• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 B3
管理番号 1381693 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-14 
確定日 2022-01-12 
意匠に係る物品 コンタクトレンズ 
事件の表示 意願2020− 12998「コンタクトレンズ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、令和2年6月29日の意匠登録出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 4月23日付け:拒絶理由の通知
令和3年 6月 4日 :意見書の提出
令和3年 6月 9日付け:拒絶査定
令和3年 9月14日 :審判請求書の提出

第2 本願意匠

本願意匠は、意匠に係る物品を「コンタクトレンズ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、物品の部分について意匠登録を受けようとする部分を、「ピンク色に着色した部分以外の部分が意匠登録を受けようとする部分である。すなわち、コンタクトレンズの外縁部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「本願の意匠は、コンタクトレンズの外周縁の一定幅の領域、周辺部とも呼ばれる部分について意匠登録を受けようとするもので、当該部分全体を薄緑色に着色したものです。

引用意匠1は、レンズ全体が半透明に着色された、紫外線から目を守る機能を備えるコンタクトレンズです(特開平3−294819号公報:特許請求の範囲1、第1図、第2図参照)。
ここで、コンタクトレンズの分野において、半透明な着色ないし薄い色づけを行うことは、下記の引用意匠1及び参考文献1に示すように本願出願前より広く知られた手法です。
また、何色に着色するかについては、例を挙げるまでもなくさまざまな色を任意に選択可能であり、例えば、参考文献1に示すように緑色系色素のフタロシアニングリーンを含む各種の色素で着色することが広く知られています。

そうすると、本願の意匠は、公知の引用意匠1の色つきコンタクトレンズの意匠に基づいて、コンタクトレンズに任意の着色が選択可能であるところ単に薄緑色を選択してこれを着色したものとし、その周辺部について意匠登録を受けようとする部分として表したに過ぎないものといえます。
したがって、本願の意匠は、当業者であれば公知の意匠等に基づいて容易に創作できたものといえます。

<引用意匠1>
日本国特許庁発行の公開特許公報に記載された特開平3−294819号に表された意匠
参照箇所:発明の名称、特許請求の範囲1)、第2頁左上欄第8〜15行、第1図、第2図

<参考文献1>
日本国特許庁発行の公表特許公報に記載された特表2013−524297号
参照箇所:[0028]」

第4 当審の判断

以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「コンタクトレンズ」である。

(2)本願部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
本願部分は、願書の意匠の説明の欄の記載によれば、ブルーライトをカットする機能を有する。
また、位置、大きさ及び範囲は、コンタクトレンズの外縁部分であって、その幅は、正面視において半径の約27分の1である。

(3)本願部分の形状等
本願部分の形状等は、主に以下のとおりである。
ア 全体は、球面体の一部を平面によって切り取った半透明の(当審注:以下、「透光性を有する」と記載する。)曲面体の外縁であって、正面視中空円板状である。
イ 全体が、透光性を有するものであって、薄緑色に着色されている。

2 引用意匠1及び参考文献1の認定
原査定における拒絶の理由で引用された引用意匠1及び参考文献1について、以下のとおり認定する。
なお、引用意匠1及び参考文献1の出典については、前記第3に記載のとおりである。

(1)引用意匠1(別紙第2参照)
なお、引用意匠1の本願部分に対応する部分を引用意匠1部分という。
ア 引用意匠1の意匠に係る物品
引用意匠1は、発明の名称の記載によれば、「色付きコンタクトレンズ」である。
イ 引用意匠1部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
引用意匠1部分は、特許請求の範囲1)の記載によれば、光から目を守る機能を有する。
また、位置、大きさ及び範囲は、本願部分に対応する部分となるため、コンタクトレンズの外縁部分であって、その幅は、正面視において半径の約27分の1である。
ウ 引用意匠1部分の形状等
引用意匠1部分の形状等は、主に以下のとおりである。
(ア)全体は、球面体の一部を平面によって切り取った透光性を有する曲面体の外縁であって、正面視中空円板状である。
(イ)特許請求の範囲1)の記載によれば、全体に、透光性を有する色が着色されており、発明の詳細な説明、(作用)の記載によれば、非常に目立つ色が着色されている。なお、具体的な色彩は不明である。

(2)参考文献1(別紙第3参照)
ア 参考文献1の意匠に係る物品
参考意匠1は、発明の名称の記載によれば、「室内グレアの低減を発揮するコンタクトレンズ」である。
イ 参考文献1の形状等
発明を実施するための形態[0028]の記載によれば、コンタクトレンズの染料として、使用するのに適した具体的な有機色素に、フタロシアニングリーンを含む複数の有機色素及びこれらの組合せが挙げられ、また、所望の透過率パーセントを達成するために、染料と色素の組合せを使用することが可能であることが認められる。

3 本願意匠の創作非容易性について
本願部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲、並びに形状等は、上記1に示すとおりであるところ、「コンタクトレンズ」の物品分野において、光から目を守る機能を有し、位置、大きさ及び範囲が、コンタクトレンズの外縁部分であって、その幅を、正面視において半径の約27分の1とし、形状等が、球面体の一部を平面によって切り取った透光性を有する曲面体の外縁であって、正面視中空円板状であるものは、引用意匠1部分にみられるように、本願出願前より公然知られている。
また、コンタクトレンズの染料として、種々の色素及びこれらの組合せがあり、かつ、染料と色素の組合せによって所望の透過率パーセントが得られることも、参考文献1にみられるように本願出願前より公然知られている。
しかしながら、本願部分の形状等は、前記1(3)イで認定したとおり、全体が薄緑色に着色されているところ、この薄緑色は、ブルーライトをカットする機能を有するコンタクトレンズの着色として特異なものであり、具体的な色彩が不明な引用意匠1に基づいて、当業者が容易に創作することができたとはいい難い。
したがって、本願意匠は、当業者が公然知られた形状等に基づいて容易に創作することができたものとはいえない。

第5 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲



審決日 2021-12-23 
出願番号 2020012998 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (B3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 加藤 真珠
江塚 尚弘
登録日 2022-01-21 
登録番号 1706324 
代理人 ▲高▼山 嘉成 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ