ア)全体は、屋根、2階壁面、2階壁面に接する2階バルコニー及び1階と2階バルコニーの腰壁を一体となす正面の外壁からなる点、
(イ)屋根は、上面視略横長長方形の板状で、正面側に傾斜している点、
(ウ)2階壁面は、屋根の横幅より幅狭の略横長矩形状で、その端部寄りの全体の半分近くの面積を略矩形状に除外している点、
(エ)正面の外壁は、2階壁面と略同幅の略横長矩形状で、下から約半分強の高さまで部分的に略矩形状に切り欠いて出入口としている点において、共通する。

イ 相違点
(ア)屋根、2階壁面及び正面の外壁(以下、2階壁面及び正面の外壁を合わせて「両壁面」という。)の横幅について、本願部分は、両壁面の横幅は屋根の横幅より2割程度幅狭であるのに対し、引用部分は、わずかに幅狭な程度である点、
(イ)2階壁面の除外部分について、本願部分は、左寄りであるのに対し、引用部分は、右寄りである点、
(ウ)バルコニーの奥行きについて、本願部分は、奥行きが横幅の約半分弱の長さであるのに対し、引用部分の奥行きは、図の開示がないため不明である点、
(エ)正面の外壁の出入口について、本願部分は、左寄りを全幅の約6割弱の長さに開口しているのに対し、引用部分は、右端から中央寄りまで切り欠いて右端に支柱を取り付けている点において、相違する。

類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は、一致している。

(3)両部分の形状等の共通点及び相違点の評価
以下、両部分の形状等について検討する。

ア 両部分の形状等の共通点の評価
この種物品の分野において、全体を、屋根、2階壁面、2階壁面に接する2階バルコニー及び1階と2階バルコニーの腰壁を一体となす正面の外壁からなるものとし、屋根を正面側に傾斜した上面視略横長長方形の板状とし、2階壁面を屋根の横幅より幅狭の略横長矩形状とし、正面の外壁を2階壁面と略同幅の略横長矩形状とし、その外壁の下から約半分強の高さまで部分的に略矩形状に切り欠いて出入口としたものは、両部分の他にも見られる態様であり(例えば、意匠登録第1488535号の意匠。)、両部分のみに共通する態様とはいえないことから、上記の共通点は、両部分の形状等を概括的に捉えた場合の共通する態様といわざるを得ず、これらの共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さいものである。

イ 両部分の形状等の相違点の評価
(ア)について、正面から見た場合、本願部分は、屋根の両端が両壁面より左右に大きく突出し、大きな段差状に表れて非常に目立っており、当該部位がさほど突出していない引用部分と比較すると、需要者に与える視覚的印象は全く異なるものといえるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
(イ)及び(ウ)について、(イ)の除外部分の位置は、左右のいずれかに寄せたものや真ん中に配置したものが、両部分以外にもごく普通に見られるものであるから、両部分の態様も、常套的になされる改変の範囲内のものといえ、(ウ)のバルコニーの奥行きについては、引用部分は正面から見た図のみの開示で、奥行きは不明であるが、この点が不明であっても、引用部分のバルコニーの奥行きは、常識的な範囲内のものと推認できるから、いずれも、両部分の類否判断に与える影響は小さい。
(エ)について、出入口を左右のいずれかに寄せることは、上記(イ)と同様、ごく普通に見られるものであり、横幅の長さの相違についても、常套的になされる改変の範囲内のものといえるが、左寄りに余地部を残して開口している本願部分と、右端から中央寄りまで切り欠いて右端に支柱を取り付けたものである引用部分とは、一見して異なる態様といえ、正面の外壁は、家屋1階の最も目に付く箇所であることを踏まえると、需要者の注意を強く引くものといえるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。

ウ 両部分の形状等の評価
以上のとおり、共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、相違点のうち、相違点(イ)及び相違点(ウ)が両部分の類否判断に与える影響は小さいものであるが、相違点(ア)及び相違点(エ)が両部分の類否判断に与える影響は大きいものであるから、相違点全体が相まって両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。

3 小括
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一で、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が一致するが、形状等においては、共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、視覚的印象を異にするというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲




審決日 2021-11-16 
出願番号 2020017885 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 内藤 弘樹
加藤 真珠
登録日 2021-12-14 
登録番号 1703541 
代理人 山田 強 
代理人 廣田 美穂 

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