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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1381687 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-27 
確定日 2022-01-11 
意匠に係る物品 注射器用ピストン 
事件の表示 意願2020− 18422「注射器用ピストン」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,令和2年(2020年)8月31日の意匠登録出願であって,令和3年1月26日付けの拒絶理由の通知に対し,同年3月18日に意見書が提出されたが,同年4月23日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年7月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「注射器用ピストン」としたものであって,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとし,「実線で示した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,この部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当し,意匠登録を受けることができないとしたものであって,当該拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」という。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。
欧州特許出願公開1849490
FIG.2の「The circumferential projec
tion 9b」が形成された「the gasket 3」の意匠

第4 当審の判断
1 両意匠の対比
以下,引用意匠の図面の向きを本願意匠の図面の向きに合わせて(右に90度回転させて)対比する。
(1)意匠に係る物品
本願意匠に係る物品は「注射器用ピストン」であるのに対して,引用意匠に係る物品は「ガスケット」であり,その表記は異なるが,共に注射器用のガスケットであると認められる(以下,本願意匠に係る物品についても「ガスケット」という。)。
(2)両部分の用途及び機能
本願部分と引用意匠における本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」という。)は,共に注射器のプランジャー(押し子)の先端に取り付けられるガスケットの,周面に設けた1本の突条部分であり,注射器に注入した薬液を密封しつつ摺動させる用途及び機能を有するものである。
(3)両部分の位置,大きさ及び範囲
両部分の位置について,本願部分は,ガスケットの周面のやや上方に位置するものであるのに対して,引用部分は,ガスケットの周面のやや下方に位置するものである。
両部分の大きさについて,本願部分は,太さ(「縦幅」のこと。以下,同じ。)で全長の約7分の1を占める大きさのものであるのに対して,引用部分は,太さで全長の約6分の1を占める大きさのものである。
両部分の範囲について,共に,1本の突条部分の全体を範囲とするものである。
(4)両部分の形状
(4−1)共通点
両部分は,共に上辺を長く,下辺を短くし,頂部が下方寄りに位置するものである。
(4−2)相違点
相違点1:直径と太さの比率について,本願部分は,約15対1としたものであるのに対して,引用部分は,約9対1としたものである。
相違点2:突条部の突出度について,本願部分は,直径の約50分の1突出したものであるのに対して,引用部分は,約50分の3突出したものである。
相違点3:頂部について,本願部分は丸くしたものであるのに対して,引用部分は,尖らしたものである。
相違点4:上辺と下辺の長さの比率について,本願部分は,約2対1としたものであるのに対して,引用部分は,約5対3としたものである。

2 両意匠の類否
(1)意匠に係る物品について
両意匠の意匠に係る物品については,表記は異なるものの,共に注射器用のガスケットと認められるから,同一である。
(2)両部分の用途及び機能について
両部分の用途及び機能については,共に注射器に注入した薬液を密封しつつ摺動させる用途及び機能を有するものであるから,共通する。
(3)両部分の位置,大きさ及び範囲について
両部分の位置,大きさ及び範囲については,位置と大きさにおける相違は,この物品分野においてありふれた範囲内の相違であり,範囲は共通する。
(4)両部分の形状について
(4−1)共通点の評価
両部分は,共に上辺を長く,下辺を短くし,頂部が下方寄りに位置するという点において共通するものの,この共通点は,この物品分野において両部分のみに見られる特徴といえるものではないし,具体的に観察すれば,上辺と下辺の長さの比率が相違(相違点4)するものであるから,共通点が両部分の形状の類否判断に及ぼす影響は,小さい。
(4−2)相違点の評価
相違点については,引用部分は本願部分と比べて太く(相違点1),突出度が大きい(相違点2)ことから,引用部分は本願部分よりも大きく突出した形状であり,更に,頂部が尖っており(相違点3),上辺と下辺の長さの比率の相違(相違点4)も加わって,両部分の形状は異なるとの印象を与えるから,相違点が両部分の形状の類否判断に及ぼす影響は,大きい。
(2−3)形状の類否
両部分の形状の共通点及び相違点の評価は上記のとおりであり,相違点が両部分の形状の類否判断に与える影響は,共通点のそれを凌駕するものといえるから,両部分の形状は類似しない。
(3)小括
そうすると,両意匠は,意匠に係る物品は同一であり,両部分の用途及び機能,並びに範囲は共通し,両部分の位置及び大きさの相違はありふれた範囲内のものであるが,両部分の形状が類似しないから,本願意匠は,引用意匠に類似するものではない。

3 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠に類似する意匠ではなく,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとして,同法同条の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲


審決日 2021-12-21 
出願番号 2020018422 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 上島 靖範
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2022-02-10 
登録番号 1707939 
代理人 平石 利子 
代理人 戸塚 朋之 

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